Posted by ブクログ
2016年02月10日
こういう知恵と機転とはったりだけで切り抜けていく主人公、岩明均は好きね。オレも好き。
消息子
2013/08/24 12:08:53
評価 ( ★マーク )
★★★★★
エウメネスという人物が主人公である。彼はアレクサンダー大王の書記官として知られる。大王の父フィリポス2世と大王アレクサンドロ...続きを読むス3世に仕えたが、書記官でありながら軍事面でも才能を示したとされる。歴史にその航跡が記されるのは、大王の死後、ディアドコイ戦争の駒のひとつとしてであるが、その出自は、都市国家カルディアの出身であることくらいしかわかっていないし、書記官時代の戦績も不明である。
デビュー前から構想があったという岩明均のこのマンガは、その歴史の空白に大胆に創作を埋めて、エウメネスの波瀾万丈の出自を描いていく。史実がはっきりしない部分こそ自由に描けるので、どのあたりまで話が続くのかは不明だが、この執筆ペースではとてもディアドコイ戦争まで描くのには作者の寿命が足りなさそうだ。
いやいや、でも話はそんな風には始まらない。野蛮人の服装をした青年エウメネスが青銅のヘビの飾りを拾うのが第1ページ。これ象徴的な伏線。
ペルシャからスパイの嫌疑で逃れてきたのアリストテレスがエウメネスに出会う。両者とも行き先はカルディア。エウメネスの機転でペルシャ軍を出しぬくが、途中で分かれ、カルディアには別に向かう。ところがカルディアの城門前ではマケドニア軍の歩兵隊が示威行動をしている。カルディアに、はいれなくなって困っているばあちゃんと、途中、同道する怪しげなペリントスの商人とともに、エウメネスはまたもや機転を利かせてカルディア内に入るのである。こういう知恵と機転とはったりだけで切り抜けていく主人公、岩明均は好きね。オレも好き。
怪しげなペリントスの商人はエウメネスの知力を見て、「わしの所で金を稼いでみんか」という。怪しい商人が誰かはご推察のとおり。いや、それはちと気がはやい。
変わり果てたカルディアの街を見ながら、エウメネスは少年時代の回想にはいる。
エウメネス少年はカルディアの貴族の次男である。本(といっても当時は巻物だが)が大好きだ。幸せな日々。しかし、彼は頻繁に異民族=野蛮人の女が剣で男たちを切り倒し、最後に自分が刺されてしまう夢を見るのだ。