冷泉彰彦のレビュー一覧
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内容ですが、
はじめに
アメリカは「正義」や「理想」を捨てたのか
非アメリカ化するアメリカ
揺らぐ「正義」の概念
「アメリカらしさ」を映す鏡としてのハリウッド映画
第1章 動揺を始めたアメリカの「正義」
第2章 戦時を通じた「正義」の変容
第3章 ハリウッドの描き出す孤独
第4章 ポスト・ダークナイト・シンドローム
第5章 ハリウッドにおける「日本」、その変化
第6章 ミレニアル世代はアメリカを変えていく
おわりに
ということです。
著者の見立てですが、トランプ時代に突入する中で、アメリカの現在、過去、未来を俯瞰するのは難しくなった。
対立軸の変容というストーリー、アメリカが劣化しているという判断なども確かであろう。
だが、近未来のアメリカを「予言」するのは実に難しい。
しかしながら、著者は、過去17年間にわたって、ハリウッドに親しみつつ、ハリウッドを俯瞰的に見る作業を着実に行ってきたのである。
その中から言えることは、トランプが勝ったのではなく、ヒラリー的なるものの敗北をもたらしたアメリカの現在、特にその絶対数が増加するミレニアル世代の動向を注視していくことの重要性を著者は示唆している。
米国に住み、ずっとハリウッド映画を見、分析してきた著者の手法には説得力がある。
いずれにしても、時代・時代に発せられる様々な「情報」を精緻に読み解き、一定の仮説を立てる作業、恐れ入りました(笑)。 -
Posted by ブクログ
堤氏の貧困大陸アメリカシリーズへの反論ということで、これは読まねばと。でも帯と序章が過剰に反旗を翻しているだけで、それほど反論!!という印象にはならなかった。「機会の均等」が「希望」につながるから現在(2010年発売だから「当時」かな)のアメリカ国民に閉塞感はないという指摘はごもっともなのかもしれないけれど。
私はブッシュ前大統領の落ちこぼれゼロ計画(統一テストの結果で教師の勤務評定を行ったり生徒名簿を連邦政府に提出して軍のリクルーターが校内を堂々と闊歩したり)にショックを受けたんだけど、それは「こうした問題はともかく」で切り捨て。ともかく…ってレベルかな…??
あとマカロニ&チーズも、堤氏はこれでは栄養をとれないという意味で指摘していたと思うんだけど、ソウルフードだからOKと返すのはちょっと…。みんな大好きでも栄養価に問題があるなら見直すのが本来の給食では?
オバマ大統領の政治事情など勉強になったので読んで良かったけど、敗者は切り捨て感もちょっと感じた。
実際のアメリカは貧困大国ではない!日本が自画像を投影してるだけ!と指摘するためにいま現在のアメリカ貧困層には触れてない印象が拭えない…。 -
Posted by ブクログ
近年は「こころの時代」ともいわれるほど、「生きにくい」社会だと思う。高度経済成長からグローバル化社会に突入し、日本経済自体も成長路線から停滞路線へ、個々の価値観も多様化している。本著ではこの価値観の多様化が、会話のテンプレートを崩壊させ、コミュニケーション不全が安易に「キレる」というコンクリフトを起こしている。こうした状況が本著でいう「上から目線」を作っている。
この「上から目線」化は日本語がもつ「上下構造」から生み出されるというのも驚きだった。関係性が言語からもつ特質というのは新たな発見ではあるが、同時にこうした新たな知見を例えば国語教育の中に位置付けるなどの社会教育的なところにつねげるべきだろう。個人的には会話だけでなく、メールやSNSなどのIT化の促進によって、言語の向こう側にある情報リテラシーやコミュニケーションの取り方、背景にある歴史・文化・思想・宗教などの幅広い知識をもつことが今後の社会では重要になってくると考える。コミュニケーションというもののもつ必然性、特殊性を改めて考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
「中東にいると誰でも、自動車爆弾からお天気まで何もかもをワシントンに責任転嫁する傾向があるが、アメリカは中東の苦難に対して当初は無関係だったのだ」
という説明から始まるこの本、私など一生かかっても理解できないだろうと思っていた複雑な中東情勢をかなり分かりやすく解説してくれていた。
まず、イスラム原理主義をアーミッシュと非常に似ている、とするところが目からウロコだった。
古代に書かれたテキストを文字通りに受け止め、全く柔軟性を加えずに解釈し、現代文明を拒絶する、という点で両者は酷似している、と言う。
確かに!
