あらすじ
※本作品は、2024年発売の単行本版「一夜―隠蔽捜査10―」を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
人気作家の北上輝記が小田原の自宅付近で誘拐された。混迷が深まる中、北上の友人である梅林賢が捜査への協力を申し出る。竜崎はミステリ作家としての彼の知見を尊重し、謎の解明のために助言を求めることにした。一方、息子の邦彦が東大を中退して映像の世界に飛び込みたいと訴えて――。原理原則を貫く信念の警察官僚が加えた人間力。神奈川県警刑事部長・竜崎伸也の新たな成長を描く。(解説・松井ゆかり)
同じキャリア警察官の主人公「竜崎」と、幼馴染「伊丹」の物語。
とにかく「竜崎」のキャラ設定が秀逸!万事の『原理原則』に忠実で、しがらみの多い警察機構の中、ただひたすら『正論』『理屈』を武器に超合理的に全てを進めていく姿が痛快になってくると、あなたは立派な「竜崎」ファンです。堅物過ぎてヤな奴なのは否めませんが、対照キャラの「伊丹」が、それだけじゃないことを読者に説明してくれます。
的確な判断と部下への指示。こんな上司なら一生ついていきたいっす(かなり堅苦しいけど)。
ドラマ出演者が形容したのは「警察版 半沢直樹」。主人公のキャラは全く違えど、組織内の権力争いとスッキリする読後感は確かに似ているかも。1巻ごとの完結ですが、続巻も読みたくなること必至!そして続巻も期待以上です。(書店員・ラーダニーバ)
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Posted by ブクログ
『隠蔽捜査』シリーズ長編第10作。竜崎が神奈川県警刑事部長に着任してから3作目だが、日米地位協定が絡んだ前作とは違う意味で、厄介そうな案件か?
小田原市在住の人気作家・北上輝記が、自宅付近で誘拐された。実在の作家なら村上春樹のようなポジションだろうか? 捜査陣は色めき立つが、読書などまったく嗜まない竜崎は、北上輝記を知らないようである…。
現場が混迷する中、北上輝記の同業者である梅林賢が小田原署を訪ねてきて、捜査協力を申し出る。彼は北上輝記の家族を通じて誘拐を把握していた。確固たる信念と柔軟性を兼ね備えた竜崎だけに、追い返さずに話を聞くことにする。
現実に誘拐事件となると、警察は報道機関と協定を結ぶ。本作でも、協定を結ぶはずだったが…犯人からの前代未聞の要求により、協定は中止された。一応、どんな要求かは伏せておくが、鋭い読者なら真相に感づくかもしれない。
同時に、警視庁管内では殺人事件が発生していた。竜崎の異動後も、毎回警視庁の伊丹刑事部長が登場するのがお約束だが、警視庁の案件が誘拐事件と何らかの関連があるのだろうと容易に予想される。「何らか」の内容は予想外だったが…。
正直、事件そのものより、梅林賢が語る作家論の方が興味深い。北上輝記は純文学領域の作家で、梅林賢は娯楽領域の作家だそうだが、彼曰く、娯楽小説の地位向上のために戦ってきたし、領域が異なる北上輝記と交流はないという。
今野敏さんご自身、娯楽領域の作家であり、最前線で戦ってきた。梅林賢の言葉は、作家・今野敏の自負でもある。少々ご都合主義だろうと、面白い作品を。今野敏さんのライフワークたるこのシリーズには、サービス精神が溢れている。
警察官と作家が、それぞれの力量を認め合って化学反応を起こし、不可解な誘拐事件の裏を炙り出した。梅林賢ファンだという伊丹のミーハーぶりに苦笑するが、この結末、神奈川県警佐藤本部長の心中やいかに…。
Posted by ブクログ
刑事部長の竜崎のもとに舞い込んできたのは、有名作家の誘拐事件。だが犯人からの要求はない。刻一刻と時間が過ぎる中、SNS上で誘拐事件のことが拡散された。ようやく現れた犯人からの要求は、マスコミに事件のことを公表せよというものだった。
やがて誘拐されていた北上は無事保護され、被疑者も逮捕された。だが被疑者は闇バイトに応募して誘拐をしただけで、黒幕の素性はわからないままだった。そんな中竜崎は、北上の同業者であるミステリ作家の梅林に意見を求める。それにより竜崎は、北上の誘拐は何かしらの陽動なのではないかと推理する。時を同じくして、東京都内で殺人事件が発生する。被害者はその昔作家活動をしており、北上との間で対立があったことが判明した。そこで竜崎は、誘拐は北上本人が企んだことで、誘拐されたことで殺人事件のアリバイをつくろうと画策したことを見破る。
原理原則を重んじ、ときに柔軟な発想で快刀乱麻を断つ竜崎の活躍が痛快なシリーズ。本作では、作家が抱える複雑な感情や矜持なども深く描かれていることで物語に厚みが生まれている。さらにこのシリーズは、事件と並行して家族の問題も解決していく点が面白い。
好きな作家に会えることになってはしゃぐ伊丹がかわいい。