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歩いている女
信吾とみや子は、同人雑誌の仲間であり、恋人未満の煮え切らない仲であった。信吾はテレビドラマのプロデューサー、佐竹のもとへ脚本を持ち込んだが不採用。しかし、みや子を紹介してほしいと頼まれる。佐竹は今度のドラマの主演女優としてみや子に目をつけたのだ。一度は断ったみや子を説得し、女優の道に進ませた信吾だったが……。仕事に悩み、恋につまずき、新たな扉を開けながら歩いていく青春群像。 -
風変りな代償
美貌の女子大生・古園洋子が失踪した。彼女はホステス・アパートの一室を借りていたのだが、管理人・谷本恵吉の姿も見えない。ホステスたちは谷本の正体もアパートの所有者も知らないという。――数日後、洋子の死体が相模湖から見つかった。谷本の愛車ルノーに乗ったまま湖底に沈んでいたのだ。また意外にもアパートの持ち主が、T大で倫理学を教える清水助教授であることも明らかになった。《倫理学教師のホステス・アパート経営!?》。ナゾは深まるばかりだった――が、巧妙な偽装がはがれた時、白日にさらされたのは腐肉の如き性の悲劇だった。「風変りな代償」他5篇。 -
独裁者のラブレター
新興マルギダ国の独裁者アント・カーネの来日を絶好のチャンスとして、カーネ暗殺を計るマルギダの革命派。一方、日本の商社・富士物産と大協実業は、マルギダ進出を狙って激しいしのぎをけずっている。大協実業の秘密社員・島田は、会社のためばかりでなく、彼自身の意地と、マルギダ革命派の美しい女グローズへの恋を賭けて、どこまでもカーネ暗殺を追求しつづける。革命家の暗躍、企業間の葛藤、政治、死、恋。『私は貝になりたい』の筆者が、もっとも今日的な主題を乾いた男性的筆致で描く、スリルあふれる長編サスペンス小説。 -
青いサファイヤ
破天荒の「テレビ結婚」で一躍脚光をあびた井戸美子は、プロレスラーと蒲原財閥の当主を手玉に取って、ついに財閥夫人にのしあがり、プロレスラーに夫を殺害させて、莫大な遺産を継ぐ。熱海沖のH島を買占めて東洋のモナコにする野望に燃えた彼女は、政治の腐敗につけこんで政界の実力者・佐渡代議士を籠絡し、その準備を進める。だが、蒲原政之助の死因に疑惑を抱いた新聞記者・中川隆夫に、かつて彼女が地方実業家にニセ札づくりをもちかけて、類ない肉体を餌に500万円を詐取した旧悪を報道される。そして佐渡代議士との密会も暴かれて、ついに破局へ……。渾身の現代悪女物語。 -
詰め腹
動乱の中近東から安い石油を輸入する放れ業を演じて、業界をあっといわせ、「世界石油」を一流会社にのしあげた社長・葛原大三の満々たる自信が、今や揺らぎ始めた。腹心の橘専務が裏切ったのだ。しかし彼は、背後に迫るさらに巨大な陰謀の存在をいまだに知らない。経営危機を切り抜けようとアメリカに飛び、米資本の融資を取り決めて帰国したとき、彼を待っていたのは社長退陣の要求だった。湯水の如く政界に撒いた献金の効果も、今は空しい。――著者が足で取材した秘材をもとに、金融資本の悪魔にひとしい裏面を鋭く抉る「詰め腹」他5篇。 -
歪んだ栄光
T省の屋上から墜落する人影を「私」は窓ごしに見たのだ。前庭の花壇を鮮血にそめて惨死したのは「私」の上司・小田課長補佐だった。新聞は「自殺」の原因に汚職の翳があるという……。その3日後、こんどは若い雇員の本石幸一郎が走る列車から転落した。報せをうけて豊橋に急行した「私」を見て、本石は「殺しに来たな!」とわめく。その両眼は空虚に鈍く光っていた。《この2つの事故が、どう関連しているのか?》。「私」は戦慄すべき真実に直面した。それは官僚機構にひそむ抑圧された青春の狂気である。表題作他5篇を収録。 -
冷酷な報酬
名神高速道路の闇の中に死んだ雨宮義人。彼の自動車は、〈梶原トンネル〉の壁面に激突しての即死だった。太陽産業の気鋭の研究者として、カラーテレビ開発の第一線に立っていた雨宮の死には、不可解な謎が感じられた。 社名をうけて、この事故死に取組んだ野田誠司が、苦心の末に探りあてた死の真相は、激甚な産業の恥部を覗きみるような策謀と非情の世界だった。研究グループごと、ごっそりと競争会社のスカウトの手がのびていたのである。拒否した雨宮を襲った非業の死。――梶山文学の独壇場ともいうべき産業スパイ小説「冷酷な報酬」他5篇を収録。 -
涙は拭かずに
商店街のPR誌の編集者・相良道子は、雑誌のスポンサーである服部から、ブーツをプレゼントされた。はいてみせてくれ、という服部の注文に応じた道子は不自然な体勢のところを襲われ、あやうく犯されそうになる。道子はかねて編集長の伊賀に好意をよせていた。伊賀も同様らしい。しかし人生は皮肉だ。道子は姉の夫・前田英一に強姦同然で処女を奪われてしまう。ショックは道子を一時的に自暴自棄に追いこむ。さまよう彼女の明日は? 処女喪失が女性をどう変貌させるか、をテーマに描くロマン大作。 -
男の階段
秋晴れの鬼怒川渓谷に、堅田邦子の死体は浮いていた。乳房にはバラの花弁のようなキス・マークがついている。邦子には年下の恋人・所道雄があった。が、彼はその前日にゴルフ場で彼女と別れたばかりだという。確かなアリバイもあった。邦子の弟・浩一は葬式の夜、姉の日記をひらいて、彼女の心の奥にかくされた恋人の不信の事実を知る――証券会社のエリートコースを望む所道雄は、常務の娘との縁談を進めていたのだ――。年上の恋人を無情に捨て去って、出世の階段をのぼろうと焦る男の姿こそは、現代サラリーマンの心奥にひそむ妄執の汚点だ。「男の階段」他3篇。 -
寝業師
二流商社の平社員・村中陽吉は、会社の将来に対して痛烈なレポートを書いたがために、単身ニューヨークへ飛ぶ破目になった。支店を開設しろ、というのである。英語もろくにできない村中はセントラル・パークで途方にくれた。英語の勉強でも、と思って大衆小説をひろげていると、思いがけず隣りにすわった白人女性が声をかけた。50がらみのその女性は「うちへいらっしゃい、本が沢山あるわ」と誘った。村中はその誘いに応じたのだが、縁は異なもの、そこから彼は大変な見つけものをする。快人物の一代を描く標題作のほか4篇を集めた、さわやかな作品集。 -
ある復讐
