大学病院から訪問診療クリニックに異動になった女医のお話
・ブレス1 スピリチュアル・ペイン
乳がん末期の中年女性
治療を放棄し、死ぬために家に戻ってきたという
キューブラー・ロスが提唱した「死の受容の5段階」は何となくは知っていた
・否認と孤立 (Denial & Isolation)
死の告知を信じられず、検査結果の間違いを疑うなど「まさか、自分が」という状態
・第2段階:怒り (Anger)
「なぜ私が」という不公平感から、周囲の人々、医師、神などに怒りをぶつける
・第3段階:取引 (Bargaining)
死の恐怖から逃れるため、宗教的な祈りや「病気が治るなら何でもする」と神や医師と取引を試みる
・第4段階:抑うつ (Depression)
病気が治らない事実、悲しみ、絶望感により無口になり、何もする気力がなくなる
・第5段階:受容 (Acceptance)
最終的に自分の死を静かに受け入れ、希望や穏やかな気持ちを持つ段階
私の場合、否認や怒りはそんなにないような気がする
取引も、差し出せるようなお金も精神性も持ち合わせてないので、すぐに終わりそう
でも、読みたい本や続きが気になるマンガなんかは多数あるので、それが読めないという絶望による抑うつは大きいかもしれない
・ブレス2 イノバン
ボランティアを募って介護体制を整えるあたりは「こんな夜更けにバナナかよ」を思い浮かべた
あっちは、筋ジストロフィーだったかな?
例え病気でも自分の行動を制限する事なく自由に生きて良いというメッセージを感じるけれども
その傍らで、命がいつ途切れるかもわからない状態で看護する立場のプレッシャーも理解してしまう
人工呼吸器がなければ生きていけない人の家の電気が止まるかもしれない状況を放置するのって、未必の故意に当たるのでは?とも思う
だからと言って一概にその人を非難もできないなぁ
・ブレス3 エンバーミング
疎遠だった兄がいきなり帰ってきて、治療方針に色々と口出しする状況
「カリフォルニアから来た娘症候群」そのものですね
それにしても、兄の行為は殺人じゃねぇの?と思うけど、それも含めての脂肪診断書の描写になってるのだろうな
医師が看取ってるので、行政解剖も司法解剖も行われない
場合によっては尊属殺人なんだけど、殺意はない過失致死ではありえる
母親に永く生きていて欲しいと望む割に、生前から仏具を用意する行為に違和感を覚えたけど、なるほどそんな理由でしたか
まぁ、結果的にそれが裏目に出た結末は若干溜飲が下がる
祭祀財産というのは知っていたけど、生前に購入するのはいいのだろうか?
・ブレス4 ケシャンビョウ
言葉を話せない身元不明の少女
発見当時「オーロラ」と言った以降は何も話さない
しかし、植物の知識に関しては詳しい
そんな少女を一時的に保護した夫婦
身元不明人の戸籍は作れるのだろうか?
それができるなら、見た目が日本人っぽい人であればいくらでも戸籍を作れてしまうのではなかろうか?
まぁ、色々なハードルはあるけど、実際問題として戸籍を作ることができれしまうんですよね
ただ、外国の子を養子にするとなると、それはそれでもっと高いハードルがある気がする
・ブレス5 ロングターム・サバイバー
がん治療の権威である教授が末期癌という状況
そして治療と延命措置を一切拒否している
しかし、とある見舞客が来た後に、疼痛治療だけは受け入れ、動けるうちに外出して会っていた人達とは?
初期で見つからなかった癌のイメージとして、寛解はしても完治は中々難しいとと思っている
ただ、長期間生存する人もいるのも知っている
その違いって何なんですかね?
印象に残ったセリフとしては
「死は負けじゃない。安らかに看取れないことこそ、僕たちの敗北だからね」
という言葉
死が負けだとしたら、人間はいつか必ず死ぬんだし、負け確定だと思うのだけど
そう思わない医師も多いのだろうか?
