【感想・ネタバレ】多数決を疑う 社会的選択理論とは何かのレビュー

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Posted by ブクログ 2022年10月14日

ルソーによる『人間不平等起源論』。主に社会不平等が拡大するなかで人間同士が疎外していくプロセスを描いたもの。支配する者の中には高慢と虚栄が、支配されるものの中には卑屈と追従が生まれる。しかし、結局は、富者さえも、欲望の奴隷。

ー 人間は、欲望の奴隷。
私も10代だった頃、よくその事を考えた。しかし...続きを読む、欲望に程良く従い、飼い慣らした先に、遺伝子との共創があり、種の連続性があるのだと。これは、個人の話だ。関係性において、この奴隷状態をこれを克服するために『社会契約論』がある。

人民主権。それを運営するのが一般意志。共通化、平等性を志向する傾向をもつ、民衆の代弁、総括。一般意志は、どのように導かれるべきか。ここまで来ると成田悠輔のデータ民主主義も伏線として、踏まえておきたくなる。いや、社会的選択理論の方が基礎と呼ぶべきか。

そこで、民主主義的投票、多数決の是非。投票の無い民主制はない。意志の集約ルールにより結果が変わる。集約ルールは、民意を反映できているのか。決選投票付き多数決、繰り返し最下位消去ルール、コンドルセ・ヤングの最尤法、ボルダルールなど、多数の運用方法があるが、性能の良い方法とは。また、多数決をめぐる最大の倫理的課題は、なぜ少数派が多数派の意見に従わねばならないか。

これは、面白いなー。勉強になった。

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Posted by ブクログ 2022年08月21日

タイトルを見て手に取った人は多少なりとも多数決という仕組みが不完全であることには気づいていると思うが,本書は多数決が不完全であることからスタートして,では完全な投票システムとはどのようなものかを数学の知識がない人にもわかるように解説してくれている。
後半多少難解な部分もあるけれど,読み飛ばしたとして...続きを読むも十分ためになる内容。
民主主義を支える投票というシステムが、現実には全然民意を反映できない仕組みになっていることを啓発する一冊。
われわれ日本人が幼少の頃より平等な決定方法と刷り込まれてきた多数決があまりにおおきな欠陥を抱えているということはなかなか意識されないところ。この本のような内容を、簡略でもいいから学校でぜひ教えるべきだと思う。
民主主義国家を名乗る上で絶対に国民全員が知っておくべき内容だろう。

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Posted by ブクログ 2022年04月20日

多数決で、と聞いて全く疑問も意見も持たなかった過去を反省。
ルソーの社会契約論を読んでみたくなる一冊。

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Posted by ブクログ 2021年09月04日

単純な多数決には色々と問題がある。選挙で票が割れた結果、必ずしも多数派とは言えない候補が当選したりということもある。それを解決するための、ボルダルールやコンドルセルールの解説から入り、そもそもなぜ多数決の結果に従わなければならないか、憲法や代表民主制についてなど、民主主義の本質論についての議論まで、...続きを読む少ないページ数にもりだくさんな内容になっている。
今年読んだ本でいちばん面白かったかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年05月02日

多数決の弱点についての議論にとても関心をもった。ボルダルール、コンドルセのパラドクスなど、この問題についての基本的概念を学べた。

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Posted by ブクログ 2021年02月13日

(3章)少数派が多数決の結果に従う正当性の根拠とその議論の前提条件、抑えときたい。社会的分断と少数派抑圧を防ぐ策も。(4章)64%以上の賛成で多数決するとペア勝者のサイクルが生じないと数理的に示されているらしい。不思議。(5章)50年前の計画道路の実施を例に、行政を有権者が制御しにくい現状。ルソーと...続きを読むにかくすごい。

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Posted by ブクログ 2020年04月02日

選挙の基本となる民主主義についての本。

多数決は民主主義の象徴で、万能と思われがちだが、場合によっては正しく民意が反映されないこともある。ボルダルールやコンドルセ・ヤングの最尤法が有力だが、完璧なシステムではない。手法によって当選者が変わってくるため、慎重に議論すべき学問である。

