あらすじ
ちゃくちゃくと結婚に向けて準備を進める沙名子と太陽。名字はジャンケンで“森若”にすることになったけれど、それ以外にも世帯主、本籍地、新居、子供など、話し合わなければならないことは山積みだ。社内の既婚女性たちの家庭事情もいろいろと耳に入ってきて悩ましい。そしてそんな間も仕事は待ってくれない。業務効率化のためのデジタル化も始まった。天天コーポレーションの従来の経理システム通称「天かす」から、新しいシステムを導入することになり、沙名子は経理部代表として業務効率化委員会に参加することに。仕事とプライベート、どちらでも沙名子のタスクは増えていくけれど……?
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最近人気のお仕事系小説。知らなかった職業の裏側を知ることが出来たり、働く主人公に社会人として共感したり。本作もそんな系譜に連なる作品です。
優秀な経理部員・森若沙名子が、経理部を訪れる社員や彼らが提出する領収書などを通して、社内の問題や社員同士のトラブルを「イーブン」にしていくという物語。この森若さんの仕事っぷり、全ての会社員が羨むほどきっちり完璧で、読んでいるだけで気持ちいい……。ドジな主人公が失敗しながら成長していくストーリーを読むと主人公のミスにイライラして耐えられない派のみなさん、森若さんは信頼できる主人公です。あくまで「イーブン」にしたいというのが森若さんの美学なので、正義感を振り回すことがないというところも、控えめに言ってかなり推せます。
出てくるキャラクターたちも、経費でぎりぎりグレーな私物を購入する広報課長、私費を使ってでも会社に貢献して正社員になりたい契約社員、レジミスを謝らないアルバイトなどなど、「うわーあるある!」というリアルさ。友達の会社のトラブルを聞いているかのように「え、ありえない!」「この人怪しすぎ〜」と、思わず心のなかで相槌を打ちまくってしまいます。そして、読み終わった頃にはもう、森若さんが同僚かのような気持ちに。
そんな信頼の森若さんですが、恋愛の方は不器用でこじらせ気味。営業部のムードメーカー、山田太陽から想いを寄せられているのですが、この2人のラブ、なかなか進まない……。しかし、仕事は早くて迷いのない森若さんが、一つ年下の太陽からの好意に戸惑い、自問自答しながら亀の如き歩みでゆっくりと距離を縮めていくモダモダ感も風流というもの。
お仕事エピソードをスカッと読ませて、恋愛エピソードでムズキュンさせてくれる、1冊で2度美味しい作品です!
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Posted by ブクログ
結婚に向けてタスクを着実にこなしていた森若さんと太陽がついに結婚。名字はジャンケンで決めた2人だが、世帯主、本籍、新居、子供など考えることは山積み。自分は結婚のあれこれにもどかしさを感じつつも諦めたが、言語化されると改めてモヤモヤすることが多い。自分の意見を通したい気持ちもあると思うけど、太陽は森若さんのことを考えた上で、解決策を提案するところが優しい。困った時に頼りになるお母さんや勇太郎さんや美華さん、真夕ちゃんなどの周りの人の優しさを感じて、ほっこりした。
Posted by ブクログ
ついに、経理部の森若さん、ご結婚!
不覚にもラストでウルっとしてしまいました。
今作はちゃんと経理部の話もあり(というか経理部の方がメイン)大満足です。鎌本さんがあんなにヤバい人だと思っておらず背筋がゾゾッとしました。この手のタイプの人たまにいますよね。本人は好かれようと思っているのかもだけど、話せば話すほどデリカシーのなさが露わになって周りがドン引きしてしまう人。。一時はどうなるかと思いましたが、山崎さんと勇さんのナイスアシストで何事もなく結婚式は終わりました。…が、結婚しても太陽くんは単身赴任でいないから、まだ何かありそうで怖いです。
前作でも書きましたが、この似たところの全くない二人がどう付き合い始めたのかすっかり忘れてしまっているので、やっぱり改めて最初からまた読み直したい!11巻分の波瀾万丈をゆっくり振り返りたいと思います。
太陽くん、沙奈子さん、ご結婚おめでとう!
Posted by ブクログ
無事に結婚式を迎えた森若さん。今巻ではその準備段階が中心に描かれる。
名字を「森若」にするかどうかはジャンケンで決めたものの、それ以外にも世帯主や本籍地、新居、子供のことまで、二人で考えるべき課題は山積み。結局、苗字は「森若」のままに決まりつつも、本籍は山田家になるなど、譲り合いと歩み寄りが印象的だった。結婚後の妊娠・出産・育児についても、まだ先のことながら思慮深く考え込む森若さんの姿に共感を覚える。
一方で、仕事も待ってはくれない。天天コーポレーションでは従来の経理システム「天かす」から新しいシステムへ移行することになり、森若さんは経理部代表として業務効率化委員会に参加。デジタル化推進の一方で、社内の既婚女性たちのリアルな家庭事情も耳に入ってきて、ますます悩ましさは増していく。プライベートも仕事も、どちらも一筋縄ではいかないけれど、その両方と真摯に向き合う森若さんの姿が丁寧に描かれている。
迷いながらも一歩一歩前へ進む過程が、読んでいて背中を押されるようだった。結婚と仕事、私生活と社会生活、その折り合いをつけながら成長していく森若さんの姿に、これまで以上に人間味を感じられる巻だった。
Posted by ブクログ
太陽と森若さんがついに結婚。
自分だったらとか、自分の周りの似た人を探しちゃう感じで毎度読ませてもらってるけど、結婚周りのよしなし事は、すごい自分のときのこと思い出した。
程度はあれど、女性でもいちいち考えこんじゃう人とそんなもんだろってあんまり考えずに乗り越える人、分かれると思う。私は森若さんほどでないにしろ、前者だった。
鎌本が社内で結構愛されてんの不思議。
「鎌本さんの失恋を慰める会(本人だけ知らず)」で泣かせてもらうってめっちゃみんな優しいと思う。
ていうか結婚式場突き止めて鎌本、どうするつもりだったん?
