ヨルン・リーエル・ホルストのレビュー一覧
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ネタバレノルウェーの二大作家による合作シリーズ。
ヨルン・リーエル・ホルストは刑事ヴィスティングシリーズでお馴染み。ヤン=エーリク・フィエルはおそらく紹介されたことがない作家。
ポッドキャスト「クライムキャスト」を運営するマルクス・ヘーゲルの下に、女性記者からのコンタクトがある。何年も前に投稿し、最後まで配信することができなかった少女誘拐事件について、地元紙に特集を組みたいとのことらしいが…
北欧らしく起きてる事件は陰惨なのだが、どこか静かに淡々とストーリーが紡がれる。雰囲気は刑事ヴィスティングシリーズそのものだが、ポッドキャスターが主役なので割と強引な捜査もあり、警察小説ではできないアプローチの描写が魅力。
過去の事件を掘り返すあたりは、邦訳されたヴィスティングシリーズが好きな人に刺さると思う。
次作以降に持ち越された展開もあり、日本ではあまりみない有名作家たちの共作シリーズ。ぜひ邦訳を続けてほしい…という気持ちもありつつ。ヴィスティングシリーズも大好きなので、そちらも邦訳されないかなぁ……
ちなみに一番驚いた点は、こいつとのバディじゃないんかい!というね。いや、良い意味で裏切られました。
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ヨルン・リーエル・ホルスト&ヤン=エーリク・フィエル『クライムキャスト vol.1 届かなかった叫び』小学館文庫。
ノルウェーを代表する2人の作家がタッグを組んだ共同執筆による新シリーズの開幕。
なかなか面白いミステリーシリーズが始まったものだ。前半から予想もしない展開に驚愕しながら読み進めると、まさかまさかの結末に腰を抜かしてしまった。
何しろ主人公のポッドキャスターとコンビを組むものと思っていた地元新聞社の女性記者が前半であっさりと死亡してしまうのだ。
また、主人公の意外な過去と刑務所に収監されている父親というサイドストーリーだけでも楽しめてしまう。
主人公のマルクス・ヘーゲルはキャンピングカーを拠点にして未解決事件を追う人気ポッドキャスターであった。
ある日、地元新聞社の女性記者のマルチデ・ヴォルからマルクスが過去に配信した15年前にファーゲルネスという小さな町で7歳の少女レア・フォッシュバルグが失踪し、悪名高い彼女の父親トビアスが逮捕され、刑務所で自ら命を絶った事件についての問合せを受ける。
マルクスは『クライムキャスト』という番組で『届かなかった叫び』というタイトルで第1弾の配信を行ったものの、第2弾で新事実を証言してくれる人物が急に口を閉ざしてしまったため、止むなく更新を打ち切っていたのだ。
マルチデからレア失踪事件の合同調査を提案されたマルクスだったが、それを断り、彼女に僅かばかりのヒントを与える。マルチデは僅かなヒントから単身で事件の調査を続けるが、山の中で転落ししてしまう。
マルクスは事故として片付けられたマルチデの死に不穏なものを感じ、レア失踪事件の調査を再開する。マルクスはポッドキャストの視聴者から新たにもたらされた『誰にも望まれなかった少年』という手掛かりを得て、刑務所に収監されている父親のフランクに獄中で自殺したレアの父親のトビアスについての調査を依頼する。
少しずつ解き明かされていく15年前の事件の真相。『誰にも望まれなかった少年』とは。
本体価格1,060円
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ネタバレノルウェーの作家、ヨルン・リーエル・ホルストの警部ヴィスティングシリーズ。「カタリーナ・コード」から始まるコールドケース四部作の最後。シリーズ全体では17作目?とのこと。