名著の呼び名が...続きを読む高いだけに前から気になっていた。政治学を学ぶ上で欠かせない一冊。民主主義が万能ではないと言われる要因は、多数決がそもそも正しくない帰結を導きうるからかもしれない。今一度「多数決による意思決定」が真の意味で「民主的」なのか問いただされるべきである。

専門用語が多く、解読にも時間がかかった。既習した分野といえどもまだまだアマチュアであるから基礎的な知識を備えたうえで読むべきだった。

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Posted by ブクログ 2019年12月08日

読んだ後、値段が安すぎると思ったほどの、良書。

こういった書籍を読む人が多くなると、疑問を持つことの大切さや有難味が、光溢れ出る世の中になると、そう感じる。

民主主義は人間が持つ、「現時点での最良(最高ではない)の制度」であることは理解できる。

そう思わせているのが、「多数決」という、公平感ぽ...続きを読むい、納得感あるっぽい、決め方。世界中で採用されている。

本書は、悪意なく、その「多数決」に疑問符を投げかけるものだった。

一人一票。

まさにそのルールにこそ、悪魔が潜んでいた。
まだまだ人って、知らず知らずの間に、正しいと思い込んでいるものがあるんだ、と思い知らされる。

民主主義のアップデート。

ずっと次は何がくるんだろうか?、と思う事はあっても、具体的なものは自分の日常生活では、想像や感じることすら出来なかった。


『 私だけにとってよいと思うものを選ぶべきではない。自分自身の意見から抜け出たうえで何が理性と真理に適合するか選ばなければならない。 』
byコンドルセ

この中の、
「自分自身の意見から抜け出たうえで」
という決め方がなんなのか?

一人一票ではないんだ、という様々な多数決の方法やあり方を、模索し続けて変わった後の民主主義制度が、次代の世界の潮流になり得るのだろう、と。

そして、今は常識と思っている最大のルール「多数決」の方法そのものに疑問を投げかけ、メスを入れる。

そんな「多数決のあり方を変えた先」に、民主主義が一歩進み変化し、大きくは政治を変えていくものになるのだと、新たな未来を感じました。

本当に、気づき多いイイ本でした!

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Posted by ブクログ 2019年11月19日

選挙で使われる代表的な方法は投票による多数決だ。しかし集団の意志の決め方は多数決だけではない。
多数決は昔からよく使われる割に、戦略性に弱く正直に投票すると不利になってしまうことさえある数学的に好ましくない性質を持っている。
今行われている選挙でも、多数決以外のやり方が行われることもある。比例代表制...続きを読むや最高裁判所裁判官の信任投票だ。多数決だけが受け入れられているわけではないことを思えば、現在研究の進んでいる好ましい方法の導入を阻む理由は何もない。

いまこそ意思決定の方法を見直すときだろう。

マジョリティジャッジメントに触れてくれるとよりよかった。

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Posted by ブクログ 2019年03月09日

数学音痴のわたしにもわかりやすい。何かを決める時には、安易に多数で可決とする風潮には違和感があったので、よりよいやり方がないのかと思っていたところだったので、目からウロコ。学級会でも多数決は最後の手段に過ぎないのに、最近の国会ではどうか。考えながら読めた。

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Posted by ブクログ 2019年01月16日

多数決が意見を集約する集約ルールの一つであること、多数決は欠陥(票割れに弱くペア敗者基準・ペア勝者規準も満たさない)がおおい。しかしラスト5章に至ってはなんと多数決すら採用されていない市政の例が紹介される。
ルソーの社会契約論を引用して人民・主権・一般意志の解説するページもおおい。

多数決に欠陥が...続きを読むあるのは分かったが、それ以前に民主主義が現代日本では機能していないと感じた一冊であった。

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Posted by ブクログ 2024年03月25日

「多数決」は民主的に物事を決める際に使用され、その結果は集団の総意とされる。
これは、今まで生きてきた中で幾度となく経験してきたことである。
だが、それは本当に民主的なのか?
今まで当たり前だと思っていたことの前提を考えるきっかけになる一冊です。

