エドワード・ルトワックのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
戦略論の大家であるエドワード・ルトワックの戦略論の訳本。
ルトワック氏の戦略論の特徴は逆説的論理である。抑止論を例に取って冒頭説明しているが、戦争をしないために軍備を強化するというのは、ダイエットするために食べると同様の論理的飛躍が存在しており、戦略とはこのような逆説的論理に満ち満ちているという。
そのような論理からすると、平和は双方が戦争による破壊と殺戮に倦んで始めてもたらされるものだが、PKOはそれをさせないことによって、却って平和の芽を摘んでしまう。英国の爆撃機の後方監視レーダーは当初は救いの神だったが、次第に妨害され、最後は逆探でドイツ戦闘機が向かってくるという有害なものになってしまった。このように、戦略はゲームではなく、生きた人間の作用と反作用に特徴付けられているため、論理的と思ったことが逆効果になって逆説的状況に陥ってしまう。
また、氏は中盤から後半にかけて、技術、戦術、作戦、戦域、戦略と軍事目的の幅を広げて分析している。その中では一つの領域で正しいものが、組み合わさること(=現実世界)で逆説を産んでしまう。例えば、対戦車用攻撃機が開発されたそうだが、敵は戦車のみで行動せず、対空兵器も持っているので、技術レベルで適切なことが、戦術レベルでは無用の長物になってしまう、といったように。
面白いのは、日本の太平洋戦争は、米国を始めとする連合国との関係で生産力の差から始まった瞬間に負けていたと。唯一の戦略はワシントンを攻略して城下の盟を誓わせることだったが、それは物理的な不可能であるし、真珠湾という戦術レベルで勝ちすぎたことが、逆き米国を奮い立たせるという結果を産み、戦略のレベルでは大失敗だったという。
したがって、戦略家としては、各レベルを調和させることが重要ということになる。しかし、現実世界では、誰もが各層を見れる能力も責任も持っていない。その意味で指導者の舵取りが極めて重要となる。
難解な部分もあったが、斬新な理論と豊富な歴史的叙述に裏打ちされた名著である。 -
Posted by ブクログ
戦争を始めたら中途半端に休戦したりしてはならない。難民キャンプなどを作ってしまうと越境攻撃したりする拠点になってしまい難民以外の生き方をしらない世代も生まれてしまう。そのため徹底的にやらせるべきだし二度と歯向かう気が起きないようにすべきであると。つまり戦争当事者の両国の戦争欲を失くすために、心を折るまで戦わせるということ。
「うまくいくだろう」という考えはなにもしていない以上にひどい最悪の状態。降伏したほうがましなくらい。やるかやられるかしかない。備えよ常にや平和のために備えよが正しい。
男は戦士であるべきで、女は戦士を好む、としてそれが少子化や衰退の原因であるとしている。イーリアスの戦士の文化と呼んでいる。イスラエルのような危機にさらされている国では女性の社会進出もあるものの3人以上子供が産まれ少子化にはなっていないそう。韓国では似たような状況ではあるが少子化は起きている。その点への言及がほしかった。しかし男は強くあれ、戦士であれというマッチョな思想には同意する。女性に対して強くあれというのではなく外敵に対してであるのでいわゆる男尊女卑とは重ならないのがよい。みんなもイーリアス読もう。
そして進歩的社会の象徴とするヨーロッパの移民受け入れにもこの点から反対しておりヨーロッパの消滅は確実と言っているが、その点賛成である。移民は受け入れるべきではない。
最後のまとめで、戦争をしたいわけではなくて調略とか外交をつかってなるべく回避するものとしている。そしてその外交の時の圧力の一つとして軍事力を保持しておくというのが主張であり、やはり外交の一手段という王道の考え方であるので受け入れやすい。軍事力が強くても同盟関係を構築すれば戦闘に負けても戦争には勝てるのである。 -
Posted by ブクログ
2018年トランプ政権下で出版された軍事専門家による国家戦略論
日本の高度な戦略文化論から入る
1.0 江戸システム 幕藩体制をもって敵を消失させる戦略論
2.0 明治システム 西洋近代から日本を防衛し、近代化を達成した戦略
3.0 戦後システム 防衛費をGNPの1%に抑えながら経済大国に押し上げた戦略
4.0 今求められているシステム 北朝鮮の核や、中国の尖閣から日本を守るために必要な戦略
4.0に必要なもの
①北朝鮮のすべての核関連施設とすべてのミサイルを排除するために、先制攻撃を行う能力
②国家の衰退を防ぐために少子化を解消する。