休暇中のヴィスティングに封筒が届く。それは十数年前に起きた事件の事件番号を示すものだった。犯人も既に刑期が終わっており、誰が何のためにこの事件に注目させるのか。調査を開始するヴィスティングに、第二の封筒が届き…
「カタリーナ・コード」に引けを取らないほどの傑作。シリーズの他作品同様、急に派手な展開になることもなく、地味だけどコツコツと証拠を重ね犯人へと辿り着くことが徹底されていて、静謐で燻銀な作品の仕上がり。
だからと言って意外な展開にならないかと言われたらそうではなく、特に今作は過去一、着地点が最後の最後までわからなかった。
非常に良い作品。残すはポケミスで刊行された「猟犬」だけなので、是非ともシリーズの他の作品、できれば初期の方を邦訳して欲しいなぁと思う。 -
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ネタバレノルウェーの作家、ヨルン・リーエル・ホルストの警部ヴィスティング未解決事件シリーズ第三弾。
凶悪犯トム・ケルが逮捕前に隠した死体を探すため、厳戒態勢の元、隠したとされる森へとケルの護送が始まる。だがケルは一瞬の隙をつき逃亡、かねてより疑念のあった共犯者アザー・ワンの姿が浮かんでくる。。。
前2作とは異なり、現在進行形で凶悪犯が逃亡しているため、いつも以上にピリピリした雰囲気が漂う。手堅く、証拠を一つ一つ積み重ねていくスタイルはいつも通りだが、そこに凶悪犯の逃亡が重なるため、スリリングな内容。いつもの過去の事件を洗い直す静かな雰囲気も良いが、本作のように動きが多く緊張感のある展開も良かった。
ヴィスティングの娘のリーネがいつも以上に暴走気味で、ハラハラしっぱなし。人によっては鼻につくかもしれない…
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ネタバレヨルン・リーエル・ホルストのヴィスティング警部、未解決事件シリーズ第二弾。
検事総長直々に、死んだ政治家の家から出てきた高額な紙幣の謎解きを依頼されるヴィスティング警部。秘密の指令のため、必要最小限のメンバーで事件に臨むことが求められる。娘のリーナ等と共に捜査を開始するが、前作で出会った正反対の捜査方法で事件に迫る国家犯罪捜査局のアドリアン・スティレルも絡んできて。。。
今作も読みやすく、ページターナーなところは相変わらず。単純な事件かと思いきや、複数の事件が絡んできて非常に登場人物が多くなる中、収まるところに手堅く収める。派手さはないが、警察小説のお手本のような作品。
コールドケースを扱うシリーズといいつつも、前作以上に現在進行形のサスペンスもあり。読み応え十分。鍵穴に合う鍵さえ見つければ、とんとん拍子にことが進む、納得の題名。 -
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ネタバレヨルン・リーエル・ホルストの初読。
ヴィスティング警部の未解決事件シリーズ第一弾。
静かな物語だった。
派手な事件が起きるわけでもなく。外連味があるわけでもない。だけどとんでもなく面白い。
24年前にカタリーナという女性が数字の羅列を残して消えた。ヴィスティング警部はカタリーナの夫マッティン・ハウゼンと、被害者の親族と捜査官を超え、ある種親友のような付き合い方をしている。
一方、26年前の大学生行方不明事件に新たな証拠が出る。その証拠から、カタリーナの夫が容疑者として浮かび上がり。。。
北欧の小説によく見られる、重く暗く残酷な感じは一切せず。ヴィスティング警部らが地道に、コツコツと捜査を重ねて真実を特定する、静かな作品。アン・クリーヴスのような。
途中の場面でもあるが、波一つ立っていない湖面に向かってボートを漕いでいく、オールで水をかく音しか聞こえない、そんな静けさと寂しさが感じられる作品だった。 -
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ノルウェーの作家ヨルン・リーエル・ホルストの「猟犬」を読み終えました。
