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花のある静かな日
見えない所にも花は咲いてる、静かに 『花のある静かな日』と題された角川文庫を底本にしたが、 全部で21もの掌編が収められている。 掌編同士は、まったく関連性がないようにも思えるし、 しかしところどころ、同じ名前の人物が現れたりもして さてこれを「全体」としてどう把握したものか、困惑してしまう。 それぞれの掌編の空間に、「花」という語彙とともに咲いているものもあるが しかしそのことには触れていない掌編のほうが多いのも不思議である。 それでいて、確かにどこかに花が咲いている、と気配で思わせる この静けさのトーンはいったいなにか? 【目次】 桟橋にて 午後二時三十分、会議。四時三十分まで 水を飲むだけ 空の青さ 恐怖小説の発端 あの美しいグリーンを見てほしい 雨の彼方からの手紙 男性がふたりに、女性がひとりの場合 コーヒー一杯だけ 結婚して三年 結婚することになりました、と彼は言う 私たち五人 彼女との会いかた ブルーベリーが落ちる 一杯の紅茶の、ずっとむこう ブラックベリーの冬 現在は否定されざるを得ない D・ホックニーのプール 防波堤で会話する ふたりの湖面標高 なにか気になること 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
花模様にひそむ
それを終わらせるのは銃弾 主人公は殺し屋。女性だ。彼女は、謎の組織からの依頼を淡々とこなす。容赦はない。ミスもない。しかしこの作品ではそうした仕事人としての側面以外にプライヴェートな彼女のパーソナリティも描かれている。彼女の恋人は、男性としての身体機能を残した女性であり二人の愛情に曇りはない。二人はやがて唐突な事件に巻き込まれるが、自力で解決してみせる。さらに彼女の友人との悲しい別れについても躊躇なく判断し、やり遂げてみせる。すべては、銃弾と共に。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
花よ食卓に来い
朝食の食卓に花が必要だとして、さてその花を忘れた場合に何を持って花とするべきか? 男女がテーブルにつき、さしむかいで夕食をとっている。 会話の主題は明日の朝の朝食だ。 女性の毎日の朝食に感心する男性は、しかし土曜日の朝食は いつもと同じではいけない、だからそれを自分が用意する、と宣言する。 土曜日の朝食には、ふさわしい舞台が必要であり それも彼が用意する。生活感のない舞台だ。 そこにもう1人の女性が鉢合わせする。でも問題はない。 なにしろここで問題になっているのは朝食であって、男女関係ではないから。 さて、あとは食卓に必要な花を、どうするかだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
縛り首の木
死の尻(けつ)をなめた男の昔語り。 狂った青空の下、ひたすら長く延びるカントリー・ロードを行く。 茫漠と広がる大地ばかりが取り囲み、やがて足を踏み入れた ゴーストタウンに、小説の後半、大木と1組の夫婦が現れる。 1本の木を介して、死がすぐそこにあった時代。 死は、子供たちの手の先、いや、首の周りにあった。縛り首の木のすぐ傍のブランコみたいに。 アメリカの昔と今を貫通する死の光芒。 【著者】 片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。 -
半熟卵ふたつ
作家のメモ帳には、多岐に渡る言葉の断片が書かれている。その言葉がやがて小説の卵になるのです。 北原律子というペンネームの作家が、新しい仕事に向かうに当たって、自分のメモ帳を見返し、そこからネタになりそうな言葉を拾って、ノートへと書き写し、言葉を足したり、引いたり、合わせたりする、その作業が克明に具体的に書かれています。100枚のリフィルが綴じられたミニ6穴のメモ帳に書かれた走り書きの内容は、実際に聞いた言葉から体験したこと、架空の少女の記憶から思いついただけの言葉の断片まで多岐に渡り、そこから拾われた言葉が小説の卵になるのです。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)などがある。 -
ハートに一撃【分冊】
世界的な実業家ガースは、思いがけぬ難しい病を宣告され、休養を余儀なくされた。彼はしばらく、いっさいの素性を隠して牧場で過ごすことにするが、ある晩、留守を頼まれた隣家の牧場を見に行くと、そこで突然女性に殴られてしまう! 不審者に間違えられたのだ。それをきっかけに、彼女、ティファニーは何かとガースの面倒をみてくれるようになった。彼はやさしい彼女と求めあうまま一夜をともにしてしまうが、自分がどれほど裕福か、彼女に告げるチャンスはなく…。 -
ハーフ・パパイア
ハーフ・パパイアとなって、あの人の内部に入っていく自分 美術館という空間に身を置く1人の女性がいる。 その空間にあるアブストラクトなオブジェが なぜだろう、彼女にとってはなによりも自然に身体に通じるような 親密さでもって迫ってくる。 美術館に1人で来ている彼女は、同じく美術館に1人で来ている女性を 顔を見ることなく、後ろ姿のフォルムのみに執着したりする。 かつてクラスメートだった男性との事件を経由して いよいよ彼女のセクシュアリティは境界を超え、 さらにアブストラクトな領域に入っていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
緋色のシンデレラ
ツアーガイド中、クーデターに巻き込まれたショーンテールは、地元の有力者マルティネス一族のルイスに助けを求めた。彼はかつて、彼女の愛を踏みにじり、もてあそんだ男。けれど今、ツアー客の安全を確保するには、彼の助けを借りるよりほか道はない。プライドをなげうちルイスに面会を求めたショーンテール。 けれど非情にも、彼が口にしたのは信じられない取引きの言葉だった! 『助ける代わりに君を買おう。2年前と同じように、その手で僕を楽しませてくれ』―。 -
緋色のシンデレラ【分冊】
ツアーガイド中、クーデターに巻き込まれたショーンテールは、地元の有力者マルティネス一族のルイスに助けを求めた。彼はかつて、彼女の愛を踏みにじり、もてあそんだ男。けれど今、ツアー客の安全を確保するには、彼の助けを借りるよりほか道はない。プライドをなげうちルイスに面会を求めたショーンテール。 けれど非情にも、彼が口にしたのは信じられない取引きの言葉だった! 『助ける代わりに君を買おう。2年前と同じように、その手で僕を楽しませてくれ』―。 -
膝までブルースにつかって
歩き方がきれいな女性の、すぐ膝の下にはブルースがある 二人の女性がレストランで落ち合い、 そこで交わされる会話を中心に進んでいく短篇。 季節は梅雨。二人とも離婚経験者であり、 思い出話の中には甘い話や奇妙な話、人の死もまた現れる。 その中には思いがけず、鋭くジェンダーの話も混じったりしている。 人は様々な過去を経験して大人に、そして中年になっていく。 それらの過去が人間を作るとしても 少なくとも彼女たちのうちの一人は、 昔と変わらない大股でのきれいな歩き方をしっかり維持している。 昔と違って、実は膝下までブルースにつかっているとしても、だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ひと目だけでも
ひと目どころか、もしや再会も・・・ ライターのような仕事をしている男。 仕事の過程で様々な人々と出会い、 そこに仕事とは別種の感情が入ることもあるはずだ。 対象は、1人のストリッパー。 この小説が書かれた時点ではその言葉はなかったはずだが 「ストーカー」と呼ばれかねない情熱で 男は自分にとって完璧な女性像を 体現している1人のストリッパーを探しあてる。 男にも女にも、そのストレートなふるまいと同時に 「ストーカー」にはありえない、ある種のつつましさがある。 2人の行く末を、読者は幸福な予感とともに推測しながら読み終えることだろう。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ひとりで炒飯を食べる
