アストリッド・リンドグレーンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ昔に書かれた話なので、導入部分がある。おもしろくなるまで頑張って読んでほしい話。
最近の本はいきなり本題に入ったり、導入で掴みにかかる話が増えている気がする。昔の話は導入でおだやかな(?)日常を延々描くので、最近の話を読み慣れるととっつきにくいかもしれない。これもタイパなのかな?
主人公カッレくんは、名探偵に憧れる14歳の少年です。自身も名探偵らしい行動をしようと、日々気になる事があると、よく観察し、メモしています。仲良しのエヴァロッタやアンデッシュには、時々冷やかされることもありますが、毎日楽しく遊んでいます。そんなある日、エヴァロッタの家に母親のいとこだという男、エイナルがやってきます。感じが悪くブラブラしているエイナルをカッレたちはよく思っていません。ところが、ある夜カッレは部屋からこっそり抜け出すエイナルを見かけ、後をつけていくことにします。エイナルは、何を隠しているのでしょうか?
何もないはずの田舎町で起こる事件をカッレくんが見事に推理していきます。当然ピンチにも陥ります。ハラハラドキドキのストーリーです。
原爆実験の話が出てきて、スェーデンでもニュースになっていたことに驚いた。 -
Posted by ブクログ
『長くつ下のピッピ』の生みの親で、私生活では二児の母でもあったリンドグレーン氏。
彼女の名前を聞いてまず思い浮かべるのは、子どもや木登りが大好きな元気いっぱいのおばあさん。何年も前に絵本雑誌MOEで見た肖像写真はどれも表情豊かで、幼少期に知り合っていたら、間違いなく懐いていただろうなーと思う。
だが本書での彼女は、一貫して文章がこわばっており、のちの児童文学作家像とはなかなか結びつきにくかった。(当時の肖像写真も凛としていてイケメンなんだけど、私のよく知る屈託のない笑顔からは程遠かった)
第二次世界大戦の開戦(1939)から終戦(1945)までを日記に綴っていたというリンドグレーン氏。日記には家族の動向だけでなく、ヨーロッパを中心とした世界各国の戦局が、詳細に書き込まれている。そうした情報は、ラジオや新聞記事・自身の職場(手紙の検閲)から収集したという。
いくら「何が起こるのかをはっきりさせるためだけ」とはいえ、「一市民(それも二児の母)の日記」と呼ぶには、「歴史的価値」という重厚感があり過ぎる。(ヒトラーやムッソリーニを「二人の図々しいガキ」とコケにする等の点に関しては、日記っぽいけど笑)
「これほど悪い状況になったのはつい最近のことだから、人間はもっと悪くなっていくと考えることで、いつも少しは慰められるのだ」(1940. 4. 14)
訳者同様、ヨーロッパの第二次世界大戦は私も見識がなく、経過内容については未だによく覚えていない…汗
しかし、ヨーロッパの中でもスウェーデン国民はほぼ無傷で生活できていたことや、隣国フィンランド(ロシアとの戦いで疲弊していた)を援助する動きがスウェーデン国内で高まっていたこと等、驚きと発見で満ちていた。
特に王室とメディア。
亡命する王族もいる中で、中立姿勢を貫いたスウェーデン国王や、ナチスに毅然と立ち向かったデンマーク国王が、政治家以上に頼もしく映った。何事も国民ファーストで、一度で良いからこんな強い君主に仕えたいと願ったほどである。
スウェーデンのメディアも、私が読んだ限りでは、日本のような偏向報道(※)は見られなかった。現に注意深いリンドグレーン氏も、メディアを疑う様子はなかったし。
(※)それでもウソを見破っている日本人は、当時大勢いたみたいだけど…
開戦時、長男ラッセは13歳、長女カーリンは5歳。
ラッセは思春期だからか、家族から離れることが多く、カーリンとは違い誕生日の記述が皆無だった。他国と比べ貧困や爆撃の心配がないとはいえ、やはり二人の身を案じる氏の親心が、痛いほど伝わってくる。
だが少なくともリンドグレーン家は、記念日を盛大に祝えるくらい生活に余裕があった。
