「人類にとってあらゆる疑問の中の疑問、他の全ての背後にあってどれよりも興味深い問題は、自然において人はどんな地位を占めているのか、そして宇宙に対して人はどんな関わりを持っているのかを明らかにする事。」トマス・ハクスリー
脳は大人でも1,400グラム弱しかない。体重の2%に過ぎないのに、体全体のエネルギーの20%も消費し、(新生児では65%)遺伝子の80%は脳のコード。頭蓋の中には1,000億のニューロンがある。
脳の後部と中央部(脳幹や小脳、大脳基底核)は、ほぼ爬虫類の脳と同じ。「爬虫類脳」は脳の中で最も古い部分で、平衡感覚や呼吸、消化、心臓の鼓動、血圧といった基本的な動物の機能を司っている。この部分はまた、戦いや狩猟、配偶行動、なわばり意識など、生存と繁殖に必要な行動もコントロールしており、この起源は5億年前に遡る。
爬虫類から哺乳類に進化すると、大脳辺縁系と呼ぶ哺乳類脳が登場する。これは社会集団の中で暮らす動物で発達する。これには感情も含まれる。各部分は以下の通り。
海馬、、、記憶の世界のへの入り口。短期記憶を処理して長期記憶にする場所。ここにダメージを受けると新たな長期記憶が作れなくなる。現在という時に囚われたままになる。
扁桃核、、、感情、特に恐怖の占める座であり、ここで感情が生まれて刻みつけられる。
視床、、、中継局のようなもの。脳幹から感覚のシグナルを取り込み、様々な皮質へ送り出す。
視床下部、、、体温やリズム、空腹、喉の渇き、生殖と快楽の要素を調整している。
ニューロンは樹状突起を経てほかのニューロンからメッセージを受け取る。樹状突起はニューロンの先端から伸びた蔓植物の巻きひげのようなもの。ニューロンのもう片方の端には軸索という長い線維があり、軸索はほかの1万ものニューロンの樹状突起とつながる。
脳波について、深い眠りではデルタ波が生じ、これは0.1-4ヘルツ。活動的な精神状態では、12-30ヘルツで振動するβ波になる。
宇宙を統べる基本的な力は4つ。
1. 重力
2. 電磁力
3. 弱い核力
4. 強い核力
左脳と右脳は全く異なる意図を持っている。例えば、マイケルガザニガは被験者の左脳に「大学卒業後何になりたいか?」を問うたら「製図工になりたい」と答えたが、右脳に同じ質問をしたら「自動車レーサー」と文字を並べた。脳を支配している(言語化できる)のは左脳だが、言語化できない右脳自体にも心がある。
女性の15%は光受容体の色素として特別な(第四の)タイプのものを持たせるような遺伝子変異がある。これにより、彼女達は色素が三タイプしか持っていない大多数の人には分からない色の区別ができる。
20世紀の大半に渡り、心理学の有力な理論の一つである行動主義は意識の重要性を完全に否定していた。行動主義は動物や人間の客観的な行動だけが研究するに値し、心の中の主観的な状態はそれに値しないとする考え方。
意識とは、目標を成し遂げるために、種々のパラメータ(温度、空間、時間、他者との関係性)で多数のフィードバックループを用いて世界のモデルを構築するプロセスの事。
自己認識とは世界のモデルを構築し、自分がいる未来をシミュレートする事。
DARPA(米国国防高等研究計画局)の唯一の綱領は画期的なイノベーション。唯一の存在理由は、未来の実現を加速する事。
インターネットの次は、人間の脳を直接インターネットにつなげるブレインネット。ブレインネット時代では、会話の際に感情、ニュアンス、ためらいなど、心理状態の情報まで全て伝えられる。人々が極めて私的な思考や感覚を共有できる。
心でビデオゲーム、コンピュータ、家電を操作する。我々自身がモノのOSの一部となる。一人の作業員が心で動力源をコントロールし、ビルや家を建てられるようになる。
近い将来、遺伝子学、電磁気学、薬物療法により人の記憶を変え、知能を高める事ができるようになる。
感覚情報はまず脳幹を通って視床に達する。視床は中継局の役割を果たし、そこからシグナルは各種感覚の脳葉へと導かれ、分析される。処理された情報は前頭前皮へ届き、そこで我々の意識に入り、数秒から数分までの幅を持つ短期記憶を形成する。この記憶をもっと長く保存するには、情報をさらに海馬に通し、様々なカテゴリに分解し、様々な皮質に導く。感情は扁桃核に、言葉は側頭葉に、色などの視覚は後頭葉に、触覚や運動感覚は頭頂葉に留まる。
人間の眼の網膜には錐体と桿体という細胞が約1億3000万個あり、これらがいつでも1億ビットの景色の情報を処理して記憶している。この大量のデータが集められ、毎秒900万ビットの情報を運ぶ視神経を通じて視床に送られる。
情報は、後頭葉から前頭前皮質へ送られ、人はイメージを「見て」短期記憶を形成する。その情報はさらに海馬に送られ、海馬はそれを処理して最大24時間保存する。それから記憶は切り刻まれ、各種皮質に散らばっていく。
