名称未設定さんのレビュー一覧
-
ネタバレ 購入済み
ゆるく正しく
聖人の二人が下界でバカンスをする漫画です。
宗教小ネタがあり、知っているとクスッときたり、初めて知ってタメになったりします。
荒川アンダーザブリッジでは普通の人たちが変な暮らしをしていましたが、こちらは逆で、すごい人たちが普通の暮らしをしようとしています。
変に俗っぽい感性に染まっていますが、来歴が来歴なので、周りとの会話が噛み合わなかったり、天界からのちょっかいに会ったり……。
その抑えられつつ滲み出てしまう「非常人」感が、かえってシュールさを引き立てていて、好みで言えば私はこちらの方が好きです。
曲がりなりにも聖人なので、肝心なところの節度や倫理観はしっかりしています。
緩さとファンタジーの中にも安心感のあるギャグストーリーなので、毎日のご飯のように繰り返し楽しめます。 -
ネタバレ 購入済み
インドアで健康を味わう
山に登ってご飯を食べる、健康的アウトドア漫画です。
登山のノウハウやレシピ、危険性などに触れつつ、メインは美味しいご飯!人との出会い!自分との対話!山の壮麗さ!というレジャー感あふれる内容なので、ためになりつつ楽しく読めます。
一人登山は気軽なもんじゃないよ、というメッセージが随所にあるので、ザックを背負って近々登ってみよう、などという無謀な思いつきには至らないのですが、
登山面白そうだなぁ、という気持ちに心からなる、美しさや充実感の詰まった作品です。
切り立った山を前に鮎美が無言になるシーンはとてもいいです。
美味しい空気とご飯、美しく静かな自然。
コツコツと準備と調整をかさねて目標に達するプロセス。
家に居ながらにして健康を味わえた気分になり、心が爽やかになります。 -
ネタバレ 購入済み
危うさに惹かれる
試し読みで、ヒロインの品川真珠に惹かれて購入しました。
主人公のアラタと婚約を交わし、またメインキャラとして描かれているのでヒロインと呼びましたが、
実際は残虐な連続殺人事件の犯人として死刑判決が下っている危険人物です。
可憐な見た目をしていますが、その可憐さを含め、様々な手段を使って駆け引きを仕掛け、人々を翻弄します。
アラタと真珠は獄中結婚の約束を餌に、相手から欲しいものを引き出そうとします。
この欲しいものというのがミソで、真珠の本当に望んでいるものが我々には明かされていません。
本心では結婚する気がない、したとしても真珠が出所しなければいいとするアラタに対し、真珠はアラタとの結婚に積極的なようです。
それが愛からくるものなのか、何か目論みがあるのか、
そもそも愛があったとして、その「愛情表現」は安全なものなのか、それが分からないのです。
愛に飢えているようにも、全く逆のようにも、猟奇的なようにも、弱いようにも見える。
真珠自体にどこにも着地しないような危うさがあり、怖いけれど、同時にとても可愛らしい、庇護欲をそそる一面がよく描かれています。
その危うさにアラタも揺さぶられ、気がつけば彼女のシナリオ通りに動いているのではないか? と読んでいるこちらがハラハラします。
サスペンスにも危険を逃れつつ謎を追うなど緩急がありますが、
当作では真珠が謎を持つキーマンであり、常に危険と渡り合わなければなりません。
おまけに真珠自体の人間性が分からないため、ゴールが結婚なのか、和解なのか、決裂なのか、殺人なのか、それも分からないままなのです。
いわば真珠のこれからの目的と事件の真相とで謎の入れ子構造になっており、
その中で選択を間違えないよう手探りで進まなければなりません。
事件や解決やちょっとしたスリルを見物する観客ではなく、絶え間ない緊張のプロセスに晒される当事者の気分を味わうことが出来ます。
今後の展開に目が離せません。 -
ネタバレ 購入済み
ターニングポイント
タイトルが「ヒカルの碁」であり、ヒカルが成長していく以上、どんなにサイの活躍が気持ちよくても、主人公はヒカルなんだと思います。
なのでヒカルが天才サイを一部ながらも追い越し、別れるというのは腑に落ちるし必要な流れだ思いました。
それにしても別れ方があまりにも切ないです。
もう会えないので死別みたいなものだと思うのですが、その場に居合わせないならまだしも、目の前にいたのに別れの言葉も聞けないなんて、残された方は堪らないでしょう。
創作物では、致命傷を負いながら、あるいは死の床で、長々と台詞を述べて逝く人も多いです。
それはそれでドラマチックなのですが、日常の微睡みの中でスッといなくなってしまうのは、手応えがなくて却ってしんみりしてしまいます。
別の漫画の「死は本来あっけないもの」という言葉を思い出しました。
あっけないゆえにリアルだし、余韻が強いです。ヒカルの後悔や落ち込みがひしひしと伝わってきました。
この別れがどのように次へ繋がっていくのかが楽しみです。