下北沢の町を舞台に、結婚という関係性と、男女それぞれが個であろうとする関係性の間で物語は揺れ動く。 結婚を約束している二人が18個の鉄火巻を食べながら、結婚後の生活について話しています。話すのは女性の方で彼女には計画があり、それを男性に説明しているのです。男性は、その計画の流れに逆らうでもなく、しかし逡巡して、バーへ行き、カウンターの女性と話し、友人と結婚についての話をします。下北沢の町を舞台に、結婚という関係性と、男女それぞれが個であろうとする関係性の間で物語は揺れ動きます。ひとりでいることについて、ふたりでいることについて、同世代の四人の登場人物がそれぞれに考えています。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)などがある。 -
ヒロ発11時58分
ハワイの古都で、離ればなれの家族が再会するひと時 かつてはホノルルに次ぐハワイ第2の都市として 栄華を極めたヒロ。度重なる災害で町の規模は半分になり、 今はさらに縮小している。 片岡作品にはめずらしく、この小説には老人が登場し、 そこにはヒロという都市の歴史、そして日系人の歴史が刻まれている。 現在へと至るそうした歴史を作った人々に息子や娘がいて 再会すれば心からの手土産を贈りあう。 ふだんは離れていても、それぞれの身体の奥には ずっとヒロの断片が生きているのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
美術館で過ごした時間
美術館が最適 恋人同士、とはどうもいえないようだが、親密な二人だ。 親密であいまいな二人。 彼女が引っ越した新しい部屋、そこからほど近くに美術館があり、 そこがまるで部屋から見て離れのような位置にあり、 あたかも自分だけの美術館のような……という位置の構造が この短篇小説の構造と二人の距離の精妙さに響き合っている。 いうまでもなく美術館は公共空間だが、 なにしろ「離れ」でもあるのだから、 「悪くない」「なにが?」「こういうの」という言葉へと至る そんな行為にも似つかわしい場所なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
美人と海岸
それでもやはりそれは筋道であり、小説になる 結婚してもおかしくはない男女がいて、しかし結婚したいか、まだためらう気持ちがあるか、二人の温度差がある、ということも、しばしば起きることである。男は、故郷の町に女を連れて行って、この女でいいかどうか、確かめたい。女は、彼の故郷に行くのだから、きっと結婚は間近だ、と思う。このあやうい落差を解消するために呼び出されるのが、男の友人である小説家。彼はいったい、どんな役割を期待されているのか? 相当に身勝手な男の計画に、彼は従ってやることにする。なぜならそれはそれで、筋の通ったことだから。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
美容師さんは甘く見守るいじわるオオカミ(単話版)
「俺はそういうところが好きだけど?」 ちょっと重めな愛が原因で歴代の彼氏たちから同じ理由で振られる続けるOL・月乃。 振られる度に仲の良い美容師・星太一のところへ決まって愚痴をこぼしながら、髪を切ってもらっていた。 そんなある日、月乃は新しい出会いを求め合コンに参加し、1人の男性と意気投合♪ 今後の展開に期待していたところ、偶然、道すがら太一に遭遇し、合コンでのことを話していたところ、意気投合した彼は実は彼女持ちだったことがわかり…? いつも優しい彼は羊の皮を被ったオオカミでした♪ ※この作品は「無敵恋愛Sgirl 2021年2月号」に収録されております。重複購入にご注意下さい。 -
ビートルズを撮った
ビートルズを撮ったのは過去だから、現在は新しく作らなければならない ビートルズが来日したのは1966年。それからおよそ20年の時を経て 今までしまわれたままでいた極めて貴重なビートルズの写真が 小説の装丁に使われようとしている。 その機会に、写真家(男)と小説家(女)は会う。2人は1歳違いだ。 小説は書きあがったものではなく、今まさに書かれようとしている、 という点がポイントで、これから書かれるはずの小説に向かって 男は果敢に仕掛け、女はそれを受け止める。 来るべき小説をシミュレートする会話がすなわち 「ビートルズを撮った」という小説である、というこの構造。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ビールの飲みかた
秋のはじまり三角形は、風に漂って海と戯れる 男が2人に女が1人。三角形だが三角関係ではない、というカタチが 片岡義男の小説世界にはごく自然な姿としてあらわれる。 (しかしそのことを繰り返し書く、ということがはたして 「自然」なことかどうかは一考に価する) もう秋が始まっていて、あたりには夏の名残が目に付いて よるべない空気が三角形を吹き流す。 いちばん心地いいのは風であり、飲みたいのはビール。 この小説にビールは実は出てこない。 いや、これから飲みたいね、というカタチで出てくる旨いビールなのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
フォカッチャは夕暮れに焼ける
とても短い物語の中に、入れ子状態でいくつもの想像力が重なり合う物語。 春の朝、朝食を終えた作家は、その日に書かねばならない短い小説について考えています。熱いコーヒーを飲み、窓の外に広がる空を見て、彼は他者と自分との対照の物語を思いつきます。そうして、彼が書いた「小品 1」は、想像上の女性との朝食の風景。しかも、その女性は小説の中でも想像上の人物なのです。さらに、コーヒーカップを手にした彼は、「小品 2」の着想を得ます。喫茶店に向かう彼女を、喫茶店のテーブルの向うに座る彼女を想像し、その彼女が消える物語。果たして、「小品 3」は必要なのか分からないまま、作家は更に想像するのです。 底本:『この冬の私はあの蜜柑だ』講談社 2015年11月 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)などがある。 -
ふたたびメドレーで三曲
メドレーのような長篇小説を トリュフォーの映画『ジュールとジム』(邦題は『突然炎のごとく』)のように仲の良い男女3人がいた。男が二人、女が一人だ。男のうちの一人と女が結婚し、もう一人の男は心から祝福する。そして時を経て、その二人が離婚したという。本当の仲良しであった3人には、三角関係は存在しなかったから、結婚の時に嫉妬はなかったし、離婚の時に憎悪はなかった。結婚しなかった男は今も独身、そして小説家だ。離婚した彼女には瓜二つの娘がいて、その娘もまた作家志望だという。あたらしい何かが今から始まりそうだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ふたりの神話 【単話売】
彼には彼女しか、彼女には彼しかいない。欲しいのはささやかなふたりの幸せだけなのに……運命はどうしてふたりに辛く当たるの…!? ※本作品は、他コンテンツに収録されている場合がございます。重複購入にご注意ください。 -
踏切を渡ってコロッケ
彼女と同居するため、主人公が「2000冊の蔵書を全て売却する」という行為は、誰かと一緒に住むという真実を顕にする。 この物語の主人公は、京都で働く女性と結婚し、しかしそのまま京都と東京で別々に暮らしていました。そして1年を経て上京し東京で働く彼女と同居することになります。結婚し、同居するという行為にまつわる事の全てが、ここにあると言っても過言ではないくらい、主人公が決断する「2000冊の蔵書を全て売却する」という行為は象徴的に、誰かと一緒に住む、という事の真実を顕にします。最終的に二人が決める新居は、彼が本を売らなければ見つからなかった場所です。ということは、やはり増え過ぎた本は売るのが正解なのでしょう。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)などがある。 -
冬の貿易風
