黄金の壺

黄金の壺

小説・文芸
638円 (税込)

3pt

ドイツ・ロマン派の異才ホフマン(一七七六―一八二二)自らが会心の作と称した一篇.緑がかった黄金色の小蛇ゼルペンティーナと,純情な大学生アンゼルムスとの不思議な恋の物語は,読者を夢幻と現実の織りなす妖艶な詩の世界へと誘いこんでゆく.芸術的完成度も高く,作家の思想と表現力のすべてはこの作品に注ぎこまれている.

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 海外文学
  • 出版社
    :
    岩波書店
  • 掲載誌・レーベル
    :
    岩波文庫
  • タイトル
    :
    黄金の壺
  • タイトルID
    :
    1288855
  • ページ数
    :
    190ページ
  • 電子版発売日
    :
    2023年01月26日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    3MB

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黄金の壺 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    そもそもアンゼルムスの味わっている至福の生活は、つまるところ詩のなかにある生命と通ずるものなのではないでしょうか。詩のなかでは、この世のあらゆる存在がきよらかな調和をとげ、それが自然の最も奥深い神秘となって現われ出ているのですからね

    0
    2026年02月21日

    Posted by ブクログ

    初めてホフマンの『黄金の壺』を読んだとき、その不思議な魅力に取り付かれてしまいました。現実と幻想が溶け合う世界、そこに描かれる若き書生アンゼルムスの冒険は、200年以上の時を経た今でも、私たちの心を強く揺さぶります。
    物語は、ドレスデンの街で始まります。聖昇天祭の日、不器用な書生アンゼルムスは林檎売りの老婆の籠を倒してしまい、その不幸な出来事から彼の奇妙な冒険が始まるのです。黒い門の前で見た三匹の金色の小蛇、特に青い瞳を持つ一匹への恋。そして、古文書の写字生として雇われた不思議な文書保管官リンドホルストの家での体験。これらの出来事は、現実なのか、それとも主人公の妄想なのか、読者にはその判断が委ねられます。
    ホフマンの描く世界の特徴は、日常と幻想の境界の曖昧さにあります。金色の小蛇は実は文書保管官の娘セルペンティーナであり、林檎売りの老婆は魔女であり、リンドホルスト自身も実は大魔法使いであったと明かされますが、それらの設定は唐突に感じられません。むしろ、私たちの日常にも不思議な出来事や存在が潜んでいるのではないか、という感覚を呼び起こすのです。
    この作品が書かれた19世紀初頭は、ドイツ・ロマン主義が花開いた時代でした。理性と合理主義への反動として、想像力と感性を重視する文学運動が起こっていました。『黄金の壺』は、そんな時代精神を見事に体現しています。しかし同時に、当時の市民社会への風刺も含まれています。「市民的な」生き方を象徴するヴェロニカとの恋、実務家になることへの期待など、社会的な価値観とアンゼルムスの詩的な魂との葛藤は、現代でも十分に共感できるものです。
    特に印象的なのは、物語の中で重要な役割を果たす「書くこと」のモチーフです。アンゼルムスは写字生として古い原稿を写す仕事を任されますが、それは単なる機械的な作業ではなく、魔法的な文字との対話として描かれます。この設定には、芸術創造の本質についてのホフマンの考えが反映されているように思えます。
    私がこの作品に魅了されるのは、その多層的な読み方ができる点です。メルヒェンとして読めば不思議な冒険物語として楽しめますし、より深く読み込めば、芸術と現実、想像力と理性、個人の自由と社会的制約といった普遍的なテーマについての考察を見出すことができます。
    原文はドイツ語ですが、日本語の優れた翻訳がいくつかあり、比較的読みやすい作品だと思います。ファンタジー文学に興味がある方はもちろん、現代社会に生きる私たちの抱える葛藤について考えてみたい方にもお薦めしたい一冊です。200年前に書かれた物語が、こんなにも現代的な響きを持ちうることに、あらためて文学の力を感じさせられます。

    0
    2024年12月04日

    Posted by ブクログ

    これまた名作でした!
    とても詩的で情緒的、メルヘンなんだが、かなりグロテスクでもある。
    そういう生々しくも詩的な世界、そこにある奇跡にあふれる自然というものを「信じる」者とそれを狂人とみる者。これは魯迅の狂人日記を思い出したんだが、自分の生活にも当て嵌めて考えられるだろうな。
    うん。面白かった。

