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「わたしはあなたの意見に反対だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」――こんなユートピア的な寛容社会は本当に実現可能なのか。不寛容がまかり通る植民地時代のアメリカで、異なる価値観を持つ人びとが暮らす多様性社会を築いた偏屈なピューリタンの苦闘から、その「キレイごとぬきの政治倫理」を読み解く。
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Posted by ブクログ
分断が進むアメリカにおいて、「寛容」とは何かを論じる一冊。トランプ以後、顕在化した分断を前に、現代アメリカについて語られるのかと思うと、豈図らんや、アメリカ入植史と、当時活躍されたロジャー・ウィリアムズ氏についての本になっている。 アメリカのピューリタンの対極に位置する中世カトリックの寛容さについ...続きを読むて触れたあと、政教分離と内心の自由を認めるウィリアムズについて語られ続ける。あとがきでも述べているが、森本先生、ウィリアムズ大好きでしょ。 端的に言えば、「ムカつくけど排除しないし礼節を持って接してやる」のが寛容だと論じられている。ユダヤ人の弁護士がネオナチを「テメーの意見はムカつくけど、テメーの言論の自由は守ってやる」という民主主義の根幹をなすところと同じである。逆に昨今よく言われる、多様性を認めない多様性の押し付けも非難の対象となっている。上記の心がけでいるのはなかなか大変だが、これからの時代、皆がその心持でいればいいのにね。
なぜ今まで宗教学に興味をもってこなかったのかと後悔してしまうほどすばらしい内容。人間が考えたものである以上、政治思想や哲学や歴史や人々の価値観にはいつも宗教の下地があることが理解できる。もっと学びたい。 価値観が異なっても許容し共存するという意味での寛容は、「トルコから世界を見る ――ちがう国の人と...続きを読む生きるには? (ちくまQブックス)」に書かれていた「ものさしは複数ある」という認識に近いし、子どもの学級内での過ごし方としてよく言われる、「みんな仲良くは難しいが平和的に共存しよう」という考え方とも通じる。 皆が「礼節をもって、暴力に訴えず、会話を遮断せずに続けるだけの開放性を維持する」ことができれば平和になるので、さほど難しくはないように思えるが、その境地に至るのが困難だから諸々の問題が生じるのではと思う。まず自らの信念によほど強い確信がなければ、他者の異なる意見に接することで自分の内部に揺らぎが生じ、不安になる。自分を不安にするものは排除しなければならない、となる。相手の態度があまりに確信に満ちていると、自らの不安定を指摘されているようで、あたかも自分が攻撃を受けたかのように感じる。攻撃を受けたら自らを守るため反撃しなければならない、となる。これらの問題をどのように乗り越えるかが、私たちが考えなければならない課題だと思う。
不寛容なしに寛容はあり得ない。 自分が嫌悪する、許容できないものに対してどうするのか、という問いこそが寛容論。 わかりあうことはできないが、わからないままに受け入れることはできる。 ウィリアムズを切り口に寛容論について述べられた本。この内容でこの読みやすさはとてもよかった。 内容としても、筆者が...続きを読む述べている通り、まさに今求められる考え方なのではないだろうか。
不寛容なしに寛容はない と最初の方に出てくるが、「寛容」はこれに尽きる感じだ.アメリカへイギリスから移住したピューリタンが原住民と交渉しながら植民地を建設する過程で、「寛容」をどう取り扱うかを議論しているが、宗教の問題が基盤にあることは日本人には理解が難しいと思った.ロジャー・ウイリアムズに焦点を当...続きを読むてて「寛容」の問題を解説しているが、彼の頑なさはある程度理解できると感じた.契約を結ぶこと、宣誓をすることなど、現代社会にも通用することが17世紀のニューイングランドでなされていたことに驚いた.
