中村安希のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
海外旅行なんてもってのほか!なご時世、せめて旅行記でも読んで…と思って手を伸ばしたのですが、2年近くバックパッカーでアジア~アフリカ~ヨーロッパと旅をする、というレベルが違いすぎる旅で、旅行気分を味わう気分にはとてもなれない1冊でした(笑
ただ、同時に、今の時点では上手く言語化できないのですが、この清冽な湧水のような、飾り気のないのにエネルギーを秘めた文章が、自分の中に地下水脈のように静かに広がって、意識しないうちに影響を受けているような気がしています。
解説を見ると「青少年読書感想文コンクール」の高校の部の課題図書にもなったそうで、確かに若いうちに読んだら面白そう、と思いました。
さて、旅…と言うか旅行は、「一時的な非日常」だと思います。非日常に置かれるからこそ、新たな思索ができる面があると思うのです。
ただ、著者の2年近い旅の中では旅自体が日常化してしまう訳で、それなりに負荷がかかる状況の中でも、ふと行き合うトラブルや人との接触において、著者の真っ直ぐな意思の強さがあらわれていて、ここまで自分を貫き、考えて思いを綴れることには崇敬の念すら感じました。
そんな著者、カリフォルニア大アーバイン校で舞台芸術を学び、26歳でこの旅に出て今はノンフィクション作家というハイスペックながら波乱万丈な経歴。本著の後に政治家との対談や食に関する本も書かれているということで、読んでみようかなと思っています。
本著は300ページもない短い文庫本で、ごく短い文章で旅の中のエピソードを連ねていくスタイル。
どちらかと言うと、貧困国や恵まれない状況にある国(例えばイラン)での出会いにフォーカスされていて、著者の問題意識がそちらに向いていることが感じられます。
比較的裕福?なマレーシアでのエピソードは、旅行者として現地の人から犯罪の片棒を担がされそうになる話で、さて金銭的な裕福さと精神的な幸せは比例するのかどうか…と考えてしまいます。
アフリカに入ってからのエピソードはその思いをより強くするものばかり。アフリカを援助が必要な国、貧しい国として下に見てはいないだろうか。
ちなみに、個人的に印象的だったのは、モーリタニアのトゥアレグの1節。わずか3ページの文章ながら、サハラ砂漠の音のない夜の情景に強く惹きつけられました。
無邪気なコトを言うと、早くコロナ禍が終わって、遠くまで旅に出られるようになってほしい! -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後まで読むと、良さがわかる本。
以下、本文より
そして、もしかしたら「N女」は、と考えた。崩れゆく日本に現れた最後の切り札になり得るかもしれない、と。
女のキャリアライフは複雑だ。キャリア志向を持つ女性の多くは、できることなら第一線で仕事をしたいと思いつつも、男性と同じように100%では走り続けられないことを知っている。仕事にもプライベートにも、どうにか折り合いをつけて生きていかなくてはいけないことに気づいている。
女性の場合、キャリアアップのためには努力するが、ポジションアップへの関心は薄いかもしれません。今でも女性たちは、男性中心の企業構造の中で踏ん張り続けています。
余計なことに力を使わず自由にやりたい人にとっては、(NPOは)魅力があるのではないかと。自由に社会をクリエイトしたい人、自分でどんどんデザインしていける人にとっては、刺激的な職場なのではないでしょうか。
リクルートと出会う。「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」という社の理念に惹かれたのだ
自分の手の届く範囲、顔の見える範囲を良くする
自分の生活を犠牲にした働き方ではなく、細くとも長く続けられる働き方と仕事の選び方をしたいです。社会貢献的な仕事に携わっている人は、どうしても自分の生活や体のバランスを無視して邁進してしまう傾向が強いと思うのですが、基本は自分や家族あっての社会だという気持ちが強くなりました。まずは自分と目の前にいる人たちを大事にすること、そのうえで、私たちが生きている社会をよくしたいと考えること、その順番を忘れずにいたいと思います。
一番ワクワクしたのがリクルートだったんですよね。リクルートは、人をやる気にさせるのがめちゃくちゃ上手な会社だと思います。
多様化する女性社会の行く末のヒント。N女たちの生き様より3つ
・目の前の問題を自己犠牲によって解決しようとしない
・冷静かつ論理的、八つ当たりをしない
・人と自分とは違うという事実を受け止めること
経営が苦しいのは補助金が少ないからだといわない。できるだけ助成金や補助金に頼らず、自力で資金を集めたいと口を揃える
新しく事業を始めるにあたって、行政からの指導や規制の壁はなかったのか?
