【感想・ネタバレ】人はなぜ結婚するのか 性愛・親子の変遷からパートナーシップまでのレビュー

あらすじ

結婚のあり方が大きく揺らいでいる。離婚・再婚、選択的夫婦別姓、共同親権、同性婚、パートナーシップ、事実婚、生殖補助医療、養子縁組……。リベラル派と保守派に分断され、個々の論点についてすれ違う議論がなされがちななか、本書では共同性、性愛関係、親子関係の3点で議論を整理し、一貫した視点から本質とこれからを見通す。結婚をめぐる自由化がもたらす「しんどさ」も指摘する。本質を知りたい人のための羅針盤。

はじめに――議論の見通しをよくするために

1章 結婚のない社会?
結婚には歴史的にどういう意味があったのか
母子関係と父子関係
結婚制度は消滅するのか
父親のいる社会、いない社会
母系社会における結婚
結婚のない社会は設計可能か

2章 結婚はどう変わってきたのか
結婚の意味を探求してみよう
愛かお金か
生殖から性愛へ
家長の力が強かった時代
家族が会社組織のようだった時代
結婚は社会に埋め込まれていた
性別と性愛をめぐる言語表現
家族から「仕事成分」が抜け出した時代
結婚観の変化と同性婚
結婚を問い直す哲学的な考察

3章 「結婚の法」からみえる結婚の遷り変わり
自由婚はほんとうに自由か
国や支配者が結婚に介入する理由
現代の秩序維持と人口コントロール
法規制は何のためにあるのか
事実婚以上、法律婚未満
結婚の入口要件
婚姻期間中の要件(共同性)
結婚の出口要件(離婚)
有責離婚から無責離婚へ
「内部化」する現代の結婚
同性婚は結婚の法をどう変えたか
結婚と性愛関係の結びつきは強いのか
事実婚と法律婚

4章 同性婚、パートナーシップ、事実婚
結婚とシビルユニオン
分業する核家族
近代的な結婚の意義
保護対象とされた女性と子ども
選択肢としての結婚へ
結婚のベネフィットは何か
相続における法律婚と事実婚の差
政府の方針や民間企業の都合
なぜ性愛関係に基づいた結婚をするのか
シビルユニオンの登場
PACSと性愛関係
シビルユニオンの特徴
三つの共同性の違い
制度と実態のギャップ

5章 結婚と親子関係
結婚の争点は親子関係にもある
結婚と父子関係の確立
DNA鑑定はどのような影響を及ぼすか
生殖補助技術と親子関係の複雑化
親の複数性をもたらすパターン
代理懐胎をめぐる課題
養子縁組とブレンドファミリー
さまざまな「親子関係」の内実
「親性」を構成する要素とは
一律判断から個別配慮の時代へ
同性婚における親子関係
同性カップルが子を持つ事例
親子関係の制度がめざすところ

6章 乗りこえられるべき課題としての結婚
オプション化する結婚
共同性のコスト
自由という不自由
倫理的問題と行政・司法コスト
保守的な価値観
差別問題の難しさ
厄介な固定観念
選択肢が多いがゆえの悩み
リベラルと保守の対立を再考する
同じ方向を向いて議論をするために

7章 残された論点
前近代の結婚
前期近代の結婚
後期近代の結婚
非性愛的共同性はなぜ稀なのか
同類婚の謎
成人親子関係と結婚
姓の問題(選択的夫婦別姓)
複婚の可能性
共同性を広く持てる社会とは

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Posted by ブクログ

おもしろい❕
結婚という制度(あるいは関係性?)について周縁も含めて網羅的に、かつドライに書かれていて「結婚の入門書」としてかなりいい気がする

「「政府は、お二人の関係を登録する法律婚というメニューもご準備しておりますので、適宜必要に応じてご利用ください。登録するといいこともありますが、かわりに義務もあります」というわけだ。……政府としては(公費で助ける度合いが減るので)歓迎すべき面もあるので、結婚あるいはそれに類する共同関係を優遇する。」(p.59-60)

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

ジェンダーや昨今の結婚に関する政策の勉強に。結婚という人間の生活に強く結びついた行動なだけに、難解だった。文化や時代によっても結婚という考え方に大きな差が生まれ、現代の自由な結婚であっても前時代的な考えも交わり、複雑怪奇な状態にあると学んだ。一回読むだけでは全てを理解できなかったので、また機会があったら読もうと思う。

