ヨルン・リーエル・ホルストのレビュー一覧
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「ガラスの鍵」賞を受賞した、ノルウェーの警察小説。
手際のいい書きっぷりで、スリリング。
楽しめました。
ヴィリアム・ヴィスティング警部は、警察勤務31年のベテラン。
17年前の事件で証拠捏造があったとある日突然訴えられ、停職になってしまう。
捜査権もない立場で、自らの無実を立証できるのか‥?
娘のリーネは新聞記者になって5年。
ある事件の取材中、父の危機を前もって知り、特種をとろうと必死になっていた。
それぞれに限界はある身だが、真相を突き止めようと協力し、離れていても支えあう父娘。
ヴィスティングは長く連れ添った妻をなくし、その後に思いがけずにスサンネという恋人が出来た。
だが、スサンネは店のほうが大事らしく、こちらはどうも隙間風が吹き出しているよう‥?
17年前の事件というのは、少女失踪事件。
ヴィスティングが初めて捜査の指揮を執った事件だった。
そして、今もまた少女が行方不明となり、その捜査に加わることも出来ない‥
飽きさせずに動きがあり、絡み合う事件が思わぬところから手がかりを見せる。
リーネの応援や旧い仲間との繋がりが、道を切り開いていきます。
作者は1970年生まれの警察官。
2000年に作家デビュー。2012年のこの作品が8作目で、このときまでは警察に勤めていたそう。
北欧のミステリに与えられる最高の賞であるガラスの鍵賞をはじめとする賞を独占した高評価なのも、うなずけます。
ヴィスティングは作者よりも一回りぐらい年上ですね。
理想の警部像なのかな。
この現実味と渋さがなかなか魅力的なシリーズ。
他の作品も読んでみたいです! -
Posted by ブクログ
17年前の証拠偽造の責任を問われて停職処分になったヴィスティング刑事が新聞記者の娘と共同して真実を暴く物語。休日中や停職中の刑事を主人公にしたミステリというのは、それがシリーズ作品であったりすればなおのこと個性的なストーリーになることが多い。停職により、銃器やバッジを携帯していなかったり、警察署の資料を公的に漁ることができなかったり、底意地の悪い上司の妨害に合ったりするのが定番だからだ。
いわゆる普通の捜査ができずハンディキャップを背負っている刑事である。しかも自分を罪に問う疑惑を、その逆境から自力で救い出さねばならない。主人公であるヴィスティングはノルウェイでは人気のシリーズでありながら、初の邦訳となる。北欧のミステリに掲げられる栄冠『ガラスの鍵賞』を獲らなければぼくらの眼に触れることは未だなかった作家であったことだろう。賞の意味は主に海外ミステリ市場が活発とは言えない日本の餓えた読者にとってはとても大きい。賞さえ取れば出版社は翻訳に漕ぎ出す。
さて本書の構成であるが、反骨の気概たくましいベテラン刑事の孤立した捜査を表し、『ダーティ・ハリー』ばりのオーソドックスを基本とし、さらに連続少女誘拐の過去そして現在とタイムリミット型追跡エンターテインメントとしてまさに王道。さらに主人公の脇を固める娘、恋人、元同僚らと、それぞれの距離感も絡んでくる中で奇をてらわず地道なストーリーテリングに終始する本物志向の好感溢れる索引となっている。
主人公と娘リーネのコンビネーションもよく、とりわけスリリングな活劇の半分以上はリーネとその仲間たちに持って行かれているくらいである。新聞社では娘もまた直属上司との軋轢の中で実力を発揮、仲間たちとともに胸のすく活躍を見せてくれる。
逆境から逆転に向けて様々な困難を跳ね除けて真相に迫り、悪という悪を根こそぎにしてゆこうという、まさに警察小説の鉄板ストーリーであり、ノルウェーという遠い遠い国の中で進んでゆく展開ながら、安心して身を委ねられる重量感を持ち合わせている。スピードと重さと人間たちの魅力とどれを取っても一級品の娯楽小説。これを機にヴェスティング刑事シリーズの翻訳がさらに進むと嬉しいのだが。
また北欧ミステリは今やブランドとも言えるほど信頼性のおける作家・作品の目白押しである。しかしノルウェイはその中でもかなりマイナーな部類だろう。この作品をきっかけにフィヨルドを背景にした珍しいミステリが、続々日本に紹介されることを願ってやまない。 -
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ネタバレ圧巻の正統派警察小説。
休暇中のヴィスティングに届いた無記名の手紙。
そこに記されていたのは過去の事件番号。
気になり調べているうち、届く2通目の手紙。
今度はヴィスティングも手がけた事件の番号が。
一つ目の事件の冤罪の可能性。
二つ目の事件との見過ごせない共通点。
この事件を掘り返すことを誰が望んでいるのか?また、掘り返すに値する真相は埋まっているのか?
