湯浅誠のレビュー一覧
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経済学者、貧困問題に取り組む人(湯浅誠氏)、格差を論じた人(赤木氏)との対談を通じて、「経済成長」が今の日本にどれだけ必要か?というのを論じた一冊。
資源の制約を完全にクリアしたならば、経済成長=右肩上がりというのは絶対的な解である、というのはこの本を読んで納得する部分である。
しかし現実世界では、資源はやはり有限なものではないかと思うので、ここでいくら経済成長こそ日本の特効薬ともてはやされても、それは実現してはいけない解のように思えた。
また、実質この本の主張のメインである飯田泰之氏が、やや上から目線的に対談を仕切って、さも「経済学は偉い」という印象を与えていることに不快感を感じなくもな -
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そこそこ面白い対談集。軸となっている飯田泰之氏の他の著書としては『ダメな議論』を読んだことがあるけど、こっちの方が氏の専門性が発揮されている感はある。
ただ、面白いと思った部分には付箋を貼っていく読書スタイルなんですが、気づいたら序盤の半分ぐらいに付箋が集中。公判が面白くない訳じゃないんだけど、ちょっと物足りないかな。
子どもが教育を受けられるという状況が、とても恵まれた贅沢なことであることは同感。そういう最低限を保障するために貧困をどう撲滅していくか。世界でこの問題に対処する時にはMDGsが掲げられるわけですが、本書で指摘されているとおり、日本国内の貧困に抗するためにも、日本版MDGsを -
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ネタバレ薄々ではあるが、労働者を取り巻く環境が質的に変化していると感じていた。恥ずかしながら自分はその状況を臨床からしか推測していなかった。それも自分とは違う世界に生きる人のように感じていた。けれども、外来や入院で見る患者達の中には少なからず、単なる疾病のみではわからない社会的な背景を背負っている。これは、内服や生活管理では癒えない別の社会構造と深くリンクしているのではないか?この問いかけがわたしを本書に向かわせたのだと思う。アメリカの臨床医がフードスタンプを受給する立場に没落する例は、極端であるが身につまされる思いがする。その要因の一つは資本主義の暴走と実体経済の「空想化」ではないかと考えさせられる
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第1章はとても面白い。
毎年2%の経済成長というのは実にリーズナブルだ。
たしかに立ち止まるというのは衰退を意味するわけで、0%成長というのはありえない。とはいえ、もういちど高度成長を行うのは無意味なわけで、この成長率は現実的だ。
マクロは良く分からないが、会社経営の視点から見ても、成長期が終わって安定期に入った会社にとって、この程度で成長するのは、妥当なところだろう。
国も会社と同じと考えたときに、GDPは粗利だというのは、非常によく分かる。
粗利が毎年2%成長する。それは必要だし、それができなければ、いろいろと会社全体がきしみ始める。そしてそのきしみは、弱い部署や、新規事業や -
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ネタバレ『反貧困』の湯浅氏と『貧困大国アメリカ』の堤氏の対談を中心とした本。日本やアメリカにおける正規社員、教師、医者、中間管理職の窮状が中心的な内容。
恐ろしいのはアメリカ政府が日本政府に提出する「年次改革要望書」。郵政民営化や建築基準法、商法などの改正がこの要望書に基づく政策だということは知っていたが、医療保険や医薬品業界の規制緩和もそうだとは知らなかった。また、アメリカは国民を「消費者」、ヨーロッパは「市民」として扱うという見方も新鮮だった。
この本からは「苦しい」と声を挙げることの大切さと共に、散発的になっている反貧困運動の連帯が重要であることを学んだ。全体としては『反貧困』ほど -
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路上生活者やネットカフェ難民等の貧困に直面している人々を支援する“もやい”の活動を通じて、セーフティーネットが事実上崩壊している実情を自身の活動経験を踏まえて伝えている。
格差と貧困を隠そうとする政府や、生活保護への水際作戦と呼ばれる行政の対応、世間の目。そういったものを変えていくために、貧困問題に関わる団体、ネットワークがたちあがりつつあるということが書かれている。
学生時代に路上生活者の自立支援事業のアルバイトをしていた身としては、日本の底辺の一端を見たことで、ここに書かれていることは、嘘でも針小棒大でもないリアルなことだと実感できる。
この現実を受け入れなければ、いつまでも対岸の火事 -
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「実存の問題は政府や政策が手を突っ込むべき問題ではない。共同体や秩序に希望をたくす方向も同様である。」
経済問題に関する入門書のように見えるけれど、本の内容はといえば、何かと話題の若年層非正規雇用労働者に関するもの。「格差」ではなくて「貧困」を問題の中心にすえて、貧困を経済学の問題として捉えて、貧困を無くすための方向性を模索してみようというコンセプト。
頭のいい人たちの内輪話で、本の内容はあまり理解できなかったけど、貧困という問題に取り組む上では「生きづらさ」みたいな心の問題と向かい合う必要なないってこと。
貧困者の心の問題に対して、社会学や精神論からのアプローチを突き放するこ -
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● 年金というのは何をやっているのかというと、貧乏な若者から税金をとって、金持ちの年寄りに配っている。それよりも生活保護やベーシック・インカムで生活を保護し、それ以上の部分については、個々人が自分の判断で預貯金すればいい。
● ニート、フリーターに対して「自己責任」といっていいのは、景気がいいときだけです。需要がちゃんとあって、その状況でニート、フリーターだったら、僕は自己責任だと思う。けれども、いまは席が人数分ないわけですから、社会の問題です。
● 要するに、都会の金持ちと貧乏人からとって、田舎と都会の貧乏人にまき、貧乏な若者と金持ちの若者からとって、金持ちの年寄りと貧乏な年寄りに配って -
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アメリカ、日本における正社員=中間層の貧困化現象を追った二人による対談。
岩波新書の仕事を角川がおいしいどこどりした印象もあるが、中身はそこそこしっかりしている。
弱者を救うために声を上げることは、個人的には好意を覚える。
しかし、そこには人並み以上の想像力が必要ではないだろうか。
グッドウィルの違法派遣の問題についての湯浅氏の言及(p.232)を見ても、
<本当にアリ対ゾウの戦いになったわけですが、[略]大きな世論の後押しがあったから、
今でも三十人ぐらいしかいない小さな組合・グッドウィルユニオンがグッドウィルを
廃業まで追い込めたんです。>
「じゃあ、折口社長のいいなり社員はともかく