佐伯隆二は、今も7年前のあの日の憤懣と屈辱が忘れられない。一流大学を卒業した彼が、大東映画の採用試験に落ちた日のことだ。合格、と信じていたのに、身上調査でふり落されるとは。 己の才能が信じられなくなり、いつかエリートコースを踏みはずし、妻に養われる怠惰な男になってしまったのも、すべては屈辱の思いに耐えられなかったからだ。その佐伯が新聞広告につられて応募した興信所に勤めた時、初めて知る身上調査の実態――それは巨大な社会組織の翳りのような虚偽の世界ではないか――に佐伯は唸った。俺は嘘のために一生を失った!「ある復讐」他5編を収録。 -
浪士組始末
出羽の浪士・清河八郎は一介の剣客ではなく、政治的野心の熾烈な機略家であった。安政6年、江戸は神田お玉ヶ池に堂々と「文武指南所」の大看板を掲げたほどの豪の者だったが、郷里で17歳のおり隣家に娼婦を招くなど、34年の生涯は不羈(ふき)奔放なところがあった。――文久2年11月、幕府の政事総裁・松平春嶽に当今急務三策を上書して、浪士組成立の端緒をつくった清河八郎が、京師にのぼって攘夷を画策、江戸帰還後も浪士組の隠然たる黒幕として、向背つねなく、攘夷の勅諚を奪還せんとして、幕府の浪士抑圧の策におちいり、仆(たお)れるまでを描いた「浪士組始末」他8編。 -
忍法相伝73
安サラリーマン伊賀大馬が、トランクの中より探し出せし一巻の巻物、これぞ伊賀忍者の太祖、風忍斎が遺したる忍法相伝書である。大馬が早速、忍法「墨消し」を実験すれば、おお魔天の感応か、その鼻息を受け、あらゆる活字が消失するではないか! かくて、伊賀大馬は現代の忍者と化した。老残の硯学、松中半兵衛先生と肉体美女、鳥羽壺子嬢に支援されて忍法を発動すれば、「鳥の死声」は実力政治家をして「民衆から収奪する喜び」を天下に告白せしめ、「諸行無常」は男女の交りを索漠たる灰色の世界に墜し、セックス万能の時流を排す。辛辣にして軽妙、世人の意表を衝く珍騒動! まさに風太郎ワールド全開! -
素浪人梅津長門
『江戸群盗伝』の続編。将軍家斉の御落胤雪姫と所帯をもった梅津長門は、読本の人気作家となっていたが、ある日、北町奉行の遠山左衛門尉に見込まれ、因縁の相手が絡む事件に巻き込まれる。隠された財宝、引き起こされた殺人、雪姫とよく似た娘……謎は深まってゆく。『眠狂四郎』に先立ち書かれた美貌の剣士、梅津長門の剣が冴える痛快時代小説。 -
女の踏絵
東洋映画を背負って立つ、一枚看板の大女優・草壁三樹子は日本でも指折りの大富豪、一井男爵を父に、新劇女優・水田三重子を母にして生まれた。彼女は生まれつき淫奔で、志村プロデューサーと関係し、カメラ助手・白石次郎の子を生み、多くの男と浮名を流すのだった。しかし、二枚目スター・林光哉を知るや、三樹子は全身全霊で彼を愛し、同棲するようになった。そんな三樹子を、彼女の幼時からの忠実な下僕――「カシモド」は嫉妬の炎を燃やし、冷たく見つめるのだった。……。強烈な欲望に生きる奔放な女性を描いた問題作「白い炎の女」他3編を収録。 -
遊太郎巷談
総髪、無精髭、古着を着流した姿でも、その品位を隠せぬ謎の浪人。腰には香木刀を帯び、えもいわれぬ芳香をまとうその男、巷では遊太郎と呼ばれている。上州で女親分お葉を助けた縁で、一家に身を寄せた遊太郎。身の回りの世話をしてくれるお夕に思慕の念を抱くものの、心中からは病める剣鬼、平手造酒の妖気を帯びた気魄が消えず……。1959年市川雷蔵主演映画の原作、長編時代小説上下巻。 -
遊戯の報酬
耐性皮革研究所という名の奇怪な洋館には、ときどき上流階級とおぼしき数人の客がやってきた。館の主人は、美貌の女性である。が、ある日、欧風のサロンにも見えたこの邸で、殺人事件がおきる。しかも、被害者は志村千恵――女主人であった。千恵の弟・達夫は、姉の死に不審を抱く。彼は、自分の学資を出すためにコールガールまでしていた、姉の過去を知っていたのだ。何かが隠されている! 達夫の調査は、次々に洋館の正体を暴いてゆく。耐性皮革研究所は、実は皮具を用いて、サディストやマゾヒストが快楽をむさぼる隠れみのだった。そして、姉の本当の死因とは……。 -
虹を掴む
敗戦の時、20歳になったばかりの安心院傑四(あじみ・たけし)は、巡回映画で大金を掴んだ。ついでGIを利用したヤミ商売で大アナを当てる。「よっしゃ、これからはアイデアの世の中だ」。彼の夢は、まるで虹のような華やかに彩られた。妻の英子には大阪に、愛人の咲子には広島にバーをもたせると、目指すは東京進出! 「大金持ちになったるで」と、日本一のクラブ『ラール』をオープン。マダムに初恋の女・秋子をすえると、彼が考えたのは、花のパリからのPR新戦法。これも大いに当たって……。戦後派のシンボル「英雄豪傑」の、野心と商才と色の道を、快調なテンポで描き出す梶山文学の面白さ! -
太陽はまた昇る 公爵近衛文麿
公爵・近衛文麿は、昭和15年7月に組閣の大命をうけ、第二次近衛内閣を組織した。陸相は東条英機、外相は松岡洋右であった。この時から、近衛文麿の悲劇が始まる。三国軍事同盟の締結で大陸戦線は膠着し、日米交渉は暗礁にのりあげ、近衛はグルー大使と会見する。それは近衛個人の悲劇にとどまらず、日本の悲劇に他ならない。日本近代史における近衛の演じた役割はあまりにも大きかった……。この「太陽はまた昇る」は、戦争か平和かの岐路に立って悩む近衛を中心にして、しだいに軍閥の掌中におどらされてゆく日本の姿――第二次大戦を軸とした日本の近代史――を描いた、上下2巻の長編歴史小説である。 -
十三角関係
遊郭のマダムが、むごたらしいバラバラの死体で発見された。店の女たちにも慕われる評判のいいマダムが、なぜ殺されたのか。事件直前に訪れた客たちを調べても、いずれも犯人には辿り着けない。その謎を、風太郎現代ミステリー唯一のシリーズ探偵の「飲んだくれ産科医」荊木歓喜が解き明かす! -
悪人志願
生まれながらの巧みな弁舌で、郵便局の養子に収った番匠銀之助は、家付きの姉妹をものにすると、もう次の悪事に想いを走らせる。代議士の姪・路子の征服――この娘を俺の出世に利用しないわけにはいかぬ……。悪事のプランは夜床の中で、塩煎餅を齧りながら思案する。やがて、銀行を舞台に籠抜け詐欺で得た大金で、汽船会社を乗取り、ボロ船で保険金を搾取し……。20歳を過ぎたばかりで、もう一流実業家気取りの彼は、関東大震災すら、自らの色と欲に悪用した。市内の用地略取に始まる軽井沢と箱根の土地買占めである。欺瞞に満ちた銀之助の半生を描く長編悪漢小説、上下2巻。 -