時を重ねた再会は、彼女に新しい名前、本来の名前をもたらすはずだ ホノルルのブックストア。 巨大なショッピング・センターの中にあるその店の外側は 冬の貿易風が降らせるどしゃぶりの雨だ。 そのブック・ストアで劇的な再会が起きる。 2人は10年ぶりの再会を喜び、男は女の家に招かれ、 同居の女性と息子にも紹介され、やがてその息子の姿に かつての自分を重ね、しばし痛切な思い出にひたる。 しかし、10年前は10年前、今は今だ。彼はもう大人である。 だから関係も、変わっていい。 今こそ彼女の名を、昔とは違ってハッキリと声に出すべき時だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
プリンセスと輝ける湖【新装版】
王女であるクラリッサは、財政難の国と、病に伏せる父王のため、愛のない政略結婚を控えていた。そんな彼女はイタリアで、ある男性と出会い恋に落ちる。しかし彼は、かつて彼女の国を侵略した隣国の王子だった。調えられた政略結婚、隣国に対して根強く残る国民たちの敵愾心。それはけっして結ばれることのない恋だったが…!? ※本作品は過去に宙出版から刊行された作品の新装版です。本編に変更はありませんので、重複購入にご注意ください。 -
プールに活ける花
要求に答え、しかも自分が自分のまま1週間で日本列島を縦断する、ということ。 日本の最北端から札幌、秋田、東京と忙しく仕事をこなし、 静岡の実家ならのんびりできるかと思えばさにあらず、 さらに京都を経て、淡路島、松山、福岡。 そして忙しすぎた1週間をスクロールし、 自分がいま、何をいちばんやるべきなのかを反芻するのは沖縄だ。 売れていること、多忙であること、そのことがかもし出す魅力に溺れず、 自分を見失わないこと。 そのあざやかな肖像が、日本列島縦断とともにこの短篇にはある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ベーゴマと美人の母親
彼は賢明な子だ、それにベーゴマがある 34歳の演歌歌手がいる。女性だ。最初の章では主に、彼女のたたずまいが描かれる。37歳になった元プロ野球選手がいる。二つ目の章が、彼の来歴と現在の素描だ。二人は離婚した元夫婦だが、主役は9歳の息子かもしれない。母と父は直接会うことはなく少年は母とホテルに泊まったり、父のほうに預けられる際には親戚にも囲まれたりしている。少年は多くを語らず、大人しいが聞かれたことの回答は明確で聡明だ。それにベーゴマがある。父とその兄から教わったベーゴマを、ほら、もう母親と楽しんでいる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ベーゴマの小説を書く
今まで知らなかった何事かを、小説に書くことについて ベーゴマ、というものがある。ある日突然、朝食を食べている時に、ベーゴマ、という一語が何の脈絡もなく小説家の頭に点滅する。現実にそんなことがありうるだろうか? といえば、おそらくはそういうこともありうるのが現実だろう。そもそも、ベーゴマのベーとは何かも知らない彼は何事も万能の姉を呼び出し、ベーゴマの回し方を伝授してもらう。そしてさっそく、短篇小説のプロットを作成する。まったく知らなかったものに少しだけ触れてそれを小説という、普段から付き合っている器に入れる瞬間の物語だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
星の数ほど
ある時、文字通り星の数ほどの星を共有した、2人の女性 2人の女性がいる。2人はまったくの他人同士だったが 1人の男性を介して知り合うことになる。 共にオートバイを趣味とし、共に25歳。 2人は打ち解けて、一緒に旅に出る。 ところがそこでは思いがけない停滞が待っており、しかしその停滞は 同時に充実したひと時をもたらした、と思えた。 あんなにたくさんの星の数に象徴されるように。 そしてラスト、ストーリーは急展開を迎える。 そのような成り行きになったからこそ、 2人が共に過ごした時間は、今や永遠のものになった。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ホメられるとまた作りたくなる! 妄想ごはん
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 作ってあげたい、 作ってもらいたいーー 妄想ストーリーで仕立てた、 愛情たっぷりな レシピ本誕生! 「人のために料理するって、 こんなに幸せだったんだ……」 ゲスの極み乙女。、 DADARAY、ichikoroの 食いしん坊ベーシスト 休日課長が教える 禁断の初レシピ集!!! 料理初心者でも迷わないように、 工程はできるだけ省きました。 見慣れた食材や調味料を さりげなく格上げする 課長流のコツが満載。 ほぼ15分で作れるのに、 ひと手間で喜ばれる定番68品がずらり。 彼や夫、彼女や妻、子どもまで、 「なんか、いつもよりおいしい…」と ついホメ言葉を投げかけられることを 目指したあたらしいレシピ本です。 さぁ、あなたも 「妄想ごはん」を召し上がれ! ~~~~~~~~~~ ★スペシャル巻末対談 リュウジ×休日課長 「妄想レシピ対決!!!」 ~~~~~~~~~~ Chapter1 休日課長の一週間献立 ・(日)究極のしじみカレー ・(火)週1でパスタの日 ・(木)忙しい日のずぼら和食 ・(土)和田家の最高モーニング etc… Chapter2 僕の定番おかず ・中華風なすの肉巻き ・幻のブラックペッパーとんかつ ・まさおの肉じゃが etc… Chapter3 満腹ごはん ・禁断の目玉焼きごはん ・大人のメンマチャーハン ・あさり缶でなんちゃって深川飯 etc… Chapter4 しあわせの麺 ・喫茶まさおのナポリタン ・たらことイカの塩辛スパゲッティ ・トマトジュースで冷製パスタ etc… Chapter5 野菜主役レシピ ・キャベ千かき揚げ ・コクうまキムチ鍋 ・ほうれん草グラタン etc… -
本当の自分を見たくて
「自分自身が、自分自身を見ている」 カメラというものは、機械だから、 何の感情も偏見もなく、目の前の対象をありのままに映し出す。 そうした性能に対する信頼から、男と女は 自分たちの性の時間を、3台のヴィデオ・カメラに収めていく。 自分はあんなことをしているのか、あれが本当の自分なのかと 録画されたものを見ているのもまた同じ自分なのだ。 本当の自分とは何か? 「本当」なんて本当にあるのだろうか。 それは、わからない。 しかし、カメラが確かに捉えた事実は、まぎれもなく、そこにある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
僕と結婚しよう
もうこれ以上奪われないためには、結婚するしかない 短時間のうちにその人物の本質を見抜き、 肖像画を描くことのできる女性がいる。 しかも、惜しげもなくその絵は描かれた当人に贈られ、 もらった側の感激と共に関係性が変わってしまう。 とばっちりを受けるのは絵を受け取った女性と親密な1人の男性だ。 本質を捉えた絵の力は、ある立場からすれば不吉さそのもの。 そこで男は飛躍の一言を口にする。 それが叶えば、もう奪われることはないだろう。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
没になった短編小説
似たもの同士、とは言わないが…… かつて音楽活動のグループを組んでいた5人が、久々に再会する。5人の内訳は女3、男が2。カップルが二つあり、一人だけ残された女性のバックアップ・コーラスを、二組が務める、というなかなか不思議な成り行きだ。人が集まればうまくいかないこともあり、互いの弱さがあり、しかしそうした弱さにはどうやらパターンがあるようだ、という認識がこの小説では「フラクタル」の概念を使って説明されている。海岸線の卓抜な比喩が、5人の存在にどことなく重なり合うはずだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ボーイフレンド・ジャケット
