【感想・ネタバレ】ペンギンの憂鬱のレビュー

あらすじ

恋人に去られ孤独なヴィクトルは売れない短篇小説家。ソ連崩壊後、経営困難に陥った動物園から憂鬱症のペンギンを貰い受け、ミーシャと名づけて一緒に暮らしている。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたヴィクトルだが、身辺に不穏な影がちらつく。他人の死が自分自身に迫ってくる。ウクライナはキーウ在住のロシア語作家による傑作長編小説。

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Posted by ブクログ

数ヶ月付き合って別れた人が、別れて数ヶ月後の私の誕生日に送ってくれた2冊のうちの1冊でした。
この主人公の燻ってる感じが私と重なったってことなのかな。

売れない作家が主人公の不条理ものってことで、
どうしてもポール・オースターも想起したし、
ニーナやソーニャとの淡白な関係もおもしろかったな。

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

憂鬱症のペンギンと暮らす売れない作家。死亡記事を書く仕事を受けたことで、じわじわと恐ろしいことに巻き込まれているようだ。それでも収入は増え、不穏な状況に目をつぶれば淡々と日常が過ごせているように思えなくもない。
正義なのか犯罪なのかよくわからないまま、「何か」に巻き込まれる感じが訳者後書きにもあったけど、村上春樹の羊をめぐる冒険に通ずる空気感。
ペンギンのミーシャの存在感が大きくて、愛おしい。
後半は特にザワザワしながら夢中になってすごーく面白かった。

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2025年02月22日

Posted by ブクログ

職もなく恋人も失った売れない作家である主人公ヴィクトルは,動物園から引き取ったペンギンと暮らしている.そんな彼に新聞社から「生きている人たちのXデイに備えて,事前に追悼記事を書いておく」仕事を依頼される.その仕事は軌道に乗るが,不思議なことに書いた追悼記事が次々に使われ,なぜか女児を引き取ることになり,また,ヴィクトルの周りでも不穏な事件が起こり始める.一体,この追悼記事は何なのか?
不思議なテイストなのだが,一応,ミステリーなのだろう.作者はウクライナ人.

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2024年10月26日

Posted by ブクログ

 ウクライナ戦争が始まったころにクルコフのウクライナ日記を読みこの本を買っておいた。今読んでみてものすごくエンターテイメント性あふれるサスペンス小説だった。独身の小説家の男が鬱のペンギンを動物園から引き取りペットとして対等な関係で生活をしていくシチュエーションも面白い。
 新聞に追悼記事を生前から書いていき事件に巻き込まれていく話は不気味だ。
 4歳の少女を引き取りその面倒を見る若い20代の女性と3人とペンギンとの愛のない生活を綴っていくところも男のやさしいキャラクターを表している。 
 ソ連崩壊後のウクライナの混乱した政情での設定だけど政治性もあると思うがエンターテイメントとして難しく読む必要もない小説だった。
 最後40ページ余りの物語の展開は一気読みさせられた。

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2024年10月03日

Posted by ブクログ

ウクライナのキエフ(キーウ)でペンギンのミーシャと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、ある日、出版社から「十字架」を書く仕事を依頼される。
不穏な空気+ペンギンの物語→

1990年代、ソ連崩壊後のウクライナが舞台。戦後の日本にしか住んだことのない私には最初、とても不思議な気持ちになった。
家の外の世界はとても殺伐としているのに、ヴィクトルのキャラとペンギンのミーシャがその世界から少し浮いていて、それがとても絶妙。一気に読みやすくなる。→

でも、ペンギンのミーシャは動物園が閉園するタイミングでヴィクトルが貰い受けているわけだし、この時点で今の日本にはない感覚なんだよね。
終始この「感覚はわからないけど、何となくわかる」みたいな感じが魅力的なお話(語彙力なさすぎなんだけど伝わってー!)

読んでよかった(語彙力喪失)

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2024年04月11日

Posted by ブクログ

短編作家の主人公が謎の仕事を引き受けるが、
徐々に明らかになってゆく。
共に暮らすペンギンがなんとも魅力的。途中から一緒に暮らす彼女や子どもとの日常もほっこりするが、主人公は彼女らに愛はないと思っている。
最後のオチがあっと言わせる。
旧ソ連ぽいなーと思わせる管理統制社会、闇社会の面影。