山崎と勇さんのタッグは激アツだけど、結局これで手打ちなん?
まあ、リアルなところ、みんなこんなふうにできる限り穏便に済ませるんだよな。
現実なら、そこそこ仕事ができる嫌なやつなんていっぱいいるし、わざわざ面子潰して自分が標的になるのも面倒でもイイことないもんな。
そんななか、美華さんが「セクハラです!」ってハッキリいったの気持ちよかった。けど、本当にこんなことあったら周りは焦ると思う。美華さんはこのシリーズではかなりフィクションな人だ。でもそれがなくちゃ小説読んでる意味がない。そういうバランスがいいよね。
出産・子育て編どうなるのかな。
私は、小さい頃からずっと出産がめちゃくちゃ怖くて、(前情報も悪かったと思う。産んだことない男すら「産みの苦しみ」とか言ってて、「子供を産もうとしたら絶対味わわなくちゃいけない痛み」が存在するって刷り込まれるの怖くない?)マジで技術さえあれば男に替わってほしい、じゃなけりゃ子供いなくてもイイくらい思ってた。
結局、周りにいる子供がキュートすぎて気持ちは変わって子供は欲しくなり、科学技術は男性に子供を産ませるほどには発達していなかったので、私が産んだ。
そのとき、出産に関しては私しかできないから私がやったけど、育児で男が代替できないことないだろうからできる限り夫にやらせようと誓った。
でも結果として決して平等ではなく、周りには「イイ旦那さんだね」と夫が言われるレベル。これをありがたいと思うべきなのか?
で、一番影響があったのはやっぱり仕事。男並に働くと保育園に入れない風潮。時短勤務。夫の出世。思い描いていた平等からは年々乖離している。
世間の多くの女性が悩み、自分も苦悩している問題に、森若さんがどう答えを出すのか、興味ある。
Posted by ブクログ
Audible聴了。
遂に沙名子と太陽が結婚。
仕事では、社内の独自経理システム「天カス」が、汎用クラウド版に代わりそう(全社プロジェクト発足)。
また営業部の変わった先輩鎌本が森若さんを大好きでフラれるが、変な行動に出ないように、経理部の課長格田倉勇太郎や営業部の山崎柊一が森若さんを守ろうとする親衛隊であったことが微笑ましい。
どうも以上12巻で既刊は終了のようで、続きの結婚後の13巻は今年の秋発刊のよう。少し待ち遠しい。
Posted by ブクログ
最終巻ではないようだが、物語としては一区切りついた12巻。
太陽と沙名子の意見の相違や、鎌本の不穏な気配など決してハッピーだけではない展開だったが、最終的にはいい感じにおさまって良かったと思う。何より、毎回最後に真夕視点のエピローグが置かれていることで、読後感が柔らかい感じがする。沙名子視点の癖のある語りからの緩急で、経理部の朗らかな一面が覗けるような気がする。ありがたい。
恋愛物語では付き合う→結婚→出産という流れが定番だが、本作ではそこに至るまでのそれぞれの人物の葛藤などがきちんと描かれていて、特に苗字や本籍地などで一悶着あるのはある意味斬新だった。でも、慣習や常識に囚われずによく考えなきゃいけないところだよな、と改めて実感した。
Posted by ブクログ
森若さんの悩み、立ち止まって考え出してしまうと、もう抜け出せなくなりそう。それでも踏ん張って先に進もう、と思えるくらい、結婚したい相手と出会えたということが大事なのかもしれない。
それにしても鎌本さん、様子がおかしくなるくらい、ガチで好きだったのね。失恋して泣いてたと聞くと途端に気の毒な気持ちがわいてくるから不思議。
Posted by ブクログ
何が良かったって、森若さんが結婚を前にマリッジブルーにならないところ。一人の時間も大事だけど、そこを削っても太陽と一緒にいたい気持ちにとても癒された。結婚が決まればやることは決まる。そうすると妊娠・出産が見えてきて会社では子育て中の同僚が気になり始める。森若さんの人生のステージで社内で気になる人が変化したり、時の流れで若手が成長してたり、自分の周りのあるあるとシンクロするところがずっと楽しい要素かも。次も楽しみだし、子育てする森若さんにも会いたいなぁ。