小説はどこにある? 人生の中に? 小説の中に? 片岡義男の小説には、しばしば作家を職業とする人物が登場する。 そして小説の中で、その作家が書いた小説が披露される、ということがしばしば起こる。いわば小説内小説だが、これはそれを徹底した作品である。 なにしろ地のストーリーよりも、小説内小説のスペースのほうが多いくらいだから。 「まるで小説だ」と口にされる時、それは人生のことをそう呼んでいるわけだが、 しかしそれを読んでいる読者が今まさに読んでいるものは人生ではなく小説である。と、いうような混乱を、この小説は爽快に駆け抜けてみせる。 【目次】 一章 見合いを半分だけする 二章 姉と夕食。そして朝食も 三章 私たち四人 四章 短編を書いた四日間 五章 編集者に会う予定 六章 真珠の雨 七章 水平線を見に来た 八章 短編になるかしら 九章 温泉へいく途中で 十章 ボーイフレンド・ジャケット 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
真夏の夜の真実
1年後、少女たちは再び夜に集合する 激しい雨の降りしきる台風の夜。14歳の少女の家に、親友たちが集まってくる。全部で4人。全員が14歳だ。4人は一夜を共に過ごすために悪天候にも係わらず集まったがその一夜の目的は、ある現場を追体験することにあった。1年前の同じ日、同じように台風の夜に起きたある悲劇の現場を彼女たちは訪ねる。その出来事を彼女たちは見ていない。知らされただけだ。しかし彼女たちは今年、わざわざ集まった。そこへ行った。そしてそこでどんなことが起きたか、端的な事実だけを告げてこの小説は幕を閉じる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
「ママ、ママ」
その切実さを成就させるために、彼女には現実とは別の形式が必要だった 人は、自らの生い立ちを選ぶことはできない。 空手のインストラクターを務めるようなしなやかな肢体を持った 20代の美しい女性に成長しようとも、 信じて疑わなかった人から「実はあなたの生みの親ではない」 と、ある日、告げられるような事態にも遭遇する。 では、彼女を生んだ人は今、どこにいるのだろう? それは「ママ、ママ」という呼びかけが正当に機能する場所であり、 その場所は、努力の末に彼女が自力で手に入れたものなのである。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
真夜中のセロリの茎[1988 version]
真夜中のコーヒーに、それは合うか合わないか 男が2人と女が2人。2台の自動車に分乗して わざわざ凧揚げに行ったりするような仲の良さだが、 4人は常に4人であるわけではなく、 AとB、CとD、AとC、BとD、AとD、BとCという6通りの1対1があり そのすべてがこの短い小説の中に現れている。 その1対1には、恋愛や性をやすやすと超えているようなところがある。 ※なお、未発表のものも含め、同タイトルの作品が実は4種類ある。 最新のそれは2011年発売の短篇集の表題にもなった。 ここにお届けするのは1988年に発表されたバージョンである。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
三日月と会話する
短篇小説のタイトルは、未来の短篇小説からもたらされる 『甘く優しい短篇小説』と題された短篇集に収録された作品たちは それぞれ「短篇小説を書く」ということがどのようなことかが描かれ、 作家・野村五郎を共通の登場人物にしている。 この短篇もそれらの中の一つだ。 別の短篇「甘く優しい短篇小説」では2人の女性が登場したが ここでは3人。いや、その3人もやがて女性3人ではなく、 それぞれのジェンダーが割り振られ、バランスを変えていく。 そしてこのタイトルは、野村五郎が女性からヒントをもらい、 未来に向けて構想する短篇のタイトルがそのまま定着したものだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
三須先輩の甘い駆け引き(単話版)
「君のこと、独り占めしたい」 入社2年目、ひそかに憧れていた先輩・三須先輩に告白された村瀬。 「なぜ私なんかを…」と返事に悩むうちに、気づけば告白から2週間が経過。 さすがに、そろそろ返事をしようと思っていた矢先、 なぜか三須先輩と一緒に、毎年行う懇親会の企画担当をすることに! 気まずいかと思いきや、いつもどおりな三須先輩にで安心した村瀬。 だけど、隣にいるだけでドキドキが止まらなくて…! さらには、三須先輩からもう一度気持ちを伝えられて――…!? 憧れの先輩から突然の告白! 気づけば甘いワナにハマっていて…!? 【策略家な彼】×【真面目な彼女】の焦れきゅんラブ♪ ※この作品は「無敵恋愛Sgirl 2022年8月号」に収録されております。重複購入にご注意下さい。 -
道順は彼女に訊く
これは謎についての小説ではなく、関係についての小説である 一人のフリー・ライターがいる。彼は引越しに伴う書類の整理中、ふと昔の雑誌記事に目を留める。5年前、25歳の女性が失踪したことをめぐる記事だ。記事と、その後どうなったかについて興味をそそられた彼は、取材を開始。多くの人物に会う。記事を書いたライター、失踪した女性の友人、両親……調べながら彼は、これは犯罪や事件ではなく、失踪者自身の意志ではないかと推測するに至る。そして作者が「あとがき」で書くように、小説の核心は、なぜ? という謎以上に女性を中心とした関係性そのものにあるのだ。 【目次】 第一章 五年前のこと 第二章 最初の取材者 第三章 裸婦は語る 第四章 暗室で夕食 第五章 写真と油絵 第六章 父親の見識 第七章 二階の部屋 第八章 上司や同僚たちが語る 第九章 それまでの一時間三十分 第十章 髪を切った女 第十一章 ひとり二役 第十二章 ふたたび最初の取材者 第十三章 詩人は結論を出した 第十四章 彼女が見たはずの恐怖 あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ミッチェル
これはすべて他人の言葉です この断章形式はいったい何だろうか? 詩、のようにも思える。いや実際、これは詩なのだ。 この短篇に書かれた言葉の一切は 作家・片岡義男が書いたものではない。 同時にそれはすべて片岡義男によってメモされ、翻訳されたものだ。 そしてもう1つ。片岡義男が「作者」になった理由がある。 それはここの断章=詩を、ランダムにシャッフルした、ということ。 では言葉を書いたのは誰? それは、「ミッチェル」。 もうおわかりですよね? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ミッドナイト・ママ
ボーイ・ミーツ・ストリッパー。 走る、飲む、寝る。で、さよなら童貞。 女が年上で、男がまだ女性を知らないなら、こんなふうに出会ってしまえばいい。 これは、最強のご都合主義に貫かれた一編だ。 オートバイで走っていたら、風呂上りの豊満な女と出くわし、 向こうから追いかけてくる。 飲んでも食べても支払いは女、喧嘩に巻き込まれてもあっさり勝ち、 そして少し甘えたような、初めての経験。 まさしくママの振る舞いだ。 真夜中のママこそが、世の少年をこうして正しく教育する。 【著者】 片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。 -
緑の瞳とズーム・レンズ