③アメリカの同盟軍としての期待を捨て、日本はみずからを防衛するために、自前の国家安全保障を行うべきであり、そのために必要になるが「作戦実行メンタリティ」である。
④これまで用意してこなかった、防衛のための攻撃能力を手に入れるために、早急に手にいれるべきは、現実的な戦闘能力である。ズルをしても相手にかつこと。である。
⑤実戦の混乱した状況化でのみ、本物の戦闘能力を培うことができる。パレードで素晴らしい動きをする軍は、そのための訓練しかしておらず、弱い。
自衛隊に必要なのは、 ①常にアクションを仕掛けること、②即興性を恐れないこと ③リスクをとること だ。
⑥特殊部隊の育成が必要。冷戦後に大規模な戦闘は起きにくくなっている。大量に兵士が死ぬことは大きなリスクであり、たとえ高額な費用が発生しても、空爆やドローンのような
攻撃を大国はとっている。だが、その対象は、少数の敵であり、数万という空爆はあまりにも、非効率なのである。
朝鮮半島の置かれている状況
・防空システムは前近代的、
・中国が援助をしているにもかかわらず、核実験などを行い、中国の国益を損ね、中国の面子をつぶしているにがにがしい同盟国
・アメリカは北朝鮮を中国に渡すことはできない。そうなれば、朝鮮半島に中国軍がなだれこんでくる
・アメリカにとって、韓国は守るに値しない国である。38度線に近いソウルから南に経済を移転するように進言したにもかかわらず、韓国は実行していない。
・脆弱な韓国軍を補完するために、西ドイツとイタリアから武器をただ同然で導入できなにもかかわらず、韓国は自国での開発を優先した。
・トランプの戦略は、核を放棄した北朝鮮がアメリカの保護下で経済的に成長するための援助をすることであったが、うまくいっていない。ちなみに、南アと、リビアではうまく行った。
現代は、地政学(フィオポリティックス)から地経学(ジオエコノミックス)を重視する時代にはいった
地経学とは、地政学+経済+貿易 米中の対決でトランプが採用している戦略は、地経学をベースに組み立てられていることを語る
中国は、過去の時代に受けていた優遇措置をつかって、アメリカに経済的な挑戦をおこなっていて、トランプはその特恵を取り去ろうとしている。
軍事と密接に組みあわさった、経済、貿易の交渉はある面妥当なのである。
イノベーションは、過去、小さな組織から起こっていて、中国、アメリカの規模からは、かならずしも継続的に起こるかどうかは定かデハナイ。シリコンバレイは、官僚的なインド人が増えてきていて、ITなど技術の中心がかわりつつあることを最後に示唆している。
目次
第1章 日本4.0とは何か
第2章 北朝鮮の非核化は可能か
第3章 自衛隊進化論
第4章 日本は核武装すべきではない
第5章 自衛隊のための特殊部隊論
第6章 冷戦後に戦争の文化が終わった
第7章 「リスク回避」が戦争を長期化させる
第8章 地政学から、地経学へ
第9章 米中が戦う地経学的紛争
訳者解説 -
Posted by ブクログ
字数は少ないが内容は豊富な本。
2021年現在の国際環境は、日本にとってかなり有利になっている。チャイナ4.0の戦狼外交はチャイナ2.0の悪化版。世界的に反中ムードが高まっている。シーパワー=海軍力、マリタイムパワー=海洋力で、これは中国の理解していない同盟の戦略。
人材が常に入れ替わるため、ジェットエンジンのようなチームワークが必要な技術は開発できない。
日本が中国に対する戦略としては、冷戦期にスウェーデンがソ連とフィンランド国境に精鋭を配置したように、中立のまま台湾を支援できるような体勢をとることで抑止する。そして習近平をつまづかせる、すなわち中国からの様々な要請に全てノーと答えて習近平は失敗していると中国国内に印象付けること。
軍事テクノロジーの逆説として戦車と機関銃の話を挙げている。機関銃は陸軍のどの職種も採用せず、旅順ではロシアの水兵が使っていたことは面白い。戦車も英海軍の航空部隊から始まりチャーチルが承認、本来の任務を隠すために水槽(タンク)を開発していると欺瞞していた。
中東の木の枝と蛇の寓話。木の枝に意思はないが蛇にはある。相手は木の枝ではなく蛇であることを認識する重要性。
なんで中国はあんなことするんだろう、言うんだろうという疑問については「国内のことばかりで他者が見えていないから。文明論的にも対等は他国はおらず強者か弱者という見方しかできない」と簡潔な解答を与えてくれた。 -
Posted by ブクログ
