南杏子の作品一覧
「南杏子」の「いのちの停車場」「アルツ村 閉ざされた楽園」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
この本は高齢化社会を背景に、現役の医師である作家が介護の負担やお金、善意に潜む危うさを描いた5編の心理サスペンス短編集だ。
表題作『沈黙の患者』の主人公は、清掃員として働く56歳の早智。認知症の母の介護認定を替え玉の老婆で受けさせ、大金を得てしまうという話。
そのほか、戦争体験を語る老人の話、訪問リハビリの担当者がお金に関する頼み事を断る話。子ども食堂に来る老人と少女の話。高齢の父の恋人を疑う姉妹の話…
いずれも話のどこかに、むさし訪問クリニックの水戸倫子先生と看護師・コースケが共通して登場するというのが面白い。(この2人は、南杏子さんの別作品『サイレントブレス』に登場する主人公だ。)
また『シル専の女』がシルバー専門で老人を騙して財産を巻き上げる女の人を指すということも初めて知った。
なかなか全ての話が面白く、その辺にあるのではないかと思いながら読んだ。表題作『沈黙の患者』は、我がオフクロの件で昨年慌てて介護認定を受け、要支援2から要介護2という判定を取り、ホッとしたことを思い出した。これを替え玉受験するなんて発想は目からウロコだったなあ。しかし、要介護認定の結果が施設入居の鍵を握る現実があり、これを偽って儲けようと考える輩がどこかにいそうだと思う…
高齢化社会のあちこちにできた歪みが、一歩間違えると犯罪に繋がるのがリアルで怖いなあ。
Posted by ブクログ
著者初読み。あらすじに惹かれて手に取った一冊。
アレを切り刻む描写、エッグい。
「人間が想像できる事は、人間が必ず実現できる」。小説を読んでいると時折思い浮かぶ言葉だが、この作品では特にそれを強く感じた。
認知症患者が集まって暮らす、閉ざされた村。そこは楽園なのか、それとも現代の姥捨山なのか。
高齢化、老老介護、ヤングケアラー、介護する家族の限界。どれも他人事ではない問題ばかり。「かわいそう」という言葉だけでは到底片づけられない現実がある。
前半は、あらすじから想像していた問題意識を再確認するような読書だった。それが後半、村に隠された秘密や登場人物たちの人生が明らかになるにつれ、思いもよらない方向へ。
認知症患者の人権はどうなるのか。苦しむ家族の心情はどうなのか。医療の進歩はどこまで許されるのか。様々な感情と疑問が入り交じり、簡単には答えが出せない。
終盤は少々詰め込みすぎにも感じたが、それを含めても読み応えは十分。人間の尊厳と、救いを求める人間の切実さが強く残る一冊だった。