アルツハイマー病は、タウタンパク質の形成によって始まり、それがベータアミロイドというねばねばした糊状の物質の形成を加速し、それが脳につまる事によって引き起こされる。
記憶を長持ちさせる最良の方法は、その日の間に定期的に復習し、長期記憶に保存する事。
ウェブは我々の人生の出来事だけでなく、意識をも記録する巨大なライブラリになるかもしれない。
「知能の本当の証は知識ではなく、想像力である。」アインシュタイン
世界レベルの技術に達するにはどんな分野でも1万時間の練習が必要。
脳の左半球が収束的思考、右半球が拡散的思考を担当している。左側は細部を調べ、それを論理的かつ分析的に処理するが、その中で優先すべき抽象的なつながりを認識できない。右側はもっと想像力と直感に富み、情報のパズルのピースを組み合わせてひとつにまとめるといった総合的な働きをする傾向がある。未来をシュミレートする能力は拡散的思考力に依存する。
ドーパミンは記憶の形成と忘却の両方を積極的に制御している。忘却は時と共に劣化する現象ではなく、ドーパミンの介在を必要とする積極的なプロセスである。
人がチンパンジーと分かれて以降、過去500-600万年のうちにおよそ15回遺伝子変異が起きており、この変異は人の進化の重大な転機と関係している。
ヒトゲノムに存在する遺伝子がおよそ23,000個で、それでどうやって1,000億のニューロンが形成する1,000兆の結合をコントロールしているのか?ヒトゲノムの遺伝子の方が1,000億分の1のオーダーしかしかないので、我々の存在自体が数学的にありえないように思える。
夢は科学的発見も助ける。オットー・レヴィは、神経伝達物質がシナプスを通る情報の移動を助ける事を思いつき、アウグスト・ケクレはベンゼンの夢を見た。
人は一晩に夢を約2時間見ており、一つの夢は5分から20分続く。つまり、平均寿命のあいだに約6年夢を見て過ごす。
イルカは哺乳類なので、溺れないように一度に脳の片側だけ眠る。
意識がありながら見る夢を明晰夢と言う。この夢の見方は、見た夢をノートに記録する事。寝る前に、「夢の途中で目覚め、夢の世界で動き回っている自分に気づくのだ」と自分に言い聞かせること。枕に頭を載せる前にそういう心構えでいること。
我々は夢を見ている時、夢で空想している事を実行して惨事をもたらさないように体が麻痺状態になる。
意識は4つのレベルで評価できる。レベル0はサーモスタットや植物。単純なパラメーターで少数のフィードバックループを形成する。レベル1は昆虫や爬虫類。移動性があるので空間に関する世界のモデルを構築する。レベル2は哺乳類。自分と同種の他者との関係において世界のモデルを構築し、感情を必要とする。レベル3が人類。時間と自己認識を取り入れる事で物事が将来どう進展するのかをシミュレートし、そのモデルにおいて自分の占める場所を明らかにする。
脳はジョークの未来をシミュレートし、オチを聞いて意表を突かれる。恐怖の本質も同じ。物事が意表をついて恐ろしくなるとショックを受ける。
人間は美男美女の能力を買いかぶりがちになる。
人間の脳を構成するニューロンの数は1,000億個、これは天の川銀河の星の数と変わらない。可視宇宙にある銀河の総数も同じ。
天の川銀河の中に地球型惑星は10億個ある。
犬は厳格な序列がある群れで狩りをする狼の子孫なので、人間の主人をαオス、つまり群れのリーダーと見なしている可能性が高い。
イルカの脳の新皮質は雑誌6ページ分。人間は4ページ分。
地球外の知性に遭遇する事があれば、それは本質的にポスト生物である可能性が圧倒的に高い。肉体は進化の過程で不要となるからだ。
核力がもうすこし強かったら太陽は何十億年も前に燃え尽き、DNAが出現する暇はなかったし、もう少し核力が弱ければ太陽は点火されず、やはり我々は存在していない。同様に重力がもっと強ければ宇宙は数十億年前にビッグクランチ(収縮して潰れてしまう)を起こして、我々は皆焼け死んでいたし、もっと重力が弱ければ宇宙はビッグフリーズに至り、我々は凍え死んでいた。このような微調整は我々の細胞の一個一個の原子にまで及んでいる。物理学上では我々は星屑でできている。身の回りにある原子は全て恒星の熱で作られた。生命は貴重であり奇跡である。
7-10万年前の人口はわずか数百~数千人である。
意識は宇宙の根本をなす存在であり、原子よりも根本的である。物質世界は移り変わっても意識はずっと決定的な要素のままでいる。ある意味で意識が現実を創り出しているのだ。身の回りにある原子の存在そのものがそれを見たり触れたりできる我々の能力に基づいている。