この作品をD小説と呼ぼう。DはデザインのD、そしてディスカッションのDだ 女性が1人と男が1人。 女性は金髪で緑色の瞳をした経済学者。男は写真を撮る者。 2人は日本中のさまざまな場所を共に散策する。 太平洋や、埋立地、寺、灯台、内海・・・ どこに身をおいても彼女は風景に溶け込むことなく際立ってしまい、 それがまるで広告写真のようだ、と男は感じる。 2人は各地を歩きながら、相当に理屈っぽい、長いセリフの会話を交わす。 それは現代の、この日本という社会への痛烈な批判であり、文明批評でもある。 2人は空間と時間に向き合うささやかなデザイナーとして日々を生きる。 【目次】 最初の七ページは、荒れ模様の冬の海とその海岸のために 初冬の湖に浮かぶアヒルのボートの、悲しい奥行きを観察する 埋立地の遊歩道、そして離陸していく飛行機に、人類の運命を見る あなたの光は私の心も照らします、と彼女が囁く 飲料水の自動販売機が、雨に濡れて端から端まで連なる国 二十年をあいだにはさんで、過去の物語と現在の物語が進行する 町なみのディテールのすべては、そこに生きる人の心の内部 散歩をしよう。そしてその途中で、コーヒーを飲みたい ほんの少しだけ昔、下駄をはいて電球をひとつ買いにいった人 標高千二百メートル。六月の夜、心地良く冷たい風。革新された技術は、なんのかかわりを持つのか 西陽の当たる町で、影を失いつつ僕たちは途方にくれた マネキンのセクシーな喉もとで、残暑の一日が終わる 巨大な大橋を仰ぎ見る、海に面した町にはどのような時間があるのか 一年まえのおなじ日、おなじ海岸のおなじ場所で、砂の上に倒れる 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
南長崎線路ぎわ
3人の女性と出会った編集者。その中でアイディアを得たり、ある予感に包まれながら、夜の線路際へとたどり着く。 南長崎の線路脇、駅で言えば西武池袋線椎名町駅と東長崎駅の間で起こる出会いと再会の物語。若い女性マンガ家の仕事場に、本を作るための顔合わせに向かった男性編集者が、その母親がやっているコーヒー店へ向かい、そこに長居することで、思わぬ再会も果たします。3人の女性と次々に出会った編集者は、その中でアイディアを得たり、ある予感に包まれながら、夜の線路際へとたどり着きます。一冊の本を作るという仕事の発端が、転がるように物語を生み出し、編集者はそうなるのが当然だったかのように、すれ違う電車の音を聴くのです。 初出:「文學界」2014年9月号 底本:『ジャックはここで飲んでいる』2016年、文藝春秋 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)などがある。 -
南へむかう貨物列車
ホーボがもたらした、ハーモニカによる言葉 広大なアメリカ大陸の歴史を語るには、鉄道の存在を欠かすことはできない。人々はそれに乗って移動し、鉄道はまた多くの人の職場でもあった。そして、ホーボと呼ばれる無賃乗車の放浪者がいる。積荷を見れば列車がどこに行くかを正確に言い当てることができた、というホーボがいて、彼はまたハーモニカを使って酒場の喧噪を鎮めるだけの能力を持っていた。ハーモニカの音楽は彼の言語だった。そのホーボが列車の中で亡くなり、小さいが墓が作られ、形見のハーモニカは今、また別の困難を生きてきた男の掌に握られている。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
醜いシンデレラ
アンナは病気の祖父のためにどうしても仕事が欲しかった。昔住んでいた思い出の屋敷で働こうと面接を受けると、現れた雇い主は――かつて財産目当てでアンナに近づき、手ひどく裏切った憧れの男性ヴィードだった! 彼は祖父から手切れ金を受け取り去っていったはず。その彼がこの屋敷を破産した祖父から買い取っていたなんて。ショックで帰ろうとするアンナを彼はひきとめ彼女を雇うと言いはなつ。見違えるような成功者として帰ってきた彼の目的は…まさか復讐!? -
醜いシンデレラ【分冊】
アンナは病気の祖父のためにどうしても仕事が欲しかった。昔住んでいた思い出の屋敷で働こうと面接を受けると、現れた雇い主は――かつて財産目当てでアンナに近づき、手ひどく裏切った憧れの男性ヴィードだった! 彼は祖父から手切れ金を受け取り去っていったはず。その彼がこの屋敷を破産した祖父から買い取っていたなんて。ショックで帰ろうとするアンナを彼はひきとめ彼女を雇うと言いはなつ。見違えるような成功者として帰ってきた彼の目的は…まさか復讐!? -
麦畑に放りだされて
広大な麦畑の経験は、青年を濾過する。 はるかカナダにまで続く、気の遠くなるような面積の麦畑。 熟練の腕を持つ指揮官の下、麦刈り隊に加わった青年は 恐怖すら感じさせる、そして官能のゆらめきをたたえた 麦畑の法外な物量の中で、かつてない身体の開放と 地球と自分の体が一つになった感覚を獲得する。 麦畑と一緒に在ると、風はひときわよく目で観察することができ、 火はあまりに獰猛で俊敏に動く。 そこにむきだしの、プリミティヴな人間の動きが接する。 この純度の高さこそが、労働というものだ。 【著者】 片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。 -
無垢な乙女の変身〈予期せぬウエディング・ベル III〉【分冊】
グレッチェンが働くウエディング会社に特別な依頼が舞い込んだ。週末の結婚式で招待客の映画スター、ジュリアン・クーパーの恋人のふりをしてほしいというのだ。男の人が苦手、太めでクセッ毛のわたしにできるわけないわ。スイートルームを訪れると、そこには輝く容姿でゴージャスな彼。かたくなる彼女にジュリアンは「演技指導が必要だな」と甘くキスをする。ふさわしい相手になれるよう提供された資金は2千ドル。高級スパとブティックで大変身することに…!? -
無人島へ連れていく人
すべてがうまくいく撮影の成り行き 写真家がいる。パートナーとして優秀な編集者もついて新しい写真集の企画が持ち上がる。写真家と編集者は語り合う。アイディアが拡がる。そして、瀬戸内の島でヌード、ということになる。これだけなら凡庸に聞こえかねないが、ここから完璧な島と完璧なモデルを見つけ出す。島は瀬戸内の歴史を色濃く残す奇跡のような島であり、モデルはその体の均衡、撮影に対する理解力など、パーフェクトだ。撮影が進んでいく様子が、次々に小気味よく描かれる。もっともらしい試行錯誤の場面などはなし。それが片岡義男の小説である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
胸に輝く星
人生は冗談の連続。 その渦中に町でいちばんの伊達男がいる。 ユーモアと余裕に満ちた楽しい一編。 主人公は、保安官のガーランド・デューセンベリー。 彼が日々相手にしているのは、 半熟卵が注文どおりに作れないからと妻を散弾銃で射殺したり、 未婚にもかかわらず「浮気している夫を逮捕してほしい」と訴えてきたり、 酔うと必ず酒場でストリップをして、あげく家まで送り届けなければならないようなデタラメな連中ばかり。 しかし彼はジョークのようでもあり、シリアスでもあるそれらの馬鹿馬鹿しい事件を的確に、すばやく、こなしていく。 西部劇スター崩れの完璧に整えられた服装とともに。 【著者】 片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。 -
胸のふくらみがこう語った
胸のふくらみのエンサイクロペディア 男性にはなく、女性だけが備えているもの。それが、胸のふくらみだ。この中篇小説は、一組の男女を中心にすえつつ、男性による胸の礼賛と、屈託なく胸を開放してみせる女性のふるまいによって、読者をこれでもかと胸のふくらみの世界へと引きずりこむ。やがて二人の対話や実践だけでなく、様々なシーンで見かけた胸のふくらみの魅力、胸の写真コレクション、そして絵葉書など、魅惑的な胸のエピソード集の様相を呈し、あらゆる角度から胸のふくらみについて語る百科全書的な領域へと近づいていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
もう君を逃さない。
父の再婚により、上流階級の家族ができた美月。けれど、義兄妹の対応は冷たく、辛い日々を送っていた。そんなある日、美月はアルバイト先で出逢った美青年・理人と恋に落ちる。しかし、想いを通じ合わせたのも束の間、義妹が理人に想いを寄せていることが発覚! 義兄は妹のために、美月に理人と別れるよう命じる。断れば、理人の仕事をすべて潰すという脅迫とともに……。泣く泣く理人に別れを告げ、海外へと旅立つ美月。それから二年半。日本に帰ってきた美月は、知人に紹介された会社に就職。そこにはなんと理人の姿が! 彼は二度と彼女を離さないと言い、美月に熱い執着を向けてきて…… ※電子版は単行本をもとに編集しています。 -
妄想LIVE!!