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2023年11月26日

Posted by ブクログ

憂鬱症のペンギンと売れない小説家。もう、これだけで面白い。

不可思議でどこか、現実と空想のあわいに惹き込まれるような物語。
どことなく村上春樹を想わせる文章ですが、訳者のあとがきを読んで納得。

続編が出ているらしいけれど、どうやら15年以上経った現在でも日本語翻訳は出されていないそうで、残念。

さて、本作はソ連解体後のキエフを背景にした物語。
「人生の本質が変わったからといっていちいち考えこんだりしてはいられない。」
と作中にあるように、当時の人たちの、激しく変わる社会に、いちいち反応してたらやってられない、みたいな感情が窺えます。
これは、たぶん私たちも同じで、自分の人生に起こっていることの意味や、日々労働していることのその先なんて、いちいち考えながら生きていくことなんてできないし、問題や困難を避けて生きていくほうが良いとも思える。

そんな暗い背景がベースにありながらも、ペンギンとソーニャ(預かることになった子供)ニーナ(ベビーシッター)が間に入ることでどこかコミカル、そしてこの関係を通してヴィクトルの感情の変遷も伝わってきます。

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2023年09月04日

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ペンギンとヴィクトルが互いに依存関係であり「憂鬱症」を通して重なりあう様子がとてもうまいなと思った

追悼記事を書く仕事を訝しく思いながらも、深くは知ろうとしないとことか、とにかく生活ができればいいと思ってたところとか、ヴィクトルがなぜこんなにも物事に無関心でいられるのかが不思議だった
作品に終始漂うヴィクトルの諦念とその受容は、ウクライナが新生国家で情勢が不安定だったことが大きく関係してるんだろう
でも途中に出てきたペンギン学者のおじいさんが亡くなったことはヴィクトルのかすかにあった生への執着をかなり吸い取った気がするな

最後はヴィクトル=ミーシャだったということか………
そしてどんなことがあっても生活は続くのだと思わされた

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2023年03月03日

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ソ連崩壊直後のウクライナ、売れない小説家のセルゲイは恋人に去られ、動物園からペンギンを1匹引き取る。

ペンギンのミーシャと共同生活を始めた頃、新聞に追悼文を書く仕事を得る。追悼文と言っても、亡くなった人ではなく存命の著名人について亡くなる前に準備しておく…という奇妙なものだった。
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現在のウクライナとは違うけど、この当時のウクライナの社会が先行の見えない不安に混沌としていた様子が伺える。登場人物達はみな淡々と日常生活を送っているが、足元に不安が燻っている。

数ページ読んで感じたのは
「村上春樹みたい」
だった。初期のハルキ作品に何となく似ている。と同時に安部公房の不可思議さやポール・オースターの形の見えない不安要素もある。

不安の原因が何なのかわからない恐怖、並行してゆったりと繰り広げられる日常。話の展開が読めないので、ハラハラと楽しんで読めた。

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2022年10月26日

Posted by ブクログ

1996年に発表。20ヶ国語に翻訳され、日本語訳版は2004年。ソ連崩壊後の新生ウクライナの首都キエフで、ペンギンと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、新聞の死亡記事を書く仕事を持ちかけられる。それは存命の人物の追悼記事を目録にするという不穏な仕事だったが、生活のために二つ返事で引き受けてしまう。初めはうまくいっているように思えたが、思いもよらぬ事態が次々と巻き起こり思わぬ結末を迎える。

 寺田順三さんの可愛い装画と、ウクライナ出身の小説家とのことで気になり購入。内省的で淡々とした独特の文体は、可愛い表紙とのギャップに戸惑ったがすぐに慣れた。ページをめくるごとに物語の魅力に引き込まれ、不条理な展開にもかかわらず読んだ後まで心地よい余韻が残る。ペンギンとの奇妙な生活はペーソスとユーモアの間で揺れ動き、掴みどころのない魅力のある物語になっていた。

 時代の不穏な空気のなかで、奇妙な生活が淡々と進んでいく。どこか寂しそうなペンギンを心配するヴィクトルだが、彼もまた常に満たされない孤独を感じている。孤独がテーマとなっていることは確かで、Wikipediaによるとクルコフは7歳の時に飼っていたハムスターの孤独をテーマに詩を書いていたらしい。まだ読んでいないが動物が登場する作品も多く、街で飼われる動物に孤独な自分を重ね合わせていたのではないか。

登場人物も孤独な人が多い。動物園から売られたペンギンのミーシャ。〈ペンギンじゃないミーシャ〉の娘のソーニャ、ミーシャの元飼育員のピドパールィ、子守りのニーナも街を好きになれずに自分の居場所を探しているようだ。ヴィクトルの日常には孤独と死が常に溶け込んでいて、それを紛らわすように人が集まってくる。彼らの何気ない普通の暮らしがとても愛おしく思えてくるのは、誰しもが持っている「孤独感」を引き出されるからだろう。

