ホフマンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
初めてホフマンの『黄金の壺』を読んだとき、その不思議な魅力に取り付かれてしまいました。現実と幻想が溶け合う世界、そこに描かれる若き書生アンゼルムスの冒険は、200年以上の時を経た今でも、私たちの心を強く揺さぶります。
物語は、ドレスデンの街で始まります。聖昇天祭の日、不器用な書生アンゼルムスは林檎売りの老婆の籠を倒してしまい、その不幸な出来事から彼の奇妙な冒険が始まるのです。黒い門の前で見た三匹の金色の小蛇、特に青い瞳を持つ一匹への恋。そして、古文書の写字生として雇われた不思議な文書保管官リンドホルストの家での体験。これらの出来事は、現実なのか、それとも主人公の妄想なのか、読者にはその判断が委 -
Posted by ブクログ
前から読みたいと思っていた本
なんと新訳が出ていて嬉しくなりました
1819年に書き始めたとのこと
なんてことでしょう日本は江戸時代
登場人物の背景は確かに時代を感じさせますが
ムルくんの可愛い猫たる姿はまったく時代を感じさせない
あげようと思ってくわえたニシンを運んでいるうちに食べてしまったり、先生の机の上をグジャグジャにしてしまったり、恋敵に叩きのめされたり
もう目に浮かぶ!
そしてムルくんの書く小説の愛くるしい登場人物たち
まだ半分ですが、読んでよかった!早く続きを!
が、腰を据えて読まないと内容が入ってこないので何日かかかるだろうな -
Posted by ブクログ
すごい面白かった。ホフマンはドイツ人の法律家だから、難しい言葉が並んだ長々とした小説なのかと思っていたら、とんでもない。
怪奇で、幻想的で、狂気的で、少しの哀しみがある小説。
小さい頃読んだ不思議で恐ろしい御伽の世界に迷い込んだよう。
3遍の小説で、1番好きなのはクレスペル顧問官。
気が狂っているようだけど実は中の芯がしっかりした人で、好きになるキャラ。
〝ふつう自分に奇矯なところがあっても、人に気づかれないように包み隠しておきますがね。その覆いを引き剥がされてしまっている人がいる。”
まさにそんな感じのキャラ。
砂男は怖い。ぞくっとする。若い青年(お金持ちで許嫁もいて、幸せそのものにみえ -
Posted by ブクログ
何度読んでも素晴らしい。長いと言われても私は言いたい!200年前ホフマンが怖さのあまり妻の手を握りながら書いたと言われるこの小説がどれだけ後世に影響を与えたか。美しいほどの不気味さはこれまで幾度と映像化されたが表現しきれなかった。畳み掛ける不条理は狂気なのか現実なのか。夜更かしする子供のところにやって来て目玉をえぐり取る砂男の話を聞いた幼少のナターナエルは夜になると父の書斎に来る砂男の足音に怯えていた。ある夜書斎を覗き見して砂男に襲われ父に助けられる。砂男の正体は弁護士のコッペリウスだった。父は惨殺されコッペリウスは姿を消し行方不明となる。十数年後、結婚し大学に通うナターナエルの前に再び砂男は
-
Posted by ブクログ
ポー、カフカ、そして日本の作家への系譜
ドイツの作家ホフマンの1814年の作品。
とにかく不思議なお話で、とても詩的である。だいたい、ドレスデンの大学生アンゼルムスの恋の相手は緑の小蛇。でもおどろおどろしいような感じはなく、あくまでもおとぎ話風に幻想的である。人間が突然はげたかになって飛び去ったり、ドアのノブがおばあさんの顔になったりするような不思議なことが数多く起こる。また、パーティでかつらが飛び交うようなコミカルな場面や、火の精と悪魔の死闘の場面など、おもしろいエピソード満載である。
それでいて、作者がいつごろを想定して書いたかはわからないが、少なくとも1814年よりは前の、ドレスデン -
Posted by ブクログ
昨年上巻を読んで、気づけば半年が経っていた。
ネコのムル君が筆を取るときに音楽家クライスラーの伝記を下書きとして使い、出版社にそのまま送ってしまったため、ムル君の話とクライスラーの話が交互になって出版されたという設定の本。
下巻は若者から成熟期に至るまでのムル君の人生が綴られている。
学生連合に参加するようになって以前の品格がなくなったと人間様から言われたり、犬族が集まるパーティに参加したりと、世界を広げていくムル君。
そしてその間に挟まるクライスラーの伝記。正直最初は読みにくかったけど、ムル君の話とリンクするところもあってだんだん慣れてくる。
あとは所々に編集者のツッコミがあり、「ネコ君 -
Posted by ブクログ
黄金の壺は、完全にファンタジー。こういう昔の小説って小難しいやらな問答というか語りというかで私生活がメインな気もするけど、でもはるか昔は聖書とかファンタジーだしな、珍しいってほどでもないかもだけど、ちょっと意外だー。
なもんだから、表現が仰々しいとかを除けば今風に読めるんではないか。
スキュデリさんの方も、いちいち表現が鬱陶しいというか、しょっちゅう感極まって大変だー、なんだけど、展開は面白いし、なにより結末への持っていき方もなかなか。人治主義がうまくまわることを示しているのか、にしても今どきの小説ではなかなか見られないぞな。
最後の方の小品はちと難易度高めかな。 -
Posted by ブクログ
『くるみ割り人形とねずみの王さま』
言わずと知れたクリスマスのメルヘン。
こんな空想をしていたなあ、とか、こんなお菓子の町は憧れだったよね、とか、とにかく楽しい作品。
深読みをすると、マリーは現実の世界からいなくなり、くるみ割り人形(若いドロセルマイヤーさん)と一緒にお菓子の国へ行って、二度と戻って来なかった、つまり、現実世界でマリーは死んでしまった、とも取れる。実際、マリーのモデルとなった女の子は、出版の数年後に幼くして亡くなったようだけど。
『ブランビラ王女』
一言で言うなら、自我の物語。
誰と誰が同一人物で……、時間軸的には……、と考え始めるとドツボにはまる。物語が入れ子構造で(物語内