まず、とびきりカッコいい男を妄想してください。 「ああ、この広い世界をどんなに探しまわっても、もう二度と会えないのか」真っ白な大地から空を見あげた。どれだけ目を凝らしたら見えるだろうか、あのいとしい姿が。(本文より) こんな男がいるのか、と疑うぐらい誰もが惚れ惚れするほどいい男。MIKITOは、ヘヴィメタルが世界に誇る人気絶頂のロックシンガー。彼はその長身からさらに右手を高々とあげて愛の歌を熱唱する。この立ち姿がなんとも美しい。彼の激しいシャウトと熱いバラードは、たちまち世界中の女を夢中にしてしまう。そんな無敵の彼は心の中に、天使のような少女を住まわせている。愛を教え、彼女を守り、命懸けで愛していた。そのうち二人の出会いには、思いもよらない秘密が隠されていたことを知る。やがてすべてを捧げて美しい彼は、愛し合う彼女と運命をともにすることに。甘く、せつなく、彼らの音楽に託した純愛を妄想で今、振りかえる。 -
もう一人の花嫁
偽りの婚約とわかっていながら、いつしか心には純愛が芽生え……。 2歳で母と死別し、養父母に引き取られたエロイーズ。今はウエディングドレスのデザイナーとして活躍しているが、恋愛には臆病で、みずからの結婚はまだまだ遠そうだった。ある日、顧客の一人に、根拠のない悪口を広められてしまう。結婚という夢をばかにした女性がウエディングドレスを作っている、と。顧客離れに悩む彼女に、ボストンの億万長者ジョシュが手をさしのべた。ジョシュは最近知り合ったばかりだけれど、頼りになる魅力的な男性だ。週末に出席予定の結婚式に彼を婚約者として同伴すれば、汚名返上できるはずだという彼の提案に、エロイーズの胸は高鳴った。彼がまさか、彼女の生き別れた姉妹のために近づいてきたとも知らず。 ■雑誌に載っていたエロイーズの写真を見て、友人女性と瓜二つだと気づいたジョシュは、じつのところその友人のためにエロイーズを密かに探りに来たのでした。そうとは知らない彼女は、官能的な唇を持ち、親身に相談に乗ってくれるジョシュに惹かれてしまい……。 -
もっかいプロポーズ(単話版)
「じゃあ すんごいのシよっか」付き合って7年、同棲して2年目を迎えた真希子と淳。真希子は待ちに待った、ロマンチックなプロポーズをしてもらえると期待していたけれど、淳からもらったのは、ムードもへったくれもないプロポーズ(?)だった! まさかの事態に真希子はプロポーズのやり直しを要求するけれど、それ以来淳の態度はなんだかよそよそしくて…? 【恥ずかしがり屋の彼】×【ロマンチック思考彼女】のちぐはぐムズキュンラブ! ※この作品は「甘く噛んで、舌で舐めて…×××!」「溺愛ガテン男子 心も体もどっちも満たして?」「無敵恋愛Sgirl 2018年9月号」に収録されております。重複購入にご注意下さい。 -
やくしょのふたり
矢田聡司、社会人3年目。勤めていた会社から急な出向を命じられた不幸な彼は、初日の通勤中、痴漢に間違われたところを美女に助けられる。 彼女の名は鏑木彩佳。感謝する矢田が身の上を明かした瞬間、彼女は不機嫌も露わに去ってしまう。その理由がわからず困惑する矢田だが、出向先の同僚として不機嫌な美女と運命の再会を果たすことに。 そんな矢田の新しい仕事とは、『消費者省』という商品の安全性を守るために作られた『国の役所』で働くこと。ハードな職場で訳ありクール美女と凸凹コンビを組むことになった彼は、次第に彼女が抱える秘密を知っていくが……。 -
夜景が見えます
男性にとっての酒場の本質を穿つようでもあり、一篇のファンタジーのようでもある 駅の東の端、もっとも店が少ない出口から出て、人通りの少ない道を歩き、たどりついた十字路の一角にある四階建てのビル。その二階にパール・ノワールという小さなクラブがあります。各テーブルには店の女性が一人、その女性たちはホステスという言葉が似合わない、会話ができる才能を持った女性たちが選ばれています。その店の店長である中津川恭介と、一人で店に来ている客、榊原雄三との会話で物語は進み、店の秘密のサービスが明らかになります。男性にとっての酒場の本質を穿つようでもあり、一篇のファンタジーのようでもある不思議な物語です。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)、『窓の外を見てください』(講談社)などがある。 -
yours
「ここにあるこの詩集のようなもの」 詩集、と呼んで差し支えないだろう。 タイトルがあり、ページの一番下まではいかないセンテンスが 行分けにして何行か続いていく。 そういうカタマリが、60個ある。 そこにあるのは風、雪、海、月、雨、プール、稲妻、落葉、小鳥……、 季節の移ろいを感じさせる言葉の中に 何度も「香り」が出てくる。そして「別れ」も。 興味深いのは、「あとがき」で、 作家が「詩」というもの、そして「言葉」というものを どのように考えているか、その片鱗に触れることができることだ。 そしてこの本のタイトル「yours」の由来も。 【目次】 MISTY ベイ・ブリッジと夜想曲 あの影を愛した 未来の果てまで 4ビートの微笑 桟橋で深呼吸 ありもしない幸福 明日は今日よりもっと 人生はこうでなければ 私を甘やかす空間 すべてはあなたから 歩いてゆく途中 がんばってください 彼女の香りを返してくれ 私のこんな朝 雨の日の紅茶 秋のキチンで僕は 私と指輪とあなた 僕のジャケットと彼女 秋が深まるね ほか 計60作の詩、あとがきを含む 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
勇気は下着から
勇気を出して、いつものように ある時は、彼の部屋で。 またある時は、台風が来襲しているまさにその時、 駐車場に停めたステーション・ワゴンの中で。 そしてまたまたある時には、満月の下の草地で。 女と男は愛の行為に及ぶ。 恥ずかしい気持ちもあり、えっ? 今ここで? という気持ちも当然ある。 勢いに任せて奔放なままに、なんて所作は描かれない。 二人が行為の前に目にするのは他でもない、 裸体よりも先にまず下着だ。それをどうするかだ。 下着を脱ぐことさえできれば、そう、あとはいつもの二人の作業だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
誘惑のらせん階段
パーティーへ向かう途中、雪だまりにつっこんでいる女性クリスティーナを助けたラファエル。翌日、ロンドンに戻った彼は偶然、彼女が営む花屋を訪れ、ふたりは再会する。大企業を経営するプレイボーイの彼とは、まったく違う世界に生きる古風で男性経験のないクリスティーナ。財産目当ての女にうんざりしていた彼は、今まで会ったことのないタイプの彼女に興味をもつ。そして、いつしか彼女の世間知らずで天真爛漫な行動を、ほうっておけなくなってしまい…!? -
誘惑のらせん階段【分冊】
パーティーへ向かう途中、雪だまりにつっこんでいる女性クリスティーナを助けたラファエル。翌日、ロンドンに戻った彼は偶然、彼女が営む花屋を訪れ、ふたりは再会する。大企業を経営するプレイボーイの彼とは、まったく違う世界に生きる古風で男性経験のないクリスティーナ。財産目当ての女にうんざりしていた彼は、今まで会ったことのないタイプの彼女に興味をもつ。そして、いつしか彼女の世間知らずで天真爛漫な行動を、ほうっておけなくなってしまい…!? -
浴衣とコロッケそして佃煮
少しづつ重なる人間関係と、その中で変化していく日々の暮らしのグラデーションを通じて描かれる、何かが始まる予感のようなもの。 喫茶店を残した母と、主人公である、その息子と従弟。息子と従弟と従弟の妻、閉店するバーのママとその友人と、喫茶店を継ぐ予定の主人公。3人で社会は構成され、その中の2人が物語を動かす。「浴衣とコロッケそして佃煮」は、3人の社会の中の2人が繋いでいく、カレーとコーヒーとコロッケと弁当と佃煮が食べたくなる物語だ。少しづつ重なる人間関係と、その中で変化していく日々の暮らしのグラデーションを通じて描かれる、何かが始まる予感のようなもの。短編小説だからこその、その微妙な空気の変化を感じてください。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)などがある。 -
ゆくゆくは幸せに暮らす
要するに人生とは、関係の作りかたとその維持のしかただから 女優と男優、カメラマンと作家の4人による群像劇風の短編小説です。自分が演じた役柄に納得が行かないと、相手役の先輩男優に訴える女優の話は、カメラマンが直面する現実と重なり、作家は、そのようなトラブルについて、「人生は関係性にある」というテーゼを基に見事に解体して見せます。もちろん、事態を解体してみても、問題が決着するわけではありません。しかし、その話の中には、「なしくずしで寿命となる人生」を避けるためのヒントが含まれていました。カメラマンは、なんとなくそのことに気がついて、幸せな人生へと向かいます。 底本:『ジャックはここで飲んでいる』2016年、文藝春秋 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)、『窓の外を見てください』(講談社)などがある。 -
柚子味噌を買います