夢に罪あり
江上医院の美人三姉妹が、それぞれに辿る愛の軌跡。長女に一夜の契りを残して出征していった男、世界を放浪の末に巨額の宝石を手に帰国した男、妻を亡くして愛娘と暮らす美貌の仏文学者などが辿る、それぞれの人生の軌跡。三姉妹と男たちの軌跡が交わる時、愛と憎しみ、希望と絶望とが交差する。 -
飛騨忍法帖
女人禁制の誓いを破るとき、飛騨忍法は破滅する――乗鞍丞馬は、天人の如きお美也の美貌に触れたとき、奔り湧く恋情に忘却すべからざるこの戒めを忘れた。彼の幻法は瞬時にして枯死し、宗像主水正の豪剣に左腕を断ち落とされた。以来、宗像家の忠僕となった丞馬が、再び忍者として立ったのは、主水正が闇を縫う銃弾に斃れしゆえ。いま、飛騨忍法は甦った! 夫の仇討ちに京へ旅立つお美也を助け、丞馬は飛騨伝来の「五幻の術」で銃口の前に身を挺する。――かくて4年、最後の敵に対したとき、死を賭けた彼が、お美也への愛慕を籠めた秘法「死恋幻法」の凄まじき美しさ。 -
度胸時代
桑名藩十万石・松平下総守直正(ただまさ)の世子に生まれながら、生後まもなく怪盗百夜の弥吉の反抗的悪戯から、身投げ女の赤ん坊とすりかえられて育った左右吉は、生来の利発さと度胸のよさで、思いもうけぬ人生経験を豊富にする。日光東照宮の修築をめぐって、苦境に立つ桑名藩の側頭役・奥町丹左衛門の苦衷と、世子誘拐を策する公儀目付・竜道寺源五郎の執拗な魔手と、公儀隠密群の暗躍。市井の浪人・太郎左と名のる若年寄・小笠原相模守の隠密・武四郎は、怪盗百夜の弥吉から左右吉の出生の秘密を打ち明けられて庇護するが……。意表を衝く結末にいたる奇想天外な左右吉の度胸っぷりを描く巨篇。 -
大将
大きな耳にダンゴ鼻、茫洋としたなかに、強烈な個性を秘めた、130キロの巨漢――野呂内大太郎が、本篇の主人公である。 日本の敗戦で、ソ連の抑留生活から故郷の松山に還った大太郎は、340万円の遺産と、10ヵ条からなる亡父の遺書を胸に秘めて、松山市内での映画館経営を皮切りに、莫大な負債で倒産寸前の造船所を再建し、奥道後の温泉発掘に半生の運命を賭ける……。奥道後に万里の長城にみたてた巨大なホテルと純金の金閣寺を真似て建て、理想の大レジャーランドを建設した夢想の実業家=「四国の大将」をモデルに、波乱に富んだ半生を描いた、痛快な長編小説。 -
魚たちと眠れ
週刊誌記者の矢島が、ファニ―化粧品主催の洋上大学の取材をひきうけたのは、ハワイへ行ける楽しみより、生徒として参加する平均22歳半という100人の美女たちに惹かれた、といったほうがいい。4月中旬、豪華船セントルイス号は、5人の講師、カメラマンなどを加えた114人を乗せて横浜を出航した。しかし、生徒中1、2を争う美女・水島陽子の突然の失踪が、船内の華やいだ空気を一変させることになる。つづいて、講師のファッション・デザイナー及川弥生の変死……。華やかな雰囲気の陰の醜い愛憎の葛藤と意外な真相を、巧妙緻密な推理で解き明かしていく長篇推理小説。 -
奇妙な人たち
小池サクが女性実業家として異能を発揮しはじめたのは、彼女が中年の未亡人になってからである。彼女は生前、夫の放蕩に泣かされていたが、頭脳は男以上に良かった。サクが着目したのは、当時珍らしいコンドームの製造。だが、昭和初めである。苦労して作ったものの、販売と宣伝がむずかしい商品だった。彼女は自ら薬局をまわる。だが、反応は思わしくない。サクは、軍隊に目をつけた。うまく当り、海軍省ご用達に。さあ、急に大量注文がきた――。コンドーム産業の創成期に活躍した女傑を描いた「さっく一代」ほか、奇人伝6篇を収める異色小説集。 -
奇蹟の武将
南総の名家・里見家の二男・弥九郎時蕘(ときたか)は、生来の非力で、うつけ者とそしられたが、14歳で、里見家十三将の筆頭・正木氏を継いで、安房南条の鳥山城主となるや、突然変異で、鬼神のごとき膂力(りょりょく)を発揮して勇名を駛せるが、神通力を喪失したときは、元の非力者に還ってしまい、大正16年、土岐頼春との合戦にはぶざまな敗戦をしてしまう。だが、翌年の合戦には鬼神のごとき膂力を恢復して、一人で50余人を斬って捨て、天下に剛勇ぶりを知られる。……秀吉小田原攻めのかげに盛名を失った里見一族の狂い咲き、正木大膳亮時蕘の数奇な半生を描いた「奇蹟の武将」ほか、珠玉の時代小説集。 -
チャンスは三度ある
一度は倒産した社長・修一郎、デザイナー志望の美貌の青年・五郎、老フィクサー・相馬、実業家たち、ライバル社の専務、創始者の孫・宏……などの葛藤と、彼らにまつわる多彩な女性たちの存在。廻る糸車のように絡んではほどける人間模様と、ターミナル駅・池袋に繰り広げられるデパート業界の戦い。<上下巻> -
微笑剣
厩橋の領主・小野田義政の帷幄にあって、主家の興廃を双肩に担った堀内甚左衛門の娘・小笹は、内祝言したばかりの夫、北条氏の密使・鹿野門三郎に父を暗殺され、しかも妊ったのを知って、復讐の鬼と化す。一夜、上泉伊勢守信綱に微笑剣の極意を授けられると、巡礼に姿をやつして小田原の城下をめざす。戦国乱世の折から道中の掟はきびしく、女ひとりの旅を怪しむ男に微笑をみせて身を委ねながら、女夜叉となって懐剣に男たちの血を吸わせてゆく……。目的のためには手段をえらばぬ女の残酷さと、女の性の哀しさを描いた「微笑剣」ほか、8編の傑作を収めた時代小説集。 -
真紅の瞳
女性の美への憧憬が、現代社会において、さまざまな哀歓を生む――その美しく粧った心おごれる女性・蒔絵を中心に、心の美しさをつつましく守る女性・杉枝を対比させ、ゴルフに練達する素朴な青年、落魄の元宮殿下、好色で貪欲な実業家などの現代社会を表徴する男たちを配して、世相の明暗、女の生き方などをたくみに捉えた長編小説。現代小説に新たな意欲を示す会心の力作長編。 -
女の敵
たぐいまれな美貌にめぐまれたがために、女はより深い悲しみに哭かねばならないのか? 不幸な星のもとに生まれた女は、清純な魂をもつがゆえに、現代のさまざまな、「女の敵」に翻弄されながら生きねばならないのだろうか? 大正時代の孤高な作家といわれた黒木亮二を父に、瀬戸内海に臨む岡山県の片田舎に600年の歴史を誇る平家一門の旧家の一人娘を母にもつ黒木小露は、人生の暗い谷間に行きくれながら、渡り鳥のように女の幸福を追い求めるが、男の愛の暴力にすべてを奪われてしまう。――昭和動乱期のなかに哀しみを埋没させられた女の悲劇を描いた雄篇。 -
