奥山景布子のレビュー一覧
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・奥山景布子「圓朝」(中公文庫)を読んだ。圓朝は幕末明治の偉大なる落語家であつたといふことは知つて知る。代表作「牡丹灯籠」を初めとして、実に多くの落語を作つた。続き物だけでなく、三題噺からできた「鰍沢」や「芝浜」もこの人の作として有名である。しかし、その生涯は知らない。実際、作家でも役者でもさういふ人が多いのだが、落語家となると、昔の落語家などはその名前さへ知らない。まして その生涯をやである。圓朝の場合、これに続く人がゐないから、圓朝と言へばあの圓朝である。すぐ分かる。例へば圓生だと、昭和の名人である6代目圓生しか思ひ出せない。ところが、当然ことながら、さうではないのである。本書には圓朝の師
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桑名藩主・松平定敬。
戊辰戦争勃発後、大坂城から慶喜と共に江戸へ脱出した彼が辿った人生とは。
大坂から江戸。新政府へ恭順の姿勢を示すため越後にゆくも、徳川幕府への忠義のために戦うことを選び会津・函館へ。
行く先々で、彼の行動が邪魔者になってしまう境遇が悲しい。それは、戦争から逃げ出した慶喜にも、新政府に降伏した桑名藩の将来にも、函館の榎本政権にも、定敬が戦いの場にいることが、状況を好転させることがないというのは、無力感しかない。
さらにいうと、好転も悪化も彼の存在によって大きく変化させることがない。新政府に対する旗手にも、お飾りにすらなれない、というのは読んでいてしんどい。
桑名藩士には忠誠 -
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幕末・明治の芸能を代表する、近代落語の祖・三遊亭圓朝。
江戸から明治への激変期にあって、伝統的な話芸に新たな可能性を開き、「怪談牡丹灯籠」「真景累ヶ淵」などが今なお語り継がれる伝説的な噺家の一代記。
母・兄に猛反対されるも芸の道に進んだ圓朝。
歌舞伎の技術を盛り込んだ芝居噺で人気を博すものの、師匠や愛弟子から嫌がらせにあい、窮地に追い込まれる。数々の苦境を味わわされる中、自らが生みだした怪談噺や人情噺で独自の境地を開き、押しも押されぬ人気咄家に成長するが・・・・・・波乱万丈な芸道を這いつくばり、女性関係や息子との確執にも悩んだ圓朝。
新田次郎賞・本屋が選ぶ時代小説大賞W受賞の奥山景布子が迫る、 -
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タイトルの『中将』とは『桑名中将』こと桑名藩主・松平定敬のこと。
兄の『会津中将』こと会津藩主・松平容保はよく知られているが定敬の方は詳しい経歴を知らなかったため、興味深く彼の『流転』の物語を読んだ。
幕末というと薩長側の視点の物語が中心になってくるのだが、桑名側から見ると全く違う物語になる。明治という新しい時代を築いた薩長中心の人々が単なる野心と私怨で徳川を追いやった嫌な人たちに見えてくる。
『養子の責は重いぞ』
定敬の胸に何かとよぎるのは亡き父の言葉。同じ養子として尾張藩主となった兄・慶勝は早々に徳川を見限り薩長と連携した。逆に会津藩主となったもう一人の兄・容保は新政府軍と徹底抗戦す -
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シリーズ第四弾。
前巻の大地震の時に生まれたお初もすくすく成長し、出産の為一旦休業していた団子屋を再開することにしたおえい。
手伝いの為雇ったお加代は働きぶりはよいものの、どうも怪しげで・・・(「御用」)。
お加代は結局秀八の実母と何か関係があったのでしょうか。気になります。
二話「蛍のひと夜」では、絵師の新助の過去が明かされます。強請られた彼を助ける為、弁良坊こと彦九郎と秀八がとった行動が粋で人情を感じます。
そして心配なのが、九尾亭一門が何気に風通し悪そうな事で、せっかく一門に復帰した木霊も苦労している感じですし、「点取り、無双の三杯」での礫に対する真打たちの態度もね・・。そもそも、前巻 -
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シリーズ第三弾。
大工の棟梁で、寄席・“清洲亭”の席亭でもある秀八と、その妻・おえいを中心に繰り広げられる人情シリーズです。
今回は、大地震、おえいの出産、姑との確執、火薬の製法を書いた書物を巡る騒動、そして、噺家・九尾亭天狗の跡目問題等々・・。盛りだくさんでした。
秀八・おえい夫婦も色々ありますが、清洲亭に出ている芸人さん達も皆何かを抱えています(戯作者の彦九郎も然り)。今回は特に手妻師・ヨハンが心配な状況でしたが、女義太夫・呂香さんも何かありそうです。
そして、病気の天狗師匠と破門された息子・木霊・・。ラストは悲しくはあるけども、心温まる展開になっており、ほっこりした読後感でした。
それ -
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ネタバレ子供用の本と侮るなかれ!
為になる本です (´・ω・`)
(此の本は最新説を採用)
(ただ、設定や動機は明智軍記)
出自=明智庄城主の子
父親=光綱
叔母=小見の方(道三の妻)
秀満=叔父光安の子
妻=煕子(明智の同族、妻木範煕の娘)
1555年、長良川の戦いで牢人
越前長崎称念寺に救われる
1559年、上人と京へ行き藤孝と親交を
連歌の会の経費を妻の髪で精算する
藤孝SOSで義昭を招聘する窓口に
田中城で医学知識披露
朝倉家から織田家乗り換え窓口に
(妻木範煕や従姉妹の帰蝶が織田家に)
信長に仕事を認められ満足の日々
荒木村重=幕臣(荒村寺のHPにも記載) -
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寄席品川清洲亭シリーズ第二作。
相変わらずテンポ良く読める。やや内容は薄いが、それでも楽しい。
席亭の秀八は、少しずつ席亭として成長しつつもまだまだ勉強すること、経験不足なことがあり、寄席が好きで始めたことだが、生半可な覚悟では出来ないなと改めて思う。
義兄の千太も相変わらず、改心するのは、まだまだ先か。義母との関係も冷えきったまま。
妻のおえいのやきもきもそうは収まらない。だが良いこともある。
三味線のおふみと息子清吉にもちょっとした変化がある。
戯作書きの彦九郎はいよいよ夢を形に出来そうだが、心配事も。
長屋の絵描きの新助には訳ありの過去があるらしい。
落語界の重鎮・天狗の息子は寺で修 -
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ネタバレ大工の棟梁・秀八が恋女房のおえいと共に念願の寄席を開く話。
某公共放送の朝ドラ『わろ○んか』の時代物版的な感覚で読み始めたが、テンポもよく読みやすかった。
他のレビュアーさん方が書かれているように、内容的にはやや薄い。
寄席を舞台にした作品は現代物やミステリー物も含めいくつか読んできたが、芸人さん落語家さんなどのキャラクターの掘り下げや関係性など、もっとやれるんじゃないのかなと思うところもあった。
ただシリーズ物らしいので、これからいろいろ深まっていくのかも知れない。
大工としては棟梁として腕の立つ職人でも、席亭としてはズブの素人の秀八が一癖も二癖もある芸人さんたちや業界の人々相手にどう切り盛