【感想・ネタバレ】反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月10日

政教分離後エンタメ化した伝道集会が熱狂を呼び、ナショナリズムや平等意識と相性が良く、権力と知性の世襲が嫌われた。誰でも回心してまじめに生きれば救われる、帰依すれば聖書にないことは否定しなければいけない。それが今のアメリカの一部だと理解しました。

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Posted by ブクログ 2023年06月09日

いまを知るためには歴史を知る必要があるし、歴史を知るためにはその中で大きな役割を果たしてきた宗教について知ることが欠かせない。アメリカがなぜ「アメリカ」なのか、本書を読んでようやく理解することができた。
サンデー以降、現代につながる流れや、他国での思想についても学びたい。

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Posted by ブクログ 2022年11月07日

アメリカの反知性主義について書かれた本。
社会的病理・ポピュリズム・ナショナリズム等で象徴的なキーワードとして聞いたことがあったが、その根底にあるアメリカ独自のキリスト教思想や歴史について記載されていて、非常に面白く興味深い内容だった。

■アメリカはもともと中世の無い社会、王様のいなかった社会だっ...続きを読むた歴史から、知識層が大きな力をもってきた。それに対抗するものが反知性主義。
■アメリカではキリスト教が独自の解釈で広まった。神との契約とは、神からの無償の慈悲を指すモノから、自らもしっかり信仰しないといけないという考えに変わる。これが信仰復興運動につながる。
■アメリカキリスト教の副産物として、極端に平等を求める思考がある。信仰復興運動と相まって強烈な反インテリにつながる。インテリなだけでは大統領になれない。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年11月01日

"知性にせよ信仰にせよ、旧来の権威と結びついた形態は、すべて批判され打破されねばならない。なぜなら、そうすることでのみ、新しい時代にふさわしい知性や信仰が生まれるからである。その相手は、ヨーロッパであったり、既成教会であったり、大学や神学部や政府であったりする。反知性主義の本質は、このよう...続きを読むな宗教的使命に裏打ちされた「反権威主義」である。 (p.140)"

 現代日本において反知性主義と言えば、"最近の若者は本を読まなくなったとか、テレビの低俗な娯楽番組で国民の頭脳が毒されているとか、大学はレジャーランド化して単なる就職予備校に成り下がったとか(p.3)"といったネガティブな事例、あるいは社会に蔓延するナショナリズムやポピュリズムを指す言葉となっている。しかし、この用語が生まれたアメリカでは、元々もっとポジティブな意味を与えられていた言葉だった。それは、「反-知性」主義というよりも寧ろ反-「知性主義」と括るべきもので、"知性と権力の固定的な結びつきに対する反感(p.262)"を原動力とする。
"大家のもつ旧来の知や権威への反逆であって、その反逆により新たな知の可能性を拓く力ともなる。反知性主義は、知性の発展にも重要な役割を果たすのである。(p.237)"
そして、アメリカの反知性主義は決して最近になって突然現れたわけではなく、キリスト教を背景としてその社会に深く根差している。本書では、建国以来の「アメリカのキリスト教」史を振り返り、反知性主義という大きな流れがどのように発展していったかを非常に分かりやすく解説している。

