伽古屋圭市のレビュー一覧
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『からくり探偵・百栗柿三郎』続編。
発明家兼探偵の柿三郎先生が様々な謎を解いていく四話と、序章、幕間、終章からなる構成です。
通いだった女中の千代さんが住み込みになり、前作の事件に関わっていた玉緒ちゃんも同居して“表”に出ております(その先の“若紫”的展開には触れられていませんでしたが・・)。さらに、犬のハチも加わって、何だか楽しそうな「百栗庵」です。
前作でのご活躍のお陰(?)で、本書ではすっかり“名探偵”扱いの柿三郎先生。今回も安定の名推理を見せてくれます。
そして、女中兼助手の千代さんも第三話「さる誘拐の話」では、なかなかの謎解きを披露してくれます(勿論、柿三郎先生の補足は必須ですが)。
それにしても、この第三話の“オチ”にはやられました。読み終わった後タイトル見ると“あー、そういうことね!”と、思わず苦笑した次第です。
序章、幕間が布石となっている、第四話「櫻の中の記憶」は、切ないお話でしたね。
話中に登場した製糸工場の、とんでもハラスメント上役が本当にクズで酷い奴でしたが、実際当時の製糸工場のイメージも“超ブラック職場”だったっぽいな・・という印象です。働いていた女工(工女)さん達は激務だったでしょうね。
こういった女性事情や、第二話でネタになった少女小説など、大正の雰囲気も味わえる当シリーズ。さらなる続編を期待します。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ子ども食堂というとすぐに"貧困"と結びつけられがちだけど、その存在を必要としている子どもは様々で、その可能性も無限。この小説でももちろん貧困をはじめとした社会問題は取り上げられているけど、それ以上に子どもたちの日常や、主人公のこれまでのキャリア、なによりも美味しそうな食事の描写!がたくさん出てきて、「子ども食堂」という先入観に囚われずに、登場人物たちに共感できたのがよかった。
子ども食堂を必要としている子どもの例
・お母さんが夜遅い、子どもの栄養管理をしない、子どもはお菓子を食べる。食べ物に関連する知識や常識が身につかない。
・喧嘩をした兄弟ー食事を通じて仲直り?
・拒食症ー食に関するいろんな情報に混乱して、食べ物が食べられなくなった子。子ども食堂を通じて自分なりの食の意味を見つける。
・隠れた貧困。貧困というレッテルを貼られたくなくて、生活保護を受けない親。 -
Posted by ブクログ
仕事の激務により3年間働いた映像制作会社を退社した楓子は、駄菓子屋を経営する祖母に誘われ、営むことになった。
仕事に慣れた頃、店に300円を手に持った少年を目撃する。その子は、数日に1回のペースで、いつもきっちり300円を使っている。不審に思った楓子は、その少年に事情を聞いた。
王様のブランチで特集されていたので購入。作者の伽古屋さんはミステリーを多く出版されていますが、今回の作品は新たなジャンルとして挑戦したそうです。
題名の「かすがい食堂」ですが、「かすがい」は母方の姓が春日井ということです。「食堂」は、普段は駄菓子屋として経営していますが、ある出来事がきっかけでこども食堂のような食堂を作ることになりました。
全4話の連作短編集で、貧困やイジメ、拒食症といった社会問題を扱いながら、食堂を通じて、人との交流や食事のありがたさ・楽しさが描かれていました。
1話ごとに何かしらの事情を抱えた少年少女が登場しますが、ミステリー作家ということもあり、何か過去に起きたのでは?と匂わせるような文章で想像を掻き立ててくれました。
いじめなど重いテーマでしたが、そんなにシリアスさはなく、気持ちを軽めにしてくれるような文章でした。
また、食事のシーンでは、美味しそうなメニューや楽しそうな登場人物たちに気持ちを温かくさせてくれるので、全体的に比較的読みやすい印象でした。
なかなか子供の問題には、スッキリ解決‼︎とまではいきませんが、良い方向へいくよう、努力している姿が描かれています。楓子はプロではないので、スマホから得られる情報を基にして、対応していますが、真摯に向き合う姿には感銘を受けました。
また、祖母の存在感も良かったです。経験を重ねてきたからこそ、出てくる言葉も印象的で、スカッともさせてくれました。
昔よりは減ってしまった近所付き合い。人との交流で、助かることもあります。改めて人との交流がいかに大切であるかということを感じました。みんなで食べる食事は、読んでいてほっこりした気持ちになりましたし、「食事」の大切さ・ありがたみを改めて感じさせてくれました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ伽古屋圭市さん、初読。
大正時代に活躍した画家の、未発表作品を寄贈したいという申し出を受け、学芸員の鷲尾つぐみが目にした美人画は、圧倒的な力を持っていた。
「僕には、罪を背負った女の匂いが、見えるのです」….当代の人気絵師として知られる茂次郎が、モデルとして選んだのは、人を殺めながら、罪を隠して生きる女性たち。
茂次郎は、何故そんな女性たちを題材に求めるようになったのか。
4つ目に配された、冒頭の絵のモデルである雪江の物語で、晩年まで茂次郎の求め続けた…もしくは囚われ続けた女の美しさの秘密が明かされる。
表紙の絵と、帯の文句に惹かれて手に取った。
ミステリというより、不思議譚の趣。
現代と大正時代とを対比させるためか、はじめは擬古文調の文体が気になったり、茂次郎に不気味な冷酷さしか感じられず苦しかったが、だんだん血の巡りが良くなるように読みやすくなり、茂次郎にも魅力を感じられるようになった。
ただ、茂次郎が、雪江に惹きつけられ、彼女を救えなかったこと、彼女の美を完璧に捉えようとすることから、同質の美を持つ女性たちを描き、雪江の娘に完成した絵を託す…という流れからすると、
むしろ雪江と出会った頃の茂次郎が冷たい青年絵師で、晩年に向かって変わっていくのが自然な気がする。
作品の本筋とは関係ないけれど、作者名を書くのに手間のかかること!
そして、主役たる魅力的な絵師の名前が、ぱっとしないこと!
…なんだかちょっと残念。