坂井豊貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大学の先生が、大人のために、個人主義とかGDPとか多数決とか公正や信頼などについて解説してくれる本。
多数決は何かを決めるときに必ずしもベストな手段ではないとか、なるほど。
利己主義は昔からあるけれど、個人主義は比較的新しいもので、国によって発生過程が異なり、「フランス革命に反対する勢力が、社会を解体する良くないものだと否定する文脈から登場し、19世紀半ば以降の英国では、個人の自由な経済活動が『小さな政府』とセットで強調されるようになり、哲学と文学が盛んだったドイツでは多様な個性を重んじる個人主義が重んじられ、アメリカでは他人の力を借りず一人でやりとげる『セルフ・メイド・マン』の概念と結び -
Posted by ブクログ
現代社会の抱える課題について、経済学・歴史学・政治学・社会学の視点から考えている作品です。
経済成長の基準とされる「GDP」について、その数値が示すものの意味と、GDP値を上昇させることの意味。
また、日本において根深く残る「勤労」感(働かざる者食うべからず、として貧困層をかれらの努力不足と断じる姿勢など)がどのように醸成されてきたのか。
多数決で物事を決定してゆく民主主義が抱えているシステム的な「課題」や、また「社会福祉」として行われる弱者救済が「人びとのニーズ」に合致しなければならないことなど、「これから先の社会」を考える前提としての「現代の社会」について、どのような仕組みで動いているの -
Posted by ブクログ
大学教授の著者が選挙などにおける決め方の制度設計を近年の選挙結果などを用いて数理モデルなどを使い解説した一冊。
現行の選挙制度である多数決の方式が本書を読んで必ずしも民意を反映していないことや代替案として提案されているとボルダルールやマジョリティー・ジャッジメントや中位選択肢などの決め方の正当性や問題点などを事例を用いて解説されており大変勉強になりました。
また、裁判員制度における判決の方法の部分は大変勉強になり印象に残りました。
特に本書のなかでも多数決が集団の分裂を引き起こすことやそのために明暗の差を縮めることや運任せの要素を取り入れて少数派の不公平感を緩和することの部分は日常生活でも -
Posted by ブクログ
前々から気になっていた井出英策。今年一発目の本として「日本財政 転換の指針」を開き、ちょうど就任式を迎えたトランプ大統領の移民を排斥しようとする政策がなぜ得票に繋がるのか?の不思議に始めて明快な説明を受けたような気がして、講演会も聴きに行き、そこで民進党の前原誠司のブレーンとして研究だけじゃなく現実にコミットする!という宣言を聴き、著作も辿りながら、「財政」という自分にとっての新しいキーワードを手繰ってきた2017年は「大人のための社会科」を読んでの締めくくりとなりました。たぶん彼の案による「all for all」にも強いメッセージを感じ期待もしていたのですが、呆気なくテイクオフ出来ず瓦解崩
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Posted by ブクログ
経済学について、このレベルのことすらよく理解していなかったのでちょうど良かった。書いてあることは平易に説明してあるけれど、そもそもそんなに難しい話はしてないと思うし、特にラスト二章の公共財とか再分配とかは、概念の準備、それすらもまだ足りないように感じられた。
経済をろくに学ぼうとしてこなかった自分にはちょうど良かったのだけれど、少しでもかじってみようとしたことがある人にとっては読む価値はないかもしれない。
自分にとっては、知らないことを知れたとともに、キーワードをいくつか拾えたのが良かった。マーケットデザインとか、法哲学とか。
171002 -
Posted by ブクログ
全体的に新しい気づきを与えてくれました。記憶に残る、また読み直して確認したい項目を目次より記載。
・民意は選挙結果からはわからない
・「政治家を選ぶこと」は「政策を選ぶこと」ではない
・「票の割れ」が起こると多数決はまともに機能しない
・「決め方」しだいで結果が変わる
・政治は「決め方」に翻弄されている
・ボルダルールは満場一致に近い決め方である
・「多数決サイクル」があると、議場は議長の思い通りになる
・ボルダルールではリンカーンは敗北する
・修正提案の順番で結果が変わる
・ペア敗者を絶対選ばない決め方を考える
・ベストな配点を考える-スコアリングルール
・出されたメニューによって行動が変 -
Posted by ブクログ
★長い研究の歴史があるんだな★選挙で過半数を取れば独裁してもいいのが民主主義だと言っていた人がいた。ただそれは、正しい選び方での過半数という条件付きだということがこの本を読むとよく分かる。間違った選び方での過半数は民意を必ずしも示していない。だから少数意見の尊重という考え方も生まれるのだろう。
多数決は1位しか表明できないので情報が少なく、昼食の店選びのようなどうでもいいことを選ぶのに向いているという。1位3点、2位2点のようなボルダルールの方がみんなの意見を反映する。みんなが1位とするまでの距離の違いでほかの決め方と意見の反映度合いを比べるというのがなるほど経済学なんだろう。倫理との兼ね合 -
Posted by ブクログ
社会選択理論の専門家が、単純な多数決にかわる「決め方」を解説する。
・「政治家を選ぶこと」は、「政策を選ぶこと」ではない
→有権者は個々の政策をすべて反映できる政治家を選べない
・選択肢が3つ以上になると、「票割れ」が起きて多数決が機能しなくなる
・「決め方」で結果が違ってくるのだから、「決め方」決定的に重要だ
・「ボルダルール」(1位に3点、2位に2点…といった投票方式)では、「広く支持される人」が選ばれる
・多数決は「どうでもいいこと」を決めるのに向いている
・「ランダム独裁制」(じゃんけんで買ったやつの言うことを皆がきく)は悪くない決め方だ。「誰にとっても正直に自分の意志を表明するのが -
Posted by ブクログ
多数決=民主主義という考え方をいろんな角度から検証し、疑問を投げ掛けている。統計学の観点と共に途中で哲学や思想が入り込んできて、難解で理解が追い付かないところもある。
最初と最後には分かりやすい例が挙げられている。単純な多数決が、対立候補の内容によって「多数の」民意を反映させなくなってしまう例と、「多数決で選ばれた公共」が一部の利益にしか供与しない失敗をおかしてしまう、という例。
最終的に本書が言いたいのは後者の例だ。多数決のプロセスは様々で、万能ではないことは良く理解できる。
本書の趣旨とはちょっとズレる形でルワンダの虐殺に関する背景が少し語られている。ここが逆にかなりのインパクトを感 -
Posted by ブクログ
安田洋祐氏や坂井豊貴氏ら経済学者による執筆であり、豪華なメンバーだなと期待して読んだが肩透かし。一編一編が浅くて物足りない。しかし、残念だなと思うと、後半、会計とESGを開設する上野雄史氏あたりから盛り返す。また、坂井豊貴氏の二編目「ダメな会議…」の話も面白い。差し引きで星三つという結論。
結局、知らない事を知りたくて読書をするので、知っていることが多かったり、内容が薄いとガッカリするという話。その点後半はよく理解できてない内容が多かったから満足感が得られた。
下記のような内容である。
上場企業の行動規範を定めたコーポレートガバナンスコード。2021年改訂①取締役会の機能発揮②企業の中核 -