ヨルン・リーエル・ホルストのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ノルウェーの警察小説。
ヴィスティング警部物としては13作目だそう。
「警部ヴィスティング カタリーナ・コード」に続く作品。
未解決四部作(コールド・ケース・カルテット)の2作目とのこと。
大物政治家のクラウセンが急逝。
ラルヴィク警察の主任警部ヴィスティングは検事総長に呼び出される。
クラウセンの別荘で多額の金が詰まった箱が発見されたという。ヴィスティングは現場に向かい、箱を自宅地下に移動するが、翌日別荘のほうは放火されてしまった。何者が動いているのか。
フリーの記者であるである娘のリーネとも協力体制を敷き、鑑識のモンテルセンも加えたチームでの極秘捜査。
過去のいくつかの事件との関係を探っていきます。
極端な設定ではなく、地に足がついた感じが読みやすい。
作者は20年も警察官だった経験があり、地道な描写は安定感があります。
一方では、自宅地下に資料を置いたり、警戒態勢が半端なところが‥いかにもラストの危機のためという設定に見える。
盛り上げるためにはしょうがないのか?(笑)
父と娘の関わりは、ミステリの世界では最後の希望みたいなところもあるようで。
奥さんは警官の仕事が(不規則で危険で忙し過ぎるから)不満で離婚してることが多く、でなければ、殺されたり犯人だったりするから?
警察と記者とが協力し合う形、というのも、現実とは違う展望を描こうというものかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
警部ヴィスティングの未解決事件四部作の最後の事件。今回は休暇中のヴィスティングのもとに、謎めいた手紙が届くところから物語が始まる(いい加減、個人情報や自宅のセキュリティを真剣に考えた方がいいぞ、ヴィスティング)。手紙に導かれるまま、ヴィスティングは過去に解決済みの少女殺人事件に注目する。調べるうちに幾つかの疑問点が明らかに。この事件は本当に解決しているのか。手紙の主に操られているような感覚を覚えつつ、ヴィスティングは過去の事件にのめり込んでいく。スティレルには「あなたが過去の事件を調べるたびに、予想もつかない事態が起きる」と軽口を叩かれる始末なのである。
いい!やはり、このシリーズはいい!何と言ってもヴィスティングの人物像がいいのである。彼には日本のミステリにありがちな超人的な推理能力も、変人じみたキャラ設定も、意味ありげな過去も、類まれな容姿もない。至って実直な中年オヤジであり、娘や孫を愛する家庭人である。捜査方法は現場百遍で堅実そのもの。繰り返し報告書をチェックすることも怠らない。これは自身も本警官だったという作者ヨルン・リーエル・ホルストのこだわりなのだろう。
本作のヴィスティングには、少しずつ変化が見られる。成長した部下の捜査に口を出すか迷ったり、このまま独り身でいいのかと考えたり、身体の不調が出てきたり…そう、我ら中年の悩みをヴィスティングもまた抱えているのである。そろそろ定年も近そうなヴィスティング。この先の彼を見てみたい。ぜひ、シリーズの続刊と、未訳の初期作品の翻訳をお願いしたい。 -
Posted by ブクログ
ヴィスティング警部シリーズ第13作、邦訳3作目にして、コールド・ケース・カルテットの2作目である。
「今回はいつもと次元の違う捜査になりそうだ」、冒頭でヴィスティングはそう独りごちる。それもそのはず、検事総長に直々に呼び出されたヴィスティングは、先般心臓発作で亡くなった大物政治家バーナール・クラウセンの極秘調査を命じられていた。彼の別邸から、段ボールに詰め込まれた530万ドル以上の、出所不明の大金が発見されたのだ。国内外に知られるこの政治家は不正を働いていたのか。ヴィスティングは部下のモンテルセン、娘のリーネとチームを組み、捜査を開始する。
事件の鍵穴にしっかりはまる鍵は果たして見つかるのか。クラウセンの息子の死、現金強奪事件との関連など、様々なことが絡んできて、最後までまったく読者を飽きさせない。今回も未解決事件ということで、前作でヴィスティング親娘を振り回した国家犯罪捜査局のスティレル捜査官が再登場する。出番はさほど多くないが、味のある役柄を演じている。
本シリーズは親娘の物語でもある。本作のリーネは報道の立場ではなく、非公式ながら捜査協力というかたちで捜査に加わる。父の指揮下に入ることで、普段とは違う父の一面に接し戸惑うものの、随所で父をも超えたひらめきを見せる。しかし…、毎度ながら捜査機密をマスコミの娘に簡単に開示して、あまつさえ捜査チームに加えてしまうヴィスティングはいかがなものかと思うが…。
それはともかく、おもしろい。次の作品が早く読みたい! -
Posted by ブクログ
ヴィスティング警部シリーズ12作目。邦訳としては『猟犬』に継ぐ2作目。今回もヴィスティングは過去の事件と向き合うことになる。
24年前、主婦カタリーナ・ハウゲンは、忽然と姿を消した。キッチンに不可解な暗号を残して。警察は徹底的に捜査したが、カタリーナは発見されないまま現在に至る。かつて捜査を担当したヴィスティングは、年に一度、夫のマッティンに捜査の報告をしに訪問を重ねるうちに、彼への疑惑を抱きつつ、友情に近い感覚も覚えるようになっていた。
そんな折、スティレルという国家安全捜査局の人間がヴィスティングを訪れる。マッティンが、同時期に起きたナディア・クローグ失踪事件の犯人と目されるというのである。スティレルはヴィスティングに、マッティンとの関係性を利用して自白に追い込むよう持ちかける…。
本書でも人間心理を捉える描写は現在である。また娘のリーネも絡んできて、ヴィスティングのパートと静と動が交互に入れ替わり、飽きさせない。リーネには娘が生まれており、なんとヴィスティングはおじいちゃんになって、孫娘に目尻を緩める姿も描かれる。
ヴィスティングは優秀だが、天才型の警官ではない。コツコツと証拠を漁り、積み重ねた知識が沸点に達した時点で天啓を得るタイプの捜査官だ。家族思いだが、完璧な男でもなく、不器用で、我々と同様に些細な嘘もつく。そこが彼の魅力でもある。
本書最大の山場は、山小屋でのヴィスティングとマッティンとのヒリヒリするようなやり取り。どんどん緊張感が高まり、このままどこへ進むのかと、手に汗握らずにいられない。このシーンだけでも読む価値あり!
