タイトルに惹かれた。邦題も原題も。邦題はまず、それだけでわかるのがロード・ノベルであろうということ。そして原題"No Country for Girls"にもコーエン兄弟の映画を観ている者ならば、意味深であることがわかるだろうということ。実際に読み始めて中盤に至る頃には『ノー・カントリー』というコーエン兄弟の傑作ロードムービーを想起させる物語であることもわかる。その元となったコーエン・ムーヴィーも凄い。非情の殺し屋に追われる恐怖が全面を張りつめさせるが、コーエン映画らしく、独特の静謐さと乗りとを備えた傑作であった。その原作小説がある。コーマック・マッカーシーの『No Country for Men』、日本では『血と暴力の国』(黒原敏行訳)というタイトルで当時の読書界を(同時にコーエン兄弟は『ノーカントリー』で映画界を!)騒然とさせた作品でもある。
オーストラリアの内陸部を舞台にしたシスターフッドノワール。
ハイスクールを退学したばかりの少女チャーリーが金のインゴットの1つを盗んで逃げているところから物語は明ける。姉のジーンとその彼氏のダリルが隠された金のインゴット10キロを強奪し、その一部をチャーリーは盗んできたのだった。
ダリルを嫌うチャーリーが嫌がらせとして盗んできたのだったが、偶発的に起きたある事件をきっかけにそこに事情があって訪れたアボリジニの大学生ナオを巻き込んだ逃走へと変わっていく。
対極的な2人がひたすらオーストラリアの荒野をさまよい続けるのだが、視点の切り替えと、その筆致のためか惹き込まれる。
夢中で読んでしまう瞬間もあって、終盤に差し掛かるまではかなり好感を持てた。
ただ終盤からはいささかジャンルの枠組みに嵌まりすぎてしまった気がしないでもない。
原題は『No Country For Girls』と、コーマック・マッカーシーの傑作『No Country For Old Men』のもじり。大金を盗んだ者が、謎の追手から逃れる逃走の物語という構造も似てる気がする。そのせいもあってか終盤をそれほど高く評価出来ないのはどうしても『No Country For Old Men』が頭にチラついてしまって、大きな飛躍を求めすぎてしまったかも。それと個人的に物語にもっと痛みを欲しがりすぎてる部分もある。これはあくまで好みだけど。
邦題は『銃と助手席の歌』、原題に込められた意味を考えると、さすがにこの邦題は明後日の方向を向きすぎじゃないかな。