ある意味ありがちな型だ。
過去の事件に告発が寄せられる→調べてみると確かに怪しい点が浮かび上がる→関係者に聞いて回るうちにそれを喜ばない者が圧力を掛けてきてますますきな臭くなる→少しずつ明らかになる新事実を追いつつも、掴めそうで掴めない真相がするすると手をすり抜けていく→やっと掴めた手掛かりは。。。
この王道の型の中で、くせ強なキャラが出てくるわけでもなく、衝撃的なな謎が牽引していくわけでもなく、地味に着実に歩を進めて行く感じ。
ヴィスティング自身がとにかく腰が据わっていて、ザ・安定のいぶし銀。
結末(どころか話の骨組み自体も?)は既刊の別の話に似てるなぁーと思う節もあるものの、この何でもない型の中でこれだけダレずに飽くことなく読ませるのは凄い。
引き込まれる物語性ってわけでもないので、たぶん急ぎすぎずに抜け目なく細部を書き込んでいくところとか、次の展開への自然な筋道のつけ方とか、余計なツッコミを入れたくなるようなとこが殆どないとかそういとこなのかなって思う。
これにてコールドケースカルテット完結。
完結と言ってもこの4作品で特別何か大きな事案に決着がつくとかそういうことではなくて、過去の事件に端を発して話が進む同型のテーマ性にちなんで付けられているシリーズ内の一区切りが終わるに過ぎない。
本国では続きも出ているようだし、シリーズ内の既刊未訳も沢山ある。
概ね評判がいいと思われる本シリーズで翻訳の動きが鈍いのがほんと不思議。 -
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ネタバレ2026年の15冊目は、ヨルン・リーエル・ホルスト&ヤン=エーリク・フィエルの「クライムキャスト Vol.1届かなかった叫び」です。ノルウェーを代表する作家2人による共作です。
ヨルン・リーエル・ホルストの本を読むのは、警部ヴィスティング・シリーズの「疑念」以来、約2年振りです。これが予想以上に良いです。今年の新刊では、ここまでで1番ではないでしょうか。
主人公は、キャンピングカーを拠点に〈クライムキャスト〉という犯罪専門のポッドキャストを配信しているマルクスです。マルクスの元に地方紙の新聞記者マチルデから連絡が入ります。エピソード1しか発信していなかったレアという少女の失踪事件のポッドキャストを聞き、興味を持ったという事でした。少女は、現在まで発見されておらず、いくつかの状況証拠から少女の父親が犯人として逮捕されていました。そしてその父親は、獄中で自殺を遂げていました。マチルデは、独自に調査を始めますが、彼女の身にある事が起きてしまいます。
そして、マチルデへの対応を悔むマルクスも事件を調べ直します。少女の父親が犯人なのか?果たして、真犯人は他にいるのか?
最初から最後まで飽きさせません。ストリーテリングは秀逸です。マルクスの父で刑務所で服役中のフランクが良い味を出しています。ポッドキャスターの息子と服役囚の父親が事件に取り組むという設定も斬新です。ぜひとも次を読みたいものです。
☆4.8 -
Posted by ブクログ
表紙のイケオジのイメージがだいぶ強烈なシリーズ、警部ヴィスティング。
実際読んでる印象では彼はこんな感じではない。
もうちょっとくたびれた、枯れた佇まい?