入国審査書面の契約ひとつとっても、何故そのような項目が設けられているのかという歴史的背景を知ると納得が出来る。他者と暮らすとは何かを考えるきっかけとなる。
近代や現代の寛容論ではなく、その源流とも言える中世の寛容論を下敷きに、米国建設前(植民地時代)の人物でもあるロジャーウィリアムズに焦点をあて、彼にとって寛容が如何なるものだったのかを中心に論じている。 彼が重んじた「礼節」について、「マナー」に通じるところがあると感じつつも、「マナー」よりもより深層...続きを読むにあるような、所作や心情の向け方まで表したものであるように感じた。 ウィリアムズみたいなちょっとおかしな(褒め言葉のつもり)人達が社会から少しずつはみ出ることで、漸進的に社会が変わってきたのだと感じる。もちろん、そういうおかしな人たちを下支えしてきた他者や社会があってのことだけれど。
世の中では寛容が良いことで、不寛容は悪いことだという風潮がある。しかし、寛容であるはずのリベラル層が不寛容な言説に染まったり、一神教は不寛容だが多神教は寛容なので日本人はやさしいといった、寛容の意味合いを履き違えた話も散見される。 寛容という言葉には、前提として評価する側の絶対的な正しさがある。間...続きを読む違っているけど赦す、という一方的な立場を正当化する危うさは、時には戦争や排斥を生み出すロジックとなってきた。寛容の起源にキリスト教の異教徒や異文化に対する理解という流れがあり、聖書や教義が絶対的に正しいという立場が見え隠れする。 この本では、アメリカ建国にまつわる寛容・不寛容の流れをもとに説明されている。ロジャー・ウィリアムスという主役が登場すると、話は俄然面白くなる。新大陸の土地利用に対してなぜ教皇の許可を得なければならないのか、公職に就くためにどうして宣誓しなければいけないのか。ヨーロッパ由来の既存の秩序に対して空気を読まずに反論を繰り出す彼の存在が、先住民族や女性、奴隷といった多様な社会での寛容を形成していったのだ。 これは事勿れ主義や長い物には巻かれよという日本社会においても大いに参考になる話だ。既存の秩序を守り、権威者の言うことに波風を立てないといった、個人レベルでの寛容な行動が実は社会レベルでの不寛容に繋がっている。異質や立場の弱い者への配慮に優先して、化石のような昭和システムが温存されているのは随所で見られる。 ロジャー・ウィリアムスは先住民族との交流を通じて、この不寛容に対する糸口を見出していた。自分の価値観の尺度を正しく持ち、外側には敬意と礼節を以って対応すること。多くの日本人にとっては、前者はアメリカからの借り物であり、後者は同質性を好みなかなか他の価値観に触れる機会が少ない。だからこそ不寛容な社会になってくるとマズいのだ。
「寛容」の如何を問うとするよりは、むしろそれを通した初期アメリカ社会から連なる歴史と人々のあり方を知る端緒となった。 それが現在の、そして我々日本の基部の上でどう受容されうるか。
私には難しそうで最後まで読み切れるかと心配したが、易しい言葉で、興味がずっと保たれたまま読み続けられた。 歴史から学ぶこと、遠い昔の他国の人や出来事から得たことを今現在を生きるに当たって知恵としてそのまま具体的に取り入れられること、しみじみと実感できた。
通販生活の表紙に「私はあなたの意見には反対だけど、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」というヴォルテールの言葉が掲げられていた。確かに、美しい言葉かもしれないけど、この通りにするのは、かなり無理をして、頑張らないといけない感じする。 この本によると、中世の「寛容」は、大きな悪が実現しないよ...続きを読むうに小さな悪をそのままにしておくという、かなり消極的な、相対的な考え方だったというのです。金貸しも、娼婦も、それ自体は悪には違いないけど、それが無くなったら、社会全体はもっと悪くなるので、まぁ、放っておくか。そんな考え方だと。 なるほど。 この現実主義が、カトリック教会をさまざまな極論から守り、大いなる中庸を維持させてきたんだろうと思う。 それに比べて、上記の近代啓蒙主義の寛容論は、多様性を守ることを「絶対視」するような「非」寛容が見え隠れする。人間はそうあるべき。啓かれた近代人は、そういう考え方をするべき。そんな生堅な人間観が見えてくる。 ここ数日のオリンピック組織委員会の森会長の「女性蔑視発言」を巡るゴタゴタも、「多様性」を「絶対善」として、それが否定されると、その相手を全否定するような潔癖感が現れていて、ちょっと危ない感じがする。 そんな時代に、この本は、もっと現実的な「寛容論」を提示してくれる。悪は悪なんだけど、そんなに大きな悪ではないので、とりあえずは放っておくか的な(現教皇の同性婚に対する「寛容」も、この線にあるのではないだろうか)。 またまた、今年のベスト3候補の1冊。
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不寛容論―アメリカが生んだ「共存」の哲学―(新潮選書)
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森本あんり
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