 結論を先に言えば、アメリカの反知性主義の根底にあるのは、既成教会に対する反発から生まれた宗教的な平等主義と、真面目な努力には神が必ず祝福を与えてくれるという道徳観念である。
 前者は、入植当時のニューイングランドにおけるピューリタン社会が高度に知性的な社会だったという事実が前提としてある。歴史的に見て、当時のニューイングランドは人口当たりの大学卒業者の割合が異常に高かったという。また、プロテスタント教会は一般信徒にも聖書を読むことを奨励するので、日曜日の礼拝は聖書の内容を牧師が解説する難解なものだった。元々、ピューリタニズムは、教会の純化を求める革新運動として始まった。だが、"旧世界では既存の体制を批判する人びとであったが、新世界ではみずからが体制を建設しこれを担ってゆく側にある。(p.63)" 極端な知性主義は、反動として「信仰復興運動(リバイバル)=宗教心の急速かつヒステリックな高揚が広がっていく現象」を引き起こすことになった。その担い手は巡回説教師であったが、彼らは大学で神学を勉強したわけでもなく、"みずからの信仰的確信だけを頼りに、ある日どこからともなく町にやってきては、人びとを集めて怪しげな説教をして回る(p.83)"のである。当然町の牧師たちは彼らを批判するが、人気は衰えない。彼らの説教が抜群に「面白い」からだ。
"それまで人びとが聞いてきた説教といえば、大学出のインテリ先生が、二時間にわたって滔々と語り続ける難解な教理の陳述である。それに比べて、リバイバリストの説教は、言葉も平明でわかりやすく、大胆な身振り手振りを使って、身近な話題から巧みに語り出す。既成教会の牧師たちがいくら警告を発しても、信徒がどうしてもそちらになびいてしまうのも無理はない(p.83)"
この信仰復興運動は、徹底した平等理念に繋がっていく。つまり、一人ひとりがそれぞれ心に抱いた信仰の確信こそが正しく、インテリ牧師の、学術的に裏付けされているとしても何だか小難しい話より尊重されるべきものだという考えである。
"アメリカ人の心に通奏低音のように流れる反権威志向は、このようなところから養分を得て根を張っている。彼らは自分で聖書を読み、自分でそれを解釈して信仰の確信を得る。その確信は直接神から与えられたのだから、教会の本部や本職の牧師がそれと異なることを教えても、そんな権威を怖れることはない。よく言えば、これが個々人の自尊心を高め、アメリカの民主主義的な精神の基盤を形成することになるのだが、悪くすると、それはまことに独善的で自己中心的な世界観に立て籠もる人びとを作ってしまう。(p.151)"
 後者は、神学的に言えば、神と人間との間に結ばれた契約において、双方がお互いに履行すべき義務を負っている("対等なギブアンドテイクの互恵関係(p.23)")という側面を強調していることになる(このような契約理解は、建国期に活躍したピューリタン指導者ジョン・ウィンステップが語った説教の中に既にその片鱗を垣間見ることができるという)。現状がどんなにどん底であっても、回心して真面目に生きれば神からの祝福を得るという福音のメッセージは、確かに救いである。だが、「努力すれば報われる」という道徳が、「報われたのは自分が努力したからだ、正しかったからだ」(ヴェーバーはこれを「幸福の神義論」と呼んだ)という自己正当化に転換するのは容易だ。特に、時代が進んでリバイバルが産業化・娯楽化していくにつれてこの傾向が顕著になっていく。つまり、宗教と現世的な利益・実利志向のビジネス精神が結びついたのである。リバイバル集会は自己啓発に近いものとなり、"宗教的訓練はビジネスの手段(p.267)"と化す。二十世紀初頭の大衆伝道家ビリー・サンデーに対する筆者の心理分析を、少し長いが引用する。
"つまり彼は、世間的に成功することで、自分が大きく道を踏み外してはいない、ということを実感したいのである。(略)世俗的成功は、それ自体が目標なのではなく、自分の生き方の正しさを計るバロメーターとなった。彼にとって、信仰とはすなわち道徳的な正しさであり、世俗的な成功をもたらすものである。だから、もし自分が世俗的に成功しているならば、それは神の祝福を得ていることの徴なのである。
 彼が長老派教会の牧師として正規に任職されることを求めたのも、ことさらに奢侈でおしゃれな服装を好んだのも、そして臆面もなく集会の人数や献金の多さを誇ったのも、みなこの同じ論理に基づいている。何ともわかりやすい感覚であるが、あまりに直接的で、何かしらもの悲しいところがある。(略)
 癒しがたい空洞を内心に抱えているからこそ、外面ではどこまでも自分を膨らませてゆく。それがこの時代のアメリカの特徴であり、ビリー・サンデーという個性の特徴でもあった。サンデーは、まさに時代の子である。(p.244)"
 サンデー以降の反知性主義は、その大衆的な成功のために「権威化」していくという矛盾に陥り、元来の反権威的性質を次第に失っていくことになる。