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Posted by ブクログ 2023年12月15日

学校のクラスの話し合いをしていると、最終的な決定は、結局、多数決になる。そんな多数決する生徒たちを見ていて疑問だったのが、子どもたちが意外と数票差とかであっても、多数派の意見になることに対して抵抗感がないことだった。
かといって、ではその問題点をどれくらい自分がきちんと説明できるのか、多数決に変わる...続きを読む代案を出せるのか、と聞かれると答えることが難しい。そんな問題意識がから手に取ってみた本だ。

てっきり、「多数決を疑う」とあるから、多数決に代わる、何か画期的な意思決定の方法を見せてくれるのだと勝手に思っていたのだが、違った。この本は、多数決の限界を理解しつつ、それでもなお、「よりマシな多数決」のやり方を模索する、その模索の仕方を教えてくれるというコンセプトのものだ。
著者が繰り返し言うのは、多数決で多数になったということと、その結果が正当なものであること、「正しい」判断であるということは、異なるということだ。単純に多数決の色々な方法を紹介するだけでなく、集団による意思決定において、理想的な判断とは何か、その決定は、何によって正当化されるのか、といった哲学的な問いにまで議論は及ぶ。
「ボルダルール」「コンドルセの最尤法」「中位投票者定理」など、いくつかの多数決のやり方が紹介されるが、それぞれの選択場面において、どの方法がより正当なのか、それを考えることの大切さを筆者述べる。そして最後には、「小平市の都道328号線問題」という実際の事例を通して、民主的な判断のあり方について、具体的な説明をしてくれる。

最近は、多様性やマイノリティに対する意識が高まってきたとはいえ、実際の世の中を見ていると、そうした意識から一見逆行しているかのように見える多数決という決定方法は、まだまだ当然視されている。そんな、数が多ければ正しい、といった単純な発想の多数決に、少しでも違和感を持ったことのある人には、ぜひ読んでもらいたい。

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Posted by ブクログ 2022年11月13日

副題にもある「社会的選択理論」というものを、本書で初めて知った。
人々の意思を集約するルール、方法を考える学問である由。

三つ以上の選択肢があるとき、多数決は必ずしも人々の意思を反映しない。
そこで、さまざまな方法が考えられ、いくつもの条件の下で強度が試されてきた。
有力な2つの選択肢に対し、第3...続きを読むの選択肢が表れて票が割れることで結果が変わってしまう。
このような不合理への頑健性を試す条件として「ペア勝者規準」「ペア弱者規準」などが考えられている。
ここだけでも、「ほほお」である。

スコアリング・ルール(選ぶ順位に応じ点数配分をして集計する)、ヤング・コンドルセの最尤法(複数選択肢からペアを作り、ペアごとに多数決を取ったデータから選択肢の選ばれた順序を求める)などが紹介される。
なるほど、方法も洗練されて行っているということか…と思う一方、ベースはボルダとか、コンドルセという18世紀の理論であることにも驚く。

20世紀には「中位ルール」というものが発見される。
これは段階的に並ぶ複数の選択肢に山形の順位づけができるとき、真ん中の選択肢を選ぶというものだそうで、票の割れにも、自らの意向を偽って投票して対立候補をつぶすような戦略的操作にも強いとのこと。
政策を評価する投票などでは効果はあるようだ。
自分などは、議員の選挙のイメージがつい出てしまうので、最初どういう活用ができるか、なかなかイメージがしづらかった。
が、たしかに有権者に熟議により論点を評価する観点にある程度の共通認識があれば、よい方法なのだということが経験的にも理解できる。
どちらかというと、職場での意思決定に活用できるのではないかという気がする。

最後の章ではメカニズムデザイン(集約の制度設計)の話が取り上げられていた。
公共財の使い方を自律・分権的に決められるよう、制度を作っていくという考え方のようだ。
ここではクラークデザインを取り上げていた。
近年研究が進んでいる分野だそうなので、また別の本で読む機会があればと思う。

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Posted by ブクログ 2022年09月10日

"民主制のもとで選挙が果たす重要性を考えれば、多数決を容易に採用するのは、思考停止というより、もはや文化的奇習の一種である。(p.6)"