今作は始まってすぐ服役中の殺人犯が逃走、
という展開で、捜査に関わるヴィスティングは何度もいろんな面で苦境に立たされる。
でも相変わらず彼はクールなんです。
感情をむき出しにせず、ぐっと堪える。そこがカッコいい。
事件は二転三転四転くらいし、
このヒト怪しい!と思う人物はことごとく消えてゆく。思えば一番怪しかった人がいた。いたわ〜。
してやられました。
読むのも辛くなるようなシーンが多く、
ここまで書かなくても…と思う部分もあったけど、
最後は女性の底力を感じさせてくれた。 -
Posted by ブクログ
印象的な表紙絵に惹かれて手に取った北欧ミステリー、「警部ヴィスティング カタリーナ・コード」
タイトルもカッコいい。
北欧ミステリーと言えば
個性強めな主人公(あの人やあの人)を思い浮かべてしまうけど、この作品の主人公はごく真っ当で
性格も穏やか。普段は娘と孫を気にかける優しい男。
仕事に関しては
地道にあきらめず、証拠を積み上げ真相に迫るスタイル。
じゃあ退屈なのかと聞かれると、意外とそうではなかった。
性格が良いので、変にキャラクターにイライラすることなく物語に浸れるし、
静かだけど不穏な空気も感じられ、緊張感も最後まで持続。序盤で散りばめられた事件のヒントもきれいに回収。
ノルウェーの生活スタイルや自然の描写も興味深く、釣りのシーンとか、とても良かった。
あと、賞味期限がかなり切れたものを
まいっか、みたいな感じで使っちゃうところとか
好き。
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Posted by ブクログ
ノルウェーの警察小説。
ヴィスティング警部の未解決四部作(コールド・ケース・カルテット)の3作目。
二件の殺人で長期服役中の男トム・ケルが、第三の殺人を告白。
遺棄した場所を教える見返りに、待遇のいい刑務所への移送を要求しました。
ケルが指定した現場の森は、ラルヴィク警察の管轄内だった。主任警部ヴィリアム・ヴィスティングは厳戒態勢を敷いたのだが。国際犯罪捜査局のアドリアン・スティレルや弁護士もその場にいた。
ケルは隙をついて逃走、爆発まで起こった。隠れた共犯者が準備していたのだ‥
苦しい立場に立たされてしまったヴィスティング。自身も自分の責任を痛感することとなった。
スティレルは、ケルを敢えて泳がせることも考慮する。スティレルは癖のある人物だが、今回は協力的?
フリーの記者であるであるヴィスティングの娘のリーネも、捜査チームに参加することに。
作者自身も20年も警察の捜査官で、在職中にデビューしたという経歴から、地に足の着いた描きぶりが好ましいシリーズ。
今回は爆発事件で収監者が逃走、しばらく派手な展開が続きます。
もちろん、ヴィスティングの誠実な人柄は変わりません。
娘のリーネは警察官ではなく特に訓練も受けていないので、時に自由に単独行動をするのは危険をはらみます。
リアリティだけではない展開をもたらすためなのか?
読みやすくなっている効果があると思うけれど、オイオイと思うこともあり(笑)
長過ぎずに読み終えられるのもよくて、こういう作品がもっとあったらいいのに~と思わせられます☆ -
Posted by ブクログ
ネタバレ警部ヴィスティングのコールドケースカルテットを読み進める前に、一旦著者ヨルン・リーエル・ホルストの本邦初訳だった本作品を。
とはいえ本作もヴィスティングシリーズの第8作目とのこと。
『カタリーナ・コード』がシリーズ何作目なのかは手元の情報だけではわからないが、是非ここまでの、そして歯抜けがあるのであればその作品達も邦訳して欲しい作家の一人だ。
『カタリーナ・コード』に始まるコールドケースカルテットは過去の未解決事件をヴィスティングが解決していく展開が特徴的な4部作だが、本作は過去の解決済事件に端を発する物語。
17年前に少女誘拐、監禁、殺害、死体遺棄の罪で有罪となり服役していたハーグルンは、半年前に釈放され、当時の証拠は警察に捏造されたものだとの訴えを起こした。
当時の責任者は若き日のヴィスティング。
メディア慣れしているが故に、疑念に対して手のひらを返したように大々的に報じる新聞各社。
挙句の果てに副署長からは、当時の責任者ということで引責停職を命ぜられる。
あの証拠は捏造だったのか。
ハーグルンに科された罰は冤罪によるものだったのか。
過去の捜査資料をつぶさに見直し、捏造したとしたら誰が?、ハーグルンが犯人でない可能性はあるのか?を北欧ミステリらしく、しっとりと着実に紐解いていく。
あくがなく、懐が深く、終始冷静で内省的なヴィスティングがかっこ良く好感度大。
自分的にはノルウェー版ジミー・ペレスといったところ。
また、新聞社に勤める娘リーネを信頼し、ときに2人3脚のような形で事件と向き合っていく姿も微笑ましい。
リーネはどちらかというと行動派で、危なっかしいところもあるのだが、それを否定することなく、むしろ自分にはない資質的に捉えているところなんかも清々しい。
騒動の結末は、おぉそっちとそっちで落とすかという感じで意外とまではいかないものの、ありきたり感はなく最後まで楽しめた。
さて、コールドケースカルテットは『鍵穴』まで読んでいるので、次は『悪意』。 -
Posted by ブクログ
司書さんから個人的にお借りした本。
しかし四部作の最終作って…この作者の本初めてなんですけど…。
で、結論としては、私はちょっと納得できなかったのです。
読みが足りないのかもしれません。
いや、きっとそうでしょう。
だけど、納得できないことをここにネタバレなしで書く自信がないので、これからこの本を読む予定の人は、読まないほうがいいと思います。
納得できない部分というのは、殺人事件の犯人として逮捕され、取り調べ中も裁判中も刑に服していた約17年間もずっと一貫して無実を主張してきた人が、しかも逮捕時はまだほんの青年だった彼が、自分の無罪を主張するためとはいえ、いろいろ証拠をでっち上げて刑事を誘導するかな、ということ。
証拠がでっち上げとバレた時点で「やっぱり冤罪じゃなくて、真犯人だったんじゃないか」と思われて終わりじゃない?