 最後に、現代日本の反知性主義について考えたことを書いて終わる。筆者はあとがきで、
"強力な知性主義がなければ、それに対抗する反知性主義も生まれず、逆に強力な反知性主義がなければ、知性主義も錬磨されることがない。(p.272)"
と書いているが、まさにその通りだと思う。日本では思想の伝統化が終ぞ行われることがなかった、と述べたのは丸山眞男である(『日本の思想』)。これを彼は神道の「無限抱擁性」に起因するものだと分析したが、この無限抱擁性のためにキリスト教やマルクス主義のようなその下に概念を整序することを内面的に強制する思想に対しては不寛容であり続けた。ともかく、現代日本に蔓延る反知性主義が、アメリカにあったような創造的な「反権威主義」ではなく、単なる大衆迎合と拝金主義であるとしても怪しむに足りない。例えば、所謂「成功者」の言動を批判する人に対して「お前も成功してからモノを言え」といった物言いがなされるのを時折目にするが、これはまさに上述の「世俗的な成功」=「正しさ」という図式に当てはまるだろう。ただ、そこには宗教的意味合いはまったくなく、金の多寡があるだけだが。「成功者」の言うことに聞くべきものが皆無だとはもちろん思わないけれど、彼らの発言を何でもかんでも有り難がるのは危ういと感じる(きっと、「成功」が全面化した価値観にとっては、実際には「成功」するための手段にはどこまで行っても正解が存在しないが為により一層、「成功者」の示す「正解」が生活のあらゆる場面で正しいのだという、ある種の道徳に至るのではないかと想像する)。

はじめに
プロローグ
第一章 ハーバード大学 反知性主義の前提
極端な知性主義 ピューリタンの生活ぶり
第二章 信仰復興運動 反知性主義の原点
宗教的熱狂の伝統 「神の行商人」 反知性主義の原点
第三章 反知性主義を育む平等の理念
アメリカの不平等 宗教改革左派とセクト主義 宗教勢力と政治勢力の結合
第四章 アメリカ的な自然と知性の融合
釣りと宗教 「理性の詩人」と「森の賢者」
第五章 反知性主義と大衆リバイバリズム
第二次信仰復興運動 反知性主義のヒーロー リバイバルのテクニック
第六章 反知性主義のもう一つのエンジン
巨大産業化するリバイバル 信仰とビジネスの融合 宗教の娯楽化
第七章 「ハーバード主義」をぶっとばせ
反知性主義の完成 知性の平等な国アメリカ アメリカ史を貫く成功の倫理
エピローグ
あとがき

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Posted by ブクログ 2022年04月10日

アメリカの反知性主義について分かりやすく書かれた1冊。キリスト教の流入から端を欲し、平等な社会であるアメリカだからこそ、知性と権力に反したリバイバルが反知性主義につながる過程が分かりやすく書かれている。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月25日

アメリカはプロテスタントが作った国。
ほんとこれに尽きるんだなぁと思った。

プロテスタントとは、富と権力を欲しいままにして肥大化したカトリック教会に反抗した人々。
同時の最高の学問は神学で、中世以前のヨーロッパでは支配者階級たちが独占していた。神の教えは聖職者によって民衆へ与えられるものだったが、...続きを読むその教えが本当に正しいのか疑問を持ち、自ら聖書を読んで旧い土地を去ったのが彼らだ。

反知性主義は決して知性そのものに反対しているのではない。知性が権力を持ち、自分たちを支配してくることに反対をし、平等な社会を希求している。ヨーロッパ的キリスト教世界を脱した彼らの社会は、社会の建設を志す一団とその支配者を常に警戒する一団とが両輪となって独自の進化を遂げてゆく。

アメリカの社会に対する様々な違和感の正体がこの本によって明らかになって面白かった。

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Posted by ブクログ 2020年11月05日

反知性主義とは知性に反対する主義ではなく、知性が権威を不当に行使している構造をチェックしようとすること。また、チェックしようとする過程で新たな知的創造が生み出される可能性もある、というのが本書のポイント。なので、都市文明を大学の外から鋭く批判したエマソンやソローも反知性主義。また、フィニーという反知...続きを読む性主義者が創立したオベリン大学も、米国初の男女共学大学であった。

一方で、反知性主義の抵抗精神は、独善的で自己中心的な世界観に籠る人びとを生み出す可能性も有している。今のところこちらに大きく傾いているようにも見える現代の反知性主義は、どのような知的創造を生み出すことができるだろうか。

