エドワード・ルトワックのレビュー一覧
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ネタバレアメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問。戦略家。歴史家。経済学者。
ルーマニアのトランシルバニア地方のアラド生まれ。イタリア、イギリス軍にて教育を受ける。一時イスラエルに居住。第3次中東戦争と第4次中東戦争を戦っている(陸戦でそれなりの戦果をあげている様子)。ロンドン大学で経済学の学位を取ったのちアメリカのジョンホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー。ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任。著書に「中国4.0」「自滅する中国〜なぜ世界帝国になれないのか」「クーデター入門ーその攻防の技術」他多数
全体のトーンとしては非常にエキセントリックで、実際の兵士や民間人の立場としてより、純粋な軍師、戦略家として、戦争という状態を人類のエコシステムの一部と捉え、それをあえて紛争から中途半端に抑えたり、人道支援として介入する国連、NGO等の戦争、紛争状態からの回避、支援が、かえって不安定状況の悪化、より非道い紛争を招く、という、読者に知的挑戦を与えている。これはシステム思考論におけるレバレッジポイントの考え方に似ており、(システム思考の求めているところとは異なるが)あえて平和という状態を無理に維持して、腐敗や不満の鬱屈をため込んだ不安定な状況を解放するためにあえて手放す(システム思考の中にも手放すことでレバレッジを得るというポイントがある)ことで戦争状態に放置する(争いが起こったら不介入で鎮まるのを待つことでそのエネルギーの解放により、平和という状態が確保できるという視点を持ち込んでいる。(著者は戦争を好んでいるわけではないし、避けるべきだとするが、避けざるを得ない状況になると、回避すべきではない、その代わり選択肢として戦略的思考による同盟の構築や電撃戦、欺瞞や包囲殲滅戦、戦略的な撤退等、総力戦は絶対避けるべきとの考え方をしている。また、敵との対応もインテリジェンスを駆使し、可能であれば買収する等、あらゆる手段を取るべきだ(戦争になってもドアは開け続け、交渉を継続すべきというインテリジェンス論(彼の独自の考え方で戦略は政治より強いという考え方がある)をベースに知的戦略論を読者に提示することで新たな視点を紹介している。
個人的にはあえてABC兵器等の非人道的及び人類の存亡に関わる兵器の使用について、忌避して書かれているようにも見えることから、1960年代のMAD(Mutual Assured Destructive:相互確証破壊)戦略等の戦略自体が狂っている状態からは距離を置いているところが気になるところである。 -
Posted by ブクログ
ルトワックの現代中国に対する見方をまとめたもので、彼の逆説的論理や中国は戦略下手説を知っている読者にとっては、本書の論旨に驚くところはない。 ただ、説得力に重厚さがないのは新書と薄い本のせいかと思っていたが、そうではなかった。
本書は、ルトワック著、奥山訳ではないのだ。奥山がルトワックにインタビューしてまとめた本だという。あとがきでそれを知り、少し興ざめである。
それでも、ルトワックの考えが、韓国の対日感情の解釈や、seapowerとmaritime powerなどで示され、さすが現代戦略家として説得力のある意見が開陳されている。一方で、周近平の後継が見えなくて不安定との意見には同意できない。
本書でルトワックがもっと知られて、本物の戦略に触れる人が少しでも増えてほしいと思う。 -
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「日本4.0」というタイトルだけれど、日本について論じている部分はごくわずかで、軍事分野を中心に国際的な戦略論の現在の潮流について解説(批判)した本。
もう少し日本について詳しく語ってほしかったが、そもそも知日派のような専門家ではないのだろう。
強く興味をそそられるようなテーマではなかったものの、「リスクを極端に恐れ、最小化しようとする現代の軍事文化」が却ってコストの増大や効率性の低下を招いている、という主張は、「一人も死なせてはならない」という前提を前に硬直してしまっている現在のコロナウイルス対策になにか当てはまるような気がして(国家レベルでも個人レベルでも)示唆的だった。 -
Posted by ブクログ
今から35年以上前だと思いますが、ノストラダムスの大予言シリーズを読んでいた時、21世紀には日米安保条約が無くなっている、というフレーズがあり、その部分が鮮明に頭に焼き付いています。
それから30年間、つい最近までは、日米安保条約が破棄されないなんてありえないことだと思ってきましたが、どんな条約にも期限があり、それが延長されているという原則に立てば、破棄されることもあるのですよね。日露中立条約が延長されなかったように。
この本では、戦後日本を安定的に成長させてきたシステム(日本3.0)が終わって、新たな国家戦略の構築をする(日本4.0)必要があることを述べています。地政学から、「地経学」の考え方が重要とのことです、地経学とは、初めて聞いた言葉でした。今後、興味を持ちたい内容でした。
以下は気になったポイントです。
・日本の問題は、1945年以降、有効に機能してきた「戦後システム(=軍事的敗北を経済的勝利に変える)」が、北朝鮮というむき出しの脅威には対応できなかったことにある(p10、16)
・日本の400年を見てみると、そのシステムが危機に直面するたびに、新たに包括的なシステムに更新してきたこと。これは世界でもあまり例を見ないこと(p11)
・日本の近代化は、軍事を自らのアイデンティティとしていた侍が、自分たちの特権を否定する近代的な軍隊への転換を主導したことは画期的である。これを理解できなかった、西郷隆盛のような脱落者を出しながらも成功した(p14)
・韓国は、北朝鮮問題に対する当事者意識、国防への責任意識をまるで持ち合わせておらず、ビジネスだけに関心を示している(p42)
・戦争で守る原則とは、1)常にアクションを仕掛ける、2)即興性を恐れない、3)リスクをとる(p67)
・核兵器の使い道は、相手の核兵器の使用を抑止すること、それを使うと相手も使い自国は破滅する、と考えてくれるのが前提(p73)
・現在の特殊部隊が優遇されるのは、戦争による犠牲者を受け入れられないことに起因する、これにより戦争は長引き、コストは浪費する(p84、138)
・ローマ帝国が得意としたのは包囲戦であった、包囲技術の優秀さと兵站面での優位に立つと、敵の食糧が尽きるまで待つことが可能であった。その現代版が、貿易禁止・武力封鎖となる(p116)
・新しい「地経学」の時代は、経済がその紛争の最大の原因だけでなく、その紛争に使われる唯一のツールとなる(p155)
・平和は敗者が負けを認めないと訪れない、なのでパレスチナ戦争は続く(p182)
2019年3月3日作成