突然の結末に驚いたが、これ以上はないのではないだろうか。作者はどこか孤独を愉しんでいるようだった。

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2025年07月22日

Posted by ブクログ

洋書は苦手意識があったが、これはめちゃくちゃ面白い。けど、難しい。憂鬱症のペンギンと男の人のささやかな日常

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2025年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

売れない短編小説家のヴィクトルは、動物園が餌代を払えないためにお払い箱となった皇帝ペンギンのミーシャを引き取ってキエフで暮らしている。新聞の追悼記事「十字架」の執筆記者となり、まだ生きている人物たちのもしもの時に備えて詩的な追悼記事を書き溜めていくが、彼が追悼記事を書いた人物たちは計画的に「処理」されていくようだ。彼自身もよく分からないままに命を狙われ、無自覚のうちに危機をやり過ごし、しかしある日別の男がヴィクトルの「十字架」を執筆していることを知る。そこに記されていたのは、政治的陰謀に加担し、多くの人物の死に関与しながら、最終的に自殺したヴィクトルの一生だった。
心臓病があり憂鬱症のペンギンミーシャについて、ペンギン学者は、本来南極で生きる体の構造になっているペンギンが、全く環境の違うキエフで生きるなら病気になって当然だと言う。解説にもあったが、1996年のキエフは、ソ連から離れたばかりのウクライナが混乱していた時期で、マフィアや犯罪グループが横行していたから、そんな社会不安もあるんだろう。が、ほのぼのしてるように見えて展開がホラー。鍵変えても誰かが夜中に家に侵入してきているようだとか、突然友人が4歳の娘ソーニャを預けにきてサンタさんとしてピストルと多額の現金を置いていくとか、知らない男が自分の愛人に近づいて自分のことを根掘り葉掘り聞いているとか、全体的にじわじわ怖い。あと謎にペンギンを葬儀に連れて行きたがる謎の男リョーシャも怖い。その葬儀は、ヴィクトルが十字架に書いた人たちのものだったと最後にわかるのも怖い。ペンギンがインフルエンザになって、心臓移植が必要で、4歳の子供の心臓でなければいけない、って言われたあたりで、ソーニャの心臓が移植される線かと思ったら違ってよかった。南極にミーシャを送り返す手筈を整えていたヴィクトルが、最後に一人で南極大陸委員会の人に会って「私がペンギンです」って言う結末が思いも寄らなくて、喜劇的で好きだ。ヴィクトルを殺すためにミーシャの病院で待ち構えていた人たちは拍子抜けしただろう。
ミーシャがかわいくて、私もペンギン飼いたい。うちの皇帝ペンギンの等身大のぬいぐるみにミーシャって名前つけようか。

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2024年12月30日

Posted by ブクログ

ロシア語で書かれたウクライナ文学。
見せかけの平穏な日常の裏側に隠れる不穏な空気。そこにペンギンのミーシャという存在が、なんともいえないコミカルさを加えています。

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2024年12月14日

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ロシア語で書かれた小説にしては読みやすかった。名前の呼び方が変わらなかったからだと思う。そこはロシアとウクライナの違いだな。
不思議ミステリーという感じだったが、印象に残っていることは、物語全体を覆っている寂しさや孤独感です。ストーリーが進むにつれて色んな人と交流して楽しんでいる主人公は、ふとした瞬間に孤独感?一人の感覚?を感じている。これは私も分かる気がするもので、人といる時は楽しかったりするんだけど、家に帰るとその楽しさが、家に帰った瞬間と連続していない感じがした。それは家の中に誰がいようと1人でいようと同じ。
また主人公にとってはペンギンだけが癒しの存在で、気にかける存在であり、そのおかげで、主人公がなんだか完成された世界にいる人という感じがした。そういう世界を作れた主人公が、ちょっと羨ましい感じがするかも。

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

閉館した動物園から引き取ってきたペンギンのミーシャと二人で暮らすモノ書きのヴィクトル。著名人が亡くなった際に新聞に掲載する通称「十字架」を書く仕事を引き受けるが、出先の宿では銃声で目を覚ましたり、引き受けた子供の親からピストルを受け取ったり、常に陰鬱な緊張感が続くロシア文学らしいウクライナ文学。
連崩壊後のウクライナの世相をよく表していると解説にもあったが、まさにそのとおりだと思う。ミーシャは動物園という囲いの中から出ても、自分の属していない土地に居るより他なかった。ウクライナもまた、ソ連崩壊後、世界の中で自分たちの居場所を見失っていた。
ヨーロッパ(特に冬の寒さが厳しい地域)の文学では孤独な人間が不条理を押し付けられ、苦悶のうちに死ぬ。みたいな物語がちらほらあるように思うけど、これは厳しい冬がそういった無力感みたいなものを人間に与える面があるのでは、とも思う。