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Posted by ブクログ 2020年09月26日

留学時に「大統領になりたければ正しい政策が何か説明するな。誰にでも分かるメッセージだけ繰り返しておけ」と教えられた理由がとてもよく分かった。「自分は無神論者だから」という人でも、なぜアメリカ人なら誰にでも宗教的なまでに反権威主義の精神性が感じられるのかも。
本書はアメリカにおけるプロテスタントの発展...続きを読むと土着化を紐解きながら、アメリカの政治社会がどういう価値観のもとに形成されているのかが丁寧に説明されていて、読み応えがあった。名前しか知らなかった色んな宗派の勉強にもなった。

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Posted by ブクログ 2020年09月09日

反知性主義とは知性の欠如を礼賛するものではなく、むしろエスタブリッシュメント化した知性に異を唱え本質への議論を巻き起こす、極めて知的な営みが出発地点だったということがわかる。
アメリカにおけるキリスト教の在り方、変遷を学ぶという観点でも実に興味深い内容。
インテリの2時間かかる難解な説教より、身振り...続きを読む手振りとユーモアを駆使した俗な説教のほうが耳目をあつめるというのはさもありなん。
反知性主義も、批判的視点に立脚している限りはその大義を果たすことができるのだろう。しかし耳目を集めることが目的化してしまったり、単に知性から目を背けた無知性主義にどうしても陥ってしまう。
そういった最適解のなさこそ、歴史から学び取るべきなのだろう。

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Posted by ブクログ 2020年01月13日

トランプ大統領就任のころからよく目にするようになった反知性主義だが、その意味合いがよくわからない。
まえがきにある、佐藤優の「実証性や客観性を軽んじ、自分が理解したいように世界を理解しようとする態度」と定義が一番実感に近いように思う。
本書は、反知性主義という社会問題を説明・分析するようなものではな...続きを読むいため、そのようなものを期待すると肩すかしを食らうことになる。本書は反知性主義がアメリカにおけるキリスト教から発生した歴史、その際の反知性主義のヒーローを紹介する。難しくなく、読み物としてもすごく面白い。
ヨーロッパにおいてカトリックへの対抗としてプロテスタントが興ったが、プロテスタント(ピューリタン)が建国したアメリカにおいては、ピューリタンへの対抗として反知性主義が興ったという。
反知性主義においては、説教者は、ピューリタンのような難解な説教をするよりも、民衆の心情にわかりやすく訴え、回心させること(さらには回心させた人数)を重視する。
その背景には、神のもとでは知識人も非知識人も平等であるという確信があるようだ。

本書においては反知性主義は、知性が権力と結びつくことをチェックする機能を果たすというポジティブな意味合いで使われている。
なんか便利そうな言葉だけど、思ってたのと全然違う感じだった。

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Posted by ブクログ 2019年12月27日

最近話題(?)の反知性主義の本。読む前は反知性主義を単なるインテリに対する妬み嫉みの類だと思っていたけれど、信仰の問題だと考えると反知性主義という言葉がまた違った様相に見えてくる。信仰はインテリだけのものではなくて、みんなのもの。インテリだってそうじゃなくたって、信仰を持ったっていいじゃない。信仰心...続きを読むは知性とは必ずしも結びつかないから、もっと信仰をみんなのものにしよう!という前向きな意味として反知性主義を捉えれば、それは決してダメなことではないと思う。
最近日本で言われる反知性主義は、「感情でイケイケどんどん、理屈やエビデンスなんて糞食らえ」みたいな意味で使われていることが多いと思うので、ちょっと違うんだな、と知られて満足。
反知性主義は深掘りすると、意外にも結構深度のあるテーマなのだ。

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Posted by ブクログ 2019年05月26日

反知性主義という言葉自体はここ最近、トランプ政権の誕生や各国家での保守派の台頭を指したものとして聞かれるものだった。そうした風潮に「反知性主義」という批判を浴びせるという文脈で使われていた言葉。

しかし、この本を読むと「反知性主義」という言葉はむしろ褒め言葉のようにも思えて来る。
反知性主義は、知...続きを読む性の越権行為を監視するもの。知性が学問以外の領域に進出し、影響力を持つことに対する反感。また、単純な反感だけではなく、知性が特定の人々のものになり、世襲化し固定化することに対する反感であること。
アメリカの場合、その根底には社会の階層に囚われない平等という概念があること・・(また、さらに平等の根底にはアメリカで土着化したキリスト教が深く関わっていること)・・・などを学べた。

