森本あんりのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
やはり米国史はキリスト教の理解なくして学べないと痛感させられました。
本書の内容は、冗長な記述もなくとても簡潔でありながら、しかし要点はきっちり押さえてあって、まさに過不足なく書かれているといった印象です。
米国のキリスト教の歴史を学ぶ第一歩として最適な基本書といってよいでしょう。
ないものねだりで注文をつけるとすれば、各州の位置がわかる地図と、各宗派に関するごく簡単な説明が冒頭にあればなおよかったでしょうか。
そのあたりの基礎知識がなかったため、「メリーランドが……」とか「メソジストが……」とかいう記述が出てくるたびに、その州の位置や宗派の概要を調べないといけませんでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本はアメリカ史?についての本です。しかし、焦点を当てるのはむしろアメリカの歴史のダイナミズムの下に隠れる宗教の強さ。あるいはこうも言えるかもしれません - 宗教という隠れ蓑にひそむ人間の汚さ・狡さ。
いずれにせよ、イデオロギーは人を聖者にも殺戮者にもしうるし、本来倫理に悖るような行為についてもひとたび神を持ち出すことで正当化される。これが読後の正直な感想です。
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さて内容ですが、個別トピックの中では、南北戦争がちょっと引っ掛かりました。
筆者の分析は南北戦争の背景に宗教的分断があると見ているようでして、このような記述があります。
「聖書は、古代世界の通念として奴隷の存在を容認しているため、奴隷制を擁護する人々に格好の口実を与えたが、同時に神の前では万人が平等であるとを告げている。アメリカのキリスト教は、かくして聖書解釈を巡る対立でも深く分断されることになった。因みに、聖書に限らず古代の奴隷は戦争や債務によるものが多く、肌の色とは無関係である」(位置NO.1366)
またリンカーンの演説にも、宗教的分断を危惧するものを引用しています。
「両者とも戦争が現在のように拡大し継続するとは予期しませんでした。この戦いの終結とともに、あるいはそれ以前に、この戦いの原因となったものが消滅しようとは、両者とも予測していませんでした。各々もっと容易な勝利を予期していたのでありまして、またこれほど重大なまた驚くべき結果が生じようとは思っていませんでした。両者とも同じ聖書を読み、同じ神に祈り、そして各々的に打ち勝つため、神の助力を求めています。」(位置NO.1328)
しかし、私の見立ては、南北戦争とはむしろ金とそれにまつわる信条による戦争、という理解です。
奴隷を使った煙草・綿花プランテーションを営む南部は産業革命を終えた英国と自由な通商を行いたい。商品作物の輸出です。なんなれば保護主義的な北部からはいっそ独立したい。他方、商業中心の北部は、産業革命途上の国内産業を保護しないと安価な英国製品に太刀打ちできないので英国とは距離を置きたい。また税収の観点から南部に独立されては困る、というものです。この立場の違いが戦争を引き起こしたというのが私の習った事であります。
もちろん南北戦争に奴隷制などの宗教観の違いはあるのでしょうが、こと南北戦争については経済的状況の差異が原因であり、こうした差異を巡っては宗教的倫理は何の役にも立たなかったかのように見えます。
また本書には多くのキリスト教宗派の発生と歴史的背景等が詳述されています。これは私に宗教の不完全性、宗教は人を救わないという印象を与えました。
ニューイングランドに入植したピューリタンの他宗派への不寛容(位置No.404)。入力当初からの眼目である信教の自由の一方でその後長い間残ったというカトリック差別(No.816)、ユニテリアンの誕生、エルサレムの舞台をアメリカに置き替えて発生したモルモン教、その他、エホバの証人、クエーカー教徒、シェイカー等々。メソジスト系から派生した黒人教会も。
こうした諸宗派の発生は何を意味するのでしょうか。そこに暗示されるのは、各々が自分が一番正しいと思っており(だから宗派をやっているんでしょう)、そして徒党を組むということは相応に排他的であることが推測されます。
もちろん特定の宗派を選ぶからこそ救われる、信じる故の選民思想という論理はあると思います。では、選ばない人・他宗派・他宗教の人は全員地獄に落ちるのか?すべて意味のない存在か? と問われれば多様な価値観を認める現代社会では否、となるのだと思うのです。現代社会の価値観のトレンドは、あいだみつを的「みんな違って、みんないい」なのだと思います。
ここに同じ価値観のものが集う宗派の価値観と、他人の価値観を尊重する・受容するという社会的価値観の間に大きな相克があるように感じました。ひいてはコンベンショナルな宗教の限界を見たような気がしました。
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改めてですが、本書は極めてが学究色のつよい米国史書だと思います。
日本人一般にはあまり馴染みのない宗教的背景をもとに米国史を紐解くという試みは面白いと思いました。また、米国の始まりが英国王のカトリック政策への反発である点等、米国社会の伝統に「権力に対する疑念がはじめから組み込まれている」(位置No.1904)と論じ、知識人を疑う反知性主義や陰謀論が伝統として脈々と生きているという主張は興味深く読みました。また私が上に書いたような、青臭い議論のネタにもなる好書であると思います。
米国好き、歴史好き、キリスト教に興味の有る方などにはお勧めできる作品です。 -
Posted by ブクログ
通販生活の表紙に「私はあなたの意見には反対だけど、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」というヴォルテールの言葉が掲げられていた。確かに、美しい言葉かもしれないけど、この通りにするのは、かなり無理をして、頑張らないといけない感じする。