修羅長脇差
中仙道の首駅、武州下板橋宿の伝馬継問屋場をとりしきる梅谷六兵衛親方に、縄張を奪われた土地の貸元・久良蔵は、六兵衛が博徒の名のりをあげる花会に用意した金の一部を奪って、信州へ逃げた。3月後、上田生まれの幸太郎は、渡世の仁義で、失意の久良蔵親分に託された金を、根岸は御行の松の近くに住む久良蔵の妾・小芳に届けて、小芳を下板橋の乗妙寺まで案内する。翌日、小芳は未練気な旦那に別れて、幸太郎に根岸へ送られる途中、月明りで幸太郎の横顔に7年前のある夜、自分の一生を狂わせてしまった闇の男の面影を見出す……。渡世人の非情さを描く「修羅長脇差」その他。 -
今日の男
探偵小説家・山河幾太郎は、鋭い推理力と神出鬼没の行動力を駆って、銀座のネオンの蔭に巣食う麻薬密輸団の秘密をあばこうとした。身分を偽って14万ドルの遺産を相続しようと企む美しい魔女、その遺産を狙う謎の男、密輸団の首領、殺された女にからまる国際スパイの巧妙なトリック……。わが和製ルパン・山河幾太郎は、不気味な殺気がただよう暗黒街に颯爽と挑戦する。 -
孤独な剣客
鏡心明智流・桃井春蔵の道場に居候して、天才剣客と謳われた上田馬之助ほど、孤独に徹した剣客も稀れである。旗本小普請の伜で、生来の読書好きで竹刀をとったこともなかったが、13歳のとき母と密通していたい井蛙流の平井利兵衛に父を討たれて、父の遺言で母をその場で斬った瞬間から、虚無に生きる人間となり、13年後に漸くめぐり会った仇敵が中風で半身不随の病床にあるのを見て、さらに孤独が深まったのである……。道場破りで流浪しながら、島津斉彬の面前で魔技に等しい業を披露した上田馬之助の異常な天才ぶりを描いた「孤独な剣客」ほか、評判の時代小説集。 -
異変助太刀記
下野国の家老と奥役の争いが引き起こした「異変助太刀記」、塚原卜伝の逸話「一の太刀」、赤穂藩主の世襲問題に端を発した仇討ち「乱闘・高野街道」、安南国へ旅をした船の乗組員の記「異説おらんだ文」、天正遣欧少年使節・中浦ジュリアンの生涯「美しい日本の少年」、美濃の蝮の奸計と出世「斎藤道三残虐譚」、浪士組結成以前の若き日々「清河八郎」。代表作「眠狂四郎」の連載開始と同時期に書かれた柴錬初期の鮮烈な時代小説集。 -
わしは、わしの道を行く
敗戦の日本に、羽織袴のいでたちで姿をみせた15歳の少年――豊臣筑前守秀吉(ひできち)こそ、ブラジルの千万長者・秀右衛門が、「何事も修行のためでござる」と故国に送りかえした可愛い孫だった。はげしい流転の世相が、少年を包む。捨て子の加奈子、旧高利伯爵の庶子・元和、没落した元宮様の娘・和子、さらに元満鉄総裁の娘・啓子……。音をたてて崩れさる古い社会にあがく人々の中で、どこか超然と次元のちがう生き方を貫く筑前守。「2億円くらい孫に使わせてみよう」と、祖父が後をおって帰国した時、奇怪にも彼は行方をくらましていた――痛快しかも辛辣な巨匠の作品。 -
旅情密集
ここを永住の地と決めている人が、はたしてどれだけいるだろうか。新しい都会生活の様式=団地。10数万人がそれぞれに群がり生きている。鉄筋の壁を隔てて恋人同志が暮していることもあれば、挨拶を交さない隣同志もあろう。職業も生活も千差万別。そして、やがてはまた離ればなれになっていく……。 この巨大なマンモス・ビルの中に住む人々の哀歓を、1話1話にまとめて大きな反響を呼んだ、沢野久雄氏の評判小説。 -
誰にも出来る殺人
安アパート「人間荘」は、1階に7部屋、2階に9部屋があって、それぞれに人間離れした住人が住んでいる。12号室の住人は変わるたびに、人間荘で起きた殺人事件を、黒い表紙のノートに書き遺して……。そのノートが暴く5つの連続殺人と、その円環を閉じる最後の殺人の物語で、「新本格」の先駆けとなるような奇想に満ちた大傑作。 -
息子の結婚
大学教授兼評論家で釣りの好きな小山行夫さんも、そろそろ息子の結婚を考えねばならなくなった。照夫君には、ガールフレンドのヒロ子さんがいる。彼女の父・牧ドクトルも、釣り天狗である。照夫君の学友・進藤進一君の父・嘉六氏は、小山さんの先輩で、政治ずきな実業家だ。手に負えない息子と杉本ユリエさんの運命的なトラブルで、嘉六氏は小山さんに相談する。アプレ息子を持つ親父には、共通の不安と悩みがあるが、それを解決するために、小山さんの活躍がはじまる。戦後のホームドラマに新生面を開拓した作者が、奔放な青春にやどる思索と行動を描いた明朗な長篇小説。 -
青春探偵団
片田舎の高校で、ミステリー小説研究会「殺人クラブ」の同人6人の、軽快な会話とドタバタな調子で語られる推理劇5篇の連作集。 -
色の階段
猟色のベテラン・小見山が、デパートに勤める紀子にウツツを抜かし、しかも、目的が果たせないという、珍しいことが起こった。彼が、紀子のことで、あの手この手の策を弄していると、かならず、見知らぬ女の声で、電話がかかってきた。しかも、それは、彼に欺された過去の女の亡霊のように、彼をおびやかしつづけた。やむなく、小見山は、かつてガール・ハントの手ほどきをしてやった宇津に、助けを求めたのだが……。 2人の男のあくなき女体探求を通じて、性の世界の百態を展開する長編小説。前作「色名帖」の続編として書かれた異色作。 -
女人国伝奇
蜀山人が「全盛の君あればこそこの廓は 花も吉原月も吉原」と頌歌をささげた松葉屋の花魁・薫。抜群の美貌と聡明さ、そして見事な侠気で、この女人国の苦海を泳いでゆく。欲と金、色恋の深淵、侍の意地……。快楽の国・吉原で起こる奇っ怪な出来事に、鼠小僧次郎吉、葛飾北斎、遠山の金さんなどが絡んでゆく、山田風太郎ワールド。 -
光の肌
晴海埠頭で1台の自動車が引き揚げられたが、運転者の死体は出てこなかった……。Mデパートの店員・野上美樹子は、妊娠処置のことを、銀座のクラブに勤める友人に相談した。そのとき、英会話と車の運転ができる美樹子に、ある会社の秘書にならないかとの話がでた。そして美樹子は、大竹通産の専務秘書になった。高価なドレスや和服を着せられ、高級レストランや料亭につれ歩かれた。数か月後のある夜、大竹通産の社運をかけた取引がおこなわれた。相手は、東南アジアのQ国使節団。座には芸者もきて賑やかだったが、代表格の男は、美樹子にしか関心を示さなかった。その数日後……。 -
美しき母への讃歌