個人的には、本書の説明から何故歴史の流れの中で、本流と異端が入れ替わり続けるのかという疑問の解消の一助となった気がする。(ユダヤ教とキリスト教の入れ替わり、カトリックとプロテスタントの入れ替わりなど)。
異端が発展して、本流となっていく中で知性と結び付く。知性と結び付いたことで、活動が難解なものになる。それに反感を持つ人たちが、本流を積極的に否定する活動を形成する。

この本は近代アメリカのキリスト教という観点から、反知性主義を話していたが、現在の政治でも同じようなことが起きているのかも。反知性主義という言葉がマスメディアや知識人を通じて出てくるということは、自分たちは知性を持つ層であることを自認している。その時点で、本流とそれに反感を持つ層の対立が起きる土壌が出来ている。リベラリズムという価値観が強い影響力を持って、現実の社会に対して大きな影響力を持っている。そこにある程度の強制力が生じるが、そこに反感を持つ人がリベラリズムという本流に対しての異端を作る。こうしたことが繰り返されていくために、本流は安定しない・・・みたいなことかなー。

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Posted by ブクログ 2019年04月17日

【知の引っぺがし】トランプ大統領の誕生等の流れを受け,日本でも幅広く使われるようになった「反知性主義」という言葉。その発祥の地とも言えるアメリカにおける反知性主義の流れをたどりながら,その考え方の本来意味するところを探求した作品です。著者は,国際基督教大学で教授を務める森本あんり。

決して難解な表...続きを読む現に頼ることなく,それでいて明晰に反知性主義とは何たるかを示した名著だと思います。現在の反知性主義という言葉がなんとなく内包するマイナスのイメージとはかけ離れた実像が浮かび上がってきたところも非常に興味深かったです。

〜反知性主義は単なる知性への軽蔑と同義ではない。それは,知性が権威と結びつくことに対する反発であり,何事も自分自身で判断し直すことを求める態度である。〜

話題の本でしたが☆5つ

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Posted by ブクログ 2018年02月09日

反知性主義とは、知性と権力が結びつくということを批判することで、知性そのものを非難することではなく、アメリカという国故に生まれたということが分かりました。 
本書では、アメリカのキリスト教布教の歴史に於ける、「信仰復興」(リバイバル)を通じてどのように反知性主義と言う考え方が敷衍されてきたかが分かる...続きを読むようになっています。
個人的に、特に勉強になったトピックとしては、「政教分離」で、日本では創価学会などがやり玉に挙げられますが、アメリカのそれは、政治から宗教を追い出すことではなく、各人が自由に思うままの宗教を実践することができるようにすることであるということです。
言葉も平易で読みやすく、納得の一冊でした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年09月03日

イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領当選、日本の民主党政権擁立…、マスコミ報道や雰囲気に呑まれて、あまり深く考えもせずなんとなく「感触がいい」からという判断で政治や経済を委ねてしまう、あるいはそういう市民層を意識してあえて分かりやすい行動をとる支配者層…

俺は、この本のタイトルとなっている...続きを読む言葉の意味を、なんとなく漠然とそういう風にとらえていたのだが、その解釈は間違っていた。
少なくともこの言葉が生まれたアメリカでは「反知性主義」とは「知性」と対立するものではなく、「知性主義」と対立するものだということ。そして、そこにはアメリカ合衆国誕生から深く根ざすキリスト教が大きく影響していたのだということ。なるほどなぁと目から鱗。

反知性主義とは知性と権力の固定的な結びつきに対する反感。これが結論なんだが、その反知性主義が成立していく過程をアメリカ宗教(キリスト教)史を通じて分かりやすく書かれていて良い。勿論、宗教史以外から反知性主義を読み解く方法もあるんだろうが、今のところ、俺の中ではこの本の影響大である。

ただ、日本の「反知性」は困ったもので、「分かりにくい真実より理解しやすい風評」みたいなもっと安易なとこがあるよなぁ。「あの人とは血液型が合わないから付き合わんとき」とか「水素水呑んだら肌ツヤが良くなるで」とか、自分で信じるのは勝手やけど、そういう安易な風評を人に圧しつける風潮、なんとかならんかなぁ。

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Posted by ブクログ 2017年06月03日

反知性主義とは何か。知性主義に対する反発である。反"知性"主義ではなく、反"知性主義"である。
この誤解が解けるだけでも、目からウロコ。
それでは知性主義とはなにか。反知性主義の背景は?
とても読みやすいが、知らなかったことばかり。
話題となりながら、明らかに...続きを読む誤解されているワードを正しく理解し、さて、日本ではどうか、自分はどうか考えるきっかけとなる。読む価値あり、と思う。