 普段私たちが集団で何かを決めようとするとき、特に何も考えず「多数決」という方法をとるだろう。しかし、この「多数決」は手放しで信用できるもの...続きを読むなのだろうか? 実は、多数決は完全からはまったく程遠い、いや程遠いどころかむしろ多くの欠陥を抱えた信用のならないルールなのである。
 最も理想的な意志集約の形は、もちろん「満場一致」であろう。全員が同意しているのだから、一番平和な解決だ。だが、現実には至るところに意見の対立が存在する。そこで、多数の人間の意思をなんとかうまくひとつに集約するルール(=「意思集約ルール」)を考え出す必要に迫られる。
 多数決の長所は、仕組みが単純明快で理解しやすく、しかも集計が容易なところにあると思う。だが、そもそも多数決は必ずしも多数派の意見を実現するわけではない(!)。例えば、A, Bの2人が立候補している選挙を考えてみる。支持率はそれぞれ60%, 40%とすると、この2人に対して多数決を行えばAが勝つ。だが、ここに3人目の候補者Cが現れた。CはAと似た政策を掲げていたために、元々Aの支持者だったうち半分がCに流れてしまった。すると、支持率はA, B, Cで30%, 40%, 30%となって、多数決の結果Bが勝利することになった。こうして、多数派が支持しているはずのA(またはC)の政策が多数決で選ばれないという事態に陥る。(2000年に行われたアメリカ大統領選挙で同様の状況になったそうである。)つまり、多数決は、候補が3つ以上あるとき「票の割れ」に脆弱なのだ。また、多数決は有権者の判断のうち、「誰を一番に支持するか」という一部分しか表明できないという欠点もある。
 本書の副題にもある「社会的選択理論」とは、意思集約ルールが備えているべき性質を数学的に定式化する学問である。18世紀から様々な意思集約ルールが検討されてきたが、その一つが「ボルダルール」である。それは"例えば選択肢が三つだとしたら、1位には3点、2位には2点、3位には1点というように加点をして、その総和(ボルダ得点)で全体の順序をきめるやり方で(p.14)"、票割れの問題を解決している。本書では、他にもコンドルセ・ヤングの最尤法、決選投票付き多数決、繰り返し最下位消去ルールなどが紹介されている。
 そうなると、問題なのは、多数決より色々な点で優れた様々な意思集約ルールが提案されているにもかかわらず、社会でそれらがほとんど認知されていないということである。多数決で決まったことに、なぜ皆が従わなければならないか。それは、本来であれば多数決の意思集約ルールとしての妥当性からその正当性が保証されるはずだ。しかし実際には、多数決を用いることは多くの場合妥当とは言えない。このような民主主義の根幹に関わる事実は学校教育で教えてほしかったが、「多数決」という自分の固定観念に穴をあけてくれたその一点だけで、本書を読んだ価値があった。
 本書の後半では、民主主義に関するルソーの議論を参照しつつ、投票について考察を深めている。フランス革命の思想的土台を作ったルソーは、人民は一般意志に基づいた熟議的理性を働かせて投票しなければならず、その限りにおいて少数派が多数派の投票結果に従うのが正当になると述べた。ここで一般意志とは、"自己利益の追求に何が必要かをひとまず脇に置いて、自分を含む多様な人間がともに必要とするものは何かを探ろうとすること(p.76)"である。だが、これは現代の民主主義国家における実際の投票の姿とは異なるもののように僕には思える。それは、有権者たちは(少なくとも僕は)「公」の利益より「私」の利益を最大化してくれそうな候補者に投票しているからだ。そうであるならば、「少数派は多数派の投票になぜ従うべきか」という倫理的な問題は結局、依然として未解決のままなのだろう。一方で、ルソーの構想したような投票は実現がかなり困難そうだ。一般意志に従って投票する(あるいは、投票しようとする)集団があったとして、その中に一人、個人の利益のために投票する人がいれば、彼は僅かかもしれないが他の人より得をするはずだからだ(従って、ルソーの構想した投票を実現しようとするなら、「裏切り者」の得が得ではないような仕組みを作らなければならないだろう)。
 民主主義と切っても切れない「投票」というものが、かなり根本的なところで未完成であることがよく分かった。

