田村隆一のレビュー一覧

  • あなたに似た人

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    ネタバレ

    ダールの作品で、マチルダを読んで時に、すごく面白いと思った反面、
    少し危うさも感じた。この本を子供に読ませてよいのだろうかと。

    しかし、ダールの自伝を読んだときに、その心配は消えた。
    ダールの自伝を読んだとき、ジブリの紅の豚を思い出した。

    ダールの作品は、暗いところや、斜めに構えたところがあるが、
    人間の温かさや、奥の深さが共通していることに気がついた。

    大人向けの本も出しているというので手に取ったのがこの本である。
    ますます、ダールが好きになり、翻訳ものは、ほぼ全部読ませていただいた。

    時間があるときに、順に書評を書いていきたい。

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    2011年06月20日
  • 死者のあやまち

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    長編も短編も面白いというのは、本当にものすごいことなのだなとしみじみ…気持ちよく騙されました☆

    ヘイスティングスに次ぐ?レギュラーの、女流作家オリヴァ夫人の希望で彼女の滞在先へやってきたポワロ氏の困惑ぶりが、気の毒やら可笑しいやら。
    マーマレードにうんざりしつつ、仕方なくちょっぴりだけトーストに載せるシーンが何とも(笑)

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    2019年01月16日
  • 予告殺人

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    何度目かの再読。何度読んでも色褪せない面白さがあります。
    現代の推理小説にはこの人物描写の豊かさはなかなかみられないなと思いながら読みました。

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    2010年09月20日
  • あなたに似た人

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    どの作品もちょっと皮肉な味わいがあって、おもしろい。
    そこから人間という存在のおかしみだったり、滑稽な姿だったり、ある種の恐ろしさが立ち上がっている様が心に響く。
    個人的には『海の中へ』がお気に入り。

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    2009年11月26日
  • リスタデール卿の謎

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    ロマンスと冒険とハッピーエンド。3拍子揃った、現代のおとぎ話のような作品を多く含む短編集。が、より印象的なのは、そうでない作品の方である。いずれにしてもいかにもクリスティで、誰が読んでも楽しめる(と思う)。中学の頃読んだ本と訳が違って、若干の違和感があった。

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    2009年10月04日
  • オズワルド叔父さん

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    哄笑の物語。
    ただし、まじめな人は読んではいけません。

    再読のつもりで、本棚から引っ張り出したのですがきっと違います。これだけの作品、たとえ20年前に読んだとしても、記憶の片隅には残っているはず。多分、兄貴の一人の購入本が混ざり込んだのでしょう。

    1920年前後のヨーロッパの国王、音楽家、画家、著作家、科学者などの実在の人物に超強力なバイアグラを飲ませて、その狂態を描くという、悪趣味この上ない物語。よくもまあ、名誉毀損などで訴えられなかったなあと思います。
    しかし、悪趣味もここまで突き抜ければいっそ潔いかと。もちろん、ダールという才人が書いた作品だからでしょうが。

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    2016年08月07日
  • あなたに似た人

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    さすが、ダールは本棚に入れている人も多いですね。「海の中へ」の結末その後が気になる!「わが愛しき妻よ、鳩よ」に出てくるのがスネープさん。ハリー・ポッターを想像してしまいました。

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    2009年10月04日
  • あなたに似た人

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    海外の作家があまり得意でない私もこれは読めます。人の本質やあまりきれいでない一面を短編でさらっと見せてくれます。

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    2009年10月04日
  • あなたに似た人

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    その夜、ある家の晩餐の席で一つの賭けがなされた。美食家を自認する客の一人が、食卓に出た珍しい葡萄酒の銘柄を判定できると言いだしたのだ。賭け金はなんと邸宅と当主の令嬢――絶大な自信を持つ当主はその賭けに同意したが……幻想とユーモアと恐怖をちりばめた奇妙な味の短篇を得意とする鬼才ダールが、賭博に打ちこむ人間の心の恐ろしさと人間の想像力の恐ろしさをテーマに描いた珠玉の15篇を収める代表的短篇集。
    (05/02/21)

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    2009年10月04日
  • オズワルド叔父さん

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    「来訪者」の続編。
    ある甲虫から取れる粉は最強の媚薬だった!