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Posted by ブクログ 2017年03月22日

反知性主義を理解するとき、アメリカのキリスト教史の大前提を理解することが必須。この本は最高。時代を騒がせた教会の主役たち、心に語りかけるような筆者の言葉。深くて楽しい講義を聞いてるような素晴らしい本。

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Posted by ブクログ 2017年01月13日

本書の内容紹介にはこうある。「アメリカでは、なぜ反インテリの風潮が強いのか。なぜキリスト教が異様に盛んなのか。なぜビジネスマンが自己啓発に熱心なのか。なぜ政治が極端な道徳主義に走るのか。そのすべての謎を解く鍵は、米国のキリスト教が育んだ「反知性主義」にある。」

だいぶ風呂敷を広げたなと思われるだろ...続きを読むうが、本書を読み進めるうちに、うんうんと頷き、へーと納得し、どれも説明する見事な語りに、最後にはまじかよーと末恐ろしさすらも感じてしまった。

アメリカを語るのに、「反知性主義」のこの万能感はなんなのだろう。かつて丸山真男が日本を語るのに「原型・古層・執拗低音」を説いていたけれど、「反知性主義」の補助線の切れ味は比べようもないほどに鋭い。

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Posted by ブクログ 2020年06月15日

すばらしくおもしろかった。絶賛。アメリカという国や音楽その文化、そのライバルとしてのヨーロッパ、19世紀以降のキリスト教とかってのに興味ある人はぜったいに読むべき。



ちなみになんかいまネットでなんやかんやいわれているネトウヨだのそういうのとはほとんど関係がない。

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Posted by ブクログ 2023年11月25日

アメリカを理解する視点として、このキーワードが実に重要なことがわかりやすく書かれていた。実に自分がものを知らないかがわかったというのもおかしな話ではあるが、このことを教えてくれることはいわゆる学校ではないように思う。

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Posted by ブクログ 2021年10月16日

進化論否定、トランプを信用など、アメリカで起きていることが理解し難いが、この本を読むとそこに至る経緯がわかる。かと言って、進化論否定を肯定する物ではない。

アメリカには、ヨーロッパ階級社会から逃れてきたスタートがある。特定の知識階級が正しさを決めることへの反発。
それに対して、その正しさの拠り所が...続きを読む聖書であるなら、聖書を読むことは自分でもできるわ、となっていく。この過程の説明はとても面白い。なるほどな、と納得する。

一方で、この場合、聖書の存在が大きすぎる。聖書にさえしたがっていれば道徳的に社会的に問題がない。というのは無理な話で、多くの書物にあたって多角的に物を見ることか望ましいと思うけれど、それはなされない。その結果、進化論が否定されてしまう。
著者は,アメリカ国民が否定してるの進化論ではなく、家族の教育分野まで政府が口出しすることだと,言っているがそれは違うと思う。
勉強はしない、出世もしていない。でも私は全くもって問題がないという自尊心の拠り所が無くなっているのではないか。そこに聖書が入り込んでいる。
毎週教会に行けば牧師が教えてくれる聖書は、唯一我慢できる勉強なのだとしたら、それだけは理解できるから、それで教養は充分であり、自分には自分なりの考えや,意見があると言えるとなっているのでは?その結果、進化論が否定されている気がする。

平等を求める心理はわかる。でも、平等でなくなっているから、その社会で生き抜くのに、命綱がいる。それが聖書という人が多い国なんだろうか。

書かれていることは理解できるし、面白い。反知性主義とはなんだったかも理解できた。
でも、それで今の状況が説明し切れるとは思えない。反知性主義が生まれた経緯とその本来の意味から、現実は乖離してるのではないか。
また、宗教=学問に絡んだ権威が強いアメリカで、反知性主義が生まれるのはわかるが、そもそも親が食べなくても子供に学問という価値観の日本では、反知性主義なんて出てこないと思う。また日本の方が序列好きな印象もある。平等が大事なアメリカとは違うと感じた。

