あらすじ
森博嗣は、
ソーシャル・ディスタンスの
達人だ。
2ページで深くて面白い。
上質エッセィ100編 ! 文庫書下ろし
コロナ禍において日本人が否応なく見せつけられたものとは/
庭仕事が楽しい毎日を送っている/初めて、靴下を自分で買ってみた/
なんでも、個人の自由です ほか
社会からも人からも、いつも多めに距離を取っているベストセラ作家の目から見たコロナ禍の日本とは。もやもやしていたことが一気にクリアに見えてくる明快エッセィ100編を収録。人と同じでなくても良い、つながらなくて良い。人生が生きやすくなる言葉に満ちた、深くて楽しい人気シリーズ!
僕が小学生の頃である。(中略)当時の男の子は、道を走るクルマの車種がすべて言えるくらいカーマニアが普通だった。モデルチェンジするとTVで宣伝が流れ、そんな新型車を初めてみるだけで興奮した。「あ、新型コロナだ!」と歓喜したのである。
(p.26「コロナといえば、日産のブルーバードと競ったトヨタの人気車の名でしょう」より)
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
p192「ただ、依頼される仕事は、もっと急である。雑誌も新聞も、原稿依頼は「来月までに」と締切が早い。再来月には印刷して発行する、といったスケジュールなのだ。そういうぎりぎりのルーチンで、この業界は回っている。ライブ感覚を楽しんでいる人たちなんだな、としか思えない。」
この"ライブ感覚"のくだり、声出して笑った。
20年12月初版発行ということで、コロナ禍について触れられていて臨場感があるのだけど、相変わらずことごとく冷静で、鋭く、客観的な意見が述べられる。こういう特異な状況下においても価値観が本当にいつでもブレていなくて感心する("上から目線"かしら?)。「"あなたは"どう生きたいんですか?」という話。
p34「政府がマスクを買い上げて、これを必要なところへ、優先順位を決めて配布するというのは、一見良さそうなシステムに見えるだろう。だが、こういったシステムでは「利権」というものが必ず生じて、国民の平等を基本として謳う多くの社会主義国家では、役所や権力者へ袖の下(つまり賄賂)を渡さないとなにも手に入らない、というような事態になる。これこそが、「本当に欲しい人に届かない」システムなのである。」
p70「人を非難する人(中略)というのは、非難されたくない、と恐れている。恐れているのは、非難という行為が有効だ、やる意味がある、と評価している。だから人を非難する。同時に、非難することで自分は非難される側ではなく非難する側に立てる、という安心感も抱く。」
p77「コロナで店を閉めれば、家賃と光熱費、人件費で一ヵ月に一千万円もかかる。補助金をもらっても焼け石に水だ」と訴えている人たちがいた。少なくとも、政治家のミスで、このウィルス騒動になったわけではない、と僕は思う。また、そんな大金をつぎ込むことで大儲けを企んでいたのだから、それもしかたがないのではないか、と僕は考える。少なくとも商売とはそういうものだ、と僕は教えられた。/大金持ちは、大勢の召使が働いて大邸宅を維持している。商売に失敗したら、その生活を維持できない、どうしてくれるんだ、と言っているのと同じである。/ただ、そういった訴え自体を非難しているのではない。商売が上手くいっている時期には、誰もが黙っている。(中略)そのときに、いざという場合に備えて蓄えておくべきではなかったのか、くらいは尋ねても良いのではないか、と思うだけだ。」
Posted by ブクログ
今回は新型コロナウイルスに言及する内容が多かった。
「外食はしないし、ものを買うために小売店を利用しない生活になっている。誰とも会わないし、電話も一切使わない。」と仰る森先生は、新型コロナ禍となる前の早い時期から世間との間にソーシャルディスタンスを置いていたので、新型コロナの影響は全くない様子である。
世間に媚びることない森先生の発言の数々はきらりと光を発することしばしば。
今回、心に留め置きたいと思ったのは、感情的な人というのは、感情が激しいというよりは、感情が単純なのであり、単純ゆえに外部からコントロールされやすい。 という言葉。気を付けよう。
また、「あなたにぴったりの作品」を薦めるサイトが異様に多いとして、「思ったとおりの物語が、思ったとおりの文体で描かれていても、はたして、心にヒットし、「これは凄い」となるものだろうか?そういうのが読書の成功だろうか?と疑問を呈する。「人間の心は、「外れ」だって感動するのだ。ミステリィなんて、それに近い魅力があるのでは? 」という言葉になるほど!と思った。
それにしても、森先生が住んでおられる地方は、台風もないし梅雨もないと書かれていたが、海外に住まわれているのか?
Posted by ブクログ
森先生らしい、独特だけど読みやすい内容。ブログも引退されてしまったので、エッセイがとにかく楽しみだ。
コロナへの言及があって、本人も書いているが森エッセイにしては時事につっこんでいて珍しいと感じた。
僕ももっと自分と向き合って中長期的にどうするのがより良い方向に進めるのか考えたいと思った。
また、他人が何とかしてくれるという甘えを排除しなくてはならないと今まで以上に強く思った。
Posted by ブクログ
p98 39 「心に響く」という言い回しが、
最近増えているように観察されるけれど。
森博嗣のような天邪鬼は使わないし、「響くってことは、心の中が空洞なんですね」と犀川先生なら言うかもしれないので注意が必要だ。
2020年12月刊行。
珍しく時事問題が多かったです。コロナ禍やそれに翻弄される人々から観察できることなど。他はいつもの感じだと思います。
「ヴォイド・シェイパ」10巻(前後)の構想は初耳でした。実写化がボツになった話も。今だから言える話なのでしょう。小説はある意味では物語を切り取っているのにすぎないので、登場人物が今後どうなるか、くらいの想像は当然されていることかと思います。
Twitterに解説文がついているような感じで読んでいます。少なくとも年間で、意味のある、あるいは抽象性を伴った気づきを100ツイートできる人がどれだけいるだろうかとも思ったりします。