    これを売りさばいて大儲け、さらに彼はこの薬を使ってとんでもないことを考えていた・・



    破天荒な叔父が繰り広げる短編。楽しい本です。

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    2009年10月04日
  • 死者のあやまち

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    先に『ポアロとグリーンショアの阿房宮』を読み終えていたので、これが長編になったんだなと読みながら理解した。
    長編化されたことで、登場人物に深みが増して良かった。

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    2026年10月09日
  • リスタデール卿の謎

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    クリスティはノンシリーズでも面白いなあ。
    ええっ!となるような驚きでは無く、なるほどそういう事か!という納得感があって楽しい。
    これほど多岐にわたる“意外な展開”が書けるの、ホント凄いわ。
    不可解な謎とロマンスの組み合わせが好きだけど、「ナイチンゲール荘」「事故」「白鳥の歌」のようなシリアスな話も結構良かった。

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    2026年10月04日
  • シタフォードの秘密

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    『シタフォードの秘密』は、降霊会や雪に閉ざされた村という不気味な設定ながら、意外にも軽快な読み口のミステリーだった。トリックや犯人は比較的小粒だが、伏線が丁寧に張られており、真相には十分な納得感がある。何より魅力的なのはエミリー、エンダビー、ジェイムズの三人の関係性で、特にエミリーの快活ながらも愛情深い言動が印象的だった。ウィリット夫人の描写が少なかったのは少し残念だが、作品全体としては人物描写の巧みさが光る良作。最後にエミリーがジェイムズを選ぶ結末も好ましく、読後感の良いクリスティ作品だった。④

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    2026年09月24日
  • 魔術の殺人

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    登場人物が多くて人間関係は複雑。学生時代から続く友情は心温まるものだけど、少々拗れているように見える親子関係や離婚・死別と再婚による縁戚関係は良い感情ばかりではない上に、クセのある人が多いせいで不穏な空気が漂っている。そんな登場人物たちをミス・マープルが観察している人物描写はさすがクリスティーで、事件のトリック自体はそれほど複雑なものではないけれどおもしろかった。

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    2026年08月18日
  • マギンティ夫人は死んだ

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    ポアロの過去の事件を解決するシリーズ。他は五匹の子豚だったかな。

    準主役と言ってよいくらいのオリヴァ夫人。
    自身の探偵小説に愚痴を言っているシーンがあるが、これがクリスティ本人の愚痴をオリヴァ夫人に代弁させていたのかな?かなり悪態をついていた。

    登場人物が多い(途中で増える)ので、相関図とか書かないと分からなくなった。

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    2026年08月09日
  • ねじれた家

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    ひ、ひえぇ〜〜〜。久々にゾクッとする結末でした……。”手記”が怖すぎる。
    クリスティーはだいぶ読み慣れたと思い込んでいたので、こんなに鋭い刃を隠し持っていたこと、すっかり忘れていましたね。。

    ノンシリーズの中で映像化されていることもあり、前から注目していた作品。先日あやごぜさんが読まれていたのを機に、手に取ってみました。
    「インパクトがある」ことは知っていたのであれこれ予想はしていたものの、こればかりは……。いや私、”悲劇”を読んだのになんで思いつかないのよ!

    ねじれた家(どんな家か最後まで想像つかず……)に住む富豪の老人が殺され、若い後妻を含め、様々な思惑を持つ家族が疑心暗鬼になる……という、クリスティー作品にもよくある設定。よく出てくるキャラクターたち。
    孫娘ソフィアの婚約者のチャールズを通して展開が進みますが、どの家族も疑わしいようで決定打に欠けるような……。これはという証拠が出てきてもしっくり来ず、なんとなく不穏な雰囲気に居心地の悪い思いをしながら読み進めました。
    いちおう犯人が逮捕されても落ち着かないまま……からのあの結末。いやほんと、久しぶりに戦慄が走りましたね。。
    あらゆる人物に疑いの目を向けさせつつ、大事なことは堂々と書いてある。クリスティー、あなたは本当に唯一無二のミステリの女王です。

    正直ソフィアも疑っていたので、その点ではハッピーエンドと呼べるのですけど、でもね。このワトスンかヘイスティングズ顔負けのチャールズじゃなくて、お父さんが現場に出ていたらもっと早く解決したのでは??と思ってしまいますね( ˊᵕˋ ;)

