圷香織のレビュー一覧
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ヴェロニカ・マクリーディは、スコットランドの大きな屋敷にひとりで暮らす85歳の高齢女性だ。今日言ったことを明日忘れてしまっても、通いの家政婦アイリーンは長年の阿吽の呼吸で合わせてくれる。お茶をしたり動物番組を見たりしながら、自分の遺産をどこへやろうかと考えている。ある時、自分に孫がいる事を知って電撃訪問するが、同じく天涯孤独で生きてきたパトリックとの関係は最悪。相続人にふさわしくない、とヴェロニカが見た先には、テレビで保護を訴えられるペンギンが!南極で行われている資金不足のアデリーペンギン研究を知った彼女は、遺産をゆずる相手としてペンギンがふさわしいかを見極めるべく、はるか南の大陸へと一世一代の旅に出た。
行動力がある割には、所々思い違い(優しい言い方)があるため、一人で行動するのは危なっかしい。ましてや「生活環境としては厳しい難局に単身で向かうなんて、あなたの安全を保障できませんよ」と皆が言ってるのに、頑として聞かない。何かと気難しい印象の彼女だが、過去が明かされるにつれて、彼女の株が上がり始める。そして決死の南極行は、孤独に生きてきたパトリックの人生も変えてゆく。
人は、ただ変わったのではない。変わるには、理由があったのだ。そう知ることで、人を見る目が変わっていく。
メールやペンギンについてのブログ、ヴェロニカの日記、パトリック視点、ヴェロニカ視点の地の文が入り乱れて構成されている。原題は「ペンギンと共に行く」「ペンギンと別れる」と両極端の意味がある。ヴェロニカがこれまでの偏見を手放し、新たなステージに向かう話の内容からは、いずれの意味とも受け取れる。
本書は、「Call of the Penguins」、「Gone with the Penguins」三部作の第一作目。 -
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オーストラリアの内陸部を舞台にしたシスターフッドノワール。
ハイスクールを退学したばかりの少女チャーリーが金のインゴットの1つを盗んで逃げているところから物語は明ける。姉のジーンとその彼氏のダリルが隠された金のインゴット10キロを強奪し、その一部をチャーリーは盗んできたのだった。
ダリルを嫌うチャーリーが嫌がらせとして盗んできたのだったが、偶発的に起きたある事件をきっかけにそこに事情があって訪れたアボリジニの大学生ナオを巻き込んだ逃走へと変わっていく。
対極的な2人がひたすらオーストラリアの荒野をさまよい続けるのだが、視点の切り替えと、その筆致のためか惹き込まれる。
夢中で読んでしまう瞬間もあって、終盤に差し掛かるまではかなり好感を持てた。
ただ終盤からはいささかジャンルの枠組みに嵌まりすぎてしまった気がしないでもない。
原題は『No Country For Girls』と、コーマック・マッカーシーの傑作『No Country For Old Men』のもじり。大金を盗んだ者が、謎の追手から逃れる逃走の物語という構造も似てる気がする。そのせいもあってか終盤をそれほど高く評価出来ないのはどうしても『No Country For Old Men』が頭にチラついてしまって、大きな飛躍を求めすぎてしまったかも。それと個人的に物語にもっと痛みを欲しがりすぎてる部分もある。これはあくまで好みだけど。
邦題は『銃と助手席の歌』、原題に込められた意味を考えると、さすがにこの邦題は明後日の方向を向きすぎじゃないかな。 -
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主人公はスコットランドの大きな屋敷にひとりで暮らす85歳の老女(屋敷にはお手伝いさんと庭師がいます)。金持ちで、傲岸、頑固。因習にとらわれた独り善がり、周りを寄せ付けない。そんな老女が次第にほだされて行く物語です。
こうした老女は西洋の小説にはよく出てきますが(例えば『ブリット=マリーはここにいた』など)、一つのパターンなのでしょうか。日本の小説にも傲岸な出てくる事はありますが、西洋の場合は個人で、日本の場合は家制度にぶら下がった傲岸さの様でちょっと雰囲気が違います。