しかも、真犯人だったみたいだし。(ここの部分も、はっきりそうだという決め手が私には読み取れなかったから、もしかしたら読みまちがっているかもしれないけれど)
あと、周囲の人々の証言がみんな、彼が犯人であるだろうという前提で、悪いことしか言ってないけど、もともと彼女が彼のどこを好きになったのかが不明のまま、と作中で言っているにもかかわらず、不明のまま終わるのもフェアじゃない気がしました。
あと、アメリカの独立記念日のアリバイについて、ノルウェーとアメリカの時差の関係で、カレンダー的にはアリバイが成立するけれど、実は違う時間帯の出来事だったんじゃないか、と考えましたが、それは考え過ぎだったようです。
え?本当に?
ここも、問題なしという証明がなされていないので、もやもやが残ったまま。
結論としては、最後まで読んでも納得感はなかったです。ごめんね。 -
Posted by ブクログ
地味だけどカッコイイ!丁寧で本職刑事の捜査を体験できる、警部ヴィスティング・シリーズ第四弾 #疑念
■あらすじ
休暇中のヴィスティング警部のもとに一通の手紙が届く。そこには事件番号と思われる数字のみが書かれていた。
その事件では少女が殺害されており、すでに犯人も逮捕されている。手紙に何らかのメッセージを感じた警部は、その事件を調べ始めるのだった。
■きっと読みたくなるレビュー
地味。鬼のように地味。
しかしこの地味さが本作の持ち味ですね。
まるで本職刑事になったみたいに、丁寧で実直な捜査を体験できる作品です。なにもミステリーにラノベ感抜群のキャラ刑事や、才色兼備なスーパー名探偵が出てくる必要はないですね。現実に居そうな真面目な刑事の捜査を追っていくだけで、十分しっかりと推理小説を楽しむことができます。
何と言っても主役のヴィスティング警部、これがカッコイイのよ。ホント普通の特徴のない、ひとり人間であり、ただの刑事である。しかしながら意思と信条をもって一手一手を指していく。決して正義は語らず事実を追っていく様は、頼りがいのある父親の背中を見るようです。
特に人間性が垣間見えるのは、娘の元夫と対峙するシーン、これは惚れる。私も親なので家族を守る難しさは分かっているつもりです。やるべきことを淡々と進める姿勢に痺れました。
そしてこの事件の真相ですよ…腹立たしい。久しぶりに怒りが沸々と湧き上がってきました。人間は確かに罪を犯す。経済的な事情、幼い時期の不幸、人間関係の軋轢など、いくばくかは私も理解できる。しかし本作の犯人は許せない。なにを基準に生きるべきか懇々と話したいと思いました。
作者が刑事だった時代に、実際にあった事件をもとに作られた未解決事件シリーズ。まだこれまでの作品が読めていないので、挑戦したいと思います。
■きっと共感できる書評
現代のネット社会において、世間をくすぐる情報が発信されるとすぐに炎上する世の中。本人と意図しない文脈で情報が拡散され、関係者はもちろん、様々な人たちが傷ついてしまう。
ただなにも全員が自分本位のことを主張しているのではなく、それぞれの正義感と公正基準が入り交じってしまうだけ。その結果、何が正しい判断かわからなくなるんですよね。
結局は自分自身で答えを出していくしかない。派手な行動より、本作の主人公のように、ひとつひとつ誠実に向き合っていくことが近道ではないのでしょうか。