【感想・ネタバレ】千夜千冊エディション 宇宙と素粒子のレビュー

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Posted by ブクログ

古代の天文学から、時間とは何か、エントロピーとは何か、を通じて相対性理論を紐解き、原子の宇宙に迫るため量子力学の世界へ向かう。〈千夜千冊エディション〉物理学篇。


第1章はガリレイやケプラーの著作で幕を開ける。プチ『ルナティックス』のような構成の一七三二夜が嬉しい。
宇宙と天体をめぐるロマンの第1章から、〈時間〉を科学的に捉えるとはどういうことなのかを解きほぐす第2章へ。この章は同じ〈千夜千冊エディション〉『情報生命』とリンクしている。
第3章は相対性理論によって宇宙のはじまりをめぐる議論が急速に拡大したことについて。ダークマターやブラックホールの仕組み、反物質とは何かなどが解説され、ワクワクすると同時にかなり難しくなってくる。『銀河鉄道の夜』ふうに宇宙創造のプロセスを講義してくれる六八七夜が優しい。
第4章は千夜千冊で最も長い一〇〇一夜の一篇のみで、1〜3章までと第5章の素粒子論をつないでいる。この章に限らず、「ヒッグス粒子」とか「パリティ」とか「自発的対称性の破れ」とかってなんだろう、と思っても繰り返しまた違う角度から説明してくれるので、なんとなくわかった気になれる。これが松岡正剛を読む危うさでもあるのだが、理系のセンスが全然ない私には、「超ひも理論」をわかった気にさせてくれるだけでも有難い。
第5章「素粒子と量子」はだいぶ立ち入った話で、イメージを浮かべるのも難しい。概念と論理をもてあそんでいるだけに見えてしまうなぁ…と思っていたら、一〇七四夜でデイヴィット・ボームが科学的思考を既存の言語様式と異なる方法で記述する試みをしていたと知り、この話は面白かった。
内容をすべて理解できているとは思わないのだが、子どもの頃読んだラッセル・スタナードの〈アルバートおじさん〉シリーズを思い出して懐かしかった(逆に言うと物理学の本を趣味で読んだのはそれ以来)。本書でSFを楽しむ土壌が頭の中にできたかな…と思いたい。

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2020年09月13日

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