    なんとも凄みのある作品。イヤミスを求める方にオススメしたいですが、ぜひ前評判を何も入れず、まっさらな気持ちで手に取って衝撃を受けてほしいですね〜。

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    2026年07月28日
  • マギンティ夫人は死んだ

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    audibleにて。たぶん初めて読んだ作品。『鈍色幻視行』で他人の空似な人が出ていた田村隆一訳。ちょっと嬉しい。掃除婦が殺される地味目の事件、と思いきや過去の女性による犯罪が絡んできて、話が複雑に。思い込みをうまくついた犯人はなるほどだけれど、馴染みが薄いというか、知らないことではあった。トリックはシンプルながら面白い。
    楽しいのはオリヴァ夫人。よく聞く、漫画などの原作者と実写化サイドのゴタゴタをコミカルに。ついポアロものに知らん恋愛をねじ込まれるところを想像して笑ってしまう。最近の映画化でもあったなあ。
    …クリスティーの映像化への恨みつらみがこもった作品?

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    2026年07月10日
  • ねじれた家

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    アガサ・クリスティー仲間(と私が勝手に思っている)の同僚が、私が勧めた『春にして君を離れ』を読んでくれたので、彼女おすすめのこちらを読んでみました。

    アガサ・クリスティーのノンシリーズもの。
    原題は『CROOKED HOUSE』。
    1949年の作品。

    一族の当主が殺され、それまでなんとか均衡を保っていた家族が綻びだすというクリスティーお得意の展開。
    主人公チャールズはポアロでもマープルでもなく、ヒロインと結婚したいだけの外交官なので、殺人事件は一向に解決せず、物語の大半はこの「ねじれた家」の「ねじれた家族」の話が続きます。

    しかしながら、それがおもしろいんだな。
    さすがのクリスティーというか、描写も会話も洒脱でクラシックな上品さがあり、読んでいるだけで楽しい。

    舞台となる〝ねじれた家〟「スリー・ゲイブルズ(三つの切妻)」は、玄関ホールは一緒だけど、内部が三つの独立した建物になっているという構造らしく、「ねじれた家族」のメタファーでもあるわけです。
    これはビジュアルで見てみたいと思ったら映画になってるんですね。グレン・クローズ、テレンス・スタンプ出演。

    家族全員がどこか不気味で残酷で、みんな怪しく見える。
    私はユースティス、あるいは気を衒ってソフィアかチャールズが犯人かと予想しましたが、これもいつものことでクリスティーの場合は、誰が犯人かということより、なぜこの人が犯人なのかがおもしろい。
    (他の人の感想を見ていたら「読み終わって犯人がわかったあとでも俺は◯◯が真犯人だと思ってる!」という意見があって共感しました。なんかね、あの人が一番腹黒そうなんだよねー。)

    画家だったり殺人犯だったり固有名詞がちょこちょこ出てくるんですが、ここは脚注がほしかったところ。

    ・エディス・トムソン(イーディス・トンプソン)
    1922年、8歳年下の愛人フレデリック・バイウォーターズが夫を殺害。手紙で殺人を教唆したとして処刑された。

    ・コンスタンス・ケント
    1860年、16歳のときに4歳の異母弟を殺害。
    1865年、聖職者に罪を告白し逮捕。
    聖職者の守秘義務が議論を呼ぶ。
    41歳で釈放、看護師、寮母となる。
    1944年、100歳で死去。

    コンスタンス・ケントは有名な殺人犯のようで、私たちが「酒鬼薔薇」の名前をあげるように当時は普通に使われていたんでしょうか。
    この事件は他にも小説になってるらしいので読んでみたいです。

    それから「とりかえっ子」という言葉。
    「妖精がきれいな子をさらってそのかわりにおいて行く小さくて醜い子の意」と訳注がありました。英語でなんていうのか調べてみたら「changeling」。

    (原文を検索していたらAIモードが思いっきり犯人の名前を掲載していました笑)

    主人公のチャールズが探偵としてはポンコツすぎるんですが、そのぶん、推理小説としてよりも、奇妙な家族の物語としてクリスティーのストーリテリングが堪能できる作品でありました。もうこのまま解決しないで迷宮入りしてもいいんじゃないかとすら思った。