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Posted by ブクログ 2021年07月12日

またこれもトランプ支持を理解したくて読んだ本。反科学
や陰謀論など理解し難い主張を反知性主義で説明できるのか、あんな人物を大統領にしてしまう人々のことをこの言葉で理解できるのか、と思い手に取った。
まず序章で反知性主義の定義からなんとなくの理解を覆される。大衆化しおよそ知性と考えられるものに何にでも...続きを読む反対する姿勢のことを日本では反知性主義と呼ぶが、アメリカでは異なる意味合いを持つ、として、アメリカという独特な環境でどのように反知性主義が育ってきたのかの説明がはじまる。

最終章を先取りしてまうと、『反知性主義とは知性と権力の固定的な結びつきに対する反感である』というのがエピローグでのまとめだ。既存の知識体系を古いものとし、常に批判を加えながら新しい考えを呼び込む。平等を尊び反ヨーロッパを旗印にして国を興したアメリカならではの思想である。
このように書くと止揚的で理想の社会発展のように聞こえるが、筆者は必ずしもこの思想を手放しで礼賛するわけではない。曰く、こうした考えはキリスト教のリバイバリズム(復興運動)によって強化されて来、リバイバリズムはその支持を拡大するために平易に既存権威(カトリック)を批判し、そうした大衆的な語り口が熱狂を起こし、反知性主義を強化してきたとする。
このアメリカ特有のキリスト教の広がりは、そもそもアメリカ建国という偉業に立ち向かう人々が求めた結果、世俗の成功を善とする単純な二元論に変質して起きたものであり(宗教の「土着化」)、その語りは過剰に大衆化されてきた。

反知性主義がアメリカ特有の歴史に根ざしてきた容易には変え難いものであり、これこそがアメリカの強さであり危うさの源泉なのだなと思った。権力への批判的な視線やオープンな議論といったプラスの影響は大いにあり、アメリカで働いていると一度立ち止まって本当に必要なのか議論するのを推奨しようと言われるが、文化的土壌にはまさにこうした新国家建国に向け旧体制に追従しない議論の姿勢があるのだなと感じる。一方で、それが行き過ぎると反科学であったりトランプのように既存権威をただばかにしているような言い方に支持が集まるのだと思う。(トランプ支持には新自由主義とリベラル政治により尊厳を奪われた国民の支持があったわけだがそれは別の話として)最近のキャンセルカルチャーやゼロトラランスもこうした過剰な既存体制への批判、実践を重んじる思想が表れているのかなと思う。日本人的にはなんでそんな極端にやっちゃうのかと呆れてしまう面もあるが、その背景としての思想を知れたように思った。ヨーロッパ等他のキリスト教国とも違う社会なのだろう。


他の点で行くと自然崇拝が平等意識と反権力意識を育んだという点も触れており、人文的な観点からは自然信仰がこの国にもあり社会の基盤に影響しているというのはとても興味深かった。また、やはり宗教を理解できないと社会の成り立ちがわからないなと改めて痛感。

語り口が予想外に軽妙、、というか軽薄?笑なところがあり、読み物としても楽しかった。リバイバリズムの興隆でで反知性主義が生まれるところでは、『反知性主義の原点とは、...このぴちぴちとしたコーラスダンサーが振りまく魅力であり、その若い娘たちに見とれている亭主の心持ちなのである』(p83)と言い切っており、タイトルの最重要ワードを死後で説明するそのカジュアルさに笑ってしまった。


次はアメリカの強さの源泉を探って本を探したい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年11月23日

ホフスタッターのAnti-Intellectualismを説き起こした本。キリスト教と反知性主義の関係、そしてアメリカ人のものの考え方、感じ方について、説得力ある議論を展開する。

反知性主義とは知性を否定するのではなく、知性に結びつく何かを否定する。たとえば知性と権力が結びつくこと。知性と権威が結...続きを読むびつくこと。大卒じゃなければ牧師になれないとか。科学と権力が結びつくこととか。

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Posted by ブクログ 2016年06月04日

1600年代ハーバード・イェール・プリンストン大学は牧師養成学校としてスタートしているとのこと。教会の牧師は大学出。それに対し、辻説法をする神の行商人が登場し、演説のうまさから人々を魅了する。反知性主義とは、大学や研究所の知の権威が、その組織の外に出て、越権行為を働くことに対し、牽制する姿勢のことと...続きを読む理解しました。圏外編集者の都築さんの姿勢(権威ある誰かお墨付きのない絵・音楽・ポエム・住まいの中から素晴らしいものを選びとれるか)、町田康リフォームの爆発における餅は餅屋に任せ切れないリフォーム中の家主の苦悶も、反知性主義のスタイルと言って良いかと思いました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年08月23日