    0
    2013年02月18日

    Posted by ブクログ

    ポー、カフカ、そして日本の作家への系譜
    ドイツの作家ホフマンの1814年の作品。

    とにかく不思議なお話で、とても詩的である。だいたい、ドレスデンの大学生アンゼルムスの恋の相手は緑の小蛇。でもおどろおどろしいような感じはなく、あくまでもおとぎ話風に幻想的である。人間が突然はげたかになって飛び去ったり、ドアのノブがおばあさんの顔になったりするような不思議なことが数多く起こる。また、パーティでかつらが飛び交うようなコミカルな場面や、火の精と悪魔の死闘の場面など、おもしろいエピソード満載である。

    それでいて、作者がいつごろを想定して書いたかはわからないが、少なくとも1814年よりは前の、ドレスデンの街やエルベ川の風景、大学生や大学の先生やその家族の生活の様子、大学の教授の娘の考え方などが、リアルに生き生きと描かれている。

    解説によると、ホフマンは、ドイツロマン派の流れと、怪奇・奇想文学の二つの系譜に属しているらしい。「彼の文学のロマン派的怪奇性はさらにポーへ、その超現実構成はカフカへと受け継がれ、現代に脈々と生きているのである。」(解説より)
    もちろん、日本の作家にも影響を与えているだろう。

    最後まで読むと、哲学的でもあり(特に最後の数行)、ページをめくるのが楽しい、新鮮な読書体験だった。

    0
    2015年04月17日

    Posted by ブクログ

    魔法での戦闘、蛇に恋した青年、そしてアトランティスへ…なんでもありの世界。ホフマン大好きです。ホフマン短編集復刻希望。

    0
    2011年04月30日

    Posted by ブクログ

    神品芳夫訳。ドイツロマン派の幻想と「匂うような叙情性とはるかなあこがれ」に満ちたこの作品、主人公アンゼルムス、あるいはこれを書いていた時期のホフマンに、わが身を重ねて読む人は、少なくないかもしれませんね。そう、ここに見られる叙情性と、そして俗世界と自分自身とを嗤うことのできる視点、それは一人の人の中に同時に必要なものではないでしょうか。訳者解説も見事です。

    0
    2011年07月19日

    Posted by ブクログ

    読書が捗らない時期に読んで一旦中断してたけど、ちょっと波に乗って読み切った!

    大学生アンゼルムスと黄金色の蛇ゼルペンティーナとの不思議な恋。
    幻想、夢幻、ファンタジー、妖艶…というような文字が並んでるけど、私にとっては悪夢のように感じたな…
    ファンタジーは好きなんだが。

    ホフマンは人間が自然から離れていくことに危機感をおぼえて本作に愛と自然と調和?みたいなことを書いたとあとがきにあった。
    なるほどと思った反面、本人の意思なのかはわからないが、アンゼルムスは日常の生活の重荷をほうりだしただけのように思った。
    いい作品ではあるんだろうけど…私がまだ本調子じゃないのかもな。また時間をおいて再読してみよう。

    0
    2026年06月10日

    Posted by ブクログ

    ストップモーション映画"ホフマニアダ"を観てからホフマンに興味を持ち、原作も拝読。
    幻想的な物語がホフマンの文章によりまばゆさがより増し、輝かしいものとなる。恋の悩ましささえまばゆい。

    0
    2024年07月14日

    Posted by ブクログ

    華麗で幻想的な出来事が、複写を生業にする学生や、俗物的な教頭といった俗世一般の人間たちの生活の上に織りなされ、物語のまとまりと、美しい描写によって楽しい小品を作りあげている

    ヴェロニカが可愛らしい
    俗物的な欲求の虜になってしまう人間の弱さを見ると微笑ましなる。邪な手段に頼っても下心を成就させようとする姿を見ると愛らしいと思う
    不思議なものだ。

    しかし、この作品にあるような純朴な美しさというようなものは現代では書けないよな、と思う。書くとしたらたちまち詭弁くさくなってしまう気がする

    0
    2022年03月15日

    Posted by ブクログ

    ドイツ・ロマン派の異才と呼ばれるホフマンによる初期の傑作。1814年の作品です。ホフマンの作品には怪奇幻想小説の要素があり、超現実的小説の要素もあって、後年前者はポーへ、後者はカフカへと連なっていく。そういった系譜にある作家だと解説にありました。

    1974年の翻訳です。文字の小ささはしょうがないとしても、訳自体はとても読みやすかった。簡便で端的な言葉づかいによって小説世界がわかりやすく展開していきます。

    怪奇幻想・超現実のシーンが、クライマックスのみならず序盤から繰り広げられます。なんといっても、主人公の大学生・アンゼルムスがはなから外を歩いているだけなのに、老婆がリンゴを路上販売しているお店につっこんでいきます。その弁償として財布ごと有り金すべて失うんですが、そういったポンコツなスタート切るところが作者の度胸と発想とユーモアだなあと思いました。