1 多数決からの脱却
2 代替案を絞り込む
3 正しい判断は可能か
4 可能性の境界へ
5 民主的ルートの強化
読書案内

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Posted by ブクログ 2022年05月13日

まず多数決の限界を説き、ではそれに取って代われる集約ルールやメカニズムには何があるか?を単なる机上論に済ませず、現実的に考え抜いている書籍。
多数決って微妙じゃない?
投票制度って破綻してない?
とぼんやりとした自分の思考を、スッキリしてくれたように思う。

多数決は候補が1vs1の際にしか機能せず...続きを読む、それ以上となると「票の割れ」問題などが発生してしまう。ちなみに自分はボルダルールが一番分かりやすくて最適だと感じる。

本書は社会契約論についても簡潔に纏められており、ルソーもいつか読んでみたいといった気持ちになった。
ーー「自由なのは議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民は奴隷となり、無に帰してしまう」(ルソー/『社会契約論』)
小平市の都道328号線問題はまさにこれ。

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Posted by ブクログ 2022年04月15日

一般常識として疑うことのない多数決を、これでもかというほど論理的に否定してくる。
時に情熱的に語りかける文体に感嘆しつつ読んだ。
私のごく少ない読書経験からだが、これは名著ではないだろうか。

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Posted by ブクログ 2022年04月03日

多数決な民主的な決め方だという説がまかり通っているが、この本は書題のとおり多数決のあやしさを論破していく内容(だと思われる)。悲しいかな、論が難しくて私は途中で理解不能になってしまった。でも、こういう世間で当たり前となってしまっていることをつくものであり、多数決が「民主的なもの」としてはあやしいこと...続きを読むは明らか。
ルソーの提唱した一般意志の考え方とかもわかりやすく解説されていた。ちょっと利口になれた。論の組み立て方も筆致も落ち着いていて良書のにおいがプンプンする。自分には哲学とか思想に関する体系的な知識とか知識をもとに考える能力が欠けているんだよなー。こういう本をちゃんと理解できるようになりたいなー。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月11日

多数決制度だけでは民意を拾い上げたことにならない、多数決には欠陥がある。というのが大体の主な主張です。それに代わる意見集約の仕組みとして、ボルダルールとか、コンドルセルールなど、様々なやり方が提案されていました。
そして、そもそも多数派の意見になぜ従わなくてはならないか、というところはルソーの一般意...続きを読む志の話が出てきました。簡単に言うと一般意志に基づいて社会は運営されるべき、多くの人が支持する意見が一般意志とみなされるという論理から、多数決が正当化されています。この本でも主張されていましたが、多くの人とは誰か?が重要な気がしました。選挙で当選したから、自分たちの意見が民意なんだというのは乱暴で、一般意志にそっていくよう不断に確認する振る舞いが求められます。この辺りのルソーの話はもう少し勉強しないとな、と思いました。

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Posted by ブクログ 2021年02月28日

多数決は票割れに弱い。1位に1点、他は0点。
ボルダルールは、1位に3点、2位に2点、1位に1点をつける。票割れには強い。ダウダールルールは、1位に1点、2位に1/2,3位に1/3・・とする。これらはスコアリングルール。ボルダルール以外は、ペア敗者基準を満たさない。
持ち点を分散させる方法は、分散し...続きを読むたほうが不利=多数決と同じになる。
ボルダルールには、クローン問題がある。クローンを立候補させると、複数当選者がいる場合には操作が可能。
是認投票も同じ。ただしクローン問題を考えなくてよい場合は、是認投票はいい方法といえる。

ペアごとの多数決で勝つ選択肢をペア勝者という。ボルダルールはこれを満たせないことが、コンドルセの批判。
パリには、ボルダ通りとコンドルセ通りがある。

コンドルセの2者に分けて判断する方法では、サイクルのパラドックスが発生する可能性がある。その中で、正しい可能性が低いペアを棄却すれば、決められる=コンドルセの方法。最尤法を使う。