この老女、TVで見たペンギンに魅せられて、全遺産をペンギン研究に寄付することを思い立ちます。そして、その価値があるかを確認するために、周りの人たちや受け入れ先の制止を振り切って無理矢理南極のペンギン研究センター向かいます。それにしても、85歳の老女を南極まで行かせるか(笑)しかも船便の関係で3週間の滞在。しかし子供ペンギンのピップの可愛い事。『ロボット・イン・ザ・ガーデン』のロボット主人公タング並みです。
それを並行して最近になって見つかった孫が脇役で出てきます。なぜ、お互いその存在を知らなかったのか?第二次大戦下で、溌溂とした少女だった主人公の恋や子供と引き裂かれた過去が語られます。
南極とかペンギンとか意表を突く設定ではあるのですが、全体としてはまあよくあるパターンかな。主人公以外はみんな善人の(笑)、なかなか読後感の良い話でした。 -
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86歳のお金持ちのおばあちゃんヴェロニカがペンギン愛から南極へ出かけていく。自分の遺産を贈る相手として適切かを見極めるために。その前に自分の遺産を相続する者の存在も確認してみた。
ものすごく気難しいのだが、それには理由がある。次第に明らかになっていくヴェロニカの事情、そしていないと思っていた孫のパトリック。彼は6歳で母を亡くし、父とは会ったこともなかった。苦労して育ち、現在も国のお金で生活している。ヴェロニカは見た目だけでパトリックを切り捨てるが、空港まで見送りに来てくれたパトリックの親切さには身内への愛を感じる。
南極のアデリーペンギン研究施設には3人の職員がいる。彼らは4人分の仕事を3人でこなしていたため、忙しく、ヴェロニカの世話はできない、と最初から迎える気はなかった。しかし、定期便に行かれてしまい、やむを得ず受け入れる。中でもテリーは若い女性で、ヴェロニカの世話をかって出る。
ペンギンの愛らしい様子の描写がたまらない。ヴェロニカならずともメロメロになってしまう。実際にペンギンを育てたことがある人に取材して書かれたようで、とても生き生きと描かれている。ヴェロニカは戦争経験者で、過去に何かとても辛い事があったんだなとわかっていく。それが、どんな事なのか想像を膨らませる読者。結構えげつない想像までしてしまったが、そこまでではなかった。
気むずかしやのヴェロニカがペンギンに見せる笑顔、テリーは彼女が本当にペンギンを愛していると思う。
ヴェロニカが死にかけた時、パトリックにお金を貸して南極へ送り出してくれた友人の存在にとても心が救われた。無償の愛だと思った。
とても読みやすい訳。最後は大円団で、これぞYA文学ね、と思った。
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大富豪の孤独な老人・莫大な遺産・存在を知らなかった孫と古き良きイギリス小説のアイテムが揃って始まるこの小説は、ドラッグ・ブログ・メール・絶滅危惧種など現在のアイテムと問題を題材に進行する。カバーですぐわかるように頑固で元気な老婦人が主人公である。遺産の譲渡先を探して南極まで旅に出た老婦人が出会ったのは愛らしいペンギンと・・・
結末が見えすぎるのが少し残念だが、この設定は好物である。自分にも遺産が転がり込む夢を見させてくれる。
それにしてもイギリスは婚外子の話が多い「小さな言葉たちの辞書」や「ダウントンアビー」にも出てきたし。
現在読んでいる「英米文学のわからない言葉」にも本書の言及があり、ちょっと嬉しくなった。 -
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マレーシアはマラッカが舞台の冥婚ファンタジー。時代は19世紀頃、イギリス統治下の時代みたい。マレーシア華人文学です。
いまや中国本土では失われた「冥婚」というシステムや紙のお金などのお供物をする習俗、冥界の描写がかなり面白い。お父さんがひどいけど主人公は健気に頑張ってます。
実際、中国本土でも南の方では紙銭(本編中では「冥銭」)や紙でできた模造品を燃やす習慣はまだ根強くて、模造品に至っては最新のiPhoneや外車など、びっくりするようなものが売られてるんだよね。さすが煩悩まみれの中華圏!
