中村安希のレビュー一覧
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なんかすっごくいい本に出会った…。ほとんどジャケ買いで、おいしいものがいっぱい出てくる旅エッセイなのかな、と軽い気持ちで買ったけれど、この濃さは何。深夜特急をはじめて読んだときのような感動。それは旅のハードさを大げさに語るでもなく、つまらない自分語りばかりをきかされるのでもなく、ほんとうに、ただ、旅。その視線がまっすぐでシンプルでただ美しくて、まるでそれが当たり前のことのような感じで書かれているのがいい。すごい高尚なことは何も書かれていないけどなぜかこの人の魂の気高さに触れてしまう。そんなにひどくないはずの解説ですら、この人の透明すぎる文章の前ではくすんで感じられた。すごい人が現れたな。
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当時26歳の作者が歩き見聞きしてきた世界がストレートな感情で書かれていてとても良かった。
他の旅行記にありがちな「彼らは貧乏で汚いかもしれないがその魂は高潔である」とか抜かす"理解のある彼くん"的なものは一切なく、汚いものは汚い、嫌いなものは嫌いとしっかり主張する姿勢で、若干思想的な部分やほかの旅行者や現地人を見下しているように感じられるところもありつつもそうした人間らしい部分を隠さないところがかえって好印象だった。
扱われるエピソードはドラマチックなものは少なく、その場所でのワンシーンや著者の心に残ったことなど"ちょっとしたこと"ばかりで構成されてお -
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ネタバレ旅といえば思いつくがまま行きたい場所に行き、宿と交渉したり、現地の人と食べて飲みコミュニケーションを取る、そんなイメージが浮かんでくるが、まさにそのイメージまんまの旅をしている中村さん。
旅人たちの間でゲロ雑巾と言われるエチオピア料理のインジェラに魅了され、スーダンではカビ臭くて土の味がする水を渇望し、アルメニアでは浴びるように自家製ウォッカを飲まされ...想像絶する世界にいる。
食べるということは生きるためでもあるが、人とコミュニケーションを取るためのものでもあるんだなと改めて思った。
旅と食べ物といえば小泉武夫が出てくる。
彼の著書にもモンゴルの遊牧民のゲルで主人たちと沢山の酒や肉 -
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本書の筆者である中村安希を最初に読んだのは、3年ほど前のことであり、それは、開高健ノンフィクション賞を受賞した「インパラの朝」という本だった。「インパラの朝」は旅行記だった。アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパの47か国をを684日間まわる、とても過酷な旅の記録だった。私はこの本がとても気に入り、その後も中村安希の本を何冊か読んでいる。
本書「食べる。」も久しぶりに中村安希の本を読んでみようと思って手にとったものだ。「食べる。」という題名から考えて、当然、何か「食」「食文化」等に関するノンフィクションだと思っていたが、実際には、この本も旅行記だった。「食べる。」ことは、収載されている16話に必ず -
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高給を投げ打って薄給なNPOに転職する高学歴な女性たちを「N女」と名づけ、その人たちへのインタビューを集めたもの。「研究」なんて銘打っているけど研究とはいえない。この著者の本は前にも読んだことがあるんだけど、何というか思いつきで飛び込んで浅いところで書き進んでいくような感じがするんだよね。それでいながら、泥縄的な書きぶりや素朴な疑問の連発が浅薄な感じにはならないのが不思議。
NPOで働く女性たちの働きぶりを読んでいると、これって最近の本だったかなという錯覚が。ところが5年も前に出た本なんだよね。でも、リモートワークとか兼業とか一つ職場に長居しないとか、コロナを受けてようやく一般的になりかけてき -
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海外旅行なんてもってのほか!なご時世、せめて旅行記でも読んで…と思って手を伸ばしたのですが、2年近くバックパッカーでアジア~アフリカ~ヨーロッパと旅をする、というレベルが違いすぎる旅で、旅行気分を味わう気分にはとてもなれない1冊でした(笑
ただ、同時に、今の時点では上手く言語化できないのですが、この清冽な湧水のような、飾り気のないのにエネルギーを秘めた文章が、自分の中に地下水脈のように静かに広がって、意識しないうちに影響を受けているような気がしています。
解説を見ると「青少年読書感想文コンクール」の高校の部の課題図書にもなったそうで、確かに若いうちに読んだら面白そう、と思いました。
さて、旅 -
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ネタバレ最後まで読むと、良さがわかる本。
以下、本文より
そして、もしかしたら「N女」は、と考えた。崩れゆく日本に現れた最後の切り札になり得るかもしれない、と。
女のキャリアライフは複雑だ。キャリア志向を持つ女性の多くは、できることなら第一線で仕事をしたいと思いつつも、男性と同じように100%では走り続けられないことを知っている。仕事にもプライベートにも、どうにか折り合いをつけて生きていかなくてはいけないことに気づいている。
女性の場合、キャリアアップのためには努力するが、ポジションアップへの関心は薄いかもしれません。今でも女性たちは、男性中心の企業構造の中で踏ん張り続けています。
余計なこ