あらすじ
神話を下敷きにしたジョイス、ハードボイルドなチャンドラー、「方法」を提唱したヴァレリー。彼らは日々の生活を作品に昇華させた。19世紀後半~20世紀前半の世界文学史を転換させた名作を一気に紹介。
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Posted by ブクログ
松岡セイゴオさんが千夜千冊の中から近代から現代の文芸作品評を編集したもの。
ホーソーン「緋文字」。父の名を語らぬ子を産んだ女性が、呪われたものとして赤いAの字を縫い付けた服を着せられる話と知っていたが、思っていたのとずいぶん違った。アメリカの始祖、ピルグリム・ファーザーのピューリタンの基盤を突き刺す作品とのこと。
メルヴィル「白鯨」。エイハブ船長のモデルは旧約聖書「列王記」の邪神バアルを信仰した悪王アハブ。語り手のイシュメールのモデルは「創世記」のイシュマエル。
モービィ・ディックとの三者にうねる「永遠の父なるもの」。それは想像主デミウルゴスとセイゴオさんは語る。自分の知識とかなり違って大いに驚く。
ネルバル「オーレリア」。大学1年で履修したフランス詩の講義の最初がネルバルだった。そんな訳で、狂い死にした作家の幻想詩篇はたまに読み返すんだが、それ以外は読んでいない。
セイゴオさんは「恐るべき夢の司祭」という。読んでみようかなとも思うが、理解できないだろうなという気もする。
ジッド「狭き門」。2つ年上の従妹マドレーヌへの思慕が作家ジッドを生んだ。ジッドは異常性欲者であるけれど、マドレーヌとは清廉で、死後に公開された日記では処女妻として生涯を送ったとある。セイゴウさんは何か隠していると納得していない。
この本も未読なので、作家にも作品にも印象が変わった。
リルケ「マルテの手記」。ナイーブな作品と思っていたが、マルテにとってパリは死にくるための街とある。厳しい作品と知る。
トルーマン・カポーティ「遠い声 遠い部屋」。(引用)フラジャイルな心の文字で綴られた「夜の文体」であって、いわば「電気で濡れた文体」だ。
僕は「ティファニーで朝食を」しか読んでないな。
ロレンス・ダレル「アレキサンドリア四重奏」。若い頃に池澤夏樹さんの書評で、心揺さぶられた本。未読。書評半分で、後は官能を他人に譲渡していった顛末を語る。タペストリーのように積み重なる恋の物語が齎す作用ということなんだろう。
トマス・ピンチョン「V」。これもいつか読もうと思っている本の一つ。
現在と過去の二つの物語から成るが、原則的には関係がない。V.というイニシャル群が共通するが、やたら情報過多。う~ん。つまり物語ではないんだな。
幾つか読んだ本もあったが、未読の作品の数々。
忘備録として記す。