あらすじ
“汝、平和を欲するなら、戦いに備えよ”
軍事戦略論の世界的名著ついに完訳!
日本人にとって最高のバイブル
──野中郁次郎氏(『失敗の本質』共著者/富士通総研理事長)
「平和を欲すれば戦争に備えよ」という逆説に込められたメッセージほど、現在の日本で軽んじられているものはない。未来の戦争に備えるには戦略と戦争の研究が欠かせないが、戦略に普遍的に作用する「逆説的論理」を解き明かし、戦争のリアリティーに迫るこの名著は、現代の日本人にとって最高のバイブルとなろう。
戦争に関する卓越した洞察力
──西原 正氏(平和・安全保障研究所理事長/元・防衛大学校長)
当代最高の戦略思想家ルトワック博士は、戦争に関する卓越した洞察力をもとに戦略の逆説性を説く。国連平和維持部隊は戦争を長引かせるだけだとの主張は、
常識を適用すると望まぬ結果をもたらすという逆説的分析で鋭い。著者はまた、
中国が2008年の世界金融危機を乗り切ったことで自己抑制を怠り、「G2」を目指すが、それは逆説的に幻想だと指弾する。日中対立時代の今日、日本人にとっても貴重な示唆である。
本書は、戦略研究の第一人者であるエドワード・ルトワック博士の代表的著作、
Strategy: The Logic of War and Peace (Belknap Press of Harvard
University Press, First edition, 1987. Revised and enlarged edition,
2001.)の全訳である。すでに中国、韓国、フランス、ロシア、トルコ、イタリア、ドイツ、エストニアなどで翻訳され、現代の古典的名著として世界中の読者を魅了してきた本書を、遂に日本の読者にも御披露目できることは、訳者二人にとってこの上ない喜びである。(訳者あとがき)
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Posted by ブクログ
戦略論の大家であるエドワード・ルトワックの戦略論の訳本。
ルトワック氏の戦略論の特徴は逆説的論理である。抑止論を例に取って冒頭説明しているが、戦争をしないために軍備を強化するというのは、ダイエットするために食べると同様の論理的飛躍が存在しており、戦略とはこのような逆説的論理に満ち満ちているという。
そのような論理からすると、平和は双方が戦争による破壊と殺戮に倦んで始めてもたらされるものだが、PKOはそれをさせないことによって、却って平和の芽を摘んでしまう。英国の爆撃機の後方監視レーダーは当初は救いの神だったが、次第に妨害され、最後は逆探でドイツ戦闘機が向かってくるという有害なものになってしまった。このように、戦略はゲームではなく、生きた人間の作用と反作用に特徴付けられているため、論理的と思ったことが逆効果になって逆説的状況に陥ってしまう。
また、氏は中盤から後半にかけて、技術、戦術、作戦、戦域、戦略と軍事目的の幅を広げて分析している。その中では一つの領域で正しいものが、組み合わさること(=現実世界)で逆説を産んでしまう。例えば、対戦車用攻撃機が開発されたそうだが、敵は戦車のみで行動せず、対空兵器も持っているので、技術レベルで適切なことが、戦術レベルでは無用の長物になってしまう、といったように。
面白いのは、日本の太平洋戦争は、米国を始めとする連合国との関係で生産力の差から始まった瞬間に負けていたと。唯一の戦略はワシントンを攻略して城下の盟を誓わせることだったが、それは物理的な不可能であるし、真珠湾という戦術レベルで勝ちすぎたことが、逆き米国を奮い立たせるという結果を産み、戦略のレベルでは大失敗だったという。
したがって、戦略家としては、各レベルを調和させることが重要ということになる。しかし、現実世界では、誰もが各層を見れる能力も責任も持っていない。その意味で指導者の舵取りが極めて重要となる。
難解な部分もあったが、斬新な理論と豊富な歴史的叙述に裏打ちされた名著である。
Posted by ブクログ
ルトワックの戦略論。戦略の逆説的論理が主題。対立する意志の間で生じる動的な競争が逆説的論理の源泉。魚雷艇や対戦車ミサイルの逆説。戦略のレベルには技術、戦術、戦略、大戦略とあり、それが垂直的な側面をなしている。一方で大戦略は階層として最上ながら幅広い裾野を持っていて、それが水平的な側面をなしている。ロンメルは垂直的に成功したが、水平的には失敗した。
Posted by ブクログ
現代の戦略研究の第一人者の一人である著者の和訳本で2014年に発行されているが、もともとは1987年原本出版であり、和訳が遅すぎよう。内容が難しいこともあるが、欧州各国はもちろん中国韓国よりも遅いのは、このような戦略研究者が防衛省や自衛隊に限られているというお寒い状況のせいだと思う。
副題の戦争と平和の論理こそが、内容を的確に示している。通常生活における合理的な直線思考とは異なり、逆説の論理が技術や戦術から戦略まであらゆる場面で支配している、という。それをこれでもか、という膨大な実例で解説する。
おおいに感心したが、難しい表現や複雑な説明も多々あり、一度読んだくらいでは理解したとは言いがたい。戦略論や戦略知識の乏しい私には再読することが必要のようだ。