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2024年01月06日

Posted by ブクログ

孤独について深く考えさせられる本
人は皆それぞれが違う形で孤独を抱えていると思わされる。
全体を陰鬱な雰囲気が包んでいるがそれを感じるのもまた良い読書体験
ペンギンがそれを緩和してくれる

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2023年09月09日

Posted by ブクログ

憂鬱症のペンギン・ミーシャと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、生活のために新聞の死亡記事を書き始める。

ペンギンの話と思いきや、少し幻想小説のような不思議な雰囲気もあってとても好み。部屋をぺたぺたと歩くペンギンも可愛い。

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2023年06月23日

Posted by ブクログ

孤独なひとりの売れない小説家と一羽の憂鬱症のペンギンが巻き込まれていく、日常に混じりゆく不穏な気配とその真実を繊細かつユーモラスに描いた物語。ミステリ要素も含み、ペンギンはとてもかわいく、楽しく読めました。

豊かに風景を描き上げる繊細な文体でつづられるのは、危うい社会情勢。地雷が埋められて爆発した死体がそばにあろうと、マフィアのもめ事に巻き込まれて人が次々といなくなっても、日常はバランスを危うく揺るがせながらもつづいていく。別荘を持つ夢を見て、ペンギンと寄り添う暖かさに心を和ませる。ずいぶん前に描かれた物語ですが、小説全体に漂っている漠然とした仄暗さは2023年現在の社会情勢を考えると安定した平和などないままだったのだろうか、などと暗鬱な思いを引き出されます。

ペンギンの描かれ方はファンタジーに近く、空想の生き物、いってみればマスコット=象徴的な存在として描かれているんでしょう。そんなペンギンを明るく無邪気とした存在としてでなく、憂鬱症という個性を持たせたことで、小説家とより深く寄り添えるようないとしさを持つ存在として成り立たせているように思えました。

……この終わり方ではミーシャはどうなったのかとやきもきしたのですが(結末の付け方としてはとても巧いとはいえ)、邦訳はない続編のあらすじを聞いて少し安心しました。

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2023年06月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「鬱のペンギンと暮らす売れない小説家」っていう設定だけで読みたくなった!

そうか、ヴィクトル=ミーシャだったのか…。

ヴィクトルの周りで、その一つ一つが人生の転換点になるような出来事がたくさん起こっているのに、何の起伏もないまま淡々と物語が進んでゆく。
ラスト付近でついにヴィクトルが能動的に動き出したところで、やっと話が盛り上がる。

たまに、「自分の人生何も起こらない、つまらないものだな」と思うことがあるけど、もしかして自分が無関心だっただけなのでは、と反省した。

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2023年03月24日

Posted by ブクログ




[残す本]

春先に書店でカバーに惹かれて買った本。
会社を辞めてしまう同僚に最後に会った時におすすめの本として紹介したら、ウクライナの作家さんだよね、と言われて、書店に並んでいた理由を知った。

これから亡くなりそうな著名人、通称「十字架」を見つけては、追悼記事を書くという仕事を任された売れない小説家ヴィクトルと、一緒に暮らす憂鬱症のペンギン。
全編、寒い国で薄青い空気の中、静かに大きな物事が淡々と進行していく。皮肉の効いたラストは、救いにも、絶望にもとれる。

渋谷の地下のマックで読んだ時、あんなにも人がいる街なのにそこだけは全然人がいなくて、緑っぽいネオンの中1人だけになった感覚がとてもぴったりだった本。
たくさん人がいる街で、自分しかいない場所を見つけたら、ぜひ読んでみて欲しいです。



[ 300ページ以上で残った本 ]

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家が狭いこともあり 捨てる本/残す本 を感想を添えて紹介してます☺︎




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2022年11月30日

Posted by ブクログ

ウクライナの状況が描かれた小説である。といっても戦争ではない。主人公がペンギンを動物園から譲り受け、さらに新聞社から生きている人が死んだ場合の追悼文を書く仕事をしている。子どもを知り合いからあずかり、さらに編集長が行方不明になり、ペンギンの飼い主も死亡する。話が最後まで見えない小説である。