本書から版元が早川書房から小学館に移り、コールドケースシリーズと銘打たれて3作が訳出されている。ヴィスティングものの迷宮事件を扱うということか。これは次も読んでしまおう。 -
Posted by ブクログ
くたびれた中年オヤジの刑事が登場する警察小説が好きである。本書は北欧ミステリの最高の栄誉であるガラスの鍵賞を受賞した、間違いなく面白い作品。ヴィリアム・ヴィスティング警部を主人公とするシリーズの8作目で、本邦初登場である。少し前の刊行でその時は手に取らなかったが、今年になってドラマ化され、なぜか版元を小学館に変えて過去のシリーズが続々と刊行されており、見過ごせなくなった。
物語の発端は17年前の女性誘拐殺人事件。ヴィスティングはこの事件の捜査指揮をとり、犯人逮捕に至ったが、ここにきてその証拠が捏造されたものだったという告発をされてしまう。マスコミに叩かれ、停職扱いとなり、苦しい立場に追いやれられるヴィスティング。次第にパートナーとの関係もギクシャクし始める。自分は間違ったことはしていない。だが、あの逮捕ははたして正しかったのか。仲間内に違法な捜査をした者がいたのか。ヴィスティングは自ら過去の事件の再点検を始める。彼の葛藤が丁寧に描かれ、派手な描写はないが、ストーリーに説得力がある。徐々に引き込まれていく読書感が心地よかった。
ヴィスティングには新聞記者の娘リーネがおり、自分の属するマスコミが父親を窮地に立たせていることにいたたまれない思いでいる。リーネが別の事件を追いかけるサイドストーリーが挟まれ、それが物語に深みを与える。
ただ、気になったのは、この娘の存在。協力を申し出るリーネにヴィスティングは捜査資料を渡してしまうし、情報も開示していく。リーネはリーネで父親宛に関係者が残した証拠を勝手に受け取って中身を確認してしまう。2人の間で特に問題にはなっていなかったが、そんなのあり? ノルウェー的にはOKなんだろうか。謎。
とはいえ、全体的に期待を裏切らない面白さ。というわけで、小学館からのシリーズも入手して読んでいこうと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレノルウェー産、正統派警察シリーズもの。
キレの良い直球。完成度高し。
労働党の大物政治家バーナール・クラウセンが急逝した。
死因に不審なところはないが、別荘から多額の現金紙幣が発見される。
検事総長から直々に、警部ヴィスティングのもとへ真相究明の極秘指令が寄せられるところから始まる。
鍵となるのはクラウセン関与について名指しで告発状のあった過去の未解決失踪事件と、同じく未解決の、同日に発生していた空港での現金強奪事件。
『鍵穴』というタイトルながらも印象的なのは、”捜査の喩えにふさわしいのは鍵ではない。ジグソーパズルだ”という示唆。
まさにそのとおりの進行で、外枠が埋まり、次第に図柄が見えてきたところで、ピースのはめ違いやどうしても埋まらないピース、行き詰まりに出会う。
そうかと思えば急に霧が晴れることもある。だがまだ何か足りない。
といった風情で北欧ミステリらしくしっとりとした始まりから、尻上がりに疾走感を増し、最後は息もつかせぬ展開。
前作『カタリーナ・コード』もなかなかの出来。
今作も含めて未解決四部作(コールド・ケース・カルテット)の2作品とのこと。
次作も邦訳済みのようで、期待大。 -
Posted by ブクログ
二人の女性に対する暴行・殺人・死体遺棄の罪で服役中の男が、第三の殺人を告白した。殺害した二人の女性と同時期に失踪したもう一人も自分が殺したという。
21年の禁固刑を言い渡されていたその男トム・ケルは、死体を遺棄した場所を自供する見返りに、世界一人道的だと言われるハルデン刑務所への移送を要求した。
ケルが供述した遺棄現場はラルヴィク警察の所轄区域内だった。主任警部ヴィリアム・ヴィスティングらが厳重な警備態勢を敷くなか、国際犯罪捜査局のアドリアン・スティレルや弁護士とともに、ケルが現場に到着した。
ケルには手錠と足枷がつけられていたが、二度も転んだため足枷が外された。自由を得たケルが一瞬の隙をついて走り出すと、直後手榴弾が爆発した。多数の警察官が負傷し混乱する中、ケルは姿を消す。
爆風に吹き飛ばされる直前にヴィスティングが見たのは、森へと走り去るケルだった。
過去に残虐な犯罪を繰り返してきたケルには、アザー・ワン──共犯者がいるとされていた。今回の逃亡にもその人物が関与したと確信した警察は、二人の行方を追い始めた。
今回はテンポのよいアクション編。今後も楽しみだが、まずは未翻訳分を出していただきたい。