あらすじ
牛や鶏と並んで日本の食文化に広く浸透する“豚”。この生き物は世界の国々でどう思われ、どう扱われているのか。コーランで禁忌とされる豚、食糧難解決のため大量飼育される豚、風刺画の中の豚。その存在は神聖か、不浄か。著者は真実を見極めるため、イスラム圏、旧ソ連圏を経て極寒の地、シベリアへ。豚を通して見えてくる文化、宗教、政治、歴史とは? 独自取材で挑む渾身のノンフィクション。
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Posted by ブクログ
これは必読。颯爽としたスピード感、知的欲求心のくすぐりかた、食べてみたいと思わせる食事の描き方。読書ってこれだからやめられないという幸福感に満ち溢れる。ものすごくおもしろい。著者のオフィシャルサイトに行ってみたら、本に掲載されていなかった写真や、本にもある写真がカラーでアップロードされていました。
イスラム教徒が豚を食べないのは知っていたが、なぜ、というところまで突っ込んで調べてみたことはなかった。友達にも、宗教上の理由、と言われそれ以上聞いてしまうのが憚られた。
しかしこの本を読むと、あ、普通に聞いてみてもよかったんだなとはっとさせられる。また私の、自国の文化や歴史についての知識の浅さが浮き彫りとなり、普段ダラダラ過ごしすぎだと背筋が伸びる思いだった。
とりあえず、サーロ食べてみたい。
Posted by ブクログ
豚を訪ねて三千里。
世界の養豚と豚肉料理を追って世界を巡る旅。宗教によっては禁忌される豚。生産性という観点では効率よくしかも脂肪分が多いという。
なぜ豚が好まれ、また嫌われていったのか。筆者の探求は留まるところを知らない。
チュニジア、イスラエル、日本、リトアニア、バルト三国、ルーマニア、モルドバ、ウクライナ、シベリア。
筆者の豚にかけた情熱には驚くばかり。
Posted by ブクログ
世界のある地域では神聖視され、別の地域では忌避され、また別の地域では食料として重要な存在である豚さんの存在を追ってイスラム世界や旧ソ連を旅したルポルタージュ。万全の計画に基づくわけではなさそうな、わりと行き当たりばったりの旅の様子が描かれていて、それはそれで面白い。へんに分析的だったり、お膳立てや入念な下調べによらないぶん、疾走感があるとでもいうのだろうか。終わった旅をしたり顔で解説されるのでなく、いま旅をしながら一緒に困ったり迷ったりしているような感じがして、おもしろい読み味の本だと思った。
そんなわけで、結局は確たる結論もないままに終わるんだけど、少なくとも以下の2つのことは印象に残った。
1.豚は他の家畜に比べて、大きさもほどよく寒さに強くて、妊娠期間も短く、しかも多頭産であるなど、便利だということ。
2.イスラムでは他の戒律よりも守られているような感じの禁豚食が、ソ連の時代には、現在の○○スタンとかいったイスラム系の国でも増産しやすいことを理由に豚肉食という選択肢しかなくなり、そうなれば人々も豚肉を食べていた。くやしいけど、宗教的信条を政治は同断してしまう。