ひとつ、名前の表記がカタカナなのが読みづらい。なまじ中国語を齧った人間に限ってのことだと思うけど。ネタバレすると「アーラン=二郎」とは思わなかった。阿郎かなと。本文中に「次男という意味」と書かれていたから推測しようと思えばできたんだろうけど、二郎神君なのに犬連れてないし!犬!!大事だよ、二郎神君といえば犬!
本編の他に、著者あとがきや訳者あとがきが作品や時代背景などの解説のようになっていてかなり面白い。Netflixのドラマも見たくなっちゃった。『夜の獣〜』より好きです。 -
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おばあさんが南極のペンギンに会いにいく冒険物語かなと思って読み始めたら、思っていたよりも深い話で、どんどん引き込まれていきました。
主人公である85歳のヴェロニカ・マクリーディの人生が丸ごと詰まった1冊。
スコットランドの豪邸にひとりで住むヴェロニカ。筋金入りの頑固で気難しくて毒舌キレッキレのおばあちゃん。ペンギンの危機を知って財産を託すことを思いつく。
そこからの行動力がすごい!研究機関を視察したいとあっという間に手配して南極に行ってしまうんだから!
ヴェロニカを突き動かしたものはペンギンはもちろん、封印していた過去、十代の頃の日記の存在が大きい。パトリック(見つけ出した唯一の身内である孫)が日記を読み進める中でヴェロニカの過去を知るわけだけど、それはもう壮絶。大切な人たちを次々に奪われて人間不信にもなります。
哀しみも涙も封じ込めて生きてきたヴェロニカ。南極で生活するうちに硬い殻で覆われていた過去が少しずつ溶け出し始める。
ヴェロニカが、そしてパトリックがどうなるのか、目が離せなくて一気読みでした。
孤独に傷を抱えて生きてきたヴェロニカを癒したペンギンと自然の力、南極チームの温かさ、パトリックの存在。読み応えがありました。読み終わる頃にはヴェロニカのことが愛おしくなります。
そして、子ペンギンのピップが本当にかわいい!
あとこの本のタイトルがとても良い… -
Posted by ブクログ
ネタバレ85歳の気難しい老女ヴェロニカの過去と現在が本人と孫の視点から綴られる。
ペンギンに魅入られ有無を言わさず南極行きを決行したヴェロニカ。皮肉屋で人の言葉の裏を読み頑固もの。なのに憎めない!
愛を奪われ深く傷ついた彼女がその後ただただ孤独に生きてきた何十年という年月。
死の淵で、自分の人生はなんの意味もなさなかったという思いに至ることはどれほど虚しいことだろう。
そんな彼女のまさに光となったペンギンの赤ちゃんのピップ。彼女とピップの対話のシーンには涙が止まらなかった。同じく孤独に生きてきた孫のパトリックとの間に芽生えた絆にも救われた。どんなものも愛に勝るものはない。 -
Posted by ブクログ
85歳になる大金持ちのヴェロニカには、家族がいない。子どもはおらず、夫とは離婚している。
しかし、いろいろ調べさせ孫がいることを突き止め、会いに行く。だが、たった一人の孫パトリックは、失業中で大麻を吸って応対され、がっかりする。
南極のアデリーペンギンの研究が、資金難で困っていることを知ったヴェロニカは、遺産を譲る相手としてふさわしいかを判断するために、南極の研究施設に乗り込んでしまう。
何とも痛快なおばあちゃん。でも、その過去の体験は悲しくつらいものだった。
かわいらしい子どものペンギンとのシーンに癒されつつ、ヴェロニカの過去とこれからに惹きつけられた。
エピローグは、あったほうが良かったのかどうが、意見が分かれるかな。