稀代の戦略家エドワード・ルトワックの論文や講演録に関するインタビュー集 「戦争にチャンスを与えよ」は、エドワード・ルトワックにより1999年に発表された論文。この本はこの論文の他にこれまで発表した論文や講演録に関するインタビューを奥山真司氏が行い翻訳したものである。
日本人にとってはなかなか飲み込み難いタイトルの論文かもしれないし、内容に対する感想も十人十色だろう。
「戦争には目的がある。その目的は平和をもたらすことだ。人間は人間であるがゆえに、平和をもたらすことには、戦争による喪失や疲弊が必要になる。」ということだ。外部の介入によって、この自然なプロセスを途中で止めてしまえば、平和は決して訪れなくなってしまうのである。
現在では、じつに多くの国際組織が他人の戦争に介入することを己のビジネスにしている。これらの組織の際立った特徴は、戦闘を行うことは拒否しながら戦場に入り込むことである。
NGOも、自らの組織の永続を目指している。したがって、彼らの最優先事項は、目立つような状況下での活躍を誇示することで、善意の寄付を募ることにある。
ほーほー。時々、ニュースを見て胡散臭さを感じていたのはこういうことだったのかと腑に落ちた。しかし日本人として、西方の大国から侵略された時に、「今後の平和をもたらすために、アメリカや国連の介入はしないでください。」などとは決して言うことはできまい。難しいところだ。
第6章の「パラドキシカル・ロジックとは何か 戦略論」、第7章の「戦争から見たヨーロッパ 『戦士の文化」の喪失と人口減少」も必読である。多くの人に読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
予想以上におもしろい本でした。現代中国については、とにかく猛烈な経済成長をしているので、経済力で世界第一位となるのは時間の問題なので、習近平の支配が成功していると考えたくなります。彼は政敵になる可能性のある共産党員幹部たちなんと153万7000人を虐殺や投獄によって一掃し、憲法改正までして終身国家主席という地位を確保して独裁者となりました。
任期が決まっていて、後継者は選挙で選ばれるなら、クーデターによる暗殺の影に怯える必要はあまりないのですが、終身独裁者は常に暗殺に怯えて政敵を抹殺し続けなければならないところに彼の最大の弱みがある。そして彼がその地位を守るためには、経済成長と国力拡張を臣民に見せ続けなければならない。そして彼の強気な一帯一路や香港や台湾併合をめざす膨張路線はあらゆるところでトラブルを引き起こしている。
この本は、戦略の逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)についてさまざまな実例を紹介しながら説明してくれます。戦争が平和をもたらし、平和が戦争の原因となるということいついて我々は危機感を持らなければならない。
台湾は徴兵制を廃止して国防をアメリカ任せにすることで、経済的な発展と平和を享受していますが、その姿は日本とまるで一緒である。こういう視点から現代情勢を見つめ直すことが、平和ボケした日本人には必要だと思いました。 -
Posted by ブクログ
ルトワックの日本への指南書(前半)とグローバルな情勢分析。
題名の日本4.0とは、日本の戦略文化について、内戦を一掃した徳川幕府を1.0、西欧の帝国主義に飲み込まれないための明治政府の近代化政策が2.0、戦後の軍事面での弱体を日米安保に依存して経済に全力集中した3.0と整理する。その上で、3.0の構造は抑止が効く中露にはともかく、抑止できない北朝鮮との間では、自らの身を自らで守る必要があり、4.0と言うべき戦略文化に移行すべきというもの。
方法論としては、少子化の傾向を変えて、イノベーションや経済成長の基盤を維持し、北との関係で持っても使えない核兵器は持たず、代わりに実戦的な先制攻撃力や特殊部隊を確保することを挙げている。パレードだけ上手い軍隊を戦えないと非難して、イスラエルやフィンランドのように脅威に晒されている国の軍隊のリアリティを称賛している。
また、リアリティについては、第二次大戦後に、ポストヒロイックウォーとして、犠牲を避ける傾向がアメリカ軍でも強まっていることを指摘。イスラエルの単純な作戦と異なり、完璧を見据えて作戦規模が拡大して本末転倒になっている状況を指摘している。また、マティスやペトレイアスについても、politically correctな軍人で軍事合理性を欠いていると批判。要するにリスクを恐れない戦士の文化が消えつつあるということ。
また、最後の章で地政学から地経学という視点で米中対立を分析。
リアリスティックに戦士の文化を効率的に追求し、新たな戦略文化に至ること、これが現在日本の課題である。 -