マルケヴィッチの反例によれば、多数決、ボルダルール、コンドルセ・ヤングの最尤法、決選投票付き多数決、繰り返し最下位消去ルール、のどれでもバラバラな結論になる。

ペア敗者基準とペア勝者基準は、票の割れ煮対する頑健性の基準。ペア勝者基準は、ペア勝者が一位になるべき、と考える。ペア敗者基準は、ペア敗者が1位にならなければよい、と考える。ペア敗者基準のほうが満たしやすい。ペア勝者基準は、厳しいので、ペア敗者が最下位にならなければよい、と弱める。
その結果、ボルダルールと、コンドルセヤングの最尤法が有力。実際には、最尤法は納得感を持ちにくい。

棄権のパラドックス=棄権したほうがそのことで自分に有利に働かせられること。コンドルセ・ヤングの最尤法は棄権防止性を持たない可能性がるが、ボルダルールは棄権防止性を持つ=棄権したら損になる。
サッカーの勝ち点は、スコアリングルールの一種。小選挙区制の国会議員などは、これのほうがよい。

陪審定理=陪審員の数が増えるほど、正しい結論に近づく。対数の法則の応用。扇動するものがいないという前提。平均してコイントスより正しい判断ができて、判断の独立性が高いことが前提。
ルソーの社会契約論にある、一般意志に従うこと。

多数派の横暴を防ぐには、憲法による抑制、複数の機関を通す、ハードルを過半数より高くする、ボルダルールを採用する。
代表制と直接民主制では、結論が違う結果になる場合がある=オルソロゴルスキーのパラドックス。

多数決の難点=新たな選択肢ができると票割れが起きて、別の選択肢が勝つ可能性がある。=単峰性が成り立たない場合。
中位ルール=真ん中の意見を選ぶルール。票割れは怒らない。単峰性がある場合は、正直は最善の策。棄権のパラドックスも生じない。

アローの不可能性定理=二項独立性を満たす集約ルールは存在しない。二項独立性と、満場一致性を満たすルールは独裁制のみである。

2大政党制では、政策が中位選択肢に向かわせる。

現行の憲法改正条項は、小選挙区制では硬性性が弱い。過半数の有権者が望めば、小選挙区制では2/3を確保できる。

現行の行政権の強さは、民主的ではない現状を現実化している。都道328号線問題。一般の人がおかしいとかんじても、現実には阻止できない。行政機関は国民に由来する正統性を持っているか。行政が権限を持つ利便性と相克する。
メカニズムデザイン=公共事業などの正しい執行のための仕組み、制度設計のこと。クラークメカニズムなど。
周波数オークションなどに応用。先進国で導入していないのは日本だけ。

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Posted by ブクログ 2021年01月30日

多数決の根拠と問題点を歴史的、数学的な立場から論述した本。
その上で、日本の行政における民意を反映し行政として意思決定を下すプロセスの問題点を述べている。
抽象的な書かれ方のところが多く難しかったので、もう少し症例に対する解説的なものが欲しくなった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月24日

多数決は万人のためのものである。陪審定理は正解率を高めていくため、自身の考えと陪審結果が異なる場合は、自身が間違えている。ルソーによると一般意志は、分割不能な集合体である人民の一般化された意志であるため、代表制とそぐわない。この時、人民の主権は立法を指す。共同体の個々の構成員は、法案が一般意志に適う...続きを読むかどうかを判断し、多数決においてそれは正しさを証明されるため、多数派に少数派が従う正当な根拠となる。多数決をする際には、個々の要素を整理し、論点を明示することで、より正当な多数決となる。