代々の豪商の家に嫁ぎ、 日出夫を22で生んだ母。若旦那育ちの父は事業がうまくいかず、飲んでは母に暴力をふるい、やがて女と出奔してしまう。日出夫は小学5年、そのときから母子の貧乏が始まった。村に移り住み、製糸工場で働く母。日出夫を中学にやりたいが、その金がない。日出夫は進学をあきらめようとしたが……。母の大きな愛、それに応えようと成長する息子。学び舎、友、恋、青春の日々。 -
半九郎闇日記
赤穂浪士が仇討ち後、死をたまわって14年。いまだに泉岳寺の辺りに、大石内蔵助(くらのすけ)が出没するという。駿河屋小町と評判のお京も、たしかに大石を見た。いや、大石に狙われたのだ。小日向主水(もんど)を婿に迎えた夜、お京は誘拐されてしまった。ただ、奇怪はそればかりではない。播州浅野家縁故の女性が、あいついで殺されている……。なぜか? 大岡越前守の懐刀(ふところがたな)水木半九郎も手をこまねくばかりだった。だが実は、浅野家の瓦解前後、奥方をめぐって何か事件があったのだ。瓦解によって門外に出た「将監闇日記」の秘密。竜宮と於菟(おと)姫と浦島、塩売り吉次、幽冥庵など、不可解な謎が半九郎の心を迷わせる……。<上下巻> -
酔いどれ牡丹
沼田藩・真田家の奥深く、「お黒の森」に幽閉されて育った、雪姫に秘められた謎。雪姫に懸想した当主・信明が捨てた春姫が、身中に育てる邪悪な心の結末は? 雪姫派と春姫派に二分された真田家を巡る、家臣軍団と凄腕忍者たちの抗争。「雪姫の幸あれかしと黒姫の」の下の句に隠された謎を明かす鍵とは……。<上下巻> -
寝みだれ夜叉
身寄りのない自分を育ててくれた叔父の墓参りにでた美奈は、その近くの梅屋敷で、見てはならぬ情事を見てしまった。白昼の悪夢のごとき光景! だがそれがモトで、美奈は水死……いや、殺されたのであった。恋人・長谷川多聞の驚き! 多聞は狼狽して、水木半九郎に助けをもとめた。半九郎は、いま売出しの町方同心である。しかし、半九郎が真剣になればなるほど、複雑な難事件であった。今様吉田御殿と騒がれる鷹取屋敷の椿の方、謎を秘めた紀州家の奥、幸うすい千世姉妹、闇を跳梁する頭巾の女、そして半九郎が最も頭を痛めたのは、上司・大岡越前守の疑惑の行動だった! <上下巻> -
将棋大名
安永年間の江戸、ある日、奇人の蘭学者・平賀源内ご自慢の舶来遠眼鏡に映し出されたのは、妖艶な裸の女性がむごたらしく殺される場面だった。死体につけられた「死人詰」という一風変わった詰め将棋の図を手がかりに犯人捜しが始まるが、やがて捕り手の柳造が、次にはその娘も残忍に殺され、二人にもまた、同じ「死人詰」図がつけられていた。源内の弟子で柳生流の達人・高島春作は、江戸を揺るがす連続猟奇殺人となったこの事件に、彼を慕うお千代とともに巻き込まれていく。伝奇小説の産みの親が描く時代ミステリー長編、映画化もされた傑作。<上下巻> -
春風まぼろし谷
江戸の謎といわれる笠松屋敷に奉公した孤独の美女・お信乃は、偶然にも禁制の離れをのぞいてしまった。世にも怖ろしい光景が、お信乃の眼前に展開する。妖気をはらむ屋敷の主(あるじ)笠松半太夫とは何ものだろう。さらに、彼をうかがう若い素浪人、怪童、乞食大名、女忍者との激烈な争いは? 事件の一切の鍵は、伝説の秘境・まぼろし谷と、そこに住む霧姫さまの上にあった……。<上下巻> -
月姫系図
極悪非道の金山奉行・大久保石見守長安の配下の忍者・いの字や浪人・兵馬と戦う、正義の剣士・桜井進太郎。信玄の隠し金山をめぐる欲と欲のぶつかり合いと、武田勝頼の妻・月姫の謎とその孫に迫る毒牙。 -
海風山風
毛利家の城奥ふかく「客人」として扱われている姫君・也々さまの救出こそ、速水茂平次の悲願だった。秘策をこらして一度は成功したのに、姫の姿は瀬戸内の島影に消えた。誰の仕業か? 茂平次がシャムに使した時から影のようにまつわりついている奇怪な党派の首領・甚吾の妨害なのか。知香と名のる野性の美女の正体も判らぬ。が、茂平次は決然と島に乗りこんだ……。実は、一触即発の豊臣・徳川の対立をまえに、鉄砲・火薬あつめに暗躍する一派にとって、也々さまの生いたちには、貴重な財宝をさがすカギが秘匿されているようだ。姫は何者の手中に……。<上下巻> -
黄金の星座
卒業まであと1週間というところで、大学を放校になった邦彦。代わりに首席となった謙之介。孤高の天才と、野心に溢れた策士。ともに建築家を目指して上京し、邦彦は落ち目の建築事務所で、謙之介は一流建設会社で働き始める。才能対野望、因縁のライバル。ネオン瞬く東京の空、黄金の星座に続く黄金の梯子を上り詰めるのは、果たしてどちらなのか? -
まぼろし若衆
桔梗の紋所の着物を着て夜に徘徊する若衆の正体は? 将棋の駒と秘文書に秘めし、鄭成功の遺した財宝の謎。異様でサディスティックな性的衝動に駆られた男が築き上げた王国と宮家の血を継ぐ姫との対決の結末は? 翻弄されながらも、亡き母が遺した笛と秘曲を吹いて、秘宝に……。<上下巻> -
賭の季節
映画スター・上杉悠子邸の玄関先に倒れていた死体――それは、悠子にそっくりの女であった。熱狂的なファンの「自殺」として片づけられたこの事件に、木島刑事は疑問をもつ。「捜査の邪道かもしれないが……」彼は心に殺人事件を描いてみた。悠子には幼くして別れた双生児の姉・竹村久子がいた。死体は、この久子なのだろうか、あるいは悠子その人なのかもしれぬ。刑事は、付人の西条悌子とマネージャー・藤岡謙にあたった。捜査が、華やかな女優生活の裏にひそむ「影の女」の存在を知った時、事件は意外な終末を迎える。巧妙なトリックを用い、「女の賭」を描く本格推理。 -
赤姫秘文
前田家の美貌の息女と瓜二つだったために、貧乏浪人の娘が遭う災難と冒険。赤城山の奥深くに、人知れず住む人たちの秘儀・赤姫秘文の謎と、それにまつわる奇譚を軸に、ふたりの美貌の女性たちの恋と欲とがないまぜになった、伝奇小説。 -
青春家族(決定版)
食料不足の終戦後、小説家の越智さんは、親子4人の栄養失調を回復すべく、毎日書斎にこもって腰の骨の痛くなるほど書きつづける。「いやしくも一家の家長である以上は、家族扶養の義務をおろそかにすることはできない。」……昭和の父の奮闘、妻の献身、息子の成長……。家族の青春をコミカルに、ポジティブに描いた「青春」シリーズ決定版。 -
高すぎた代償
