あらすじ
クルマは電気と人工知能とで自動運転になり、人は運転から解放され居間にいる気分で移動でき、事故もない──そんな未来が目の前まで来ているようだ。アメリカやアジアなどで展開している主導権争いの現状を、自動車会社の対応もふくめたルポ。日本にもチャンスはある。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
高齢者による交通事故のニュースが増えている昨今。
それの改善の一助になるのではと思って読んでみました。
人間の手を離れるという不安からか世論がなかなか受け入れていないし、技術もまだまだ発展途上。
でも私は期待したいしぜひ完全自動運転が実現して欲しいです。
Posted by ブクログ
来年(2019)には元号が変わりますが、今の元号になって社会人を始めた私は、職種は変わったものの、一貫して自動車部品である潤滑油の開発、今ではその潤滑油の元(添加剤)のビジネスに携わってきました。この間、主な技術動向はバブルが弾ける前あたりから、ずっと燃費向上であったと思います。
燃費を向上した製品開発が終了しても、次の課題はさらなる「燃費向上」であり、この解決に向けて取り組んできた「一つの時代」と言っても過言では無いと思います。その流れが、ここ数年で変わってきていると感じているのは私だけでしょうか、燃費向上は今でも重要な課題と思いますが、少なくとも日本において、更には私の関わっている潤滑油のエリアでは、かなり限界に達しているのではと思っています。
そこで、それに代わるものとして、私は「自動運転」があると思います。この流れも、電気自動車の活用により、計算の仕方によっては燃費向上することにもなるので、燃費向上の一つの技術として語られることもあると思いますが、何といっても「自動運転」は、今までの車と運転手の関係を変える、車を保有する(ステータスの一部)から、利用する(バス・電車のような公共物の扱い)ことに代わる可能性を秘めていると思います。
尤も、私のようにマニュアル車で運転免許を取って、5年ローンを組んで初めて手に入れた中古車の喜びを知っている人間の考え方を変えるのには時間がかかると思いますが、車が家にあるのは当たり前・それも操作の楽なオートマでカーナビ付き、という環境に育ってきた私の娘達は平気で「早く自動運転になればイイのに」と言っています。政府は2020年後半を目途に自動運転の実用化を目指しているようですが、今の私達の世代が後期高齢者になり運転をしなくなったころ、社会は普通に自動運転を受け入れていると予想されます。
そのような中、この本は実際に日本の現場において、自動運転の技術がどれほど実現性があるのかの調査をベースに書かれた本です。やはりと言うか、完全な自動運転は難しそうですね、本の中でも心配している様に、本当に難しい局面(天候不順、地図にない道路情報、突然の工事・事故等)に対して、急に人間に運転を振られるような問題がこれから出てくるが予想されました。どんな局面にも対応できるドライバーが、楽な運転モード(例えば、高速道路で一定速度での巡行運転)だけを任せることは可能かもしれませんが、私も初心者のころ苦労したのを覚えていますが、首都高速の車線侵入の仕方、渋滞時の入り方、後続車両の状況を把握しながら右折車両を先に行かせるかどうか、これらの判断をすべて自動運転に求めるのは難しいのではと思ってしまいます。
飛行機の操縦は、巡行運転ではもう自動運転になってから数十年経過していると思いますが、離着陸だけはまだ手動と聞いています。自動運転も、そのように、自動と手動運転が共存する時代が長く続くのではないのでしょうか、とこの本を読んでその思いを新たにしました。ただ、私は運転頻度が減ってきているのは認めざるを得ませんが、当分は自分で運転するのを選びたいですね。
以下は気になったポイントです。
・2018年3月のシリコンバレー北部のサンマテオ市のイベントタイトルは、「AV18シリコンバレー」AVとは、オトノモス・ヴィークル(autonomous vehicle)、つまり自動運転車のことである(p14)
・90年代から2010年代へのコンピュータ利用の進歩が、光学ディスクを追放する等、目に見えるものを追放して抽象的なデジタルデータに置き換えたように、クルマ社会というもの「自動車」というモノを簡素化する方向から、新しい移動手段へと作り替えようとしている(p20)
・レベル1とは、自動車の運転を、前後方向の加減速・左右方向の操舵、の2つに分けて、そのどちらか1つだけをAIが支援的(ある特殊な状況においてのみ機械の判断で制御する)するもの、レベル2は同時に行う。レベル3は異常時にはドライバーが運転するもの、レベル4は特定の条件から外れた場合は、ドライバーが運転する(p25)
・EVとAVの相性は決してよくない、自動運転に必要なセンサーの消費電力が無視できないから(p30)
・AI運転では、地図データをベースにして、このような条件下ではこのするのが一番安全という判断データとつきあわせ、さらにこれに自車に搭載したカメラ、レーダー、ライダー(レーザー光線照射によるセンサー)、超音波センサーの4種からなるデータを合わせて判断し続ける(p59)
・自分が創業したアップル社から一旦は追放されていたスティーブ・ジョブズは1996年末に復帰していたが、1997年に企業再建のためにマイクロソフトとの業務提携を行った(p63)
・テスラは、高速しかダメ、インターチェンジ内はダメ、ドライバーは100%の監視をして問題があれば操作を、ということを「オートパイロット」の条件にしている、テスラがさらにセンサー・システムを構築するとすれば、航続距離は現行の500キロから半減するだろう(p77)
・テスラには、モバイルバッテリー2700個分が搭載されている、このような電池の塊が熱暴走する危険性がある(p79)
・現在のAIとは、人工の知能とは名ばかりで、ビックデータと呼ばれる膨大な情報を統計的に処理して、人間に似た判断へと誤差を縮めていく、つまりは統計マシンに過ぎない(p87)
・実際問題として、カリフォルニア、アリゾナを走り回っている自動運転試験車の場合、その道路の「流れ」が制限速度をオーバーしていても、その流れに乗るように走っている(p156)
・AS社という自動運転技術の夢に社運をかけているベンチャー企業は、完全自動運転を目指すと、EVではなくガソリン車になるというのが現状とコメントしている、システム・センサーの消費電力が馬鹿にならず、熱対策も必要となるため(p171)
・シンガポールでは、10年間有効という高額な登録証が必要なので、日本では180万円程度の小型車を保有するのに、税込みで1000万円近くの金額が必要(p184)
・自動運転の実用化というのは、さまざまな困難を抱えている、夢を追う技術ではなく、泥臭い「実務的カイゼン」を重ねていくことで、ようやく前に進める、そのような特殊な技術革新である(p219)
2018年8月15日作成