あらすじ
サイコ・ホラーの元祖と呼ばれる、恐怖と戦慄に満ちた傑作「砂男」。芸術の圧倒的な力とそれゆえの悲劇を幻想的に綴った「クレスペル顧問官」。魔的な美女に魅入られ、鏡像を失う男を描く「大晦日の夜の冒険」。E・A・ポー、バルザック、ボードレール、ドストエフスキーなど後世の作家に幅広い影響を与えたホフマン。怪奇と幻想、そして諧謔に満ちた作品群は、200年の時を超え、いまなお読者を魅了してやまない。
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Posted by ブクログ
表題の二作に加えて『大晦日の夜の冒険』が収録されています。全てに共通するのは、魅力的な女性に男性が夢中になり、その結果……という構造です。しかし説教くささは無く、文体も古めかしすぎず読みやすいと感じました。巻末に解説と著者の年譜も載っていて、著者が影響を受けた作品や親交のあった作家なども知ることができます。
Posted by ブクログ
『砂男』を再読。
近代文学におけるジャンル小説の先駆けでありながら、まごうことなき傑作怪奇小説。
好きな小説10個挙げろって言われたら絶対挙げる。
恐怖の積み上げ方が上品。
ナターナエルと作者ホフマンの距離感が絶妙。
主観的な物語を描きながらも、客観的にロマン派を脱構築する。
ホフマンにとっての至上への希求は、狂気への道筋。
ヒッチコックの『めまい』は絶対これを元にしてる。
Posted by ブクログ
すごい面白かった。ホフマンはドイツ人の法律家だから、難しい言葉が並んだ長々とした小説なのかと思っていたら、とんでもない。
怪奇で、幻想的で、狂気的で、少しの哀しみがある小説。
小さい頃読んだ不思議で恐ろしい御伽の世界に迷い込んだよう。
3遍の小説で、1番好きなのはクレスペル顧問官。
気が狂っているようだけど実は中の芯がしっかりした人で、好きになるキャラ。
〝ふつう自分に奇矯なところがあっても、人に気づかれないように包み隠しておきますがね。その覆いを引き剥がされてしまっている人がいる。”
まさにそんな感じのキャラ。
砂男は怖い。ぞくっとする。若い青年(お金持ちで許嫁もいて、幸せそのものにみえる)の内面が分裂し、気が狂っていく物語。ホフマンさん、怖いよ!
こんなに面白いとは。三島、坂口安吾が絶賛したというのも頷ける。
Posted by ブクログ
何度読んでも素晴らしい。長いと言われても私は言いたい!200年前ホフマンが怖さのあまり妻の手を握りながら書いたと言われるこの小説がどれだけ後世に影響を与えたか。美しいほどの不気味さはこれまで幾度と映像化されたが表現しきれなかった。畳み掛ける不条理は狂気なのか現実なのか。夜更かしする子供のところにやって来て目玉をえぐり取る砂男の話を聞いた幼少のナターナエルは夜になると父の書斎に来る砂男の足音に怯えていた。ある夜書斎を覗き見して砂男に襲われ父に助けられる。砂男の正体は弁護士のコッペリウスだった。父は惨殺されコッペリウスは姿を消し行方不明となる。十数年後、結婚し大学に通うナターナエルの前に再び砂男は現れる。妻の助言に一度は妄想を振り払い彼は砂男から望遠鏡を買う。そしてその望遠鏡でこの世ならぬ美貌の娘オリンピアを見つけ出会い不貞の恋をするのだが、オリンピアは自動人形だった。壊れたオリンピアのえぐられた目玉。発狂したナターナエルはその後回復するも病院の屋上であの望遠鏡を覗いて景色を見ようとすると…。この話を読んだフロイトは『不気味なもの』の中でホフマンを去勢コンプレックスと分析した。ホフマンは確かに普通ではない。幻視が見えたのだろう。どの話もそうなのだ。常識や理屈で話をまとめようとしない。だからこそ幻想と狂気が逆にリアルに爆発しているのだ。この200年のファンタジーとホラーは『砂男』を、いやホフマンを超えられていない。翻訳はエンデの『モモ』を訳した読みやすい大島かおりで読もう。
Posted by ブクログ
ホフマンの中編?が三編。どれも少し不可解な話なのだけれどその怪奇な中身がなかなかよい。幻想的欧州を感じさせる。どれもなかなかで、また読み返したい。