タイトルから、作者の名前の印象からは、一体なんの本なのか分かりにくいだろう。アメリカにおけるピューリタン、キリスト教におけるリバイバル(信仰復興)の歴史。学歴がなくとも話術があれば牧師や説教師となることができ、その人望によって宗教を利用したビジネスも成功させやエピソード満載。教会という必要とされたコ...続きを読むミュニティの場の存在。アメリカにおける大学の序列。
著者はICUの学長ではあるが、決してキリスト教を礼賛する目的ではなく、史実をユーモアを交えた語り口にインテレクチュアルを感じる。ヨーロッパとは異なるアメリカでのキリスト教への対峙の仕方を知ることがこれほど興味深いとは。

映画『ペーパームーン』の例が紹介されていて、未亡人の家を訪問して亡きご主人からの依頼だと夫人の名前を金文字でいれた聖書を売る詐欺の話である。これも当時のアメリカにおけるキリスト教の浸透ならではか。

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Posted by ブクログ 2023年11月30日

アメリカにおいてのキリスト教について、詳しく知ることができた。私はこの一冊だけではいまいち「反知性主義」についてうまく飲み込めず理解できなかったので、著者の別の本も読んでさらに理解を深めたいと思いました。

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Posted by ブクログ 2020年04月01日

2016年、まだトランプが就任する前にたまたま興味を持って読んだ。
今思えば、トランプ当選という現象の源流にあるものについて知れていたのかもしれない。

アメリカがニューイングランドと呼ばれていた時期に、イギリス人宣教師がキリスト教を「大衆化」したことが反知性主義の源流だ、という内容だった気がする。...続きを読む

要はエリートの特権だった「高尚」なキリスト教を、大衆にも分かりやすく翻訳して広めた宣教師がいたと。

キリスト教を広める、という大義を持ってよかれと思ってやったのだろうが、そのおかげでキリスト教が持っていた規律性も失われた部分があるのだろう。元々はコミュニティを形作る機能も持っていたわけで、一定の排他性と、情報の非対称性による統治のしやすさとかがあっただろうに。

宮台真司も言っていたが、どのプラットフォームも大衆化する段階で「クズ化」するものなのだなあ。

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Posted by ブクログ 2019年07月28日

反知性主義の源泉には、平等(フェアネス)をよしとし、求め、実現しようという理念があります。また、たとえば誰かを助けるときにおいて、知性主義の人は、立場や法律など社会システムに照らしてから助けるか否かを決め、反知性主義の人はその誰かの命や生活を優先して社会システム度外視で助ける、みたいなところがあるよ...続きを読むうです。そういうのを知ると、反知性主義のほうでいいじゃないか、と思ったりもしませんか。しかし、どんな主義思想にも欠点はつきもので、反知性主義には、よくない意味での熱狂を生むし、原理主義と親和性があり陥りやすいというのがあります。反知性主義って、神の子羊である存在を肯定するようなところがあるように見受けられる。勉強して子羊以上の存在になった者よりも、子羊のままでいいのだ、と。そんな無知な子羊が子羊として無垢な存在であるためには、社会から競争と資本主義を取り去る必要があると思います。そこはもっと個人的にも考えていかないと、ですね。

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Posted by ブクログ 2019年05月21日

アメリカにおける反知性主義 anti-intellectualism の歴史を紹介した本。
もともとピューリタンの牧師は、高学歴な人に限定され、説教の内容も、高度に学問的なものが多かったことから、これに反発する形で、学歴や専門の訓練を受けてなくても、人々を回心させることのできる説教師が登場し、発達し...続きを読むたという歴史を語る。基本的にキリスト教の用語。

近頃の日本で「反知性主義」という文字面から使っているような文脈とは異なる。
例えばこの本の用法は、なんかよくわからん。「日本の反知性主義」

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Posted by ブクログ 2018年10月11日

前半のハーバード、イェール、プリンストン設立の由来は理解できたが、リバイバリズムは、あれで本当に良いのだろうかと、最後まで理解できなかった。

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