    (225ページ)
    「うちの家族みたいに愛情がもつれあったような形で暮らしているのはもっとよくないと、あたし、思うの。
    と言うのはね、家族みんながちいさな〝ねじれた家〟の中に、一緒にごたごた住んでいるということなのよ。〝ねじれた〟と言ったのは悪い意味じゃなくって、ひとりひとりではまっすぐに立っていられないという意味なの。それぞれが、ちょっと曲がったり絡みあったりしてるということよ」

    (352ページ)
    「探偵小説じゃね、つぎからつぎへと人が殺されていくのよ」
    「でも最後には犯人がわかってしまうわ。だって、おしまいまで生き残った人がそうなんですもの」


    以下、引用&メモ

    ・エディス・トムソン(イーディス・トンプソン)
    1922年、8歳年下の愛人フレデリック・バイウォーターズが夫を殺害。手紙で殺人を教唆したとして処刑された。

    ・コンスタンス・ケント
    1860年、16歳のときに4歳の異母弟を殺害。
    1865年、聖職者に罪を告白。
    聖職者の守秘義務が議論を呼ぶ。
    41歳で釈放、看護師、寮母となる。
    1944年、100歳で死去。

    ・シャーロット・コーデイ(シャルロット・コルデー
    フランス革命においてマラーを暗殺。

    43
    信じられぬ光景だった! 私はスリー・ゲイブルズ(三つの切妻)と呼ばれているわけがわからなかった。イレヴン・ゲイブルズ(十一の切妻)といったほうが、ふさわしいのに!
    奇妙なことに、家は見なれない具合にねじれていた──そのわけはわかるような気がした。いってみればコテッジふうなのだ。それも、まったく釣り合いを無視して、ふくれあがったようなコテッジだ。大きな拡大鏡でのぞいて見た田舎の農家という感じであった。はすかいになった梁、木骨石積み造り、切妻──夜のうちに、キノコのように伸びてしまった〝ちいさなねじれた家〟だ!


    47
    「いかにもあの人らしくやってきたわ。そう、ハレム・タイプなのね。ただ坐ったきりで、おいしいものを食べたり、きれいなドレスや宝石を集めたり、三文小説や映画を見たりするのが好きなのよ。」

    54
    「しゃくにさわるわね、このつる草のやつは。いちばんたちが悪い草ですよ。草を枯らすし、絡みつくし──とても根こそぎにできませんよ、なにしろ土の下で根をはっているんだから」

    55
    「どうして、女優になってまで子供をつくるのか、わたしにはわかりませんよ。」

    56
    「フィリップ・レオニデスは、なにをなさっているんです?」
    「本を書いてるんですよ。どういうわけだか知りませんがね。だれも、読みたいなんて人はいませんよ。みんな、知られざる歴史上のディテール、そんなものばかりなんですよ。」

    64
    顔は、当節のご婦人がお化粧をぜんぜんしない時に見せる、ショッキングなほどの素顔だった。

    65
    「喜劇というものは、サスペンスを高めるものなのよ。」

    66
    「エディス・トムスンの芝居だったら、こういうふうに演るものだとお思いになりません?」

    68
    「わからないでしょうね! 娘があるって、どんなにいいものか」と言ったが、それは私に言っているようでもあるし、また私のうしろの本棚に喋っているようにもとれた。

    69
    「心配しないで。お母さまならプロデューサーの言うとおり演るわ。あたしがプロデューサーよ」

    73
    「お父上に、これといっていつもと変わったところはなかったんですか」
    ちょっと皮肉な調子で、フィリップはそれに答えた。
    「父はべつに、その日殺されることになっているんだなんてことは、一言も言いませんでしたよ」

    82
    私はまず、優雅につんと上向いた彼女の鼻の魅力に気づいた。それはアシーン・セイラーをかすかに思わせる──これが桃色のネグリジェを着ていた騒々しい女だとはとても信じられない。

    アシーン・セイラー Athene Seyler
    イギリスの女優

    90
    この部屋は、まったく彼女そのものだった。壁は白く──真白に、室内装飾でよく言われるような、象牙色や淡いクリーム色を指すあの白色ではなくて、ほんとに白一色で塗られている。マントルピースの上に掲げてある、バトルシップ・ブルーとダーク・グレイの三角形をあしらった幾何学的な幻想風の絵をのぞいたら、壁にはなんの絵もかかっていない。それに家具も、ほとんどないといってもよかった──三、四脚の椅子、ガラス製のテーブル、それから小さな書棚というほんの当座の必要品だけで、なんの飾りもなく、あるものは光と空間ばかりだった。