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2025年07月02日

Posted by ブクログ

「なぜ結婚するのか?」というメンヘラのような問いに対して時代とともに移り変わる役割や機能をかなり真面目に考察した学術的な本。
著者は結婚の機能と変化を「共同性」と「内部化」という言葉を使って説明している。当初、結婚は父子関係の割当にあった点を踏まえ、そこから結婚の成分が「仕事」「生殖」「性愛」と変化していき、それらの意味合いが薄まってきた現代において結婚の意味を個々人の「内部化」に要因を置いている。
かつては法律婚は親子関係、特に父子関係における遺伝的不確定要素を補うものとして存在したが、現在(特に欧米諸国で)は事実婚や代理出産、同性愛、養子縁組といった多様な親子関係やパートナー関係が生じている。それに対して法制度的な側面はカバーし切れておらず(かつカバーする必要性があるのか、という問題もはらむ)、例えば婚姻に対する出口要件となる離婚要件とのあいだに矛盾が生じている。
本書を読んでハッとさせられていたのはある意味差別の原因となるステレオタイプなものの見方は共通理解という点においてはコミュニケーションを円滑化する役目があり、「結婚」というイメージもそうした意味合いが含まれているということ。そしてそのイメージや役割は既に変化しており、再度立ち返って考える必要があることを考えさせられる。自分のなかで固定観念化している常識をほんのり覆してくれるなかなか面白い本であった。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

「結婚」に関する現行の法制度や、その意味の社会的変遷、そこから生まれた新しい価値観を概観する一冊。

同性婚や夫婦別姓など、近年政治的キーワードして挙げられるようになってきた事柄にも触れている。ただ、ここではその周縁の制度や問題点を抽出し眺めるに留まっているため、特に夫婦別姓については日本の戸籍制度についても理解した上で議論する必要があるかと。

なぜ国が結婚という制度の利用者を支援するのか、なぜ日本で同性婚が認められづらいか等々、結婚にまつわるあれこれを知る機会となり得た一冊だったので、法律知識に乏しい自分にとっては興味深い内容であった。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

常識だと思われていることが時代と社会の変化によって、変化してきて、これからも変化していくものだと認識できるのは、痛快だ。
父系社会に於て、父親に子供を割り当てる意味が大きかった結婚は、前近代では家の経営や生産のためになされるもので、性愛は内部に含まれていなかった。それが近代に入り、資本主義的な生産体制が普及し、家から仕事が抜け出たことで、結婚からも仕事が抜け出た。その代わりに、これまで結婚の外にあった性愛が結婚の中に入ってきた。さらには性愛も緩み始め、共同生活・ケアという概念が入り始めた。それに伴い、制度としての結婚と事実婚の差異が少なくなっていき、(法律上の)結婚は選択肢の一つとなった。
誰が指揮をしているわけでもないのに、ある意味を持った制度が自然発生的に作られ、それが時代や社会に合わせて変化していく様は、大河の流れを見ているようで面白い。それをまた人間が自分で分析しているのも面白い。
結婚の内部化という文脈で、自由がもたらすコスト、負担の増加に言及している点が特に印象に残った。結婚に限らず、様々なことを自分で決めなくてはならない時代になってきた。自分が何者であるかを自分で決めていく社会は一見自由で素晴らしいものであるように思えるが、一方で、選択する負担(選択肢をつくる負担)も増えていく。人生の中で大きな選択をするときに、もういいから誰か決めてくれやしないかと思うことが時々ある。科学が出てくる以前は、神が多分にその役目を負ってくれていたのだろう。人間は自分の神にはなり切れない。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

近代以降の「結婚」の変遷を辿ることを通じて、現代における結婚の意味の再検討と今後の展開を展望する。著者によれば、近代では当事者が帰属する社会の集団活動の維持のために結婚が利用されていたが、現代ではそのような外的・合目的な理由づけは希薄となり、結婚は当事者間の内的な動機のみに基づいて選択されるようになってきている。社会学者ギデンズの主張をベースにしたこの見地から、現代の「結婚」を定義する本質的概念とは何かを探ってゆく。
 
 著者の考察によれば、現代の法制度において結婚を規定しているのは「ポジティブな共同性」、すなわち婚姻関係にある者同士が相互に扶け合いながら共同生活を送ることにある。つまり、現代の結婚をめぐる法制度は必ずしも性愛関係を想定したものにはなっておらず、だからこそ我々は結婚を法などの外部に強制される形ではなく自ら選び取る、つまり結婚の「内部化」を行っていると言える。では現代の結婚が著者の呼ぶところの「ロマンティック・ラブ」、すなわち性愛関係に基づいたものとなっているのはそもそもなぜなのだろうか。そして、そのような内部化を行っているにもかかわらず、法的な「結婚」という登録制度を利用する人が多いのはなぜなのか。

 それは一つには共同生活の持つ経済的効率性、つまり生物的な生殖と経済的な生産の分離を志向する資本主義の効率主義であり、もう一つには父親との関係性を結婚という制度で固定化し伝統的に弱かった女性や子供の権利の保護の必要性であった。そしてこれらは同時に政府が婚姻関係にある者を制度面で優遇する理由にもなっている。前述の「ポジティブな共同性」が婚姻関係内にあれば、政府はそれだけ直接支援、つまり子育てや介護などに要する支出が減るからだ。