個人的な非常時と作家としての日常、男女の関係性の境界、作家と言葉の関係についての物語。 46歳の作家、池田新平の元に叔父から、名古屋で一人暮らしの母親が入院したという電話を受けることから物語は始まります。仕事のスケジュールを考えながら病院へ急ぐ新平は、途中で付き合っている3歳年下の女性作家、北沢美也子に連絡します。物語は、二人の作家の作家としての思考と、母の病気という現実を二重写しのように描いていきます。新平は、冬をテーマにした短編を構想し、美也子はエッセイ集のテーマとタイトルを考えます。作家という職業の特殊性と、誰にも降りかかる可能性のある緊急事態が不思議な緊張と緩和をもって語られます。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)、『窓の外を見てください』(講談社)などがある。 -
指輪のなかの海
彼は指輪をくれた、彼女は写真を始めた 男性が女性に指輪を贈る、といえばプロポーズ、ということになりそうだが必ずしもそうでない場合もある。しかもその指輪は男性が作ったものであり、波とサーフボードまで精巧に刻まれているとなると、これはなかなかめずらしい事例ではないか。贈ったほうももらったほうも、それから別々の道を歩み、女性のほうは写真の魅力に目覚め、そしてカメラを指輪の上に落として波形をつぶしてしまったことで二人は再会する機会を得ることになった。ところが……その再会が、二人の最後の機会になってしまったのだ…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
夢の終わるべきかたち
自分を中心にして組み換える エッチ、という言葉がこの短篇では使われる。 エッチな投稿写真を中心に構成されるエッチな雑誌があり、 一人で編集をこなしている女性が主人公だ。 彼女を雇う社主もまた女性。 社主が相当数の「エッチ」雑誌を発行しているのは利益が上がるためであり 編集者の彼女がこのような仕事をするのは 「ちょっと人には言えないような仕事」をしてみたかったからだ。 そして女性編集者の書くエッセイこそ その「思想」を体現するものであり、すなわち 男のすべての夢が終わったあとに その空虚を引き受けるのが若い女性の肉体なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
浴室で深呼吸
男が2人、女が2人。過去と現在にアイデアと推理が混じれば、いささかスリリングなことになる ジャズ歌手としてデビューする友人のステージを見るため 彼女たちはステーション・ワゴンで西へと向かっている。 そこにそれぞれ現在の恋人が合流することになっているから 全部で4人ということになる。 しかし過去には、今、誰もが了解しているわけではない事柄があり、 4人のうちの1人は、ふとアイデアを思いつくと実行せずにいられない性質であり そこに推測が、不在が加わり、しかも電話という装置が介在すると・・・ なにも起きていないし、確実に何かが起きているともいえる精妙な短篇である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
余命一年、死神と愉しむ10のこと【タテヨミ】
幼いころから当主としての振る舞いに努めてきた侯爵家の娘・エレオノーラは、余命1年の病に侵されていた。 恋も知らずに決められた相手と婚約したその日、とある男と恋に落ちる。 その男の正体は、1年後にエレオノーラの魂を狩り取るべく現れた“死神”だった。 「死ぬまでにしたい10の願いを叶えてあげる」。 彼は、せめて彼女の残り僅かな人生を幸せなものにするため手を差し伸べる——。 【クレジット】川奈あめ(原作・脚本)綾乃(ネーム)多花緒(キャラクターデザイン) EVERGREEN・CIAO(線画)拓思科技(背景・着彩・仕上げ)豊田あや・乙原エマ/Plott(プロデュース・ディレクション) 14ページ -
夜はまだ終わらない
成り行きに身を任せ、終わらせたくないから夜はまだ終わらない タフな仕事を終え、明日は何の予定もない。 そんな最もリラックスできる時間に、女は1人、夜の街に出る。 お気に入りの店で1人飲んでいると、 微妙といえば微妙な関係の男が入ってきて そのまま2人は自動車で高速道路を長い距離、走る成り行きになる。 何一つ不自然なことはないが、しかし同時に どこかでタガの外れてしまったような夜が続く。 男の態度も終始紳士的でありながら、いくらか謎めいてもいる。 こんな夜は、なぜだろう、眠る気になれないのだ。 女は再び1人になってからも、まだこの夜を続ける気でいる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
4シリンダー追想
5枚のスナップ・ショットは、ポーカーのカードのように これは『恋愛小説』(角川文庫)に収められた一篇であり、 同じ本に収録された別の短篇「と、彼は思った」と似た構造を持っている。 不意に発見されたスナップ写真を見ながら、夫婦が思い出を語るという構造だ。 そしてこの短篇では男性より女性が多数だ。 そしてオートバイに乗っていたこと(今は乗らなくなっている)、 オートバイに乗ることを教えたこと、が重要なポイントになっている。 そしてよく読むと、2つの短篇には、赤い花、という共通項もある。 読み比べてみるのも一興。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ライク・ア・ローリング・ストーンだって?
生まれたのは汽車のなか 流しのハスラー。それはもはや商売というより男が生きている状態そのものだ。なにしろ、生まれたのは汽車の中。幼い時からビリヤードがめっぽう得意で、なんでも巻き上げてしまうから共同体に置いてもらえない。それで旅に出ることになる。日銭を稼ぐ流儀はお手のものだ。彼は必ず勝つ。そして勝つから、またよそに行かなければならない。その生き方は孤独そのものだが、他人にまるで関心がないわけでもないようだ。その片鱗は随所に見られる。ただ他人に執着はまったくなく、すぐに忘れるだけだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
楽園の土曜日
楽園とは、女系の中への傍若無人な侵入である 将来、伴侶になるかもしれない女性の実家に 男はその女性の短い帰省の見送り、という仕方で 入り込む。彼女には2人の姉がおり、母親もいて、 おまけに父親は離婚したため存在しない、という周到さだ。 つまり、男1人に女性4人、という状態。 ある種の男にとってこれは「試練」になりうるが ここでは「楽園」という解釈になっている。 はたしてそれは本当に「楽園」か? それを考える鍵は、案外、母親あたりにありそうだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
楽園よりも不思議
やっと楽園、とは少し別のもの 2組の男女のカップルが、映画館で映画を観ていた。 4人は友人でもあり、偶然、同じ映画を見ていたことを喜びながら、その後の行動を共にする。 コーヒーを飲んで映画について理屈っぽく語り合い プールに泳ぎに行ったり、空腹になれば焼きそばを作って食べたり。 家にたどり着けば、奔放な行いもあったりする。 それは反抗でも刹那主義でも堕落でもなく、 やっと手に入れた楽園でもなければ、さりとて日常でもない「何か」だ。 ちなみにここで登場する映画は、タイトルで端的に示されているように、 そう、あの映画である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ラハイナの赤い薔薇
朝食には何を作ろうかという考えはいつしか朝食とは何か、という考えと渾然一体になる 朝食とは極めて個人的なものだ、とこの小説は言う。 良い朝食には良い朝が必要であり、それは前夜、 つまり、良い夜からすでに始まっている。 朝食には何を作ろうか、と考え、とびきりのコーヒーについて 思いをめぐらせ、やがて朝食を構成する食材について 考え、イメージしていくことがそのまま小説になっていく。 クリスマスについての考察、ハワイ、という土地の歴史と現在についての 会話はそのまま分析となり、見解になり、小説になる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ラハイナまで来た理由
イージー・チェアから見えた世界 ハワイ。作者・片岡義男の祖父が、父が住んだその場所のことを書いた渾身の長編。優れた農業技術者だった祖父。その息子である「僕」の父は、アメリカ軍の軍人だった。そして姉が異母姉であることが姉弟関係に微妙な影を落とす。アメリカと日本のあいだにあるハワイという場所にあった歴史。家族写真。アロハ・シャツ。コナのコーヒー。古いビートル。ヴェトナム戦争。エルヴィス・プレスリー。「僕」は今、父が作った庭を、父がイージー・チェアに座って絶命する瞬間も見ていたであろう庭を、同じ位置から見ている。 【目次】 ラハイナまで来た理由 片仮名ではスパム・アンド・エッグス パウ・ハナの美女 雛祭りに泣いた 雨の夜の映画 濡れた新聞とコナ・コーヒー 赤い帽子のバトロメ いつもその窓から見ていた 失われた路面電車 写真に添えたひと言 買って来たピッツアとロウソクの明かり 干潮時水位 カプリース・クラシック・クーペ ふたりで食べた林檎 父親のウクレレ 雨の朝のヒロ・マーチ エルヴィスで四ページ カリフォルニア生まれだ、ソバカスがある ファミリー・フォトグラフズ プールにも台風が来た プレート・ランチという幸福 ファイヴ・オーのなかのハワイ ウルパラクアの赤 まるで落穂拾いのように ホノルルで雑誌を作る そこを滑り下りる遊び 別れの磯千鳥 姉とエルヴィス・プレスリーの会話 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