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2022年10月30日

Posted by ブクログ

売れない短編作家と、憂鬱症のペンギンの話。

最近急に寒くなってきたけど、ひんやりした空気の中で読むに相応しい小説だった。
ウクライナ人の作家の作品だけど、ロシア語で書いているのが原因か祖国ではあまり読まれず、むしろ翻訳されたものがヨーロッパでよく読まれているっていうのが小説にも何となく微妙に曇りっぽい印象を与えている気がする。

売れない短編作家にたまたま舞い込んできのは、新聞に掲載する追悼文をその人が生きている間に書く仕事だった。
生前の悪に、多少なり哲学的意味を与える文章は短編作家の才能を引き出してくれたけど、奇妙なことが次々に起こる。
クライマックスは憂鬱症のペンギンのために手配したある計画が、本人の決められた運命を変える手段になる。(と言っても救済とかハッピーエンド印象は全くない)

とにかく憂鬱症のペンギンがの描写がめちゃくちゃ良い。
後半で、葬式にペンギンを出席させるのが流行るんだけど、ちょうど喪服みたいな見た目しているペンギンは葬式の場に相応しいって納得してるのが面白かった。
実際はどうなのかは別として、物思いに耽っているペンギンの様子は想像するだけで雰囲気があ流。元気なやつじゃなくて、群れから逸れ気味の切ないペンギンを見に行きたくなった。

#アンドレイクルコフ
#憂鬱症のペンギン

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2022年10月07日

Posted by ブクログ

鬱々とした雰囲気なんだけど、読めてしまう。ただ思ったよりページ数は多くて淡々としているけれど、文章自体は読みやすい。
単純にペンギンが出てくる本なら読んでみようかな!なんて思っただけなんだけれど、思いもよらない陰謀だとか。読んでいくに連れてそういうことかーと思いました。
続きがあるみたいだけれど、翻訳はされていないらしいので、もどかしい。

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2022年10月05日

Posted by ブクログ

不条理なのですが、日常の描写にそのエピソードがうまく溶け込んでいて、心地よく読み進められました。
訳者あとがきにもありますが、初期の村上春樹の著作と同じ雰囲気のある作品です。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

ソ連の名残がまだ残る1990年代中盤のウクライナで、ペンギンと住む売れない作家が不穏な事件に巻き込まれていく物語。

主人公にぶっ飛んだところがあるせいで、感情移入が全くできなかった一方で、主人公が預かった少女のソーニャとペンギンのミーシャには情が移り、無事を確かめたい一心で最後まで読み進めた。色彩の少ない陰鬱な雰囲気や、主人公のシニカルな語り口とは対比的に、ペンギンの可愛さが際立っており、独特の世界観に仕上がっていた。個人的には、ストーリーそのものよりも、あまり味わったことのない空気感を楽しめたと思う。

本筋とは離れるが、ソ連崩壊直後に書かれている為、本レビューを書いている2025年8月の観点からすると、ウクライナとロシアの距離感がこれ程近かったのかと考えさせられた。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

初めから終わりまで薄暗く、不穏であり、春の陽射しのように温かくありながらも、常に冷気が優しく吹いているような小説でした。

このあと、彼らはどうなったのか?
そんなふうに思わせる小説、僕は好きです。

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2023年11月10日

Posted by ブクログ

面白い。
村上春樹風のカフカ、あるいはカフカ風の村上春樹でもいいけど。
(ブラック)ユーモアあふれる名品。

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2023年10月18日

Posted by ブクログ

異国情緒ある静かで不穏でダークなミステリー。映画を観てるみたいだった。
政治としてのロシアは到底許されないけれど、文学芸術に罪はないと思って、ロシア語文学を読んでみたくなった。作者はウクライナ人で、ロシア語で執筆されている。

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2023年04月05日

Posted by ブクログ

憂鬱症のペンギンを飼う作家の男。これといった希望もなく、なんだか曇天のイメージ。国家を揺るがす陰謀?に巻き込まれるのに気が付かない。気づこうとしない。偶然が重なってできた疑似家族を守るため?でも心許すのはペンギンだけ。ペンギンはどうかわからないけど。少しだけミステリ。最後まで曇天。でもなんか惹きつけられる面白さ。

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2023年02月07日

Posted by ブクログ

ソ連崩壊直後のウクライナ。動物園から譲り受けたペンギンと暮らす無名作家ヴィクトル。彼は存命中の著名人の死亡記事を書く事になる。書かれた人は次々不審死をとげ、彼自身も危険な状況に追い込まれていく。最後のオチが良い。
非人道的状況が早く終わりますように。

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2023年11月11日

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