 しかし、そのように結婚制度の意義を父子関係の推定に求めるとすると、同性愛者が結婚制度を利用する根拠が不明瞭となるし、そもそもDNA鑑定が普及した昨今ではすでに嫡出推定の意義も希薄になっている。すると両性が結婚を利用する理由が内部化されてきたのと同様、親子関係も「共同性」、つまり個別の親子の相互行為が豊かか否か、に照らして当事者が選んだり選ばなかったりされることになるのではないか、と著者はいう。確かにこの「共同性」、特に「子の福祉に資するか否か」という基準は、生殖補助技術や同性婚による親子関係の複雑化とも親和性が高いようだ。

 しかし著者も指摘するように、結婚や親子関係を「内部化」するということは、それらの関係性を積極的に評価した上でそれを自らの責任で引き受けるということであり、諸関係者に重い「自己責任」の覚悟を要請されることになる。前近代のように結婚制度が「枠」として機能し受動的にそこに身を任せればよい、というわけにはいかないのだ。しかも、その関係性で構築される価値はまさに経済学でいう「関係特殊な財」であり、それを規定する関係性が壊れるとその価値も同時に霧散してしまう心許ないものでしかない(結婚式などのしばしば大仰なセレモニーはそれを押し留める「歯止め」というわけだ)。

 そうすると勢い、結婚の決断は非常に困難なものとなろう。さらに性的分業や安定した男性雇用などの前近代的結婚を支えてきた枠組が消失した以上、結婚の理由は「一緒にいて楽しい」などの情緒的な要素に求められることになる。著者はこれが日本の非婚化の一因なのであり、このような不確実性の高い長期的コミットメントに(いわば見切り発車的に)飛び込めるための契機が「性愛関係」なのではないか、と喝破する。身も蓋もないようではあるが、真実の一面を突いているのではないかと思う。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

独身未婚中年男性の自分が読んでみました。

結婚を難しく考えるとこうなるんだな、と思いました。これは悪い意味ではなく、分析がすごく的確であると感じ、なおかつ、あらゆることが高度に複雑化した現代社会において、結婚もまたそうであるのだなと思いました。

それもあって、本文を読んでいるときは星3つかなと思っていたのですが、まとめの部分が自分の中では意外でした。筒井先生は量的調査を専門とされており、自分は量的調査は基本的に数字なので、数字が苦手な自分としては、個人の生き方が見えてこないという意味であまり好きになれない部分がありました。
が、筒井先生のこれまでの著作とはちょっと毛色が違うというか、まとめではそういう部分にも気配りがされているように感じられたのです。

自分自身は、究極的に現代の結婚は強烈な性愛を持って、ある意味「この人とだったら不幸になってもいい」と思えた人がするという、超絶コミュ力オバケ同士でないと成立しない、超高度なコミュニケーションを実現させた証になるものだと思っていて、もともとそういう結婚をしたいというのを内面化していた自分ができなかったことにより、みじめさを感じるという絶望が自分の生きる世界だと感じる最近なのですが、わりとそういったことが書かれている気がしました(p.209)。
特に、おそらく先生の結論である部分(p.224)は自分も激しく同意し、なおかつ自分はそれを引き受ける覚悟を持てなかった、弱い男だということを死ぬまで背負っていくのかもしれないなと思いました。

来世は妻子を持って養える人生に生まれたいと思いながら、家族でない人に博愛を掛けながら人生を全うしたいと思いました。

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2025年08月13日

Posted by ブクログ

結婚の条件がよく整理されていた。
(必須条件・・・共同生活をし、互いに助け合うこと
必須ではない条件・・・性愛関係、生殖)

著者はおそらく同性婚や選択的夫婦別姓には賛成なのだろうが、
これらを法制化する上で解決すべき課題について
その責任の所在が当事者にあるかのような書き方がなされていて
そこが引っかかった。

例えば同性愛者の子供は差別されるかもしれないといった課題は、当事者ではなく社会に非があり、当事者に責任はないと思う。
同じように「選択的夫婦別姓を解決しても子供の名前をどうするかという新たな課題が生じる」と書かれてていた。しかし、"子供の名前をどうするか悩むという問題"と"強制的夫婦同姓により発生する女性への人権侵害"は同列に語られるべきではないだろう。子供の名前問題が生じるから女性の人権は侵害したままでいい、といった調子で人権侵害問題を先送りにする理由には全く値しないと思う。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

結婚というものに対して、概念的に歴史史実的に法律的になど様々な角度で議論がされている点は勉強になったと感じたが、明確な筆者の主張は内容に感じた。
私が社会学系の新書になれていないが、タイトルに対する回答が見受けられない点が気になった

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

シビルユニオンとか知れてよかった
疑問の提示がわかるわかるという感じだったけど、結局答えはないのか~という読後感だった記憶

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2025年08月17日

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