    そんなアンゼルムスはその日、昇天祭だったので美しい女の子たちとわきあいあいの時間を夢想していました。なのに、財布ごとお金を失ったがため皆が集まる温泉地には行けなくなり、果たせなくなってしまいます。彼は、自分はいつもこうなんだ、と嘆きます。そしてこれまでの自分のポンコツぶりを振り返るんですが、これがなかなか可笑しい。こんなふうに、運が悪いキャラクターとして物語の出だしから読者に印象付けているのは、そういうキャラクターだからこそたどり着ける境地と理想郷がある、と最後には物語をもっていく狙いがあったみたいです。解説によると、速筆であるホフマンにしては珍しくこの中編に半年もかけた、とあります。初稿から第二稿へ、第三稿へ・・・と練っていったんでしょう。寓意を込め、多層的にテーマを織り込み、推敲を重ねていったのではないか、と推察します。

    そして、嘆くアンゼルムスにはすぐさま発狂の様相が見られてきます。川べりに立つにわとこの木に絡みついて上り下りしたりそのあたりを動き回ったりしていた三匹の金緑色の蛇たちの一匹に彼は魅入ってしまうのです。なんと瞬間的に、そのなかの青い目をした蛇・ゼルペンティーナに恋をしてしまいます。それから、わーわー騒ぐんですが、周囲を歩く一般人には指をさされ、気がおかしくなった、とささやかれる。このアンゼルムスのふるまいや混乱ぶりは、まったく精神病のスケッチさながらだと思いました。アンゼルムスはこのシーンの後のいくつものシーンでも、同じように妄想にとりつかれたような奇妙な行動をとるのですが、それを「はみ出し者」「排除すべき者」というような一般的な反応を超えて、詩的な世界に足を踏み入れた男、というように物語は彼をやさしく温かく抱きくるむように展開していきます。妄想をファンタジーへと昇華させているんですね。

    その後、火の精霊と魔女との対決にアンゼルムスや彼に恋するヴェロニカ嬢たちが巻き込まれていきますが、エンタメ的要素にもなっていておもしろい。また、物語のテーマとしては愛が中心に据えられています。

    本作品で設定されている対立軸というのは、おそらく次のようなものです。「人間性」というスタート地点から誰しもが出発して、多くの人は出世や金銭を求めて躍起になる「社会性」のステージに入っていきます。それが通常の道であり一般的な道であるのは、この物語の当時の世界とて現代世界とて同じでしょう。作者は、人は「社会性」への道のほかに、「詩性」とでも呼ぶべき道も歩めるのだ、とこの物語で示していて、それがアンゼルムスや、彼を取り巻くファンタジーの住人が歩んでいる道なのだと考えることができます。つまり、「人間性」から出発した道は分岐していき、ひとつは「社会性」へ、もうひとつは「詩性」へと繋がっていく。そしてそれらが相容れず対立している。「社会性」の住人は「詩性」の住人を変人とするし、「詩性」の住人は「社会性」の世界では生きていけない。そういった対立軸があると読み受けました。

    また、こういった古典を読むと、それもファンタジー要素のある話なのでなおさらなのですが、現代とはまったく違った異世界の物語のようにも感じられがちではないかと思われるのです。でも、立ち止まって考えてみると、この作品が発表された当時としてはこの物語は当時の現代物語であり、そんな当時の現代がファンタジックな異世界と繋がるあたりなんて、当時の読者にとってはかなりスリリングだったのではないか。翻訳を通してではあっても文体も登場人物も生きいきとしていますし、そういった意味では没入感の得られるつくりをした話です。読んでいてなんだか似ている感覚がなぜかしたのですが、僕としては、おそらく当時の人がホフマンを読んで得ていた感慨と、現代人が村上春樹さんを読んで得ている感慨が、同種にあたるんじゃないかと思えてきたんです。村上春樹←カフカ←ホフマン、というように彼らの作風の一要素を系譜として遡っていくこともできますし。

    まあ、古典として現代に残っているということはとても優れている作品であるというわけですから、そこにさっきも言ったような当時の現代性を加味した上で刊行された当時をイメージすると、読者たちが得た興奮は相当すごかったんじゃないか、と僕なんかはまるで関係ないのになぜかニマニマしてしまうのでした。

    0
    2025年04月09日

黄金の壺 の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 海外文学
  • 出版社
    :
    岩波書店
  • 掲載誌・レーベル
    :
    岩波文庫
  • タイトル
    :
    黄金の壺
  • タイトルID
    :
    1288855
  • ページ数
    :
    190ページ
  • 電子版発売日
    :
    2023年01月26日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
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    3MB

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