失業した久世は、元上司の未亡人・治子が経営する連れ込み旅館に居候している。ひも生活の慰みにと、客室に集音機を仕込んで盗聴しているうちに、ある会社の労組絡みの無理心中事件に不審な点があることを知った。好奇心を覚えた久世は、私立探偵を名乗り、治子とともに関係者を調べ始めるが……。昭和30年代の東京を舞台にした長編ミステリー。 -
狩りの時刻
悪夢か? 現実か? 「侍従」と称する中年男に、毎夜、誘(いざな)われて、平凡なOL・小金井依理子がさまよいこんだ、不可思議な性の世界……。そこで、謎の美女・徳乃本夫人に、女同志の愛を教えられた依理子は、突然姿を消してしまった夫人のあとを追って、徳乃本もと侯爵の宏大な邸に忍びこんだ。逞しい青年を愛撫する侯爵、犬を相手に孤独なセックスを楽しむ料理女、奇怪な蝋人形館に閉じこめられた少年……。悪魔の館に棲む人々を垣間みた依理子を最後に待ちうけていたものは、残酷な初夜の儀式だった……。女性の欲望を利用して巧妙に仕組まれた犯罪の罠を描く長編小説。 -
聖女
デウス天理教団の海外伝道尼僧・風間登代が、サンフランシスコS街の路上で、黒人に襲われた。登代は薄れゆく意識の中で、黒い腕にかわって白く輝く球体のようなものを認めた。〈ああ……聖なるお方が、わたしの前にあらわれている……〉登代はこの事件で妊娠してしまった。「私は大司教の御子を身籠った」と口走り、今夜も私のもとにいらっしゃると言う。登代を訪れる謎の男とは何者なのか? ……という女の業を描く表題作の他に、「黄色い吸血鬼」「蟻の声」「V定期便」「赤い的」「猫パーティ」「最後の一切れ」「蜘蛛の糸」の7編を収録。 -
七色の女
映画館で佳子と知り合った小原は、2度目の逢引の時、早くも彼女を籠絡することに成功した。佳子は、人妻だった。夫の須藤は、理髪店を経営しているという。ある時、彼は、須藤の店に散髪に行った。佳子から夫はこわい人だと聞かされていた彼は、須藤が自分と佳子の関係を知っているのではないか、と不安を抱いた。数日後、小原の所に、男の声で電話がかかった。その声は、小原と佳子が利用したホテル名を告げ、そこで小原に会いたいという。須藤か? 彼は怯えながらそのホテルに向かった……。という表題作、「マイガール」「ヌードモデル」「女狐」「春の夢」「疑惑の発生」など、全11篇を収録。 -
突っかけ侍
肥前唐津藩の元御馬廻役・松村金太郎は、今では突っかけ草履の小粋な兄さん、人呼んで「わざくれ橋の金さん」だ。武士稼業はすっぱりやめてはいるけれど、実は、主君・小笠原長行の内命を受けて、ひそかに藩のため働いている……。ある春宵、将監橋の上、唐津藩の内紛で長行の反対派にまわり、藩侯の里方・信州松本藩と手を結んで、藩論を朝廷方に傾けようと企む奸人で、義兄の仇でもある周施方・長谷川番作をバッサリ。ーー粋でいなせな金さんが、同じ脱藩・小南敬助らと協力、小笠原長行を扶けて東奔西走の活躍。剣雲、侠気、哀恋が織りなす、子母澤寛会心の幕末傑作長編! <全3巻> -
深い失速
《私》は、大学病院の若い精神科医。患者の丹野明夫は、人妻殺しを《私》に告白し、フミコという名に激しい心理的な反応をみせた。が、被害者であるはずの大和田緋那子は、健在なのだ。彼女は、美貌のパイロット夫人だった……。《私》は、患者の告白の謎を追わねばならない。丹野の恩師・宮川教授を訪れると、教授はフミコの名に動揺をみせた。《何かがある?》……。一方、緋那子の夫・大和田は、失速・墜落の幻想に悩みつづけているという。冷えた夫婦の陰影が漂っていた。 やがて、丹野の水死、ジェット機の炎上と事件は続発する。《私》の前にも白い靄がかかった……。 -
忍ぶ糸
伊賀・上野は、鈴鹿山脈の麓にある城下町で、組紐の町でもある。千賀は、ここの忍町で生れた、人もうらやむ美しい娘だった。紅い椿の咲く頃、千賀は、組紐屋のしにせ「増住」に織子として雇われたが、そこで増住の一人息子・洋三を知った。これがヒロイン・千賀の愛の始まりであった。やがて、千賀と洋三は、将来をひそかに約束しあうが、家柄が違うことを理由に、洋三の父・大二郎は、下請けの「藤浪」の息子・良作との縁談をすすめた。愛する人との仲を裂かれて、千賀が良作の許に嫁いだ日、花嫁姿の彼女を見た近所の人々は、花が咲いたようだとささやき合った。千賀の悲しい一生の始まりだった。 -
新選組始末記
著者長年の実地調査を基に、幕末の風雲狂乱の渦中にあって誠心一徹の生涯を貫いた男たち。近藤勇、土方歳三、沖田総司らの人間像を描破、新選組の全容を史実の壁に彫り刻んだ子母澤寛の代表作ーー幕末、江戸幕府の浪人対策の一つとして結成された浪士組は、本拠を京都・壬生に置いて、禁門警護の任につき、市中見廻りの役に当たった。勤皇か佐幕か、開国か攘夷か、国論はまっ二つに割れ、世はまさに日本国あげての動乱の時代であった。この時期、幕府への至誠一徹、暗殺剣の名をほしいままにし、尊攘志士をふるえあがらせた「新選組」の隊士たちは、その青春をいかに生き、その命と魂をいかに燃焼させたのか……。著者みずから長期にわたって新選組所縁の地を訪ね、あるいは古老の談を聴取して得た記録を基に、新選組結成から最後までの真のすがたを史実の壁に彫り刻んだ会心の力作。 -
情報銘柄
正確な株式銘柄情報に、自分の誇りを感じている佐川にとって、最近は、憂鬱の連続であった。勤め先である<週刊東京情報>に書いている彼の推奨銘柄が、外れ続けているのだ。失意の佐川は、しかしある日、耳寄りな情報を得た。河松製作所に中共から、大量のブルドーザーの発注があったという。佐川はこの情報に、情報屋としての誇りの全てを賭けた。推奨原稿を書く一方、借金して河松を20万株買い込んだのである。……兜町に生きる男の栄光と悲哀を描く標題作のほか、苛烈なビジネス戦争の実態を生々しく描く異色企業小説3篇を収録。 -
河内山宗俊
練塀小路の河内山宗俊、天下の直参、お数寄屋勤めのお坊主である。ばくちは打つ、ゆすりはする、悪い野郎の肩は持つ、病気と届けて城へも登らず、肝っ玉の太さは天下一品。11代将軍・家斉の治世、賄賂が物言い、奸臣のさばる腐った巷で、悪には悪を、弱い者には情けをと、直参の威光を利用して、胸がすくようなやりたい放題。子母沢寛の名調子が心地よい、痛快時代小説。 -
夜獣
ふと魅かれた女のせいで殺人事件に巻き込まれたゴルフ練習場の食堂のボーイ、彼を容疑者として追う警察、新聞記者が、それぞれ事件を追う! 天下の名宝である30カラットのダイヤを巡る連続殺人と、深まる謎。本格ミステリー。 -