最近読んだ「未解決事件四部作」の、「カタリーナコード」「鍵穴」「悪意」「疑念」より前に書かれた小説で、物語の時系列も5年ぐらい前の話。
とはいえ、最近の四部作と同様に、ヴィスティングの冷静な捜査は健在。少し若いヴィスティングと、少し若いリーネ(ヴィスティングの娘)が、協力して事件の核心に迫っていく。
とても面白かったし、ヴィスティングも相変わらずかっこいいのだけれど、事件の流れのパターンが、未解決事件四部作と似てるな〜と思いました。
たまたま、日本語訳されている作品が同じようなパターンなのか、それともヴィスティングシリーズやホルストの書くもの全般なのかわからないけれど、似てる。
過去の事件と、現在起こっている事件が繋がっていて、そこを突き詰めて、事件の全体像にたどり着く、というもの。
パターン化してる、とは言っても、面白いからいいんですけどね。
これで邦訳されているホルストの小説は読み終わってしまいました。さみしー。
本国ノルウェーでは、新作が出版されているらしいので、早く翻訳して出版してくださ〜〜い。 -
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またひとつ、面白い北欧ミステリのシリーズを見つけてしまった。嬉しい。
いきなりこう言ってはなんだけど、事件自体は、地味というか、もちろんタイトルにもなっている「暗号」であったり、犯人との駆け引きだったりと盛り上がりも謎もふんだんにあるのだけれど。
私の好きなところは違った、が正しい言い方なのかもしれない。解説の杉江松恋さんにとても共感するのだが、この作品は「人間を描いた」ミステリだと思う。
主人公の警部ヴィスティングは、妻に先立たれ、娘のリーネ(職業は新聞記者)と孫のアマリエと共に(同居ではないものの)暮らしている。仕事一筋。
冒頭のヴィスティングがアマリエ(2歳)の子守りをしていて、あることが起こるシーンがとても好きで、ミステリの中の日常というか、事件とは関係ないところが、とても印象深く描かれている、と私は思う。
アマリエかわいいな〜と、言ってしまえばそれが大きな理由なのかも知れないけれど。(笑)
また、犯人との対決で、微妙な心理戦になる場面があるのだが、追い詰める方と追い詰められる方の心の動きというか、会話の感じがとても良いテンポだった。
小学館文庫の続編2作と、ハヤカワミステリから出ている『猟犬』も読む予定。続きもどんどん訳されたらいいな。 -
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ノルウェーの人気ミステリ、警部ヴィスティングもの。
「猟犬」もとてもよかった、あのシリーズです。
ノルウェーの地方都市ラルヴィク警察の警部ヴィリアム・ヴィスティングは誠実な男。
24年前に失踪したカタリーナ・ハウゲンの事件をいまだに気にかけていました。
カタリーナ・コード(暗号)とは、台所に残されていたメモのことで、意味が解らないまま。
失踪した10月10日には、カタリーナの夫マッティンを訪ねて、語り合うのが習慣となっています。
ところが今年、行ってみるとマッティンは留守。
国家犯罪捜査局(クリポス)未解決事件班の捜査官アドリアン・スティレルがやってくる思いがけない事態に。
26年前のナディア・クローグ誘拐事件の新たな証拠が出て、マッティンが容疑者だというのです。
ヴィスティングの娘のリーネはすぐ近くに住んでいて、「猟犬」の頃は大手新聞社の記者でしたが、今はフリーのシングルマザー。
ヴィスティングは関連した事情を探る手伝いに、いずれは記事にもできるかと取材に慣れたリーネに参加させることにしていました。
そこへ、有能だが癖のあるスティレルが加わり…
マッティンとどこか友人のような穏やかな関係になっているヴィスティング。
無実を信じているから悲しみに寄り添っているようにも見えるし、親しくなったから事実がわかった場合に斟酌しそうにも見える。
しかし…
どうなるのか?
