鳴海章の作品一覧
「鳴海章」の「レディイーグル」「原子力空母「信濃」 最後の出撃」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
この作家の作品を読むのは初めてかもしれない。サスペンスや警察小説の印象が強かったが、本作は人の心の闇に深く踏み込んだ一冊。
文庫で720ページ。普段から厚めの本は好きなほうだが、700ページを超えるとさすがに存在感が違う。手に持ったときの小口の厚みが心地よく、これは電子書籍では味わえない感覚だと思う。
物語は、どこにでもいる普通のサラリーマンが、ひょんなことから拳銃を手に入れ、無作為の殺人を始めていくというもの。けれど読み進めるうちに、この主人公は絶対に「普通」ではないと感じさせられる。日常生活について、多くのページを費やした冗長なまでの描写(特に天ぷらそばを食べる場面)が、彼の抱える深い闇を浮かび上がらせている。
作中に「みんなシャボン玉の中にいる」というような一節があったと思うが、まさにその閉ざされた空間の中で心の闇はどんどん膨らんでいき、たとえ拳銃を手にしなくても、いつか何らかの形で爆発していたのだろうと思わせられた。
そして読み終えて思う。この主人公に限らず、世の中で「普通」とされている人間も、みな心のどこかに闇を抱えているのかもしれない。それをうまくやり過ごせるかどうかは、本当に紙一重なのだろう。
光文社文庫 720ページ
Posted by ブクログ
読んでいる間、全身にGを感じまくりだった航空小説。
ほとんど航空機に関しての予備知識・造詣が無い私にすらもビシビシ伝わって来る程に、とにかく戦闘機周りの描写が緻密。飛行中の挙動、コックピット内の様子や敵機を追い込む際の一瞬の思考。
ロマン脳汁がダダ漏れで拭くのが大変。
「敵機が自機の後方一〇〇フィート近くにまで食らいついてきた時にパイロットにできることは少ない。ハイG横転はそのうちの一つだ。(略)ぐるぐるとラセン状の飛行を続けながら、しかも上昇する。」(p140、p141)
どうです、カッコ良くないですか?
しかも何が素晴らしいって、上記抜き出し部分もそうだが、世界観を妨げない程度に適度な補足説明がまぶされているので、私みたいな飛行機素人でも何がどうなっているのか付いて行けるというのは非常に大切。
白いコートの謎の東洋人や〈商人〉スメルジャコフとの因縁、国家間の陰謀…と持ち越しの伏線多数。
巻末に収録されたときわ書房本店・宇多川氏とさわや書店フェザン店・田口氏とのスペシャル対談ももれなく熱い。確かに工藤秀三整備班長の「マニュアルはオレだ」(p107)は燃える名台詞。
また新しいジャンルへの扉を開いてしまった…。
1刷
2022.9.11