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Posted by ブクログ 2020年08月06日

坂井豊貴(1975年~)氏は、早大商学部卒、神戸大学経済学修士課程修了の経済学者。専門は社会的選択理論、マーケットデザイン、メカニズムデザイン。慶大経済学部教授。
本書は、「多数決ほど、その機能を疑われないまま社会で使われ、しかも結果が重大な影響を及ぼす仕組みは、他になかなかない。とりわけ、議員や首...続きを読む長など代表を選出する選挙で多数決を使うのは、乱暴というより無謀ではないだろうか」と言う著者が、異なる多数の意思を一つに集約する様々な方法を分析する「社会的選択理論」について、具体的な数字を示しながら、わかりやすく解説したものである。
「社会的選択」は、言うまでもなく、我々日本人にとっても、国会議員や地方の首長・議会議員などの選挙において行われているが、二大政党制下で行われ(どちらが選ばれるかで政策が大きく異なる)、世界で最も影響力がある米国大統領を選ぶ選挙で起こった事象の印象が非常に強い。本書の冒頭でも取り上げられている2000年の選挙では、民主党のゴアが有利と見られながら、途中で泡沫候補のネーダーが現れ、支持層の重なるゴアの票を喰ったために、共和党のブッシュが漁夫の利を得たといわれる(「票の割れ」の問題)。また、同選挙では、選挙人選挙の得票数は、ブッシュはゴアを下回っており、記憶に新しい2016年の選挙でも、選挙人選挙の得票数では、共和党のトランプが民主党のヒラリー・クリントンを下回っていた。そうした過去の疑問もあり、また、次期の米国大統領選挙がメディアでも頻繁に取り上げられるようになったこともあって、本書を手に取った。
そして、読み終えてみると、様々な社会的選択の方法について(多数決以外にいろいろあることは経験的にある程度知ってはいたが)、数理的な分析により、その強み・弱みがかなり明確であることがわかり、同時に、それにもかかわらず、実際には、多くの選挙において多数決が採用され続けていることへの強い疑問が湧いてきた。
(日本の)政治家は、選挙で勝つと例外なく、「国民の支持を得た」と言うが、本当にそうと言えるのか。また、我々の将来の強い関心事として(コロナ禍の影響で、安倍政権において実施される可能性は低くなったが)、憲法改正のプロセス(衆議院・参議院でそれぞれ2/3以上の賛成+国民投票で過半数の賛成)がこのままでいいのか。。。
我々は、著者の問題意識の通り、社会的選択の方法について、その重要性を含めてあまりに認識がなさ過ぎ、その結果、疑問も持たずに多数決が採用されていると言わざるを得ない。民主主義の価値を重んじればこそ、それを反映させる社会的選択の方法について、もっともっと真剣に考えるべきであろう。
(2020年8月了)

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Posted by ブクログ 2020年05月21日

物事を決める時によく使われる多数決だけど、実は多数の意見を反映するには別の集約ルールの方が適切と知り、目から鱗。
小選挙区制の選挙ならボルダルールで集約した方がよいのでは?と思った。

また、憲法改正の国民投票の可決ラインも、本書にある通り、過半数ではなく64%程度に引き上げれば良いのに、と思う。

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Posted by ブクログ 2020年04月04日

2020/03/16-2020/04/04
 多数決を疑うと言うタイトルのように、最初から多数決を否定してくるところはありますが、興味深い1冊です。
 以前読んだ本でこの学術分野の本が紹介されていました。民主主義は不可能だと書いてあると言うふうに紹介されていました。それにびっくりして、この分野の本を...続きを読む読もうと以前から思っていました。さらにコロナな騒ぎで、当時の私のTwitterのタイムラインで、政権を批判する人がめちゃくちゃ多かったので読むことにしました。著者曰く、民主主義は不可能だという紹介は間違っているとの事でした。
 選挙に行くと自分の無力感がわかると友人が言っていました。それは選挙制度に問題があるからではないかと、この本で思いました。今の選挙制度は、民意を正確に反映しないので、選挙のたびにやる気が下がっていく感じなのはこのせいかなと思いました。多数決以外の選挙制度が必要だと思いました。しかし制度が変わる気配は無いので、政治家とつながるしかないのかなと考えます。
 またこの本では、有権者に求められる態度と言うのも紹介されます。それはみんなのことを考えるということです。人を選ぶ場合、他の人としっかり議論できてしっかり考える人を選ぶのが大事と書いてありました。それをやっている人がどのくらいいるのかなと思いました。
 後半になるとちょっと難しくなってきます。あと、政治家になるのは立候補する勇気とお金がある人だけなので選択肢がないと言うのも問題だと思っていますが、その件の記載はありませんでした。

