沼野恭子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ソ連の名残がまだ残る1990年代中盤のウクライナで、ペンギンと住む売れない作家が不穏な事件に巻き込まれていく物語。
主人公にぶっ飛んだところがあるせいで、感情移入が全くできなかった一方で、主人公が預かった少女のソーニャとペンギンのミーシャには情が移り、無事を確かめたい一心で最後まで読み進めた。色彩の少ない陰鬱な雰囲気や、主人公のシニカルな語り口とは対比的に、ペンギンの可愛さが際立っており、独特の世界観に仕上がっていた。個人的には、ストーリーそのものよりも、あまり味わったことのない空気感を楽しめたと思う。
本筋とは離れるが、ソ連崩壊直後に書かれている為、本レビューを書いている2025年8月の -
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Posted by ブクログ
ネタバレ衝撃的な小説だった。
おじさん3人で初恋について語り合う、ノスタルジーを感じる設定。
主役であるウラジーミルの初恋相手ジナイーダは、美しく気品に溢れ、天真爛漫な女性。モテモテのジナイーダは、男達を魅力し、翻弄する。小悪魔、いや、悪魔的である。
ジナイーダに陶酔し、どんな要求でも喜んで叶える男達と、彼らを手のひらで転がし楽しんでいるジナイーダ。その奇妙な関係は、まるで見てはいけないものを見ているよう。
さらに奇妙なのは、ウラジーミルの父親である。
ジナイーダと密かに交際するのだ。奥さんは健在である。その上、ウラジーミルがジナイーダの虜なのは明白なのにも関わらず。
ジナイーダと父親は一目見た時から