ネタバレ 購入済み
ビザンツ帝国の戦略
一部ご紹介します。
・すべての考えられる状況において、可能な限り戦争を回避する。しかし、いつ何時戦争が勃発しても大丈夫なように行動する。
訓練を怠らないこと。常に戦闘準備を整えておくこと。
戦争準備の最大の目的は、戦争開始を余儀なくされる確率を減らすことにある。
・敵とその考え方に関する情報をできるだけ集め、継続的に敵の動きを監視する。
・攻撃と防御の両方で精力的に軍事行動を実施する。
多くの場合、小規模な部隊で攻撃し、総攻撃よりも斥候、襲撃および小規模な戦闘に重点を置く。
武力行使を最小限に留めることは、説得に応じる可能性のある者を説得する助けになり、
説得に応じない者を弱める助けになる。
・消耗戦争や他国の占領をしない。やるのは、「非戦闘」の機動(詭道)。
電撃戦や奇襲で、敵をかき乱し、素早く撤退する。
目的は敵を壊滅させることではない。うまくすれば敵を味方に変えてしまうこともできるからだ。
敵が複数いる場合、お互いを攻撃させるように仕向けられれば、単一の敵よりもかえって脅威は小さくなる。
・全般的な勢力均衡を変えるために同盟国を求め、戦争を首尾よく終わらせることを目指す。
外交は平時よりも戦時の方がより重要だ。
最も有用な同盟国は、敵の隣国だろう。なぜなら、彼らは敵との戦い方を熟知しているからだ。
・敵の政府転覆は勝利への最善の道である。
戦争のリスクや費用に比べれば、実に安上がりなので、積極的に行うべきである。
宗教的狂信者でさえ買収は可能である。なぜなら、狂信者はもともとクリエイティブなので、自分の大義に背く行動でさえ正当化できるものなのだ。
・外交や政府の転覆が十分でなく、戦争を行わなければならない場合、戦争は敵の強みを出させずに、敵の弱点を突く「合理的」な作戦と戦術を用いるべきである。
それには消耗戦を避け、辛抱強く徐々に相手を弱体化させることだ。
時間がかかるかもしれないが、急ぐ必要はない。
なぜなら、ある敵がいなくなってもすぐに代わりの敵が必ず現れるからだ。
・「戦わずして勝つ」ことを目指し、それでも戦争が勃発したら最小限の兵力と資源で戦争の勝利を得ることこそ理想である。
正義や道徳といった抽象的な価値の名の下に戦争を遂行するなどもってのほかである。
-
Posted by ブクログ
稀代の戦略家による日本改造論。多くの示唆と知的な刺激に満ちている 明解な文章で、分かりやすい。
2019年12月の発行なので、世界情勢は少し前のことを書いているが、米中冷戦についての予言などは、的中しているものもあり興味深い事この上ない。
エドワード・ルトワックは本書以外にも日本に関する著作がある。彼は日本の歴史や戦国時代の合戦、明治維新の変遷、日清・日露戦争についてよく知っているし、日本人とは違った視点でそれを語ることのできる(決して批判的ではない)軍事戦略家である。
2018年に発行された「日本4.0」で彼は、日本人は極めて高度な戦略文化をもった民族だと述べている。日本は、必要になれば状況に合わせて戦略的にシステムを構築できると彼は言う。直近の戦争に敗れはしたが、日米安保を利用し平和を享受している戦後システム(国防費がGDPの1%程度であるにも関わらず他国から攻撃されず生き延びている)もその一つだ。
しかし現在の日本は、その戦後システムでは対応できない状況にある。少子化による人口減少、北朝鮮の脅威、米中対立にこれからどのように対応していくか。その道筋をこの本では示してくれているのだ。
あくまでもルトワックの視点から書かれたものだ。先進国における少子化の理由や韓国人のトラウマの構造など、読者によっては納得できない内容も含まれているかもしれない。しかし、国際情勢を俯瞰して見るのに役立つ一冊であることは間違い無いだろう。
これから日本や世界はどうなるのだろう。後半年したら、この本をもう一度読み直したい。 -
Posted by ブクログ
企業間や人間関係にも使えそう、なるほどと思ったことのいくつかを。
「国の規模が大きいほど外国への理解度は低くなる」
企業でも同じことが言えると。
「大国は小国に勝てない」
他国連携要素が生じてしまう。
国家そのものの性質、国体を見抜き理解し、どう取り扱うかが重要。
代表的なアメリカ人は「人類には文化を超えた普遍的な性質がある」と心の底から信じている。
人種的、文化的なバックグラウンドを公の場で表面するのが憚れる国がアメリカ。違っているから相容れないことがある、とは微塵も考えない。
人種差別主義者と思われたら、人として終わった扱いになる。 -
Posted by ブクログ
