2008年暮れから2009年初めはこの "ONE OUTS" のコミックス収集に費やした。
何しろ入手しにくかった。
今現在はどうかわからないが、当時、書店で問い合わせてもらったところ版元にも在庫なしと言われ、コミックス専門の大型書店でさえも全巻揃っていなかったため、書店で見つけるたびに、とびとびの巻でもとりあえず買うというのを繰り返して、ようやく全20巻まで入手した。
ネットオークションでは(当時)中古にもかかわらず定価かそれ以上の価格で取引されていた。
この "ONE OUTS"、1998年から2006年まで連載(20巻収録分は2008年末頃)されていたもので、今になって品薄になった原因はわからないが、おそらくは2008年秋〜年末にかけて放送されたアニメの影響なのではないかと思う。
かく言う私もアニメを見て衝撃を受け、コミックスを読んだクチだ。
さて、本題。"ONE OUTS"は野球マンガだ。
野球マンガといっても、所謂熱血ものではない。作者いわく「あらゆる野球漫画のアンチテーゼ」「野球版アカギ」なのだそうだ。
常にひとを食ったような態度の主人公渡久地は、ひいき目に見ても万人に好かれるヒーローではない。
だが、そんなアンチヒーロー渡久地がプロ野球の”常識”をかきまわす様は、実に実に痛快だ。
前半のリカオンズオーナーとのワンナウツ契約、後半のガラリアンズオーナー(どこかの誰かに酷似しすぎていて大丈夫かと心配になった)との駆け引き、そしてペナントレースの行方。
主人公が勝つとわかっていてもドキドキワクワクする少年マンガ同様、渡久地が出し抜くとわかっていても、その斬新すぎる発想と考え抜かれた緻密なプロットで、ドキドキし、ハラハラし、そして快哉を叫ぶ。
そして、渡久地のまわりの選手たち、チームメイトだけでなくリーグの他チームの面々も渡久地に振り回されながらも、彼ら自身が変わっていくさまも非常に好もしい。
これまでいくつか野球マンガを読んできたが、どれも心が熱くなるような青春ドラマで、とくに高校野球マンガには何度涙したことかしれない。
この"ONE OUTS"は、そんな青春・涙なんて要素はない。あるのは、駆け引き、賭け、勝負。
アウトローな主人公に、アンチテーゼ、などと正統派でないイメージであるにもかかわらず、本質的にはどの正統派青春マンガよりもまっすぐで誠実なのではないかとも思える。
選手ひとりひとりの野球に対する何とも真摯な思いに心打たれるのは私だけではないはずだ。
ところで最終巻で、オールスター戦で渡久地やってのけたことがつい最近プロ野球でも似たようなことがあって思わずニヤリ。まぁもちろん渡久地のように狙ってやったんじゃないだろうが。
さらに蛇足。私は河中投手が好きだ。あの完璧主義とツンデレ的面構え。
ちなみに同じような理由で、ルックスも似ているダイヤのAの降谷も好きだ。