森本あんりのレビュー一覧
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もともとの意味での反知性主義とは、「かなり特定の系譜をもったアメリカ的な現象」なのだという。
カトリック世界を脱出して新世界を作り出そうとした人々がたどった歴史的経緯によって生み出され、展開してきたのだという。
それを解説した一冊。知らないことだらけだったが、いろいろ腑に落ちる。
ほぼ丸々、アメリカのローカルな事情と論理から成り立っているので、そんなことに世界を巻き込まないで欲しいと思うが、仕方ないのだろう。
われわれは明確に意識はしないが、中国のローカルな事情と論理に基づく世界観を受け入れ続けてきた日本からすれば、それがアメリカに代わっただけともいえるわけだし。 -
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ネタバレアメリカとは何かを理解するのに不可欠な本。
アメリカにおいて、政治や教育を左右するのがキリスト教という認識があったが、なぜそうなったのか、をキリスト教がアメリカに根付いていく過程をアメリカ史を背景に詳述する。
アメリカに移民した人々がまず作ったのが大学。それは牧師の養成に必要だったから。もし大学がなければ本国イギリスから定期的に牧師を招かねばならず、アメリカの独立はそこでつまづく、と考えられた。
大卒のインテリ牧師が行う説教は長く難解だった。それに対抗する動きが反知性主義。わかりやすく、時に笑いや涙を交えてキリスト教を説く。その流れは現代アメリカにも脈々と引き継がれ、宗教専門チャンネル -
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読み始めた動機としてキリスト教について、というか宗教について批判的な目線を持っていたので頭のいい人がどういう理由から宗教に傾倒していったのか興味があった。
世界中を魅了する一大コンテンツ「キリスト教」の魅力にまだ自分が気づいていないだけなのではないかと。
読んだ感想は宗教だから、キリスト教を信仰したから人は救われるのではなく、自分を肯定したり、自分の実存を存分に発揮したり、徳性を高めたり、生きる勇気を持つ事ができるようになったり、他人を愛せるようになる為に行われる営みの一つとして信仰というものが用いられていると感じた。
作者の人生とその時々の本との出会い、それによる思想の変遷が率直で恥ずかし -
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「モルモン教徒は道徳的に厳格で、酒や煙草はもとよりコーヒーやコーラも飲まず、人工妊娠中絶や同性愛には一貫して反対である。教会組織は最高指導者以下、明確に権威が階層化されており、しばしば白人中心主義も指摘されてきた。なお、成年男子には二年の宣教活動が原則的に義務づけられているため、日本でも若い伝道者たちの活発な働きが見られる。」
—『キリスト教でたどるアメリカ史 (角川ソフィア文庫)』森本 あんり著
「教会が同性愛者をどのように受け入れるかが深刻な争点となったのは、八〇年以降である。七〇年代の後半から、主要な各教派でこの問題についての検討が始められたが、その結論は多くの場合、同性愛者の人権擁 -
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分断が進むアメリカにおいて、「寛容」とは何かを論じる一冊。トランプ以後、顕在化した分断を前に、現代アメリカについて語られるのかと思うと、豈図らんや、アメリカ入植史と、当時活躍されたロジャー・ウィリアムズ氏についての本になっている。
アメリカのピューリタンの対極に位置する中世カトリックの寛容さについて触れたあと、政教分離と内心の自由を認めるウィリアムズについて語られ続ける。あとがきでも述べているが、森本先生、ウィリアムズ大好きでしょ。
端的に言えば、「ムカつくけど排除しないし礼節を持って接してやる」のが寛容だと論じられている。ユダヤ人の弁護士がネオナチを「テメーの意見はムカつくけど、テメーの -
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冒頭で日本における『反知性主義』と本来のアメリカにおけるそれとは微妙に意味が異なると書かれているが、微妙どころではない。この本を読むと完全に意味をはき違えている事が理解される。日本では知性に欠ける指導者が人気を博す事を揶揄する場合に使われることが多いが、本来の意味での反知性主義とは『上から目線への抵抗』である。
日本で何故このような勘違いが横行するのかと考えるに、そもそも権力者に知性がないことが原因と思われる。大物政治家の子や孫が世襲で権力を維持することに対する反感は日本にもそれなりにあるが、その人たちに知性が感じられないのでそれを『反知性主義』と呼称するのがしっくりこない。何とも残念な状況。 -
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ネタバレ反知性主義という切口でアメリカのキリスト教、歴史、政治、社会を分析する。反知性主義は知性に反対するのではなく知性が権力と結びつくことに反発するものだとして、その負の面も描きつつ肯定的な評価も与えている。
アメリカの歴史の流れや、自分の中で曖昧だった「ピューリタン」や「福音主義者(エヴァンジェリカル)」の定義が少し理解できた。
また、トランプに対しても本書を読むことで少し見方が変わった。アンドリュー・ジャクソンとの共通点など、トランプはアメリカにとって決して新しい存在ではないのだと思った。
アメリカのラディカルな平等理念が反知性主義を生むというのも面白かった。今の格差社会アメリカを見ると平 -
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なぜ今まで宗教学に興味をもってこなかったのかと後悔してしまうほどすばらしい内容。人間が考えたものである以上、政治思想や哲学や歴史や人々の価値観にはいつも宗教の下地があることが理解できる。もっと学びたい。
価値観が異なっても許容し共存するという意味での寛容は、「トルコから世界を見る ――ちがう国の人と生きるには? (ちくまQブックス)」に書かれていた「ものさしは複数ある」という認識に近いし、子どもの学級内での過ごし方としてよく言われる、「みんな仲良くは難しいが平和的に共存しよう」という考え方とも通じる。
皆が「礼節をもって、暴力に訴えず、会話を遮断せずに続けるだけの開放性を維持する」ことができれ -
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シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 宗教国家アメリカのふしぎな論理 (NHK出版新書)
by 森本 あんり
それは、アメリカという国がさまざまな側面において、宗教という 鋳型 で作られているから
なぜいまポピュリズムがアメリカを席巻している
人びとは思い思いに書いたプラカードを掲げ、Dump Trump, Racist, Sexist, Anti-Gay!(人種差別・女性差別・同性愛差別のトランプを追い出せ!)と、調子を合わせてスローガンを叫んでいます。子どもも老人も、白人も黒人も、女性も男性も、家族連れも同性カップルも。歩道にいた人びとも「一緒に声を上げよう」と誘われて、 -
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アメリカの反知性主義について書かれた本。
社会的病理・ポピュリズム・ナショナリズム等で象徴的なキーワードとして聞いたことがあったが、その根底にあるアメリカ独自のキリスト教思想や歴史について記載されていて、非常に面白く興味深い内容だった。
■アメリカはもともと中世の無い社会、王様のいなかった社会だった歴史から、知識層が大きな力をもってきた。それに対抗するものが反知性主義。
■アメリカではキリスト教が独自の解釈で広まった。神との契約とは、神からの無償の慈悲を指すモノから、自らもしっかり信仰しないといけないという考えに変わる。これが信仰復興運動につながる。
■アメリカキリスト教の副産物として、極端