補助金に頼らない自立型の運営をしているので、あまり色々言われない。
行政からは「委託」を受ける。
行政をあてにはしないが「協働」はする
政府にはお金がない
貧乏というのは残念なことだ。しかし、悲しいことではない、とN女たちを見ていて思う。お金がないから出てくる知恵があるし、いい時代を知らないおかげで、現代や未来を過度に悲観せずにすんでいる。 -
Posted by ブクログ
ボランティアではなく、NPOで働いて収入を得ている女性(N女)へのインタビュー集&考察。
冒頭のNPOに転職しようとしている友人とのやり取りを読んでいる時点では、高学歴&バリキャリぶりが鼻について(ひがみかも…)読むのをやめようかと思ったけれど、通読すると大変面白かった。
人助けではなく、税金を払ってもらって、将来の国をよくするためにNPOで就労支援をしているというN女の意見には深く納得した。
魚をあげるのではなく、魚のとり方を教える。といったことが支援として重要だと感じた。
一方で、スキルのあるN女が一般企業で働いた場合と比べると、給料に雲泥の差がある。夫の収入があるからこそ働けている人も多いようだ。社会貢献は素敵なことだけれど、仕事として成立させるのはかなりのハードルだと感じた。
N女の仕事が理解され、政治や企業の仕事になれば、ある程度はうまく回りだすのかなとも感じた。 -
Posted by ブクログ
NPO業界に従事する女性の物語。NPO業界の課題、女性視点で描くところが興味深い。メモ。
(1)90年代に子ども時代を過ごした人たちにとって問題とは国内ではなく海外で起きていること、貢献とはイコール国際貢献を意味してはいなかったか。
(2)女のキャリアライフは複雑だ。キャリア志向を持つ女性の多くは出来ることなら第一線で仕事をしたいと思いつつも男性と同じ様に100%では走り続けられないことを知っている。‥結局のところ自分の足で立ちたいという気持ちがあるならどこかの時点ではかなはず自分の問題と向き合わざるを得なくなるのだ。
(3)学問は社会に還元しないと意味がない。
(4)民間企業で進められてきた男女共同参画はあくまでも男性中心主義の企業文化の中に男並みの戦闘能力を持った女性の参入を目指すという文脈。
(5)森山さんの受け答えには彼女の権限と責任における彼女自身の意向の様なものが真っ直ぐに反映されている感じがあった。
(6)ブランクとは今までの自分の在り方をリセットして新たな視点を得られる時期。
(7)目の前の問題を自己犠牲によって解決しようとしない。マゾチグムに美を見出そうとする日本の風習は私達を蝕むだけで根本的には何の問題も解決しない。
(8)人は自分とは違うという事実。どの様なものであれ、自分の基準を他人に当てはめようとすればあなたは敵を作る事になる。
(9)誰かの問題ではなく私の問題。当事者性も背負った世代が新しい芽、それこそがN女的なるもの。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中村安希さんの著書「N女の研究」は、NPOで働く女性(=N女)を対象にしたインタビューを踏まえて書かれた本です。
「N女」といってもさまざまな方がいますが、
この本の取材対象となった「N女」から、
著者が盗みたいこと(学びたいこと)として挙げているポイントがあります。
その一つが、「人は、自分とは違うという事実を受け止めること」
[様々な壁にぶつかりながら、女性たちがそれぞれの道で奮闘してきたことはよく分かる。
ただし、他の人に自分と同じ奮闘を期待してはいけないとも思う。あなたは育児も家事も仕事も完璧にやってきたスーパーウーマンかもしれない。
すごい努力をしたのだと思うし、きっと環境にも恵まれていたのだろう。
しかし世の中の誰もが、あなたのように強いわけではないし、優秀で努力家で環境に恵まれているわけではない。
あるいは良妻賢母として役割を果たしてきたあなたは、立派だと思う。
でもみんながみんな、あなたと同じ家事能力や忍耐力を持ち合わせているわけではない。
世の中には、いろんな理由で「働けない」「産めない」「頑張れない」人もいるし、いろいろな事情から「働かない」「産まない」「頑張らない」という選択をしている人たちもいて、そこには、正しいも間違いもなく、ただ、違いがあるだけがある。
N女たちは日々、いろいろな立場(自分とは違う立場)にいる人たちを、違いのままに受け入れながら活動している](本書・第4章より)