では、イスラム原理主義が広範に拡散している一方で、どうしてアーミッシュは世界に何の影響も与えていないのだろうか?という問いに答えるには、サウジアラビア、石油、メッカとメディナ、が鍵となる。
もし、アーミッシュがローマのサンピエトロ大聖堂とエルサレムの教会をコントロールしつつ、とつぜん非常に裕福になったなら、彼らの影響力は今日ある形よりもはるかに大きくなっているという可能性は、大いにある話だろう、というわけです。
また、アルカイダについての説明も、ジハード戦士たちの「退役軍人協会」みたいな役割を果たしていた、などと書かれていて妙に分かりやすかった。
とまあ、そんな感じで導入部でいっきに引き込まれてウキウキと読み始めたわけですが…しかし、読んでいて、だんだんだんだん辛くなっていった。
読んでも読んでも怒りと憎悪は途切れることがなく、復讐の応酬であちこちが破壊され、残虐行為はどんどんエスカレートしていく。そして、出口はまったく見えない。
「かろうじて立っていたこの家、つまり中東の国々をワシントンの誤った行動が基礎部分から押し倒し、内部の腐敗を露出させた。そして、イラク戦争という狂気、シリアの流血、カダフィ後のリビアにおける無秩序、そしてISの登場という結果を引き起こした」と著者は言う。
そして、ブッシュとオバマの政治的判断を繰り返し批判している。
それらの批判については非常によく理解できた。なるほどね、と思った。
でも、私は完全には著者に同意できなかった。
ブッシュはともかく、オバマの過ちへの言及には、うーん、と考え込んでしまった。
正直に言うと、著者に対して、ちょっと何様?と思った。
なんだか神様目線というか、冷戦時のCIAみたいな考え方というか。中東に生きる多くの名もなき普通の人々の視点は全くなくて、「西側にとって一番都合が良い方法による中東民主化計画」からの意見という感じ。
他の独裁者を安心させるためにも、アメリカが操れる独裁者は保護しろと言っているみたいにも聞こえる。
そもそも、全て結果を見てからの完全なる後知恵じゃないかとも思う。
まあいずれにせよ、中東の混沌を深めているのは、ブッシュよりもオバマよりも、子供時代にまともな教育が受けられず、SNSはじめインターネットが学校のかわりになっていることが一番の原因じゃないかと私には思えた。
そして、「復讐」を強く強く推奨している伝統と。
この本はISの登場あたりで終わるのだけど、ISの異様さ過激さは中東に渦巻く悲しみと憎悪の集大成に見えた。ついこの間のことなのに、喉元過ぎればで、私ときたら、もうすっかり彼らのことは忘れてしまっていて、この本でその残虐さに改めて驚くことになった。読んでいるうちにすっかり暗い気分になっていたところに、まるでトドメを刺されたかのように、すっかり打ちのめされてしまった。
そして、もしもブッシュやオバマが賢くふるまっていたとしても、「復讐」が奨励される土地である限り、やがてはこういうものを生み出していたのじゃないかしら、とも思った。ただ時間の問題というだけで。
そんな中、サウジアラビアが行っているという政策の一つにすごく救いを感じた。
それは、完全に洗脳され壊れた状態で帰国するジハード戦士たちの社会復帰のためのリハビリのプログラム。
希望の光みたいな記述ってその部分だけだったような。
結局のところ、そういう地道でとてつもなく時間のかかる努力しかあの憎しみの連鎖を断ち切れるものはないんじゃないかなぁと思う。(当然そんなことはみんな分かっているとは思うけど)
過激派の人たちがインターネットを巧みに利用し、過激な思想を戦略的・効果的に拡散している様子など読むと、その頭脳と技能をもっとずっと生かせる場がこの世にはあるのに、たくさんあるはずなのに、と悔しく思う。 -