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Posted by ブクログ 2020年03月15日

 著者はマーケットデザインを専門とする気鋭の若手経済学者。最近、不動産オークションを業とする会社のチーフエコノミストに就任したとのニュースに接し、興味を持ち購入(ただこの不動産オークション会社は前身会社がリーマンショック前に実質的に行き詰まっている。その時は単なる普通の民間オークションを不動産に適用...続きを読むしただけ、という感じだった。今回の著者の就任でビジネスモデルは大きく変わるのだろうか)。
 
 現在の民主主義で自明視されている「多数決」。民主主義の誤作動が指摘されることが多い昨今、著者は民主主義ではなくこの多数決に問題ありとする。民主主義の萌芽となったフランス革命前夜、ボルダとコンドルセが提示した民意集約ルールの数理的分析によれば、単純な多数決は数ある選択肢の一つでしかない。集約のどの側面を重視するかで最適解が変わってくるのだ。ペア敗者を選んでしまうという致命的欠点のある多数決を闇雲に選択するのではなく、各種集約ルールのプロコンを比較考量し重視すべき概念を予め確定させておいて、それに沿った集約ルールを採用しようというのが著者の主張。間接民主制と多数決の併用は、ルソーの「社会契約論」が主張する「直接民主制の間接民主制に対する優越」の原則に反しており、現行ルールのリデザインが必要だと説く。

 面白いのは、投票者がある政策について「単峰的(最も好ましい政策から離れるにつれ低い評価を付与)」な選好性を持ち、なおかつ「中位ルール(全ての峰の中で真ん中に位置する峰を選択)」を採用する場合、票割れや操作、棄権による影響を受けない意志集約が可能だという点。ここにコンドルセのいう「熟議」には論点の明確化により人々の選好性を単峰化する作用があるという研究結果を考え合わせれば、適切にデザインがなされればとの留保つきながら、ルソーの「一般意志」の実現は可能なのかもしれない。

 終章で触れられる有名な小平市の事例が示すとおり、行政府という執行機関が介在する現行レジームにおいては、主権者たる国民の委託は立法府に対してなされるところ、実質的に無権限であるはずの行政府が裁量を有している。行政サービスの範囲が格段に広がったため、個々の住民が直接の利害関係をもたないサービスが増えた現代社会では、「自分たちのことは自分で決める」という民主制の原則がどこまで貫徹できるかは個人的には疑問に思う。サービスの便益の度合いを金銭に換算して行政に移転し、採算が合う事案のみ執行するという「クラークメカニズム」は面白いとは思うものの、これはストイック過ぎて現実的には行政から完全に裁量を奪うに等しいのでは?と思った。とはいえ著者の問題提起には共感できる。他の著作をいくつか読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2022年10月08日

一見したところでは単純なような多数決みたいな集団での意思決定プロセスに、票の割れに対する脆弱性や、サイクルの発生といった問題があることを教えてくれると。平易な語り口だが、意外と消化するのが難しい

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Posted by ブクログ 2022年07月06日

多数決は現代において物事を決めるには最良のシステムだというのは常識化しているが、それに疑問符を投げかけている本。
今の日本を見ていると、現行の選挙システムではたして民意を反映させているのだろうか、と疑問が残る。一人一票ではなく、第一希望3点、第二希望に2点、第3希望に1点としたボルダルールは良い投票...続きを読むシステムかもしれない。

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Posted by ブクログ 2020年03月31日

色んな集約ルールがあるけど、結局のところ存在するのは民意というより各集約ルールが与えた結果に過ぎないっていう話。

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Posted by ブクログ 2019年03月26日

多数決が必ずしも民意を反映しているとは限らないという話。米国大統領選挙ではブッシュとゴアの一騎打ちでゴアが優勢と言われていたのが、無所属でもう一人立候補したためにゴアの票が取られてしまい、ゴアが落選した。ポイント制という案もあるが、いろんなパターンがあり、これが絶対、というものはない。

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