自分が一生懸命に頑張り、壁を乗り越えてきた経験をすると、他の人にも、その頑張りや努力を当てはめようとしてしまうことがあります。
他の人の問題を解決しようとして、抱えてしまうこともあります。
そんな時は、無意識に、「こんなに頑張っている」「こんなに耐えている」という思いを抱えているかもしれません。
著者は、「自己犠牲によって解決を図ろうとすることは、敵対や分裂を産み、根本的には何も解決しない」といいます。
自己犠牲をせず、他人と比較もしない。
ただ、違いがあることを受けとめる。
そして、ゆるやかな連帯を維持していくために、
利害の一致しない隣の女性のために、一緒に戦うことが、女性をとりまく社会的な課題を解決することにつながるというのが、著者の考えです。
私自身、自分の考え方や生き方と照らし合わせてみると、「ただ、違いがあることを受けとめる」という、
このシンプルな考え方を持つことが、実は、案外、難しいのかもしれないと思っています。
「これで、いいのだろうか?」と不安に駆られれば、
「自分は、これでいいのだ」という確信を持つために、自分と他の誰かを比べたり、自分の言動に賛同を求めてしまいがちな気がします。それが強く出ると「あなたも同じように頑張って」という押しつけがましい一面になる気がします。
「頑張る人」も、「頑張らない人」も、「頑張れない人」も、いる。それを認めたうえで、緩やかにつながり、社会の中にある課題を解決していくために、ともに戦う。
そんな懐の深い考え方を持てたら、いいのだけれど…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレバックパッカーであり、ライターである著者が世界の僻地辺境へ行って現地で食べたものと、それを食べることになった過程、その周囲にいた人たちの生活、その人たちとのやり取りを淡々とした文章で描く。バックパッカーものは、ふわふわした印象を持つものが多いんだけど、かなり冷静に客観視しながら書いている感じ。旅もその聡明な感じのする姿勢などにもあこがれる。とてもではないが、口にいれることのないような、日本で言えば衛生的でないもの・・・・。エジプトのあの水の壺から水を飲むだなんて・・・・。でも現地で昔から使われている知恵で、いつも冷たいのだ・・・。グリーンティーとか、雑巾みたいな、なにかとか。おもしろすぎる。
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Posted by ブクログ
世界のある地域では神聖視され、別の地域では忌避され、また別の地域では食料として重要な存在である豚さんの存在を追ってイスラム世界や旧ソ連を旅したルポルタージュ。万全の計画に基づくわけではなさそうな、わりと行き当たりばったりの旅の様子が描かれていて、それはそれで面白い。へんに分析的だったり、お膳立てや入念な下調べによらないぶん、疾走感があるとでもいうのだろうか。終わった旅をしたり顔で解説されるのでなく、いま旅をしながら一緒に困ったり迷ったりしているような感じがして、おもしろい読み味の本だと思った。
そんなわけで、結局は確たる結論もないままに終わるんだけど、少なくとも以下の2つのことは印象に残った。
1.豚は他の家畜に比べて、大きさもほどよく寒さに強くて、妊娠期間も短く、しかも多頭産であるなど、便利だということ。
2.イスラムでは他の戒律よりも守られているような感じの禁豚食が、ソ連の時代には、現在の○○スタンとかいったイスラム系の国でも増産しやすいことを理由に豚肉食という選択肢しかなくなり、そうなれば人々も豚肉を食べていた。くやしいけど、宗教的信条を政治は同断してしまう。 -
Posted by ブクログ
「豚」を追いかけ、ゆるゆるなツテをたどりながら、北アフリカから東欧・ロシアへと無謀な旅を続けるという狂気じみた理解不能ノンフィクション。嫌いじゃないです。
まず豚を追いかける動機の意味がよく分からない。それらしいことが冒頭に並べてあるが、「角煮に悩殺」とか一体何を言ってるのだろうか。
そしてよく分からないまま「アラブの春」渦中に単身チュニジアへ飛ぶ根性。戦場カメラマンなみ。
イスラム各国では忌み嫌われ、東欧では生け贄として捧げられ、ロシアでは人肉むさぼる独裁者スターリンにたとえられ、行く先々でその扱いが様々に移り変わっていく「豚」。
追いかけるほど遠ざかっていく。著者と豚との距離感が絶妙です。
この豚に対する異常なまでの執着心が伝わってくることが大事であって、動機とか目的とかゴールとかそんな細かいことはどうだっていいのである。