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・堤未果の「ルポ貧困大国アメリカ」は?も出てるみたい(未読)だが、本書は、堤さんの捉え方が一面的で、取材も恣意的ということで反論を行っている。
・反論の根拠は、主として「機会均等」についての紹介がなく、それがあるからアメリカ社会は比較的、ポジティブでいられる、というもの。なお、堤さんへの反論的な部分は第1章のみで、それ以降は冷泉さんのアメリカレポートという構成。それも、オバマさん寄りのアメリカの「チェンジ」の検証という内容で、オバマさんへの評価が大変高い。
・アメリカの二大政党のパワーバランスの構成やここ数年の変遷なども解説されているので理解が深まる。相変わらず主観を強めに感じてしまうアメリカ社会の空気感の記述は玉石混交な印象。あぁ、そうなんだなあと思う箇所もあれば、ホントにそうなの?と思う箇所もあり。
・「貧困大国アメリカ」がダークサイドばかりに目を向けており、ポジティヴな側面もあるということを補足してくれる本ということになろうか。ただ、冷泉さんも指摘している通り、堤さんの視点は、そのダークサイトが日本に影を落とそうとしていることに対する危機意識によるところが大きいように思える。その意味で、日本は大丈夫と安心している場合ではない。 -
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【目次】
・1. 2012年、問われた選挙戦
・2. 空振りに終わった「チェンジ」のメッセージ
・3. 医療保険改革の政治的プラスマイナス
・4. オバマの経済製作、その失敗の本質とは?
・5. ウォール街選挙デモという「オバマ離れ」の光景
・6. なぜオバマはビンラディンを殺したのか
・7. 「アラブの春」を巡り、揺れ動いたオバマ
・8. オバマ政権の「2期目」はどうなる?
【ノート】
・アメリカ大統領の任期中の功罪など、なかなか知る機会もないので、よかった。
・アメリカ国民の空気感描写については、現地にいるからこそなんだろうが、なるほどと思わせる箇所と、ちょっと不当な一般化と思わせる箇所が混在していた。 -
Posted by ブクログ
映画を通してアメリカ社会の変遷を考えるとのテーマでいいのかな?
1997年公開の「タイタニック」から、2017年公開の「ワンダー・
ウーマン」までを、それぞれの時代のアメリカの政治や世相に
照らし合わせて著者が解説をしている。
共和党と民主党の2大政党制が生きているアメリカ政治を理解していない
と分かり難い部分もあるかと感じたが、映画作品自体の解説はこじつけ
部分も含めてなかなか面白かった。
西部劇の流れを汲む分かりやすい「正義」から、アンチ・ヒーローを
主役に据えた作品、圧倒的なヒーロー礼賛ではなくその闇の部分を
描く作品と、ハリウッドも社会の変化と共に映画作品自体を変化させ
ている。
なんて小難しいことを考えながら見てはいないんだけどね、私は。
でも、著者が指摘しているように1998年公開の「マーシャル・ロー」
は9.11後のアメリカを予言したような作品であるというのには納得。
所詮、映画や本というのは絶対的な理解の仕方があるわけじゃないので、
著者の解説もひとつの映画の捉え方と考えるのがいいのかもしれない。
アメリカ在住の著者だけあって、各作品の公開時のアメリカ人の劇場
での反応は興味深かったな。政治的スタンスで作品に対しての討論が
その場で起きるなんて日本じゃきっとないもの。