医師の役割って、昔は治療が第一と思われていたけど
治療も大事だけど、患者のQOLも大事という考えが20年以上前から根付き出したように感じている
それぞれの人生を、どう過ごすのかは、それぞれの患者さん毎に違うわけで
そんな個々人の希望に沿った医療を受けられるようになって欲しいなぁ
・ブレス6 サイレント・ブレス
倫子先生の父の看取り
脳梗塞で寝たきりになり、意思疎通もできない状態で長年経っている父と、恢復の望みを捨てない母
医師であるが故に、父の状態と今後がわかってしまう倫子
全編通して、一番心に残ったのは
「死は『負け』ではなく『ゴール』」という言葉
前述の通り、死が負けなら全人類皆負けは確定してしまうわけで
負けではなく「ゴール」ならば、そのゴールに向けてどう生きるか、生きたかを考える事ができるようになる
私自身の死生観としては
他の本を読んだときにも書いたけど
両親が終末期を迎えたら本人の意思を尊重したいし
でも他の家族が違う主張をしたなら、反対意見は言うけど、結局は判断を他の人に委ねると思う
もし自分が終末期や困難な病気になったら
両親が生きているなら逆縁はよくなかろうと思って治療する気がする
でも、もし両親が既に亡くなっているなら、そのまま死を受け入れるかもしれない
できれば、周囲の人に感謝し、笑って死んでいければいいなぁとは思うけど、病気になってからそうなるためには普段からそうあらねばならないのでしょうね
もし自分が意思表示できる状態であれば、人工呼吸器、胃瘻その他諸々の延命措置は拒否したいけど
こればっかりは実際になってみないとわからないからなぁ
とりあえず、私のQOLの基準としては、本を読めなくなったり、アニメや映画などの映像作品を楽しめなくなるような状態だったら治療を拒否というスタンスだろうか
ところで、何よりの疑問なんだけど
ケイちゃんは何故変な料理を作るのか?
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「死んでいく患者も、愛してあげてよ」
命の終りを真摯に見つめる現役医師による、感涙のデビューミステリ。
現代の終末期医療の在り方を問う、渾身の書き下ろし。
大学病院の総合診療科から、「むさし訪問クリニック」への“左遷"を命じられた37歳の水戸倫子。そこは、在宅で「最期」を迎える患者専門の訪問診療クリニックだった。命を助けるために医師になった倫子は、そこで様々な患者と出会い、治らない、死を待つだけの患者と向き合うことの無力感に苛まれる。けれども、いくつもの死と、その死に秘められた切なすぎる“謎"を通して、人生の最期の日々を穏やかに送れるよう手助けすることも、大切な医療ではないかと気づいていく。そして、脳梗塞の後遺症で、もう意志の疎通がはかれない父の最期について考え、苦しみ、逡巡しながらも、静かな決断を下す――。その「時」を、倫子と母親は、どう迎えるのか……?
「サイレント・ブレス」とは
静けさに満ちた日常の中で、穏やかな終末期を迎えることをイメージする言葉です。多くの方の死を見届けてきた私は、患者や家族に寄り添う医療とは何か、自分が受けたい医療とはどんなものかを考え続けてきました。人生の最終末を大切にするための医療は、ひとりひとりのサイレント・ブレスを守る医療だと思うのです。 著者
6人の患者に秘められた、切なすぎる謎とは―??
ブレス1 スピリチュアル・ペイン 知守綾子(45歳) 乳癌末期
延命治療を頑に拒否する綾子の元を頻繁に訪れる謎のスキンヘッドの男。家族が誰も知らないその男に綾子が託した思いが、彼女が死を迎えるとき明らかになる。
ブレス2 イノバン 天野保(22歳) 筋ジストロフィー
介護が必要な息子を置いて、母親は家を出てしまった。自分で介護のボランティアを募り、楽しく生活していた保だが、なぜ、最期の夜だけ誰も呼ばなかったのか?
ブレス3 エンバーミング 古賀芙美江(84歳) 老衰
一度は胃瘻を拒否し、穏やかな最期を選んだ芙美江だが、息子の懇願で翻意する。しかしその胃瘻がもとで苦しんで逝ってしまう。そして、彼女の遺体が消えたが、それは息子の企みだった。
ブレス4 ケシャンビョウ 高尾花子(推定10歳) 言語障害
高尾山に捨てられていた美少女・花子。土産物店の初老夫妻が面倒を見るが、一切、言葉を話さない。ある日、花子は突然卓上の料理を投げ捨て逃げ出し、妻はその後、急激に体調を崩し緊急搬送されてしまう。
ブレス5 ロングターム・サバイバー 権藤勲(72歳) 膵臓癌
消化器癌の権威・権藤教授が末期の膵臓癌に侵されたが、積極的な延命治療を拒絶した。そして、競馬場、巣鴨、動物園……と謎の外出を繰り返す。癌治療の名医が人生の最期に知りたかったこととは?
ブレス6 サイレント・ブレス 水戸慎一(78歳) 脳梗塞
倫子の父・慎一は、8年前に脳梗塞で寝たきりになり、今は一切意思の疎通が図れない。父はこの状況を望んでいたのか? 几帳面な父が、なぜ「遺志」を残していなかったのか疑問に思う倫子は、母の行動に疑いを持つ。
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