稀代の戦略家と呼ばれる著者による中国論。
以下、本書より。
【日本政府への提言】
(2016年3月20日発行)
最後に現在の安倍首相や日本の対外政策担当者に向けて注意を喚起して、本書の結びとしたい。
「慎重で忍耐強い対応」というのは、通常はほぼ全ての国に対して勧められるもの。
だが、私がここで強調したいのは、中国のような規模が大きく、独裁的で不安定な国家に対しては、それが逆効果という事。
中国は、15年のうちに3度も政策を変更している。
さらに作戦レベルや現場レベルで、ソ連でさえ決して許さなかったような軍事冒険主義が実質的に容認されている。
これに対抗するには、有事に自動的に発動される迅速な対応策が予め用意されていなければならない。
中国が突然、尖閣に上陸した時、それに素早く対応できず、そこから対応策を検討し始めたり、米国に相談を持ちかけたりするようでは、大きな失敗に繋がるだろう。
現在の中国のような国家に対処するには、所謂「標準作戦手順」のようなものが必要。
これは予め合意・準備された行動計画の事。
慎重で相談しながらの忍耐強い対応は、相手もそれができる政府でなければ逆効果。
アルカイダ・マグレブのマリ占領に直面したフランスが、もし「慎重で忍耐強い対応」をしていたら手遅れになっていただろう。
国連やNATOで対応策を練っていたら間に合わなかった筈。
しかしフランスは、予め行動計画を準備していたからこそ、迅速に対応できた。
既に述べたように、日本は米国を頼りにしつつも、同時に全面的には頼るべきではない。
特に尖閣問題についてはそう言える。
現在の日本は、米国と同盟を組みながら中国に対峙しているが、ここで決定的に重要なのは、日本側からは何も仕掛けるべきではないという事。
つまり逆説的だが、日本は戦略を持つべきではないし、大きな計画を作るべきではないし、対応は全て「反応的」なものにすべき。
これが本書の結論。
巨大で不安定で予測不可能な中国に対し、敢えて積極的な計画をもって対抗しようとするのは、そもそも馬鹿げた事であり、成功する筈がない。
何が起きるかは予測不可能だから。
従って寧ろそれぞれ独立して多岐に渡る能力に支えられた「受動的な封じ込め政策」を行うべき。
真珠湾攻撃のようなアタックや、逆に平和イニシアチブなども進めずに、日本はひたすら受動的な「封じ込め政策」に徹するべき。
米国には、政府を批判しながら「イニシアチブを取れ!戦略がない!計画がない!」と「戦略」の推進を主張する愚かな人間がいる。
これは全く余計な事。
日本でこのような声が大きくならない事を祈るばかり。 -
ネタバレ 購入済み
外敵に備えるために
気になったところを一部、紹介します。
・勝つためには、あらゆる手段でサプライズを狙う必要がある。戦争の目的は「勝つこと」であり、「ルールを守る」ことではないからだ。それ故、機動の仕方だけでなく、メンタル面での柔軟性を身に付けねばならない。
・本当に実力のある軍隊は、全てを完璧に観客に見せるような演習(演劇)はできない。そのための練習を行うリソースがもったいないからだ。全ては本物の戦いのために使わなければならない。
・戦争で守る原則は「攻撃は最大の防御」「不測の事態を恐れるな」「リスクをとれ」である。
・地経学の目標は「国家の富の拡大、そして国民の就業率を最大化すること」
・正解のない状況(例えば戦場)にAIは対応できない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ独自の戦略論を持つ著者による、中国の対外戦略の推移とその問題点の指摘。及び、それに対して日本がどう対処すべきかの提案。
まあ、インタビューを元にまとめた物だけあって、サクサク読める(読めた)
中国に関しては「明日どうなるかわからない。何の担保も無い」以上、何らかの方針を立ててそれに基づいてこちら(日本)から働きかけるよりも、「封じ込め」と「リアクション」(中国が何をしでかしても対応できる様に各部署で準備しておいて、何かあったら「リアクション」)の方が適しているのでは?という案については、理解できる(中国相手にイニシアチブをとれるというのは傲慢すぎる)ただし、「国家のパラメータと変数」論については、事例として持ちだした物が恣意的すぎるというか、パラメータと変数を入れ替えていたようにも読めたので保留。
いずれにせよ、アフリカの独裁的な小国同様に不安定な「大国」が我が国の近隣に存在し、しかも直接我が国の領土に現在進行形で手を出していることを「脅威」と捉えない方が無理がある。
それより何より、「ローマ帝国の大戦略」「ビザンツ帝国の大戦略」を邦訳してよ!!