氏はもちろん感謝の気持ちや他国の現状を忘れなかったが、他国に合わせようともしていなかった。まずは自分たちの生活を守る義務があるし、第一、育ち盛りの子どもを二人抱えている。
悲惨な世界に囲まれていても、スウェーデンの美しい初夏や子どもたちの成長ぶりのように、目を見張るべき景色が必ずそばにある。
「ねえ、生きてるって、ほんとうに素晴らしいことだわ」
ピッピのあのセリフが、自然と頭をよぎった。 -
Posted by ブクログ
シンプルな言葉で、とてもシンプルなことを言っているのだけれど、それができないまま何千年も過ごしてきた人類。
本書に収められている演説はもう40年くらい前のものだけれど、これまでの歴史同様、彼女が危惧していることが何も変わらないまま、暴力による支配が今現在も世界で起こっているという悲しい現実。
国と国などに限らず、家庭という小さな単位ですら、力の強い者が弱い者を暴力でコントロールしようとする愚行がまかり通っている。
この前は親が「いい暴力と悪い暴力がある」なんて大真面目に言って、子どもを暴力でコントロールしようとした自分を正当化してたからね。自分の親としての能力の無さを露呈させているだけだってことに気づいていない。愚かだ。
まあでも、国家が当たり前のようにそれをやっているんだから、説得力がないよね。
暴力からは何も生まれない。
この事実を全ての人が心から理解してくれる日が来ますように。
願いはかないそうにないけど。 -
Posted by ブクログ
名探偵カッレ.プロムクヴィストは事件に飢えていた。しかし大通りは夏の日差しの中で夢を見てまどろんでいるかのように、平穏そのものだった。やがて親友のアンデッシュがカッレの部屋に現れ、勇ましい女の子のエヴァロッタが加わると、三人はたちまち遊びに夢中になる。
エヴァロッタのお母さんのいとこ、エイナルおじさんが突然やって来て、居候することになったが、このおじさんは何だか怪しい、いけすかない奴だった。ある日エイナルおじさんは三人に、城の遺跡を見に行こうと誘った。城跡につくとおじさんは金属製の棒を取り出して地下通路への扉を開けてみせた。
子ども達が新たな遊び、サ-カス団の練習をしている時にエイナルおじが割って入り、逆立ちをして見せて例の金属棒を落とす。カッレは足で踏み付けて棒をポケットにしまった。一人で城跡に行って、地下へ向かうと、この前書いた自分達の落書きは消されており、地面に真珠が一粒落ちていた。
ある日ストックホルムナンバーのボルボが街にやって来て、怪しい男二人がホテルに入って尋ねた。「ここにブラ-ネという男が泊まっていないかね?エイナル、ブラ-ネだ。」
カッレは男たちをよく観察して、探偵の手帳に書き込んだ。奴らが乗って来た車のタイヤの溝をスケッチした。このことは後に大いに役立つことになる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今まで異国についてのホラを吹いていたピッピが,とうとう本当の異国である南の島へ行く。ノリは今までと変わらない。
やはり本巻でも児童の権利に対する見解がところどころに見られる。作者の書く敵(ここではそう表現する)は,作中では大抵ピッピに懲らしめられるわけであるが,現実社会では思いの外強大な存在であろう。ピッピの存在は児童にとっての安全安心そのものであり,一部のキャラクターはピッピをその点で信頼している。
そして終わりは突然にやってくる。言い出しっぺはトミーで,「おとなになんか,なりたくない」ということ。ピッピいわくおとなとは
「つまらない仕事を山ほどして,かっこ悪い服を着て,ウオノメをつくって,税金(原文ではぞうきんと言っている)もおさめないといけない」
普段ホラを吹きまくっているとは思えないほど,真理を突いているのではないか。それで丸薬を飲むわけだが……
子どもはいずれおとなになる。これはピッピでもどうしようもないことである。だからこそ子どもの経験は計り知れない経験に満ちている,そうであってほしいと,本作でのピッピ作者の願望を指し示しているのかもしれない。