息詰まるような関係と、少しずつ判明する事実。
元警察官である著者ならではのリアリティと、いや規則違反ではと思う面も一部ありつつの人間模様。
真実を追求する執念、長い年月を経た真相は。
心に残る作品でした。 -
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本書は、連続少女強姦殺人の凶悪犯の逃走という、まるで大団円のようなシーンで最初の100ページが費やされる。最初から手に汗握る設定である。凶悪犯に付き添い、割りを食う役が、我らが主人公ヴィスティングであり、撮影役を請け負うフリーランスの記者であり娘でもあるリーネが、共に冒頭の一大アクションに巻き込まれるという仕掛けである。
何者かにより、予め計画されたこの闘争劇には、スタン・トルネード弾までが使用され、複数の警察官の重症者も出る。責任問題と事件の収束と、どちらの責任をも双肩に背負うことになったヴィスティングは、世間の耳目を集めるスキャンダラスな脱獄ショーに続く悪夢のような時間を過ごすことになる。
事件が起こり、誰が犯人かを見極め、解決に至るという、いわゆるミステリーの定番から大きく外れ、本書はいきなりアクション小説としてのスタートを切り、それらの緊張感を伴うままに、過去事件の真相を掘削するという荒療治を行う、緊張感に満ち満ちた力作なのだ。
もちろん巻置く能わずのノンストップ・ストーリーなので、最後の最後まで、真相に辿り着くための迷路は続く。緊張を緩めることなく読まされてしまう超娯楽作品の仕上がりと言えよう。
巻末解説にもある通り、現役捜査官であった作者ならばこそ、およそあり得なさそうなアクションと緊張の連続シーンを、リアリズムとして描き切ることができるメリットは大きいように思う。
下手をしたら子供騙しに陥りがちなトリッキー過ぎる事件とその行方についても、警察捜査の経験という固い地盤を持つ作者だからこそ、説得力のあるプロットに落とし込めているように思う。
父と娘と、さらにその幼い孫娘と、だれもが見えない危険に曝されながらのリスキー・ホームドラマの要素を巻追う毎に高めながら、本書でもスリリングなエンディングや、意外な真犯人という結末等々、いつもながらのドラマティックな盛り上げぶりで、安定のエンターテインメントを作り出している。
映像化してほしいほどにスリリングなアクション作品なので、今後のヴィスティング・シリーズの躍動ぶりにさらに期待したい。本書でも、切れ切れの捜査官スティレルと彼を中心としたハイテクな捜査ぶりには、捜査小説の現代性どころか未来をも感じる。
また、とりわけスマホやその他オンライン機器、カメラ、動画解析技術等々、ハイテク機器が事件捜査に与える影響や効果は、より加速しているように思われる。今年はWOWOWでも『CSIヴェガス』の新ドラマが始まったが、科学捜査の技術スピードは速い。捜査新技術の作品への導入も1970年生まれの比較的若手作者であるホルストならではの特権と言えるかもしれない。未解決事件四部作最終作にも期待する。 -
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『猟犬』『カタリーナ・コード』といい作品を連打しているのに、昨年のこの作品を見逃してしまっていた。今春、新作が出たのを機会に順番に読まねば、との反省読書。とりわけ前作から版元を変えて翻訳出版となった本シリーズは続けての未解決事件四部作である。『猟犬』からは、ヴィスティングの娘リーネの立ち位置、職業、家族環境等が変わっているので、四部作まとめて邦訳とは小学館さん、グッドジョブ!
また『刑事ヴィスティング』(ドラマタイトルは警部ではない)の旧作二作(『猟犬』含む)を取りまとめたドラマ・シリーズをWOWWOWオンラインで視聴することができたので、同時に楽しませてもらっている。原作とはイメージが異なるものの、日本の低予算TVドラマに比べると相当に秀逸の映像で、鑑賞に値する。本も動画も人気が出て、他の邦訳も進むと有難い。
ちなみに『猟犬』では警察官としての職務停止中という境遇だったが、本作では何と、検事総長から直々の特命責任者を命じられ、好きなスタッフを集結させて極秘捜査の任務に当たるという、またまた例外的な境遇で物語をスタートする。このアレンジの幅は、本シリーズの特徴かもしれない。
本作では、大物政治家が急死した後に遺された大金の謎を極秘裏に究明する任務をヴィスティングが与えられる。情報収集役としてフリーの記者である娘リーネの他、鑑識のモンテルセンを加えて捜査をスタートするが、徐々に事件の裏闇が広がる中、過去の事件の捜査責任者や、未解決事件を専門に扱う機関クリポスの捜査官スティレルも加わってゆく。