    91
    五十ぐらいの年を思わせる彼女の髪は灰色で、イートン校の学生風に短くカットしてあったが、それが、彼女の品のいい頭によく似合っていて、短いカットと言うと私がいつも思い浮かべるあの奇妙な感じはすこしもなかった。

    97
    彼はさらに、ロンドンで彼女がやっている仕事の性質についてニ、三の質問をした。それは核分裂の際の放射線を利用してやらなければならない仕事だと彼女は答えた。
    「ほんとに、原子爆弾のお仕事をやっておられるんですか」
    「わたくしの仕事は、そんな破壊的な性質はすこしもないんですの。研究室は、医療面における実験をすすめているのです」

    101
    「部屋って、ずいぶん不思議なものですな。そこに住んでいる人間について、じつに多くのことを教えてくれるものだ」

    104
    「オウガスタス・ジョンの作ですがね、なかなか個性をもっていますな、どうです?」

    サージェントの多くの画がそうだが、この画もなにか残酷なにおいがたちこめている。

    115
    「メイドの話では、二人は相思相愛の仲だというのですがね」
    「どうしてわかるんだ?」
    「夫人があの青年のためにコーヒーを注いでやるとき、彼女を見つめる彼の眼つきだというんですがね」

    127
    「おじいさまはただブレンダがほしかっただけ。乞食娘と結婚するコフィチュア王の役が、ちょっとやってみたかったのよ。」

    129
    「どうして男の人って、穴居人のような野蛮人だけが異性にとって魅力的なんだなんて考えるのかしら。」

    137
    ジョゼベル
    「〝犬は女の両の掌を残し、すべてを食らいぬ〟どうして犬は掌を食べなかったんでしょう?」

    139
    「針さしには書き置きをさして行かなかったでしょうよ。そんなの、ずいぶん大時代の本にしかないわね。奥さんが旦那さまに別れるときにそうするんですって。でもいまじや、だれも針さしなんか持ってないんだから通用しないわね」

    147
    「まるで『ヴォイジイ家の遺産相続』みたいだったわ」

    162
    「プリチャードだって人づきあいはいい男だったっていうからな」

    167
    「『あたしの居間にいらっしゃいません』と蜘蛛は蠅に言いました、ですか?」

    183
    「たとえば、コンスタンス・ケントが、殺した弟を非常に可愛いがっていたことはだれしもみとめるところだ。ところが、彼女はその弟が自分より大事にされ、可愛いがられることをひどくねたんだわけだ。この例にもみられるように、憎んでいるものより愛するものを殺すことはよくある例だ。愛情の執着があるからこそ、その人間の存在が我慢ならなくなるということがよくあり得るものだからな。」

    『最初の刑事 ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』

    194
    「でも駄目、話さない。あんたときたらワトスンと同じだもの」
    「駄目、シャーロック・ホームズは好きじゃないわ。古くさいわよ。馬車でかけまわっているんですもの」

    203
    「いったい、共産主義者がなんの理由でおじいさまを殺したんでしょう?」
    「人の話では、ああいうやからは突拍子もないことをするそうですからね。でも、もしそうでないとすれば旧教徒よ。旧教徒ときたら、バビロンの緋色の淫婦みたいに俗化してますからね」

    204
    「クレメンシイは、夫が財産をみんななくしても、ちっとも気にかけない人よ。むしろ喜ぶかもしれないわ。あの人は物を持たないことに妙にあこがれている人ですもの。」

    205
    その部屋の中でいちばん美しい眺めは、マグダとユースティスの親子だった。二人はソファに並んで腰かけていたが、ゲインスボロの肖像画のように見えた。
    その隣りの母親のほうは、片手をソファにかけて坐っていたが、ゲインスボロの描いたスリー・ゲイブルズの伯爵夫人のように、ゆったりとしたタフタのガウンをきて、錦織りのスリッパをはいたきゃしゃな足を片一方だけ前に投げだしていた。

    206
    「ねえ、ロンドン警視庁ってどんなところです?」マグダはからだを乗り出すようにして訊いた。「いつも知りたいと思っているんですけど……テーブルとデスクと椅子があって? カーテンはどんなの? お花なんてないでしょ? 口述録音機はあるんでしょうね?」