この本によると、中世の「寛容」は、大きな悪が実現しないように小さな悪をそのままにしておくという、かなり消極的な、相対的な考え方だったというのです。金貸しも、娼婦も、それ自体は悪には違いないけど、それが無くなったら、社会全体はもっと悪くなるので、まぁ、放っておくか。そんな考え方だと。
なるほど。
この現実主義が、カトリック教会をさまざまな極論から守り、大いなる中庸を維持させてきたんだろうと思う。
それに比べて、上記の近代啓蒙主義の寛容論は、多様性を守ることを「絶対視」するような「非」寛容が見え隠れする。人間はそうあるべき。啓かれた近代人は、そういう考え方をするべき。そんな生堅な人間観が見えてくる。
ここ数日のオリンピック組織委員会の森会長の「女性蔑視発言」を巡るゴタゴタも、「多様性」を「絶対善」として、それが否定されると、その相手を全否定するような潔癖感が現れていて、ちょっと危ない感じがする。
そんな時代に、この本は、もっと現実的な「寛容論」を提示してくれる。悪は悪なんだけど、そんなに大きな悪ではないので、とりあえずは放っておくか的な(現教皇の同性婚に対する「寛容」も、この線にあるのではないだろうか)。
またまた、今年のベスト3候補の1冊。 -
Posted by ブクログ
アメリカは言わずと知れた超大国で、芸術も音楽もスポーツも優れたものがいくらもあります。
ノーベル賞の受賞数だって300以上あり、2位のイギリスの3倍と圧倒しています。
それなのに、大統領選となると、稀に頭がちょっとアレで思慮に欠ける人を選んでしまうのは何故だろうと、これは長年の素朴な疑問でした。
言うまでもなく、直近ではトランプさんですが、少し遡ってブッシュさん(特にジュニア)、かなり遡ってアイゼンハワーさんも結構なアレだったと物の本で読んだことがあります。
中でもトランプさんなんて、我が邦のどこの村にも1人はいる、尊大で金持ちの保守オヤジと大差ないですもんね。
個人的には、こういうタイプの人は愉快で気を遣わなくて済むので好きですが、国のトップとしては果たしていかがなものかと…。
で、私の長年の疑問に答えてくれそうな本が、読みやすい新書で書店に並んでいたので購入した次第。
森本あんりさんなら信頼できますしね。
結論から言うと、トランプさんみたいな人が大統領に選ばれるのは、ある種の宿命だということ。
日本では、一代で成功した成り上がり者やにわか成金には、どこか冷ややかな視線が注がれますが、アメリカでは「アメリカンドリームの体現者」として尊敬されます。
トランプさんもその価値観で評価されています。
では、その背景に何があるのかというと、キリスト教がアメリカに土着する中で生まれた「富と成功」の福音があるというのです。
三段論法で言うと、①神は、従う者には恵みを与え、背く者には罰を与える②ところで、自分は成功し、恵まれている③だから神は自分を是認している。自分は正しいのだ。―というわけです。
何だか無茶苦茶な論法ですが、アメリカでは自然と受け入れられているようです。
さらに、森本先生お得意の「反知性主義」がアメリカ社会に広く浸透していることも大きい。
反知性主義とは、知性そのものを蔑視する態度ではありません。
知性と権力の結びつきが固定化することへの反発です。
つまり有名大学を卒業したエリートだけが重用される社会に敵愾心を持っているのですね。
有り体に言えば、「エスタブリッシュメントはいけ好かねぇ」というわけです。
その背景には、ハーバード大卒の牧師が幅を利かせていた時代に、ろくに学歴もない巡回説教師が各地で説教し、大衆の支持を集めたことがあります。
説教師によっては圧倒的なパフォーマンスで大衆を熱狂させたそうで、その様は今の大統領選の熱狂ぶりにも通じるものだと、森本先生は分析しています。
トランプさんみたいな人が支持される素地が、アメリカには十分にあるわけですね。
さて、トランプさんの率いるアメリカと同盟国である我が邦の政権の担い手は、安倍さんをはじめ大半が2世、3世のエスタブリッシュメントです。
そんなことも頭の片隅に置きながら、アメリカとの付き合い方を考えていくといいかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルから、作者の名前の印象からは、一体なんの本なのか分かりにくいだろう。アメリカにおけるピューリタン、キリスト教におけるリバイバル(信仰復興)の歴史。学歴がなくとも話術があれば牧師や説教師となることができ、その人望によって宗教を利用したビジネスを成功させるエピソード満載。教会という必要とされたコミュニティの場の存在。アメリカにおける大学の序列。
著者はICUの学長ではあるが、決してキリスト教を礼賛する目的ではなく、史実をユーモアを交えた語り口にインテレクチュアルを感じる。ヨーロッパとは異なるアメリカでのキリスト教への対峙の仕方を知ることがこれほど興味深いとは。
映画『ペーパームーン』の例が紹介されていて、未亡人の家を訪問して亡きご主人からの依頼だと夫人の名前を金文字でいれた聖書を売る詐欺の話である。これも当時のアメリカにおけるキリスト教の浸透ならではか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ不寛容論: アメリカが生んだ「共存」の哲学
様々な主張を持つ移民の国、アメリカが生んだ寛容という政治姿勢。寛容を生涯実践しつづけたロジャーウィリアムズという人の生き方を通して宗教史を交えながら寛容という考え方を説明しています。
寛容のパラドックス(寛容を強制した時点で不寛容となってしまう)という考え方からもわかるように、寛容を実践するのは難しい。
SNSで蛸壺化している現代にこそ必要な考えかたかと思いますが、蛸壺化している人たちに自分とは異なる価値観を持った人たちの存在自体を認識してもらうことからはじめなくてはならないという気の遠くなるようなところから始めなくては寛容にたどり着けない難しさを感じつつ、まず自分から寛容であるトレーニングを始めなくてはならないと感じた竹蔵でした。
竹蔵