安野光雅のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレそもそもこの小説に興味を持ったのは、ある私立難関校で教材として使用されており、3年間で1冊を読むという名物授業があるというのを知ったからだった。
3年間で読むような本とはどんなものなのだろうという興味があった。
購入したのはもうはるか昔のことで、それからまったく読む気にならず、ずっと積読状態だったが、ふと読んでみようという気が起こり購入から約10年経ってやっと手に取った。
なお、私が読んだのは本当は角川文庫から出ているものなのだが、検索したところ電子書籍版しかヒットしなかったので、仕方なくこちらに感想を書く。
何せ大正時代に書かれたものであるから、言葉も今とは異なっており、非常に読みづらいというのが第一印象であった。
また、著者の好みなのか漢字を用いず、「私の書斎のいろいろながらくたものなどいれた本箱の~」(冒頭)などとひらがなで書いてあるのも、どこで単語が切れるのかわかりにくい。
190ページほどの短い小説であるが、読み終わるのに1日半ほどかかった。
特に起伏もなく、淡々と日常が描かれており、起承転結のある小説というより日記やエッセイに近いかもしれない。
四季や時節の行事について触れられていることが多いので、枕草子を思い出した(枕草子を全編読んだわけではないので、あくまでイメージです)。
そんなわけで描写や言葉遣いに興味がある人以外にはつまらない内容ではないかと思う。ただ、時々はっとするような表現が出てくることがあり、そういった部分については夏目漱石の「きれいだ、描写が細く、独創がある」という称賛もわかる気がする。
そういった表現の中で特筆すべきは、お蕙ちゃんと月明かりに腕をかざして、蝋石のように見えるのを楽しんでいるシーンであるかと思う。
描写の表現も美しいし、窓辺で男女の子どもが二人、月明かりに肌を晒している姿が想像できる。
それから一番最後、訪ねてきた友人の姉と夕食をともにする際の、食べものの描写がとても良い。
全体的に描写は細かく丁寧であるが、もっとこういう食べ物に関する描写を読みたいと思った。
並んでいるものはご馳走ではないけれど、色、質感、味が容易に想像できる描写の素晴らしさで、とても魅力的に感じられた。
また、主人公とその兄との会話でも好きなところがある。
星を眺めていたところ、兄に何をしていたのか問われ、「お星さまをみてたんです」と答えたところ、兄に「ばか。星っていえ」とどなられてしまう。
この後の「あわれな人よ。なにかの縁あって地獄の道づれとなったこの人を にいさん と呼ぶように、子供の憧憬が空をめぐる冷たい石を お星さん と呼ぶのがそんなに悪いことであったろうか。」(p.140)という一文が美しく、とても良い。 -
Posted by ブクログ
課題図書一冊目。
サラサラと読めてしまうが、二人の話のディープな所にはちょっと立ち入りにくい感じ。
特に古典〜明治期の名作を紹介したり、漢文の良さを語っている所は、ちくまプリマーを読むくらいの学生さんには伝わるのだろうか。
全体としては、難易度が高め。
でも、読書や日本語に触れる上での味わい方はしっかりと抑えられているようにも思う。
難しくても読みこなす内に質が上がるとか。
分からなくても暗唱していると、ある時にふと結びつくものがあるとか。
生きていく中での読む意味合いを、二人の掛け合いの中から拾いあげることができた。
もう一つ。
個人的にジーンとしたのが童謡のパート。
歌詞から、ああ、習ったなぁという気持ちが湧いてきて、メロディーに乗せると涙が出そうになった。
私の祖母も歌が好きで、「椰子の実」という歌が学生時代歌った記憶に残っているそうだ。
いつか、祖母が亡くなったとき、私が歌えるようにと密かに音源を入れている。
そういう、歌詞とメロディーと思い出の不思議な結びつきが立ち現れて、グッときた。
さて、どう調理するか。楽しみ。 -
Posted by ブクログ
幼児の頃、叔母からもらった安野光雅作の絵本をみて育った。独特で不思議な世界観に、子供ながらも魅せられて、まねて絵を描いたりしていた。
書店で本書を見かけ、ふと懐かしくなり購入した。
昭和の戦中のこどもの頃が逞しげに淡々とづづられている。しかしその陰に淡々とせざるを得ない苦しみや悲しみがあったのではないかと勘繰ってしまう。
良く覚えていられるな。と思うほどの友人知人が登場するが、それきりの人、所在不明の人、亡くなった人がほとんどである。父親の年を越え、著者は長く行き過ぎたと思っているのだろうか。
いやいや、まだまだ元気に活躍してほしいと思う。