あらすじ
大学在学中にデビューした新進作家の連城響生。味のある作風を評価されていたが、自分の殻を破れない。運命に導かれるように出会った劇作家榛原憂月の舞台が響生を変えてゆく。榛原の世界に熱狂し翻弄される響生。自らの作風も変わり気が付くと榛原の模倣作家(エピゴーネン)に…。絶望の淵に落ちた響生は友人奥田の励ましで戯曲を書き始める。若き日の響生の姿、原点を描く「赤の神紋」サイドストーリー。
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Posted by ブクログ
割と、何度も読んで、何度も読み続けたけれど、終わりにはたどり着けなかった本、と読んだ方が正しいのかもしれない。
読み終わってない本が傍にあるのに、新しい本をとってきてしまうのは、私のとてもよくないクセだと思う。
そんなわけで「国権」。
「赤の神紋」という小説でドロドロを演じる連城のサイドストーリー。
連城はどうやって榛原を知り、榛原に傾倒し、また榛原に飲み込まれてしまったのか、の物語。
もちろん、一度地に落ちた連城は筆を折ったけれど。
奥田の助けを得て、立ち上がり。
けれど、また見てはいけなかったものを見せられてしまっていた。
とてもつらいつらい話。
時として創作はたくさんの人の心を打ち。たくさんの人の心を撃つことがある。それはもちろん、悪いことではないのだけれど、撃たれた側には致命的なダメージを与えられることになる。
もちろん、同じ方向を目指していればその確率は更に上がる。
そしてそれは連城を何度も、何度も、飲み込んでしまう。
すごく難しい問題なんだと思っています。
おそらく、才能があっただけ、連城には重くのしかかってきてしまった。
これはその苦悩だけが重くのしかかってくる、連城のサイドストーリー。
この物語に救いはない。
あるとしたら、ケイがいるだけだ。
ただ、それだけ。
それ以上の救いは「赤の神紋」の本編を読んでほしいけれど、きっち多分、本編を読んでも救いなんてものは存在しなかったことは、最後まで読んだ私は知っている。