井辻朱美のレビュー一覧
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ジャケ買い。樋口一葉読みたかった。
訳本だから、どこまで原作のニュアンスが生きているか分からないけど、どの作品も良かった。
以下、ネタバレ含む。
「たけくらべ」
とりあえず文学史で覚えるとしたら、これ。
あと『ガラスの仮面』でストーリー覚えた。
美登利という女の子の、正太に対する気持ちと、信如に対する気持ちが、うまく書き分けられていて、どこか“持てる者”としての傲慢が似合う。
エンディングに花を持ってくる、映像的な清々しさというか、寂しさも良かった。
「やみ夜」
うらぶれた屋敷の主、お蘭が、いつの時点から直次郎を使おうと思っていたかで、印象が変わる。
何をテーマにして良いか難しい作品だけど、不幸であって当然と感じている直次郎が、お蘭のために命をかけ、でも仕損じる所に意味があるような気がする。
他、「うもれ木」「わかれ道」。 -
Posted by ブクログ
・フィリップ・リーヴ 「アーサー王ここに眠る」(創元推理文庫)は新たなるアーサー王の物語である。時と場 所は500年頃のブリテン島南西部、「お互いが小競り合いをくりかえして(中略)丘陵地帯の小さな王に仕えてい」(28頁)たり、「大王に仕えているものもある。または自分らの長にしか忠誠を誓わず、土地を持たない小さい集団もあって、そいつらはど こでも略奪し、土地を荒らす。」(同前)そんな時代のアーサー王の物語である。これを語るのは吟遊詩人のミルディン、聞き手は主人公の少女グウィナである。ミルディンに言はせれば「アーサーの一団もそんなやつらだ。」(同前)といふわけで、アーサー王がアー サー王伝説の王となる前の物語である。ミルディンは例の魔法使ひマーリンに当たるらしき人物である。
・アーサー王には聖剣がある。それをいかにして手に入れたか。ミルディンの指示によつて水に入つたグウィナは、「剣をくるん でいる油布を引き裂くと(中略)空いた手で剣をさしあげた。剣が水面を割って宙に出るのがわかった。(中略)剣はあまりにも重い。 (中略)なぜ、取ってくれないの。(原文改行)男は取った。」(39頁)アーサーは聖剣を手に入れたのである。その名をカリバー ンといふ。ミルディンは、「こっちの仲間もアイルランド人の家来どもも口にしてる。湖の底に住む妖精の貴婦人が、アーサーに魔法 の剣をさずけたとか……」(42頁)かくしてミルデインの「神神は別世界からこの剣をアーサーにさずけることで、かつてアル トリアスを愛していたように、アーサーを愛しているあかしとするわけだ」(32頁)といふ計画がうまくいき、アーサー王は伝説を歩き始める。以下の物語でも同様のことが行はれるらしいが、別に行はれなくともかまはない。ミルデインの竪琴と歌によつてアー サーは伝説となつていくのである。訳者井辻朱美はこの物語を端的に、「吟遊詩人ミルディンという男が、アーサーという小族長の人生を、 夢と魔法にまぶしてゆく過程を描いたものです。」(「訳者あとがき」343頁)と書く。さう、正にかういふ物語である。アー サーの死の場面、伝説のカムランの戦ひである。モルドレッド卿は出てこない。アーサーの甥のメドロートとの戦ひである。その最期はアーサーとグウィナ、といつてもミルディンにまちがへられてゐるのだが、の2人だけである。ここで例の剣をグウィナは水に返 した。「わたしはずっと後悔している。」(326頁)といふのがグウィンの偽らざる気持ち、なぜなら「この剣に使われた黄金があれ ば、一年は暮らせた。」(同前)本当はかういふ調子なのである。「夢と魔法」を取り払へば何が残るか。現実であらう。小族長の現 実、吟遊詩人の現実、いろいろあつても現実は現実である。現実は現実でしかない。「死の瞬間が終わったとき、その指輪とベルトと長靴と、首にかけていた古い黄金の十字架を外したのは、このわたしの手だ。わたしはそれをもらうだけの働きをした」(328 頁) といふのである。アーサーは彼女によつて葬られ、以後、彼女によつてアーサーは語られてゆく。「アーサー殿の名が物語にしかすぎ ない土地へ馬を進めていった。」(331頁)「手品と物語ばかりかな」(同前)、彼女の言葉はこの物語をよく表してゐる。「小族 長の人生を、夢と魔法にまぶしてゆく」のである。神話、伝説にはその物語の核とになる何らかの出来事がある。この物語はその核とその成長過程を描いたものである。個人的にはこの野卑で荒々しいアーサーより語り手グウィナの方が魅力的であつた。訳者曰く、「本書は素敵な少女小説の一面」を持つ。納得である。 -
Posted by ブクログ
衝撃のラストから、どうやって話が続くのだろうと思ってしばし間が空いてしまった永遠の戦士エルリックシリーズ。なんと第二次大戦のドイツから始まります。その子孫の物語として現実世界と繋がってくるのかと思いつつ読み進めると、なにやら多元宇宙とか時空を超えて転生するとかファンタジー世界の理屈が展開されてきて腰がひけてくる。この死をも超越したなんでもありあり感が苦手なんだよな。緊迫感がうすれるよね。でもムアコックはそこで脅威の粘りを発揮し、見事にエルリックの血を引く末裔の物語につなげていく。これはこれで面白いか。でもエルリックの矛盾した内面の葛藤を描いて迫力があったこれまでの作品と違ってエンタメ色が強い。深みが薄れた。
しかし翻訳の素晴らしさは相変わらずで、もともと日本語で書かれた作品かと思ってしまいます。これだけでも読む価値あり。