毒薬と宰相
青年宰相の名で知られ、戦後、謎の自殺を遂げ悲劇の主人公となった、ある公爵の死因の秘密を描く、ミステリー・タッチの表題作など、全9編の傑作短編集。 -
樹影
布施学園理事長の布施英之は、布施家へ養子に入る前、実家の女中・雪子に子供を生ませる。英男である。英男は、別府の愛育園で育つ。20年目に再会した時、雪子と英男は浦和にいたが、雪子が前夫と関係を続けているのを知り、英男は家出して別府に戻る。折も折、英之の妻はガンで死亡。反対派の策謀により学園を追われた英之は、布施家を去る決意をして、英男を別府に訪ねる……。豪壮な邸宅に住む裕福な人々も、逆境に耐えていきる貧しい人々も、みな三尺の影をひきずって生きている。その孤独な影を、哀調豊かに描いた話題の長編小説。 -
悪の公式
赤石定造は、香港で人を買った。定価1円。彼はその男に500ポンドの保険をかけ、阿片を吸わせ女を抱かせることによって彼の精力を涸らし、1週間めに殺すことに成功した。保険金で定造は教会を建て、カトリック信者を装いながら、教会を阿片と売春の巣窟に作りあげた。こうして手始めの「銭」を掴んだ定造は、貿易商社を設立して帰朝し、KK赤石を造りあげ、悪の公式、つまり殺人・脱税・不正輸出などなどによって、あくなき「銭」への欲望を果していく。しかし「悪の公式」は、やはり万能の公式ではない……。「銭」を得るために手段を選ばぬ資本主義の公式を鋭くあばく、長編悪漢小説。 -
ファッション・モデル
戦後10年、夏のモードに選ばれ、ドレスに身をまとい、ステージを歩く美女たち……。新時代の職業=ファッション・モデルを中心に、現代社会風俗を著者独特の犀利な筆で描いた興味深い力作。 -
薔薇はよみがえる
孤独なオフィス・ガールの懐に、ふと飛び込んできた1通の手紙が巻き起こす、若い男女の運命を描く。藤澤氏特有の青春文学。 -
瓢庵先生捕物帖
町医者を営む瓢庵先生が大活躍! 人情あり、喧嘩あり、殺しありの時代小説。横溝正史が生んだ人形佐七も登場し、本格探偵小説としての読み応えも充分! -
黄金の椅子
百万の富を持つ孤独な老実業家をめぐる3人の妖精たち。則子、笛子、花枝のいずれに、黄金の椅子は待っているのか? 流行大衆作家の傑作長編。 -
雲の白い日に
静岡・清水港が見える斜面に腰を下ろし景色を眺めている、3人の女子高生。といっても卒業式は昨日終わっていて、一人はお見合い結婚が決まっていた……。彼女たちの恋愛と成長を描いた表題作と、「永遠の横顔」を収録。 -
目白三平の秘密
サラリーマン生活20数年、国鉄本社の厚生局に勤務する一級課員三十六号俸の目白三平。その日常のおかしみと淡い悲哀、ときとして起こる突拍子もない出来事を描く人気シリーズの7作目。妻に買い物を言いつかった洋装店で目撃した中年男の苦境に同情したために、目白三平は都内を走り回る羽目になるが……という表題作はじめ、11編を収録。 -
目白三平の四季
昭和30年頃の国鉄に勤めている目白三平は、シマリ家でやり繰り上手の奥さんと素直な2人の男の子と暮らしている。当時の安月給でつつましくも明るく暮らすサラリーマンの生活が、ユーモラスなタッチで描かれている。 -
買占め
山協証券営業部長の美川道三は、熱海の旅館業者・大林、山県たちと組んで、北千住に工場をもつ東部ゴムの株の買い集めに狂奔した――。減配をうわさされるような業績のふるわない不良会社の株を、なぜ、美川たち一派は買いまくっていったのであろうか……。地下鉄工事にからむ工場買収で、33億円という大金が手に入るという情報をひそかににぎった大林たちが、東部ゴム乗っ取りのための株集めの先鋒として、美川をもひきこんだのであったが……。資本主義の裏側に仕組まれた巨大企業の利潤追求のカラクリに敢然と挑戦する、一匹狼の物語を巧みに描く野心的長編。 -
青髯殺人事件
医学部学生の康子が素人探偵役で事件を解いていく! 新聞記者と老刑事というワトソン役も用意してある、短篇連作ミステリー集。サラッと読ませる職人技が見事! -
青草に坐す
初めて男女共学という、かつてない革新的教育が生まれた時代の、青年男女の哀歓を健康的に描いた家庭小説ーー船乗りの新庄啓作には2人の子供、快活な女学生の翠と中学生の誠がいる。啓作の妹の節子が結婚に失敗し、新庄家の居候になっていたこともあり、翠は周囲の大人たちの恋愛事情に巻き込まれていくことに……。美空ひばり主演で映画化もされた群像劇。 -
うるさい妹たち
元テスト・パイロットで実業家の山村陽之介は、ふとしたことから、あるグループと知り合った。それはビート族と呼ばれる10代のグループで、啓子、桃子、サチ子、国江、男の子・ジローたちだ。彼らは、教室でも平気でペッティングを試みたり、疾走する車に全裸で乗り、スピードに興奮するなど、その行動は奔放だが、意外な明るさがあり、青春がある。だが山村は、このグループに、自分の娘・尚子が近づいていることを知り、驚く。尚子は、陽之介に向い、父さんが母さん以外の女性と交渉を持っても別に不潔じゃないという……。おそるべき10代の生態を描いた長編力作小説。 -
風は緑に
外国映画会社宣伝部の一雄とTV局報道部勤務の圭助をめぐってる、ファッション・モデルの彩子、アナウンサーの三千代、幼稚園の先生の牧子たちとの恋模様。だが、牧子はアメリカ文学者と不倫し、彩子を狙うスポンサーが現れて……。華やかな都会の第一線で活躍する男女の、恋愛の苦悩と情熱を描いた、青春の感動的ロマン! -
姫君千一夜
上州沼田藩主の姫でわがまま娘のお美紀さまは、藩を脱出し、浪人の潮田又十郎と仙太を家来として、江戸を目指す。人情あり、恋愛あり、笑いありの珍道中。 -
青春海流
いのしし先生こと青年教師・猪村彪吉を軸心に、恩師・大加田老先生の姪・英子、かつての教え子・鳥井魚子、阿良夢代、鮎川葉子が織りなす、青春の哀歓賦。<上下巻> -
小説関根名人
明治から昭和にかけて活躍した「近代将棋の父」こと、十三世名人・関根金次郎。生まれは千葉の宝珠花で、子どものころから将棋が強く、人呼んで宝珠花小僧。10代前半で上京、十一世名人伊藤宗印に弟子入りし、その後、若手花形棋士となった青年金次郎は、師匠に勧められ修業の旅に出る。そこには、人情、恋、そして勝負の日々が待っていた……、という表題作のほか、天野宗歩(留次郎)の青年期を描いた「勝負一代男」、「勝負師 木村義雄」も収録。 -