裸婦のいる部屋
縛る、とはどういうことか 二人の女性がいる。その姿、身長、着ている服に共通したものがあり、そして年齢も共に28歳。非常によく似た二人だ。春の夕暮れ、世間ではまだ多くの人が働いている時間に彼女たちはホテルの11階の部屋に入る。ここからが自分たちだけの時間だ。自分たちだけ、でありつつ同時にそこに、二つの道具が挿入される。カメラとロープ。カメラは三脚で固定され、身体はロープで固定される。縛る、ということ、縛られる、ということの果ての無い快感がそこにある。縛ること、縛られることは彼女たちの生き方だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
離婚して最初の日曜日
彼女は不在よりも「がらん」を選ぶ 縁あって結婚した二人が離婚する。 仕方のないことではあるが、愉快な経験とは言い難い。 しかし、争いや消耗が長引くことなく、スパッと切れるだけ良いのだ。 問題は、これからの暮らしのこと。 男はしばらく仕事で海外に出てしまうという。 まだ時間の猶予はあるが、夫の不在のあの部屋で 離婚して最初の日曜日を迎えるのは御免だ。 そう考えた彼女が思い立ってすぐに行動に移したことは……。 淋しくも凛とした、桜の季節にふさわしい短篇である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
恋愛指導は社長室で~強引な彼の甘い手ほどき~
「プライベートでも俺のパートナーになってくれないか?」 イジワル社長のギャップに翻弄されてます 元デザイナーで、今は社長秘書を務める沙良は、社長である隼人に恋愛経験がないことを知られてしまう。それをきっかけに、なぜか彼から恋愛指南を受けることに。強引でイジワルな隼人に翻弄されるも、たまに見せる優しさに惹かれていく沙良。でも、彼には彼女が居るようで――抑え切れぬ想いからキスをしてしまったことで、隼人との恋が急加速して……!? -
恋愛生活
嫉妬心から好奇心へ、自分自身へ 愛する人の死。深く、悲しい喪失からこの物語は始まる。自分が表現する才能は無いが、音楽に係わる仕事をしたいと考えた主人公の女性は自分が世に送り出そうと考えていた女性歌手の遺品の整理をし、遺されたノートを見ていく過程で、亡き彼女の「恋愛生活」を知る。親しかったのは自分だけではなかった嫉妬心に震えるが、やがて嫉妬心は好奇心に変わり、トランスジェンダーの魅力を備えた女性、また別の作家の女性まで現れ、そこに身を投げることによって、今まで知らなかった自分の可能性が花開いていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
六月の薄化粧
あれこれ、流れ落ちていく だから、薄化粧 一緒に暮らしている男女がいる。 女性はケーキ教室のアシスタントを務め、 男性は予備校および学習塾の講師であり、 同時に田舎にも家を借り、彫金を試みようとしたりしている。 一緒にいても屈託や軋轢の見られない2人だが、 それはいつもこの2人がビールを飲んでいるからではないか? と思えてくる。 それほどこの短篇小説は全編、ビールのことが描かれている。 雨や海岸で濡れることなど、水にまつわるシーンも多いが その傍らをいつもビールが流れていく。 これは、「水に流す」ではなく、ビールに流す小説だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
六杯のブラック・コーヒー
大陸の広がりにさらされ続ける男たち 冒頭から始まる容赦ない雨の描写、そして死についての記述が読者を圧倒する。北アメリカ大陸の自然を最もダイレクトに生き、それゆえ誰よりもその大陸を恋することになってしまう男たち。長距離ドライヴァーがこの小説の主役だ。途方もない距離と雨と風をいつも相手にしている彼らにとって家庭や通常の人間はどこか虚ろに見えてしまう。ドライヴ・インのウエートレスとの束の間の交流のほうがはるかにやすらぎを与えてくれるだろう。そしてブラック・コーヒーは六杯くらいなければ追いつかない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
ロマンスなら上海
なつかしい過去にアクセスし、彼らは新たな「現在」を手に入れる 2人仲良く出張するサラリーマン。 偶然、新幹線に置いてあった雑誌で これから仕事で訪ねる先の街で かつて熱心に通ったナイトクラブが今も盛業中であることを知る。 しかも、2人はちょうど同じ頃、互いにそうとは知らず、同じ時期に常連だったのだ。 これはもう、10年ぶりに訪ねてみるしかない。 行ってみると、かつてなかった新しさもあり、 同時になつかしさもいっぱいで、2人は満足してホテルに落ち着く。 そこで今後のことを考える。2人の心中は瓜二つであり いかにも通俗的なものだが、それでもやはり真実なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
YA! アンソロジー 告白
2月14日(バレンタインデー)×告白! 小林深雪と講談社児童文学新人賞受賞作家たちが描く、珠玉のアンソロジー! ・2月14日、高校入試の日に出会った郁也に美紅はひとめぼれ。4月になり、同級生になれたけれど、彼には彼女がいて……!?(小林深雪/きみを好きになった日) -
別れた男のすること
別れた男は今、かき氷を作る 35歳の作家がいる。つい5ヶ月前に離婚し、妻子と別々に暮らすようになった。取材で瀬戸内まで出かけ、東京に帰ってきた彼はふと、かつて3人で暮らしていた家に行ってみようと思い立つ。わずか5ヶ月しか経過していないのに最寄りの駅の様子や商店街、住宅地のたたずまいなどあまりになつかしく、強いときめきすら覚える。ところが……訪ねていったかつての住まいでは意外な経験をすることになる。そしてその後、姉と一緒に住んでいる現在の住まいに帰り、そこで今度は読者が、意外な経験をすることになるのだ…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
私とキャッチ・ボールをしてください
男のこでなくておあいにくさま さりげない遭遇の冒頭から女と男、二人の高校生がするすると川原でキャッチ・ボールをする場面にたどりついてしまう。気持ちと気持ちの交換を比喩で表現する際に人は「キャッチ・ボール」という言葉をしばしば使うがここにあるのは本物のキャッチ・ボールでありボールを投げることと受けること、その人が投げるボールに対するさわやかな驚きこそが主役である。二人には、両親の離婚、という共通点があり、そしてそれぞれの片親(男子の母、女子の父)もまたキャッチ・ボールの場面に現れるのがユニークだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
私はいつも私
おにぎりに泣き、焼き鳥にあこがれる 離婚してしまった相手なのに、無性に会いたくなる。いや、そもそも嫌いで別れたわけじゃないのだ。そういうことはたぶん、あるのだろう。結婚してしまったから離婚してしまった、「しない」ことがいちばん良かったのに、というような関係。離れてみて、話さなかったこと、確かめてみなかったことが、見えてくる。おにぎりを作らせてもらえなかった。焼き鳥を食べに連れて行ってもらったこともなかった。でも再会した今なら、さあどうだろう。まずは焼き鳥。そして、おにぎりは…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
私は泣いています
結婚について考える男性の思考が不穏な方向に。。。リリィの歌を背景に結婚について考える。 彼女が結婚を切り出したら受けようと覚悟を決めていた男性に、彼女は言います。「今年は私たちの結婚の年ね」。彼の思惑を飛び越えて、結婚が規定事実になってしまったフリーランスの彼は、結婚生活の維持のために就職を決めます。その帰路に喫茶店でふと聴いたのが、リリィの「私は泣いています」でした。その歌の歌詞を聴いている内に、彼は今の境遇が歌の主人公の女性のようだったらと考え始めます。リリィの歌を背景に、結婚するとはどういうことなのか、自分は結婚する相手をどう考えているのかと思考が進む、結婚についての物語。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)、『窓の外を見てください』(講談社)などがある。
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