現代日本人の法意識

現代日本人の法意識

1,045円 (税込)

5pt

日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年
元エリート判事にして法学の権威が、日本人の法意識にひそむ「闇」を暴く!


本書は、書名から明らかなとおり、日本人に根付いている「日本人特有の法意識」をテーマとする。私は、裁判官として三十三年間に約一万件の民事訴訟事件を手がけるとともに、研究・執筆をも行い、さらに、純粋な学者に転身してからの約十三年間で、以上の経験、研究等に基づいた考察を深めてきた。この書物では、そうした経験をもつ者としての、理論と実務を踏まえた視点から、過去に行われてきた研究をも一つの参考にしつつ、「現代日本人の法意識」について、独自の、かつ多面的・重層的な分析を行ってみたいと考える。

法学者・元裁判官である私が、法律のプロフェッショナルですら満足に答えられないような曖昧模糊とした「法意識」に焦点を合わせた一般向けの書物を執筆したのは、日本固有の法意識、日本人の法意識こそ、私たち日本人を悩ませる種々の法的な問題を引き起こす元凶の一つにほかならないと考えるからだ。
そればかりではない。意識されないまま日本人の心理にべったりと張り付いた日本的法意識は、日本の政治・経済等各種のシステムを長期にわたってむしばんでいる停滞と膠着にも、深く関与している可能性がある。その意味では、本書は、「法意識」という側面から、日本社会の問題、ことに「その前近代的な部分やムラ社会的な部分がはらむ問題」を照らし出す試みでもある。

この書物で、私は、日本人の法意識について、それを論じることの意味とその歴史から始まり、共同親権や同性婚等の問題を含めての婚姻や離婚に関する法意識、死刑や冤罪の問題を含めての犯罪や刑罰に関する法意識、権利や契約に関する法意識、司法・裁判・裁判官に関する法意識、制度と政治に関する法意識、以上の基盤にある精神的風土といった広範で包括的な観点から、分析や考察を行う。
それは、私たち日本人の無意識下にある「法意識」に光を当てることによって、普段は意識することのない、日本と日本人に関する種々の根深い問題の存在、またその解決の端緒が見えてくると考えるからである。また、そのような探究から導き出される解答は、停滞と混迷が長く続いているにもかかわらずその打開策が見出せないでもがき苦しんでいる現代日本社会についての、一つの処方箋ともなりうると考えるからである。

...続きを読む

詳しい情報を見る

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

現代日本人の法意識 のユーザーレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    根拠の有無について気になる記述や、個人の感想を超えない記述がいくつか見られるものの、現在の制度における問題点の批判や、新制度の提案を行っており、とても有用だと感じた。

    0
    2025年08月28日

    Posted by ブクログ

    “司法の場合同様、政治や行政をよりよいものとすることについても、日本に、必要な人的資源自体はあると思う。経営、研究、教育等についても同様だ。しかし、その適正な実現のために必要な前提条件が整っているかというと、やはり、必ずしもそうはいいにくい。適切な制度を構築し、ふさわしい人々がそれを担うには、ふさわ

    0
    2025年02月27日

    Posted by ブクログ

    元裁判官で学者の著者の丁寧で緻密かつ論理的に構成された内容に感銘を受けた。
    法学部出身だが、法制や裁判の背景にある法意識というものには、思いを巡らすことが無かったので、とても興味深く読んだ。
    著者の指摘で思い至ることが多く考えさせられた。

    0
    2025年02月11日

    Posted by ブクログ

    【目次】
    第1章 「現代日本人の法意識」について考えることの意味
    第2章 日本法の歴史とその特質ー古代から現在までー
    第3章 婚姻、離婚、親権、不貞、事実婚、同性婚をめぐる法意識
    第4章 犯罪と刑罰・死刑をめぐる法意識ー応報的司法から修復的司法へー
    第5章 冤罪をめぐる法意識、刑事裁判官・検察官のあ

    0
    2025年01月07日

    Posted by ブクログ

    この本の内容をとても難しく、また退屈に感じたのですが、まさに自分自身が法意識の低い日本人なんだと気付かされました。

    私は日本人の一つの特性に物事が起きてから考える場当たり的な面があるように思います。

    私たち人間は生まれた時から刑務所の壁の上を歩いているようなもので塀の中に落ちるか外に落ちるかは偶

    0
    2025年07月05日

    Posted by ブクログ

    この先生の論理的なこと!しかも脳科学の本やら何やらハヤカワ文庫とか読みまくってる!法律だけでない幅の広さ!

    0
    2025年05月26日

    Posted by ブクログ

     日本では法を守る意識が欧米に比べて薄いとされる。その背景に「人の支配」が根強く残っている点を指摘する。
    本来法はすべての人に平等に適用されるべきものだ。しかし現実には権力者の意向が優先され、「人質司法」と呼ばれる慣行も横行している。
    手続きの正義が軽んじられ過程よりも結果だけが重んじられる風潮も根

    0
    2025年04月27日

    Posted by ブクログ

    日本の法曹の問題点を知り尽くした筆者の鋭い指摘の傍ら、裁判官は自らの信念と直感で裁き、その補完として法があるべしという理念ゆえか、「私見による」見解が後半たくさん披瀝され、どういうスタンスで読むべきか悩むところがあったりはする。次第に「法意識」というより日本社会の課題の話に広がる。

    0
    2025年01月01日

    Posted by ブクログ

    民事から刑事にいたる、筆者の目に映る法曹界の実態とその背景にある日本文化、国民の法意識を綴る。

    悪名高い人質司法や裁判官の官僚化、検察、特に特捜検察の問題点、「疑わしきは罰せず」の原則が「疑わしきは罰す」と歪められている実態など、法曹制度については筆者が指摘する通りで、解決策としての法曹一元制度に

    0
    2025年05月19日

    Posted by ブクログ

    大学は法学部を出た。若い頃は法律を学ぶことで、何かトラブルに巻き込まれても、知識さえあれば社会生活や人間関係の中で自分や周囲の人を守れる、そんな想いを漠然と抱いていた。民法や刑法の知識を身につけるには、様々な判例に触れる事になるから、自分自身の置かれた状況に置き換えて考える事で、どういった結果になる

    0
    2024年12月30日

現代日本人の法意識 の詳細情報

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

この本をチェックした人は、こんな本もチェックしています

講談社現代新書 の最新刊

無料で読める 学術・語学

学術・語学 ランキング

瀬木比呂志 のこれもおすすめ

同じジャンルの本を探す