    207
    「お母さまはロンドン警視庁のシーンがおもしろくないからといって、ババソール・ジョーンズさんに頼んでカットしてもらったんじゃないの。滑稽なだけだっておっしゃってたじゃない」

    216
    「いい仕事というものは、熱意と情熱をもち、素直な直感力にもとづいてなされてはじめてできるものなのです。お金をかけた設備とか訓練とか実験などは、あなたのお考えになるほど役には立たないものなんです。」

    220
    「あの人ときたら、不便な生活が好きで、コップは一つしか使わないというような人なんですよ。モダンな生き方というのかもしれませんがね。なにしろ、過去だの生活の美しさだのという観念がないらしいですね」

    225
    「うちの家族はあんまり仲がよすぎていけないのよ。あんまりお互いに愛しあいすぎるの。家族によっては、お互いが敵ででもあるかのように憎みあっていることがあるわ。それもあまりいいとは言えないけど、うちの家族みたいに愛情がもつれあったような形で暮らしているのはもっとよくないと、あたし、思うの。
    と言うのはね、家族みんながちいさな〝ねじれた家〟の中に、一緒にごたごた住んでいるということなのよ。〝ねじれた〟と言ったのは悪い意味じゃなくって、ひとりひとりではまっすぐに立っていられないという意味なの。それぞれが、ちょっと曲がったり絡みあったりしてるということよ」

    227
    「まあ、あなたの年ごろでは、恋愛といえば、若いきれいな男女が月の光のもとで語るものと思うのも無理ないことだけど」

    241
    「ぼく、ヘンリー八世が、アン・ブリンにすばらしい詩を贈ったこと知らなかった」

    276
    「わたし、いつもあの子のことをとりかえっ子(妖精がきれいな子をさらってそのかわりにおいて行く小さくて醜い子の意)って呼んでは、あの子を怒らせたものだわ。」

    changeling

    292
    夫とは反対に、ゲイツキルの言葉が終わるか終わらないうちに、マグダはおそろしい勢いで喋りだした。その豊かな朗々とした声は、ちょうど満ちてくる潮がせせらぎをかきけすように、弁護士のかぼそい口調をうちくだいた。

    350
    モーニング・ルーム

    352
    「探偵小説じゃね、つぎからつぎへと人が殺されていくのよ」
    「でも最後には犯人がわかってしまうわ。だって、おしまいまで生き残った人がそうなんですもの」

    373
    シャーロット・コーデイの話をあたしにしてくれたもの。シャーロットは、あの人のお風呂でだれかを殺したんだって。これは、あんまり利口なやり方じゃないわ。


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    2026年02月04日
  • 死者のあやまち

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    探偵ゲームを行うので授賞式にオリヴァ夫人より招かれたポアロ。探偵ゲームの死体役の少女マーリンがゲーム中に本当にしたいとして発見される。
    ジョージ・スタッブス郷の若奥さんのハティの元にまた従兄弟のエティエンヌ・ド・スーザが来ると手紙が来るが、ハティはあいつは人殺しをするヤバい奴だという。スーザが来てから逃げ出して消えたハティ。これは二重殺人なのかとなるが、オチにドキリ。ジョージがハティを愛する良き夫感が出まくっており、スーザのミスリードがさらに引っ張ってくるのでやられる。近くのユースホステルや最初に出てくるハイカーとかもオチに絡ませてくるのも流石にうまい。

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    2026年01月25日
  • マギンティ夫人は死んだ

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    登場人物がとても多く、過去と現在とで謎が交錯しているのもあり、謎解きや状況理解が大変だった。
    最後の真相、特にトリックについては見事に騙されて悔しさ反面気持ち良かった。

    クリスティー本人なのか訳者によるものか分からないけど表現がユーモラスで面白かった。
    特に、マギンティ夫人の住んでいた家に訪れたポアロが、洗濯物が干してある寝室に対して
    「無計画な出産による野放図なとりで」と表したのが、すごく失礼な物言いなのに言葉選びが巧みなのでつい笑ってしまった。

    終盤、事件の真相を含ませながら話すポアロに対してスペンス警視が思わず殺意を抱いてしまっている様子がまた面白かった。

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    2026年01月20日