過去を洗い出すと、空港での大金強奪事件、失踪事件、それに纏わりそうな未解決事件が繋がりを見せてゆく。一方で大金を回収した直後、政治家の別荘は放火される。という具合にヴィスティングが関わると、張り巡らされた導火線に一気に火が着くのは、本シリーズの特徴らしい。
例によってページターナーぶりを発揮させながら、絡み合った複雑な糸のもつれを即席のチームワークで解いてゆくプロットの豊かさは並ではない。
著者のホルストは、現職警察官として二十年のキャリアを持つという。その経験から生まれるストーリーには、現場リアリズムのような特性がおそらく顕著なのだろう。派手な事件と緻密な捜査、事件を探る個性的メンバーたちの勘どころなど、読むべき点、楽しむべき箇所が随所に見られ、飽きることなく身を任せられるストーリー運びである。
人の個性をぶつけ合いながら、すべての謎と伏線をしっかりと回収してゆくエンターテインメントの完成度に拍手を送りたく思う。 -
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人間に寄り添った小説、と巻末解説でミステリ評論家杉江松恋が書いている。ミステリ―国籍では珍しいノルウェイ。人口2万3千の地方都市ラルヴィクは著者の住む町でもある。ヒーローは初老の警部ヴィスティング警部。ジャーナリストの娘リーナは、組織的に対立に近い立場でありながら、作品の一方のヒロインでもある。
この地方都市にやって来たのは、出世頭であり冷血ぎみの手段を択ばぬ実績主義者の捜査官スティレル。鑑識技術の進歩により、27年前の未解決失踪事件の新たな証拠が出たという。ヴィスティング担当した25年前の別の未解決事件の被害者の夫がスティレルの第一容疑者として狙われる。マッティン・ハウゲンは妻が暗号を残して失踪し、その後毎年命日が近づくとヴィスティング警部の訪問を受け、私的に親しくなっていたので、スティレルは警部を利用しようと考えたのだ。
スティレルはマスコミをも捜査に利用としてリーナにも近づき、古い事件の捜査再開ののろしをあげる。かくして出来上がる捜査のトライアングル。ヴィスティング警部と娘のリーナ、最新技術を駆使して捜査計画を描くスティレル。中心には失踪したカタリーナの残した暗号。
地方都市の暗い10月が良い。警部と容疑者の25年の関係がもたらす距離感が良い。二人の間に流れる静かな男同士の血と温もりが良い。ヴィスティングを取り巻く家族たちの温かみが良い。容疑者マッティン・ハウゲンとの山小屋でのアウトドア・キャンプのシーンがクライマックスとなる。映画の如くノルウェイの美しい森と湖。小さなボートでのルアー・フィッシング
や薪ストーブにコーヒーとコニャック。
とてもとても大切に事件を扱うヴィスティングを、とてもとても重厚に、人間愛で包み込むように描く作家のペンが良い。疾走型のサービス過剰な作品が多い中で、時にはゆっくりした時間の中で、人間たちの営みを深く描きこむようなシック極まりない作品に飢えることがある。そうした望みを満たしてくれる時間が、この作品にはこめられている。
極上のミステリ。優しさと残酷さが交差する北欧の家族や兄弟や夫婦や恋人たちの物語。本編は毎年一作ペールのシリーズ作品ということだが『猟犬』(こちらも素晴らしい作品である)以来邦訳は二作目。これだけ魅力的なレギュラー・キャラたちだ。日本でも人気シリーズとなって邦訳が進むことを強く願いたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ北欧からのサスペンスで、珍しくノルウェーが舞台。文章が滑らかで読みやすく、適宜混ぜられる風景描写やキャラ付けも上手い。一人称の小説だが、面白いのは父と娘それぞれの視点で描かれ、警察官である父が追う17年前の事件にまつわる真相と、記者である娘が追う現在の殺人事件が、やがては(予想通りに)結びついていく構成になっていること。どちら側も丁寧に描いてあるので気持ちよく読める。しかも、北欧ものにしては珍しく?残酷描写も少ない。
そもそもこの訳者がうまいのかもしれない。特に北欧というか英語圏以外の小説の場合、登場人物の名前が憶えにくいので詳しい人物一覧が載っているのもありがたかった。
ただこれがシリーズの8作目というのは意外ながら、過去の作品を読んでなくても(国内出版されてない)違和感なく読めた。9作目も出版されてるようなのでこれも出してほしい。