剣法奥儀
各流派には、それぞれの奥儀がある。一刀流「青眼崩し」、柳生流「八重垣」、知心流「雪柳」、天心独明流「無拍子」など、各流の秘太刀を生み出す剣豪の、妖気ただよう決闘を描く、五味康祐氏の傑作。 -
そんな筈がない
医学部の学生で、元警察官の父を持つ滝口康子が、次々と事件の真相を推理。新聞記者の小島純吉、康子の父に昔お世話になった老刑事の真田らも活躍する、4編の連作ミステリー小説集。 -
0時間の男
千鳥が渕マンションの一室で、パール・ホワイトの受話器から、悩ましい女声の秘密指令をうけると、刈谷は過去を忘れ、未来を考えない男になる。現在の、この0時間に命をかけるのだ。「人狩り特急」では、在日米軍航空医療班細菌主任・小関博士の身辺警戒を命ぜられて、奇妙な誘拐事件のからくりを暴き、「深海魚作戦」では、ジュネーブ宝石商殺しの真犯人、日本の宝石界を牛耳るリュー将軍一味を捕え、「金髪特攻隊」では、外人旅行者相手のニセの旅行小切手偽造組織に挑戦する。ナポレオン・ソロばりの、秘密国際刑事警察機構・ICPOの日本特派員の、胸のすく大活躍! -
夜ひらく谷
性的不能の烙印を負って、山寺=曼荼羅寺にこもる三国実が、妖女艶婦の愛欲の中で、いかにして青春を復活していくかを描く問題作。 -
西陣の蝶
殺人の容疑者として拷問にかけられた父は、蝶子が5歳のとき、冷酷な検事をうらみながら、死んだ。20年後、蝶子は、京都上七軒町から、芸者として出ていた。幸うすい青春に、父の記憶は黒いシミのように、影をおとしていた。ある日、呼ばれたお座敷に、父を死に至らしめた鬼検事がいた。蝶子は、装った笑顔で、その男に酒をすすめるのだったが……。社会の暗い部分と人間の醜い本能との間に、しめつけられた蝶のような女の、哀れな人生を、細密画のように描いた「西陣の蝶」の他に、「三条木屋町通り」「貴船川」など、全8篇を収録。 -
刺のある樹
植物学者・仁木雄太郎は、シャボテン・マニアの貴金属商がヨーロッパ旅行中、その邸に住まわせてもらっている。そこへ警視庁の砧警部補の紹介で製菓会社の重役が、警察ではとりあってくれないからと捜査を依頼にくる。自動車に轢かれかけたり、川へ突き落されたりして、死の恐怖におびえる男の出現。この「刺のある樹」は、その妻の死にはじまる。複雑な家庭の、絞殺、青酸カリ殺人の謎と、死の恐怖。電気ミシンのソケットの秘密に挑む、お馴染み雄太郎・悦子兄妹が、密室殺人事件のトリックを論理的に解明してゆく過程を、明るい清新なスタイルで描いた長篇。 -
坂田家の四季
すでに一男二女の父となった、かつてのきんぴら先生こと、坂田金平の家で、長女の縁談をめぐって起こる様々な事件。日常の悲喜こもごもを、小気味よい巧みな筆で描いた、明朗家族小説。 -
権九郎旅日記
川崎門下の高弟で、新婚間のない土佐藩士・権九郎は、団栗眼、獅子ッ鼻の無骨極まる男だが、藩でも屈指の無外流の達人で、純情硬骨ながら女に甘い。その権九郎が江戸勤番のため急遽、土佐から江戸まで下る道中で、襲いくる女難また女難の果てに、いまだ不本意ながら己が貞操は守られる結果に……。爆笑、哄笑、苦笑い……抱腹絶倒の東海道道中記。 -
愛の静脈
瀬戸内海に臨んだ県立女子高校の新任教師・矢吹は、明朗な性格で人気者だったが、ロレンス思想の礼讃者である彼は、放課後、教師および生徒を前にチャタレイ講義をし、大きな波紋をよぶ。敬虔なクリスチャンの池内先生は、矢吹と激しい恋に陥ち、霊肉一致の苦悩の果て、二人は結婚したが……。この「愛の静脈」は、子を残して先立った美しい妻の追憶に生きる旧師・矢吹の心の支柱たるべく後妻になった夕子が、未来を開く扉は過去からの照明によらねばならぬとして、互いに傷つけ合う教師同士の怖るべき恋愛に、生徒として関係した愛と憎悪を回想する、香り高き告白小説である。 -
ここは静かなり
自分の恋の行方を追いながらも、教え子たちのコーラス大会への指導、高校生の恋愛問題など、数々の問題を抱え、同僚教師のストーカーまがいの行動なども起こる。また、寄宿している一家の事業が破綻しそうになり……。好感持てる新任教師物語。 -
きんぴら先生慕情譜
「きんぴら先生」とは、小田原の海星女子高校の教師、坂田金平氏の愛稱である。生来の硬骨な朴念仁ぶりと正義感、加えて独身とあって、女学生や教師の間には奇妙な人気があり慕われているが、いつも何らかのトラブルに捲きこまれている。そんななか、元同僚「ザベス先生」が神戸から戻ってくることになり、かつてのときめきが蘇るが……。夢多き女子高校生と多感な青年教師が奏でる青春の幻想曲を描いて好評の、「きんぴら先生青春記」「同青春譜」に続く「きんぴら先生」シリーズの決定版。 -
きんぴら先生青春譜
「きんぴら先生」の愛称を持つ青年教師・坂田金平。独身、正義漢、唐変木のコンコンチキである。甲府の男子校、湘南の女学院、横浜の女子高ときて、このたび横浜郊外の望ケ丘女子高校に赴任してきた。クセのある教え子相手に苦戦しているところへ、かつての教え子も現れてさらに一波乱。そして、同僚エリザベス・テーラー似の「ザベス先生」が気にかかり……。『きんぴら先生青春記』の続編。 -
林檎の花咲くころ
出征した夫の留守中、子供を育てながら籍も入れてくれない舅姑に女中のように扱われた3年間の苦しみに耐えたが、夫は戦病死してしまう。2月半ばの吹雪の烈しい日、春枝は三歳の玉夫を背負い家を出ていった。林檎箱の上に戸板を載せ、衣類を売る苦しい生活が続く。戦争は林檎の花咲く里の春枝の幸福を破壊した。しかし戦いは終り、白い花咲く5月、幸福は再び春枝に甦ってくるのだった。……「林檎の花咲くころ」のほか、「手品師ヤッコウ」「冬の歌」「秋風」「ある貞婦の話」「浴みする女」「憎いもの」「私は鑑定人」「妻の経験」の全9編を収録。 -
麻薬3号
出所してきた極道が、ヒロポン中毒だったが、いまは流行作家になっている五味という男に書いた手紙、という形式で語られる、神戸のヒロポン宿、中華街などを舞台に、極道者、ヤクザ、パン助などが辿る、それぞれの人生の物語。著者が実際に、神戸で放浪生活を送り、覚醒剤依存症になった経験に裏打ちされている、長門裕之・南田洋子で映画化もされた力作。
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