あらすじ
プロ棋士としてさらなる高みを目指し、その未知なる可能性をうかがわせるヒカル。しかしその一方で、ヒカルを囲碁の世界へと導いた佐為に、抗うことのできない運命が待ち受けていた。その瞬間は、突然やってきて…!?
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囲碁の盤面が織りなすは、白黒つける勝負の世界。
その棋士ひとりひとりには、数多の色に彩られた人生が見えてくる――。
主人公・進藤ヒカルは、囲碁などとは縁遠い活発な小学生。しかし、平安時代の天才棋士・藤原佐為(ふじわらのさい)の霊と出会い、囲碁の世界に身を投じることに。
同じ小学生にしてプロ級の腕前を持つ少年・塔矢アキラや、その父にして名人段位を持つ塔矢行洋(とうやこうよう)。
彼らを始め、数多の棋士達との邂逅を経て、ヒカルはその人生を大きく変えながら成長していく――。
20年ほど前に若者の間で“囲碁ブーム”というものが起きたのをご存じでしょうか?
その火付け役となったのが、この『ヒカルの碁』。
対局シーンでの鬼気迫る表情や額に浮かべる汗、互いの戦略を探り合う思考のせめぎ合いなどを見ていると、思わずこちらも力がこもってしまいます。心理描写を繊細に描くタッチはさすが小畑健氏、囲碁のルールを知らなくても全然違和感なく惹き込まれる…。
中でもメインとなるのが、ヒカルとアキラ、そして佐為の物語です。
子供だった彼らが大人に近づくにつれて、内面や顔つきの変化していく様がとても丁寧に描かれています。あんなに丸顔だったのにこんなにシュッとした凛々しいお顔に…そんなところも少年好きの女性にはグッとくるポイントかも。二人の少年の出会いが囲碁界を変えていく大きな渦となり、生涯のライバルになるまでの長い道のりが本作の軸となっています。
そして、ヒカルの成長を見守る佐為の存在は、彼の良き友人であり、師匠であり、親であるような温かさを感じます。そんな二人の重要な転機となるエピソードがあるのですが…これが涙なくして語れない…。
彼らに限らず、濃密な時間を過ごしたキャラクター同士の関係性があるからこそ生まれる“人間ドラマ”が、本作最大の魅力です!
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匿名
佐為
何度読んでも佐為が突然いなくなる場面には切なさとともにある種の感動を受けます。
綺麗でお茶目でカッコ良く、多くの人の目をヒカル(と佐為)、囲碁に向けさせたヒカ碁のシンボル。
何度読んでも凄い作品だと思わされます。
ターニングポイント
タイトルが「ヒカルの碁」であり、ヒカルが成長していく以上、どんなにサイの活躍が気持ちよくても、主人公はヒカルなんだと思います。
なのでヒカルが天才サイを一部ながらも追い越し、別れるというのは腑に落ちるし必要な流れだ思いました。
それにしても別れ方があまりにも切ないです。
もう会えないので死別みたいなものだと思うのですが、その場に居合わせないならまだしも、目の前にいたのに別れの言葉も聞けないなんて、残された方は堪らないでしょう。
創作物では、致命傷を負いながら、あるいは死の床で、長々と台詞を述べて逝く人も多いです。
それはそれでドラマチックなのですが、日常の微睡みの中でスッといなくなってしまうのは、手応えがなくて却ってしんみりしてしまいます。
別の漫画の「死は本来あっけないもの」という言葉を思い出しました。
あっけないゆえにリアルだし、余韻が強いです。ヒカルの後悔や落ち込みがひしひしと伝わってきました。
この別れがどのように次へ繋がっていくのかが楽しみです。