瀬木比呂志の作品一覧
「瀬木比呂志」の「檻の中の裁判官 なぜ正義を全うできないのか」「究極の独学術 世界のすべての情報と対話し学ぶための技術」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「瀬木比呂志」の「檻の中の裁判官 なぜ正義を全うできないのか」「究極の独学術 世界のすべての情報と対話し学ぶための技術」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
東京大学法学部卒。『民事訴訟の本質と諸相: 市民のための裁判をめざして』などの作品を手がける。
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Posted by ブクログ
非常に面白い一冊だった。本書は、江戸時代の庶民の訴訟事情から、婚姻、離婚、共同親権、同性婚、冤罪、死刑、契約、裁判まで、かなり幅広いテーマを扱っている。
特に参考になったのが、犯罪と刑罰をめぐる「応報的司法」と「修復的司法」という考え方。犯罪者を罰することだけを重視するのではなく、被害者と加害者の双方を含めて、犯罪によって生じた問題をどう修復していくのかという発想は新鮮だった。日本はどうも応報的な思考が強いように感じる。
死刑制度についても、著者は明確に廃止の立場を示していて、死刑は報復ではなく、世界的にも廃止の方向にあること、代替として仮釈放のない終身刑という選択肢などを示している。このあたりは、論旨が明快で、読んでいてかなりスッキリした。
著者は33年間、約1万件の民事訴訟を担当した元裁判官で、その後は法学者として研究を続けている。そうした実務と研究の両方を経験しているからこその視点も、この本の面白さだと思う。
一方で、気になったのは、現在の司法や制度に対する批判的な論調がやや強すぎるところ。著者の問題意識はよく分かるし、鋭い指摘も多いのだが、やや一方向から切り込んでいるように感じる部分もあった。
それでも、法律の「読み方」や「仕組み」を学ぶ本とは違い、法律と社会、人間との関係まで視野を広げてくれる本。折に触れて何度か読み返してみたい。
Posted by ブクログ
驚いたのは引用される文献や映画の数量だ.著者は個人主義・自由主義を標榜しており、左翼系思想の問題点を指摘している.あまり聞き慣れない用語が満載で、それぞれ別個に調べて対応した.キャンセルカルチャー、イノセンスなどなど.著者の考え方を如実に示している表現は、「まずは自己の利益があり、そのことを前提とした上で他の利益を考え、利害の対立があれば議論を行って調整する.その上で、合意を結んだらそれに従う.」だと感じた.日本社会の問題点として、「自分自身は正義と善の立場に立って、安全な地点からそれを断罪するにとどまる例がきわめて多い.」という指摘も当を得ていると思った.
Posted by ブクログ
姉妹書『絶望の裁判所』が裁判所の組織や制度、そして裁判官の人格についての本だったのに対し、こちらは裁判所が下す判決が主な検討対象。刑事、民事、行政訴訟といった各分野の具体的な判決や判例の傾向が述べられる。
そのぶん『絶望』に比べ、直感的におかしいと感じるというよりは価値判断の結果であり、今のような在り方の肩を持とうと思えば持てる部分もある。衝撃度は前作ほどではなかったと感じた。
もっとも、終章である第8章からはグッと引き込まれた。これまで舌鋒するどく当局批判をしてきた著者の、裁判官時代に味わった痛みが、人間性が、いっぺんに吐露される。
キャリアシステムから法曹一元制度への転換、弁護士や弁護士会、そして市民の意識変革の必要性など、内容の重要性もさることながら、私にとって最も印象的だったのは著者の人格的魅力だった。
「私は、すでに一生分以上の自己規制をしてきたと思っていたので、転身の際には、今後は一切それをするまいと決心していたのである。」(274P)
こういう著者の言葉は、瀬木氏のような有識者、志ある人間に向けるには失礼な表現かもしれないが、「告発」のような感じがする。
私は理不尽に傷つけられた、それでも私は闘った。うつ病を発症しながら33年もの間裁判官を務め、今なお裁判官時代に下した悔いの残る判決を自らの十字架としている著者の、そうせずにはいられない心の叫びであり、断じて単なる恨み節ではない。
著者自身がたびたび記しているように、瀬木比呂志という人間はデリケートな芸術家肌の人であり、その著作もさながら思想書のように、著者の人格や背景と共に理解すべきものなのだろう。瀬木氏の他の本もまだまだ読んでみたくなった。